【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

文字の大きさ
45 / 89
第二章

45

しおりを挟む


 ふんっと顎を返したルークがリリーを抱え影の野外訓練場にある湖のそばでしゃがみこんだ。リリーのズボンを脱がし湖から手で水を掬うと汚れてしまったリリーの下半身を濡らしていく。

「後で風呂に入れてやる。それまでこれで我慢するんだ・・・泣きやめ。貴様が泣くとどうしていいかわからなくなる」

それでもグスグス泣き続けるリリー。
ルークは困った。泣いている女の扱い方が分からない。取り敢えず涙を手で拭き取ってみた。リリーは泣き止もうと頑張っているが泣きひきつりをしている。おしっこを洩らしてしまった事が相当恥ずかしかったようだ。

よしよしと頭を撫でて落ち着かせる。

「リリー止めなくてごめん!死ぬなよ!?大丈夫なのか?」

本気でイき死ぬと思ったメルが駆け付けせっせとリリーの下半身を水で濡らして清めるのを手伝った。だがリリーはメルが来た事で余計に泣いてしまう。

「メルにも見られちゃった」

「大丈夫だ!可愛かった。ほら、泣き止んでよ」

ギュッとルークの服を掴み顔を埋めたリリーの背中を撫で続けるメル。次第に泣きひきつりが治まり静かになった。

「・・・寝たのか?」
「寝たね」

何回も達してしまい泣きすぎたリリーは疲れにより眠ってしまった。リリーを抱え仲間の元へ戻ったルークとメル。そこにはレンとロビンの姿はなかった。シルヴィは立ったまま自慰をし続けていた手を止め深呼吸をして自分を落ち着かせている。

「泣きすぎて寝るとか可愛いんだけど。ああ!リリーさんが愛おしすぎてヤバイ!・・・ロビンとレンは仕事で行っちゃったよ。僕とメルも仕事だからもう行かなくちゃ。リリーさんはこの後仕事無いから後のことは任せたよ!」

「リリーのこと見捨てるなよ!」

シュンッと姿を消したシルヴィとメル。
残された騎士達はルークに抱えられているリリーを見つめた。


***

 リリー宅に着いた騎士達は誰がリリーを風呂に入れるか話し合いをしていた。

「慣れてるから僕が入れるよ」

「でもリリー寝てるじゃん。一人が支えて一人が洗わないとじゃない?」

「責任持って僕が洗います」

「「「ノエルはダメ」」」

「汚した服を洗うんだ」

「・・・はい」

肩を落としたノエルは汚れてしまったリリーのズボンを洗面所で洗い始めた。

「貴様らには邪心がある。私なら業務的に体を洗える」

「ひどっ!寝てる女の子に変な事しないよ」

「風呂に入れると約束した。エレン行くぞ」

さっさとリリーの服を脱がそうと手を動かすルーク。だがリリーの裸体を目の当たりにし固まってしまう。

女の裸は見慣れている。それにリリーは胸も小さい。それなのにどうしてこうも冷静でいられなくなるのか。

見かねたエレンが裸のリリーを抱えシャワー室へ向かうのを見て慌てて追いかけたルーク。彼らは服を着たまま袖や裾を捲り、リリーの体を洗った。

シャワー室を出た三人。バスタオルを広げ待ち構えていたウィルフレッドがリリーを受け取り部屋へと運んだ。

支度を終えベッドに寝かせると、疲れたのかルークはリリーの隣で横になった。彼の意外な行動に驚く騎士達。

ルークはこの中で断トツにリリーを避けていた。避けていたと言うよりは距離を保っていた。元々女性が苦手なルーク。エレンや他の仲間達とは違い、群がる女性達を睨みつけ威嚇するタイプだ。そんな彼が女性であるリリーの体を洗ってやり、隣りに自ら寝るなんていったいどうしたことか。

「疲れたから寝る。帰っていいぞ」

ファサッと束ねていた髪を解きベッドに広げたルーク。

彼が横に寝た振動に反応したリリーが目を覚まし上半身を起こした。キョロキョロと自宅に居る事を把握し彼らと目を合わせ何故か隣で眠っているルークを見て首を傾げたリリー。

すると勢い良くノエルが土下座をした。

「リリーごめんなさい!あんな事してごめんなさい!」

勢い良く顔を上げたノエルの瞳に涙が溜まっている事に気が付いたリリーは瞠目し内心で焦った。彼はどうして今にも泣きそうな顔をしているのだろうか。

「僕のこと嫌いになりましたよね・・・何でも言う事聞くからお願いです。嫌いにならないで」

・・・ノエルの頭に犬の耳が見える。
子犬が叱られうるうるとした瞳で見上げてくる視線を受けたリリーはその可愛さに釘付けになっていた。まだ幼さの残る美男子がうるうるしている。

だがふと疑問に思った。キスだけでよかった筈なのに何で指を入れてきたのだろうと。もしかしたらイかせないと掘られると脅されていたのかもしれない。

「なんであそこまでしたの?」

「・・・ずっとリリーとキスがしたかったんです。やっと出来て嬉しくて・・・」

リリーはノエルの言葉に更に混乱してしまった。キスが嬉しくて指を入れた?どういう事だ?

ずーんと沈んでしまったノエル。酷く落ち込んでいる彼を見たリリーはため息を吐くと自分のそばに来るように呼んだ。ゆっくりと近付いたノエルはベッドに上がりリリーの隣へちょこんと座った。リリーがノエルへ手の平を差し出すと彼は犬が主人にお手をする時の様にそっと手を置いた。

「キスは肌と一緒。この手みたいに肌と肌が触れ合っているだけ。大したことじゃないよ。でも・・・あそこまでしないと掘るって脅されてたの?」

「・・・違います。昨日無理やり娼館に連れてかれて女性に触れました。でも僕は最後の相手はリリーがよかった。リリーが辞めてから一度も行ってないのに・・・だからあんな上書きみたいな事しちゃって・・・嫌いにならないで」

きゅっと手を握り上目遣いで見つめられてしまったリリーは深く息を吐きノエルの頭に手を置いた。

脅されていないのならそれで良かった。

影で長く働くリリーにとってキスや性行為に対し抵抗心がない。練習相手を任される事など度々あった。リリーだけではなく他の影同士よくやっている事でもあるし飲み会では誰かしらに口移しで酒を飲まされる事もある。だから今日ノエルにされた事に対し嫌悪感など抱くわけがなかった。それなのに目の前の美青年は酷く怯えている。

そもそも今のノエルの言葉って・・・

「私のこと好きなの?」

ノエルはぎゅっと握っている手に力を込めリリーを真っ直ぐ見つめた。

「そりゃそうですよ!ここにいる全員がそう思ってます。皆リリーが辞めてから娼館行ってないんですから」

「それって・・・また舐めて欲しいってこと?」

ズコッと寄っかかっていた足の力を無くしたリヒャルトが体を傾けた。

(なんでそうなるの)

「ちがっ!違わないけど違います!」

何が言いたいのか分からないけど何やら必死なノエル。見ていて面白くなったリリーは小さく笑い、ノエルが一番欲しがっている言葉を送った。

「大丈夫。嫌いになってないよ。ノエル、変なの」


しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...