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第二章
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しおりを挟む騎士団団長ジョンに命じられた騎士達五人は休日出勤を課せれた。その内容とはリリーの休日に付き合うこと。彼女の休日はいい刺激になると言われた。
・汚れてもいいラフな格好をすること。
・リリーに従うこと。
上記二点を守れば出勤手当を貰えるらしい。
騎士達はまだ人集りの少ない早朝に、リリーに指定された場所で彼女が来るのを待っていた。皆それぞれラフな格好をしているのだが顔が整っているせいかどう見ても気品があるように見えてしまう。
一段とオーラが違うその集団を行き交う周囲の人々はチラチラと覗き見していた。その中にリリーも含まれていた。彼女は少し離れた場所からイケメンオーラを放つ集団を見ていたのだ。
・・・目立つな。
スタスタと彼らに近づいたリリー。
リリーを見つけると、今度は彼らが固まって彼女を見続けてしまう。
「「「・・・・・・」」」
今日のリリーの私服はどんなだろうか少し期待をしていた騎士達。だが現れた彼女の服装はとてもボロボロだった。土汚れが残ってしまっている生地にゆったりとしたズボン。普段の服装よりもだいぶみすぼらしい。
彼女は服を買う余裕がないのだろうか・・・。
「リリーお金ないの?」
可哀想なものを見る目で視線を送るリヒャルトに対しムッとしたリリー。
「作業着だからいいの」
作業着?
騎士達全員が首を傾げた。
今日はリリーの休日じゃないのか?
それからリリーの後に続き歩き出す。
暫く歩くと街から少し離れた郊外に広がる畑が見えた。
一軒の家の扉をノックしたリリー。
徐に扉が開き中から現れたのは赤道色の髪で梔子色の瞳を持った眉目秀麗な顔立ちをしたイケメンだ。
彼はリリーを見るなりわかり易く顔をほころばせたが、彼女の背後にいるイケメン騎士達を見ると、瞠目し慌ててリリーの肩を掴み彼女と共に彼らに背面を向けた。
その行為にムッとする騎士達。
男とリリーとの距離が近過ぎる。
「おいリリー誰だよこのキラキラ王子様達は!」
男が小声で話すものだからリリーも吊られて小声になる。
「職場関係の人。今日は手伝いに来てくれたの」
「職場関係か・・・わかった」
赤道色の男はリリーの肩を抱いたまま改めて騎士達に向き合った。
「どうもリリーがいつもお世話になってます。農家のアランです」
礼儀正しく挨拶した農家のアランはリリーの後頭部を押さえ一緒に頭を下げた。まるで家族を紹介するようなその態度にピクッと反応する騎士達。エレンが笑顔で挨拶をした。
「こちらこそリリーがお世話になっています」
お前のじゃないぞという言葉を笑顔に含んだエレン。それに反応したアランはリリーの耳元に顔を近づけた。
「なあ、本当にただの職場関係の人なのか?あの人笑顔怖いぞ」
エレンの笑顔?特に怖くないぞ?
リリーはアランの言葉に頷くと騎士達を見た。
「これから畑仕事手伝うの。みんな頑張ろう」
「「「・・・はい?」」」
ザクッ ザクッ
畑を耕す騎士達。
リリーは慣れているのか、ほーいザクッ、ほーいザクッとリズミカルにどんどん畑を耕している。
どうして休日に畑仕事を?
疑問を抱いた騎士達だったが慣れない動きに腰に痛みを感じ始めた。
「イケメンお兄ちゃん達ちょっと休憩するかー?」
気さくに彼らに話しかけたのは中年のイケおじであるアランの父親。アランは父親似だと人目でわかる程彼らはよく似ている。
「リリーちゃんの周りにこんな良い男がいたんじゃうちの倅も焦るだろうなあ!」
チラッと騎士達はアランを見た。
彼は畑で採れたトマトをリリーに食べさせていた。美味しかったのかキラキラした瞳でアランを見上げるリリー。アランはそんな彼女の口周りについたトマト汁をタオルで拭っている。仲の良い二人を見た騎士達はムッとした。
( おもしろくない )
「おーい!二人ともそろそろ終わりだぞー!」
アランの父親が大きな声を出して二人を呼んだ。
騎士達五人は家の裏で休憩をしている。
痛めてしまった腰を摩ったり背筋を伸ばしたりと自由にしていたのだが人の気配を感じ身を潜めた。
アランとリリーの声が聞こえたのだ。
「お前のことが好きだ」
突然の告白に反応した騎士達。
自分達の気配を消し黙って聞き耳を立てる。
「・・・異性の好きが私には分からない」
リリーならそう言うと思っていた騎士達はうんうんと頷いた。
「八年も一緒にいりゃお前がそういう感情に鈍い事は分かってたよ。だからまずデートからってのはどうだ?それを重ねて好きにさせてみせる。俺は、お前が俺の隣で笑ってくれたらそれでいい」
八年・・・結構長い。
でもリリーならよく分からないの一言で断るだろう。
「いいの?」
!? !?
まさかのリリーの発言にギョッとした騎士達。
「デートしてみたかった。デートって何するの?」
「君のお父様が呼んでたよ」
間に入ったのはエレンだ。
「あ、ああ。すんません。リリーまた後でな」
いなくなってしまったアラン。
ぞろぞろと騎士達がリリーに集まった。
「告白された」
アランに告白されたのが嬉しいのかリリーは瞳を輝かせている。
「隣で笑うだけでいいって。変なの」
微笑む彼女に異常な程の怒りが込み上げた。
ダンッと彼女の顔の背後にある壁を叩いたウィルフレッド。眉間に皺を寄せリリーを睨んだ。だがその後ウィルフレッドは何も言わない。他の騎士達を見ると彼らも険しい表情をしている。でもウィルフレッド同様に何も喋らない。
アランと付き合わないでほしい。
仲良くならないでほしい。
でも、そんな事を言える間柄じゃない。
「畑仕事嫌だった?」
「「「・・・・・・はぁ~。」」」
首を傾げながら言ったリリー。
全くもって見当違いだ。もはや呆れてしまうと盛大なため息を吐いた騎士達だった。
「リリーはデートしてみたいの?」
リヒャルトの問いに頷いた。
「だったら次の休み俺としようよ。お互い平民だから普通のデート出来るし」
「いいの?」
ウィルフレッドの腕から顔を出したリリー。
その瞳は期待に満ちていた。
そんな彼女を見た騎士達は先程まであった負の感情を失くした。そして思う。どうしてアランだとあんなにイライラしたのにリヒャルトだとイライラしないのだろうと。
「約束ね」
「うん!」
リヒャルトの約束に笑顔で同意したリリーを見て騎士達は微笑んだ。
その後彼らはアランとリリーを二人きりにさせないようピッタリとリリーに密着し何とかデートの約束を防いだ。
頂いた野菜をかじりながら街へ戻る騎士達。
時刻はまだ午前中だ。
「どうしてリリーは休日に畑仕事をしてるんですか?」
ノエルの質問にリリーは真っ直ぐ前を見て答えた。
「将来の知識になる」
(((将来の知識?農家にでもなるつもりか・・・?)))
リリーの休日はまだまだ続く。
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