【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

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第三章

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ー 王都 街中 噴水広場 十時四十五分頃 ー

 「えーと、これはどういう事かな?」

 休日の今日リリーとデートの約束をしていたユリウスは少し早く待ち合わせ場所に到着し彼女を待っていた。そんな彼の隣にはいつもの五人が居た。

「ユリウス様偶然ですね」

笑顔でノエルが挨拶をする。
本当に偶然なのかな?
ユリウスはそんな彼らに笑顔で挨拶を返した。

「仲直り出来たんだね。よかったよ」

「・・・俺らの仲が戻って面白くないんじゃないですか」

「まさか!仲良い方がいいよ。彼女の幸せは僕の幸せだから」

・・・聖者か?
警戒心も不信感もなくニコッと笑顔を向けたユリウスに驚くリヒャルト。自分だったら元サヤに戻られたような気持ちで不安になりそうなのにどうしてこの人は余裕そうなんだろうと不思議に思った。

「リリーは僕達のこと何か話してました?」

「うん。落ち込んでたよ。でも君達の言葉を素直に受け入れて改善しようと頑張ってる姿が健気で可愛いんだ。本で勉強してるんだけどね、もうすぐ僕の本棚の一列が埋まりそうだよ」

“僕の本棚の一列”

ユリウスの言葉に引っかかったエレンは固唾を飲んで彼を見つめた。

「もしかしてリリーはずっとユリウス様の所にいたんですか?」

恥ずかしくなったのかユリウスは照れ笑いしながら頬を指先でかく仕草をした。

「自分の家だと誰か来ちゃうから泊めて欲しいって言われて。最初は緊張して一睡も出来なかったんだけどね。彼女平気で服脱ぐし驚いちゃって、一から説明して説得するの大変だったよ。やっと慣れてきたのに仲直り出来たみたいで毎日来てくれなくなって今は少し・・・いや。結構寂しいかな」

「・・・彼女と最後までしたんですか?」

「まっまさか!まだ付き合って間もないのに手なんか出せないよ!」

ぶんぶんと両手の平を見せて左右に振るユリウスの顔は真っ赤だ。その後彼はひそひそ話をするように手の平を立てて小声で話した。

「実は僕・・・まだ経験がないんだ。何度かそういうタイミングはあったんだけどどうしても初恋の人が忘れられなくて・・・誰にも言わないでね!」

信じられないと驚愕する五人。ユリウスといったらこの五人に負けず劣らず女性から絶大な人気があるのに未経験だなんで嘘だと思ったが、今までの彼の女性慣れしていない対応に妙に納得してしまう。

あまりよく観察していたわけではなかったが街中の巡視や騎士パレードで女性から群がられている際に逃げ回っていたなと思い出した。

「それじゃあ今までどうやって生きてきたんですか」

男なら精の管理をしなければならぬ時もある。溜め込みすぎは体によくない。しかも上司があのジョンだ。ジョンはポケットマネーを出し部下にそういう所へ行かせる癖がある。

「もちろん僕も男だからそういう所に行った事はあるよ。痛がられないよに手技も学んだし口でしてもらった事もあるけどどうしても最後まではしたくなくて」

「「「・・・・・・。」」」

五人は混乱した。彼はリリーの事をどの位知っているのだろう。もし彼女が娼館で働いていた事を知ったら幻滅するだろうか。影達が彼女の体を練習台にしているのを知ったらショックで立ち直れないんじゃないか。本番はしていないとしても自分達がリリーと触れ合っているのを知ったら死んでしまうのではないか。

どこまでリリーの事を知っているのか気になり質問をしようとしたところで一人の女性がユリウスに話しかけて来た。

「あの、この後お時間はごさいますか?」

うるうるキラキラとした瞳で見つめられたユリウスは「え?」となりピシッと体を固まらせた。その一人の女性を皮切りに数多の女性がユリウスと五人に群がった。

「よければ私とお出かけしませんか?」「おすすめの菓子屋がありますの」「恋人はいらっしゃいますか?」

キャーキャーと群がる女性達にたじろぐ男達。五人はユリウスに視線を向けた。すると彼は女性相手にどうしていいのか分からず顔を強ばらせ怯えた子犬のようにプルプルと震えているではないか。女性を大切にしなくてはならない騎士道精神から無下にする事が出来ずに怯えるユリウスを見た五人は助けなくてはならないと正義感にかられた。

だが彼はピタッと動きを止めると下を向いたままスタスタと一直線に歩き出した。幾つかの女性の掛け声を無視してひたすらに歩く彼の前にはリリーの姿。

ユリウスはリリーを見つけると直ぐに近付き彼女を抱き締めた。急に抱きつかれたリリーは俯いたままのユリウスに首を傾げた。

「どうしたの?」
「・・・女性達に囲まれて逃げてきました」

チラッと彼の背後を見ると複数の女性達が怖い顔をしながら睨んでいる。確かにあれは怖いな。リリーは慰めるようにユリウスの頭を撫でた。頭を撫でられたユリウスは抱きしめていた腕に力を込め、嬉しいのか見えない尻尾が揺れている。そんな二人の姿を見た五人は女性達を掻き分け急いで駆け付けて来た。

あれ?なんでいるの?
首を傾げたリリーに笑顔を向けた五人。
そっとユリウスがリリーの頬に触れ自身に向かせた。ゆっくりと顔を近付け唇にキスをすると愛おしそうに優しく微笑んだ。

「リリー今日も綺麗だね」

キャーッと周囲の街人が黄色い悲鳴を上げた。

「ありがとう。ユリウスもかっこいい」

愛おしそうにリリーを見つめるユリウス。
エレンがムッと嫉妬しユリウスからリリーを奪うと見せつけるようにキスをした。ギャーッと悲鳴が上がる中、チラッと横目でユリウスを見ると怒っていると思ったのに笑顔のままの彼を見て戸惑う。

あれ?

拍子抜けになってしまったエレン。だがエレンもまたリリーが好きなので彼女をぎゅっと抱き締めた。次いでウィルフレッド、リヒャルト、ルーク、ノエルと順番にキスをした。

これはいったい何なんだと疑問を抱いたリリーだったが最後のノエルとキスをした後自然な流れで見知らぬオジサンが唇を尖らせ顔を近付けて来たので非常に驚いた。

「誰だよおっさん!」

リヒャルトがリリーの肩を抱き寄せオジサンの頬を平手打ちする。平手打ちされたオジサンは頬に手を添え撫でながら涙目で訴えてきた。

「並べばお嬢さんとキス出来るんじゃないのかね!」

並ぶとは?
視線を泳がせると街人の男達が一列に並んでいた。どうやら彼らは順番を待てばリリーとキスが出来るらしいと思ったらしい。

そんな事させるわけないと青筋を立てた六人は鋭い視線を男達にぶつけ列を散らばらせた。

「それじゃあリリー行こうか」

笑顔のユリウスがギュッとリリーに恋人繋ぎをした。微笑みながら握り返したリリーだったが反対の手をウィルフレッドに恋人繋ぎをされ戸惑う。

「ウィル、今日はユリウスとデートだよ?」

「俺も一緒に行く。ダメか?」

「ユリウスがいいなら」

「僕は構わないよ。今後の為にも皆で仲良くなるのはいい事だと思う」

? ?

困惑したリリーだったがユリウスが良いならいっかと頷いた。そんなユリウスの肩をちょんちょんと指でつついたリヒャルト。

「ユリウス様俺もリリーと手繋ぎたいんだけど」

「え?しょうがないな。交代ね」

後で代わるから今は我慢してねと言われたリヒャルトはちぇーと唇を尖らして諦めた。今度はエレンがウィルフレッドの肩をつついた。

「ねぇウィルフーー」
「ダメだ」
「・・・まだ何も言ってないのに」

しくしくと涙を流したエレンであった。


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