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第二章
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しおりを挟むふんっと顎を返したルークがリリーを抱え影の野外訓練場にある湖のそばでしゃがみこんだ。リリーのズボンを脱がし湖から手で水を掬うと汚れてしまったリリーの下半身を濡らしていく。
「後で風呂に入れてやる。それまでこれで我慢するんだ・・・泣きやめ。貴様が泣くとどうしていいかわからなくなる」
それでもグスグス泣き続けるリリー。
ルークは困った。泣いている女の扱い方が分からない。取り敢えず涙を手で拭き取ってみた。リリーは泣き止もうと頑張っているが泣きひきつりをしている。おしっこを洩らしてしまった事が相当恥ずかしかったようだ。
よしよしと頭を撫でて落ち着かせる。
「リリー止めなくてごめん!死ぬなよ!?大丈夫なのか?」
本気でイき死ぬと思ったメルが駆け付けせっせとリリーの下半身を水で濡らして清めるのを手伝った。だがリリーはメルが来た事で余計に泣いてしまう。
「メルにも見られちゃった」
「大丈夫だ!可愛かった。ほら、泣き止んでよ」
ギュッとルークの服を掴み顔を埋めたリリーの背中を撫で続けるメル。次第に泣きひきつりが治まり静かになった。
「・・・寝たのか?」
「寝たね」
何回も達してしまい泣きすぎたリリーは疲れにより眠ってしまった。リリーを抱え仲間の元へ戻ったルークとメル。そこにはレンとロビンの姿はなかった。シルヴィは立ったまま自慰をし続けていた手を止め深呼吸をして自分を落ち着かせている。
「泣きすぎて寝るとか可愛いんだけど。ああ!リリーさんが愛おしすぎてヤバイ!・・・ロビンとレンは仕事で行っちゃったよ。僕とメルも仕事だからもう行かなくちゃ。リリーさんはこの後仕事無いから後のことは任せたよ!」
「リリーのこと見捨てるなよ!」
シュンッと姿を消したシルヴィとメル。
残された騎士達はルークに抱えられているリリーを見つめた。
***
リリー宅に着いた騎士達は誰がリリーを風呂に入れるか話し合いをしていた。
「慣れてるから僕が入れるよ」
「でもリリー寝てるじゃん。一人が支えて一人が洗わないとじゃない?」
「責任持って僕が洗います」
「「「ノエルはダメ」」」
「汚した服を洗うんだ」
「・・・はい」
肩を落としたノエルは汚れてしまったリリーのズボンを洗面所で洗い始めた。
「貴様らには邪心がある。私なら業務的に体を洗える」
「ひどっ!寝てる女の子に変な事しないよ」
「風呂に入れると約束した。エレン行くぞ」
さっさとリリーの服を脱がそうと手を動かすルーク。だがリリーの裸体を目の当たりにし固まってしまう。
女の裸は見慣れている。それにリリーは胸も小さい。それなのにどうしてこうも冷静でいられなくなるのか。
見かねたエレンが裸のリリーを抱えシャワー室へ向かうのを見て慌てて追いかけたルーク。彼らは服を着たまま袖や裾を捲り、リリーの体を洗った。
シャワー室を出た三人。バスタオルを広げ待ち構えていたウィルフレッドがリリーを受け取り部屋へと運んだ。
支度を終えベッドに寝かせると、疲れたのかルークはリリーの隣で横になった。彼の意外な行動に驚く騎士達。
ルークはこの中で断トツにリリーを避けていた。避けていたと言うよりは距離を保っていた。元々女性が苦手なルーク。エレンや他の仲間達とは違い、群がる女性達を睨みつけ威嚇するタイプだ。そんな彼が女性であるリリーの体を洗ってやり、隣りに自ら寝るなんていったいどうしたことか。
「疲れたから寝る。帰っていいぞ」
ファサッと束ねていた髪を解きベッドに広げたルーク。
彼が横に寝た振動に反応したリリーが目を覚まし上半身を起こした。キョロキョロと自宅に居る事を把握し彼らと目を合わせ何故か隣で眠っているルークを見て首を傾げたリリー。
すると勢い良くノエルが土下座をした。
「リリーごめんなさい!あんな事してごめんなさい!」
勢い良く顔を上げたノエルの瞳に涙が溜まっている事に気が付いたリリーは瞠目し内心で焦った。彼はどうして今にも泣きそうな顔をしているのだろうか。
「僕のこと嫌いになりましたよね・・・何でも言う事聞くからお願いです。嫌いにならないで」
・・・ノエルの頭に犬の耳が見える。
子犬が叱られうるうるとした瞳で見上げてくる視線を受けたリリーはその可愛さに釘付けになっていた。まだ幼さの残る美男子がうるうるしている。
だがふと疑問に思った。キスだけでよかった筈なのに何で指を入れてきたのだろうと。もしかしたらイかせないと掘られると脅されていたのかもしれない。
「なんであそこまでしたの?」
「・・・ずっとリリーとキスがしたかったんです。やっと出来て嬉しくて・・・」
リリーはノエルの言葉に更に混乱してしまった。キスが嬉しくて指を入れた?どういう事だ?
ずーんと沈んでしまったノエル。酷く落ち込んでいる彼を見たリリーはため息を吐くと自分のそばに来るように呼んだ。ゆっくりと近付いたノエルはベッドに上がりリリーの隣へちょこんと座った。リリーがノエルへ手の平を差し出すと彼は犬が主人にお手をする時の様にそっと手を置いた。
「キスは肌と一緒。この手みたいに肌と肌が触れ合っているだけ。大したことじゃないよ。でも・・・あそこまでしないと掘るって脅されてたの?」
「・・・違います。昨日無理やり娼館に連れてかれて女性に触れました。でも僕は最後の相手はリリーがよかった。リリーが辞めてから一度も行ってないのに・・・だからあんな上書きみたいな事しちゃって・・・嫌いにならないで」
きゅっと手を握り上目遣いで見つめられてしまったリリーは深く息を吐きノエルの頭に手を置いた。
脅されていないのならそれで良かった。
影で長く働くリリーにとってキスや性行為に対し抵抗心がない。練習相手を任される事など度々あった。リリーだけではなく他の影同士よくやっている事でもあるし飲み会では誰かしらに口移しで酒を飲まされる事もある。だから今日ノエルにされた事に対し嫌悪感など抱くわけがなかった。それなのに目の前の美青年は酷く怯えている。
そもそも今のノエルの言葉って・・・
「私のこと好きなの?」
ノエルはぎゅっと握っている手に力を込めリリーを真っ直ぐ見つめた。
「そりゃそうですよ!ここにいる全員がそう思ってます。皆リリーが辞めてから娼館行ってないんですから」
「それって・・・また舐めて欲しいってこと?」
ズコッと寄っかかっていた足の力を無くしたリヒャルトが体を傾けた。
(なんでそうなるの)
「ちがっ!違わないけど違います!」
何が言いたいのか分からないけど何やら必死なノエル。見ていて面白くなったリリーは小さく笑い、ノエルが一番欲しがっている言葉を送った。
「大丈夫。嫌いになってないよ。ノエル、変なの」
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