57 / 67
54
しおりを挟む頭をぶつけたり何か衝撃があって思い出したのではない。目が覚めたら思い出していたのだ。異世界転生した事、あのログハウス、タロウとジロウや動物達、ロイド、ルイス、ウォルトの事。今までの事全部を思い出した。そして、ここに眠っている彼等と夫婦でいない事も。
無性にロイド達に会いたくなった。王城のパーティーで攫われて以来会っていない。あれからどれ程経ったのか、二三ヶ月は間違いなく経っているだろう。ラウルは彼等に連絡をしてくれているのだろうか。
とりあえず三人を起こそうとラウルの肩に手を伸ばしたが、止めた。こんな時間に起こすのは申し訳ないと思ったからだ。それに、自分の気持ちを整理させたい。
夫婦だと嘘をつけられていた事については、正直何とも思っていない。むしろ公爵家で過ごせていた日々はとても充実していた。毎日三人から愛してもらっていたし、爺やや使用人達ともとても仲良く過ごしていたからだ。それに、三人のことを心から好きになってしまったのだ。
だがロイド達を思い出した今、無性に彼等に会いたい。元気にしているのだろうか、ちゃんとご飯を食べているのだろうか、会いたいと思ってくれているだろうか。忘れられていないか心配になる。仕事の件も心配だ。クビになってはいないだろうか。
色々と考えながら眠っている三人を見る。右隣にラウル、左隣にクルト、コハルの脚に顔を乗せ、その脚を抱えながら眠っているアルト。三人の寝顔は正に天使そのものだ。・・・この三人に、なんて話そう。クルトが時折見せていた辛そうな表情はきっと夫婦だと嘘をついている事からだと今なら思える。思い出したと言ったらきっと双子は自分達を責めるだろう。もしかしたら泣いてしまうかもしれない。
そもそも何故ラウルは夫婦だと嘘をついたのだろう。遊びだったのだろうか。でも昨晩彼から聞いた愛の言葉は嘘だと思えない。嘘ではないと信じたい。
こうなったら悲観的な雰囲気は出さずに明るく思い出したと告白をしようと決意した。
朝日が登り太陽の光が部屋の中を照らす。そろそろ起きるだろうか。三人の寝顔を見ながらこれから告白する事にドキドキしてうるさい心臓に手を当てた。
「ふぁー。おはよー」
「コハル早起きだね。おはよう」
双子が目を覚ました。二人とも目を擦っていてまだ眠そうだ。ラウルも起きたのだろう、んーと言いながら体を伸ばしている。コハルは気合いを入れ咳払いをした。三人の視線を感じ緊張する中、コハルは人差し指を立て頬にそれを当て顔を傾けて笑顔で言った。
「思い出しちゃった」
効果音にてへっと付くかのようなポーズをとってはみたが彼等は無言のまま血の気が引いたかの様に顔色が悪くなるのを見て焦る。
そんなに気持ち悪かったでしょうか。
心の中で泣いていたらアルトが手を握ってきた。
「お、思い出したって何を?」
彼の震える声を聞き、落ち着かせる為にその手を優しく握り返し全て思い出したことをゆっくりと伝えた。話が終わり彼等を見ると双子の瞳に涙が溜まっていた。慌てて手で涙を拭い、泣かないでと伝える。
「ごめんっ嘘ついてごめん」
「ごめんコハル捨てないで」
しくしくと涙を流しながら反省している双子の背中を撫で落ち着かせる。アルトは何度も捨てないでと言うが、そもそも彼等は所有物ではないのだから捨てると言う言葉が引っかかった。
「私怒ってないよ?捨てるとかそういうのないから。お願い、泣かないで」
二人が泣くと悲しくなる。
「ここを、出ていくのか」
ラウルの言葉に双子の動きが止まった。瞳を潤ませながら見上げてくるイケメンに言いづらくなる。
「・・・騎士団寮に戻りたいです」
目を合わすことは出来なかったが頑張って言えた。するとラウルに手首を捕まれ引き寄せられ抱きしめられる。
「二度とここに戻らないのか」
戻らないのなら、俺から離れていくのなら一生閉じ込めてやる。
ラウルの思惑を知らないコハルはきょとんとし首を傾げた。
「また来ますよ?当たり前じゃないですか」
せっかく好きになったのに何を言っているのだ。あんなに愛し合ったのに今すぐ別れるという事なのだろうかと困惑するコハル。
嘘をついていたのに本当になんとも思っていなさそうなコハルの態度に三人は拍子抜けになった。てっきり嫌われるかと思っていたからだ。
コハルは衝撃の事実を知った。なんと、公爵家にお世話になっている事を騎士達に伝えていないとラウルは言ったのだ。これは、まずい。無断欠勤だ。
無断欠勤の言葉が頭の中でループされる。せっかくロイド達が手配してくれたのに。まずはロイド達に謝らなくてはいけない。あんなに良くしてくれたのにいきなり居なくなるなんて恩知らずにも程がある。・・・ごちゃごちゃと言っているが要は、会いたい。ロイド、ルイス、ウォルトに会いたいのだ。
「連れて行かないと言ったらどうなる?」
ラウルの言葉に心臓が跳ねた。コハルは騎士団寮への道を知らない。一人で出て行ったところで迷子になるだろう。また人攫いにあっても困る。
「き、嫌いになります」
本当はそんな事全然思えないがこの言葉しか出なかった。
「・・・それは困る。仕事を片付けたら連れて行くから準備しておけ」
ラウルはコハルの頭を撫でた後寝室から出て行った。
***
「どうかもう一度お考え直し下さい」
およおよと目に涙を浮かべ、涙を拭きながら爺やがコハルを説得している。その後ろには数人の使用人達が同様に涙を拭く仕草をして行かないでと訴えられている。
現在玄関ホールにてラウル達が来るのを待っている。コハルは街娘が着ている様な簡易なワンピースを着用している。公爵家のドレスで戻るのは違和感があるのでクルトに頼んでおいたのだ。
階段を降りる三人の姿を見つけ固まってしまった。ラウルはこれぞ、公爵様という様に着飾っていてとてもかっこいい。双子はいつもの執事服なのだが髪をセットしていてかっこいい。いつもと違う三人の雰囲気に見惚れてしまった。
「坊っちゃま分かっていますよね?」
瞳をギラギラとさせ目でラウルに訴える爺や。ラウルは理解したのか分かっていると言い舌打ちをした。
「・・・その格好でいいのか?」
公爵家の女なのだからもっと着飾れよとラウルに言われ、遠回しに俺の女と言われた気持ちになり恥ずかしくなる。これで良いと伝えると彼は納得していない様子だが馬車に乗るまでエスコートをしてくれた。
公爵家の人達に挨拶をし、四人で馬車に乗り騎士団寮へ向かう。やっと騎士三人に会えると思うと自然と笑顔が続くコハルであった。
60
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる