7 / 80
第007話(疲労暗転?!)
しおりを挟む
「もう疲れた……」
世の中では働き方改革とか言って、仕事とプライベートの両立って言われているが、零細企業のシステム開発会社なんかにおいては、残業、休日出勤なんて当たり前の生活だ。
36協定とか言われたところで、納期に製品が間に合わなければ請求できないし、入金されなければ給料も支払ってもらえなくなる。
叔父が従業員が少なくて困っていると聞いて、安易にその会社に就職を決めたのが運の尽き。大きな間違うの始まりだった。身内の会社だから、お願いされると断りづらいし、辞めるというのも、二の足を踏んでしまう。
疲労が限界だったが、かろうじてスーツを脱いで、疲れた体をベッドに投げ出す。72時間ぶりの布団はとても気持ちが良く、すぐに睡魔が襲ってくる。
「そういえば、ここの所、飯を食べた記憶が……」
そう呟きながら、俺の意識は心地よい闇の中に引き釣りこまれていった。
………………
「ん?」
心地よい眠りに身を任せていると、微睡みの中にいる俺の耳に綺麗で透き通った女性の声が入ってくる。
「4962435612493番さんですね?」
「4兆9624億……何だって?」
夢か現実かよくわからないが、ウトウトしながら返事を返す。
「4962435612493番さん。あなたは次の生に何を望みますか?」
「次の生って言われてもなぁ。まぁ夢だろうから深く考えてもしょうが無いよな」
なんか良くわからない状況で、頭の中もボゥっとしている俺に、変な質問が飛んでくる。
「えっと、煩わしい人付き合いがない所で一からやり直したいかな。あとは、これ!と言った特出すべき才能がある人生なら、きっと楽しいだろうなぁ」
今まで周りに気を使って歩んできた人生と、簡単に選んでしまった進路。そして今の過酷な労働条件から逃げたくて、そんなことを答えてみる。夢なのに何を本気になっているんだろうとか思いながら。
「かしこまりました。では4962435612493番さんの転生処理を実行致します。あなたに良き次生があらんことを」
綺麗で透き通った女性の声がそう告げると、俺の意識は再び心地よい闇の中に落ちていった。
………………
プシューッ!
全てを金属の壁で覆われたその部屋は、日の光などは入らない真っ暗でだだっ広い部屋だった。部屋の大きさは、長辺が100m近くある楕円形の部屋で、下から上に向かって段々に広がっていて、まるで競技場のような作りになっている。
その段差の所には幾つもの卵型の装置が並んでいる。蓋が開いているもの、閉まっているもの、蓋が割れているもの。状態は様々だが、とにかく何百個という単位で卵型の装置がびっしりと敷き詰められている。
その内の一つの卵型のカプセルの蓋が開き、蓋と本体の間から激しい蒸気を吹き出して、蓋がゆっくりと開いていく。それに合わせて、部屋の天井や各所に設置されている照明が少しずつ明かりを灯していく。
「朝……か?」
瞼の奥から感じる光に、俺の意識は覚醒していく。少し眩しすぎるなと、手で瞼を覆い隠しながら少しずつ目を開こうとして違和感に気付く。
「ん?なんか手が短くて柔らかいんだが?」
俺の開いた目に飛び込んできたのは、プニプニでフニフニな手だった。
「なんだこれ?」
少しずつ光に目が慣れていく。その目に映る光景は、無機質な巨大な施設で、とてもじゃないか、眠りについた俺の部屋ではない。しかも、俺の手足や、身体が妙に小さく感じる。
身体を確認するとガラスのような蓋が開ききったので、俺は寝ていたベッドのようなものの縁に手をかけると、身体を起こそうとする。
「とっとっと……」
何か身体に力が入らず、中々起き上がることが出来ない。四苦八苦しながら、何とか体を起こして周りを見渡すと、飛び込んでくるのは無機質なだだっ広い部屋で、俺が寝ていたベッドのような装置が大量に設置されているのがわかる。
「何だここ?」
ベッドのような装置の上で立ち上がり、一帯を見渡す。立ち上がったと言うのに視点が低い。身長は1mも無いんじゃないだろうか?ガラスの蓋に自分の顔を移してみると、やはり寝る前の自分の顔とは程遠い、見たこともない幼稚園児くらいの銀髪蒼眼で、透き通るように白い肌の男の子の顔が映っていた。
ペタペタ顔と体を触ってみるが、その触れようと動かした手足、触ってみた感覚、どう考えても自分自身以外にありえない。
「コレはアレか。はぁ……」
俺は何故かあまり混乱せずに、その答えに結びつき大きく溜息をつく。
「仕事が忙しくて過酷で逃げたくて、出来たら良いな、なんて思っていたけど、本当になってみると不安しか無いな……異世界転生」
こうして俺は異世界に降り立ったのだった。
世の中では働き方改革とか言って、仕事とプライベートの両立って言われているが、零細企業のシステム開発会社なんかにおいては、残業、休日出勤なんて当たり前の生活だ。
36協定とか言われたところで、納期に製品が間に合わなければ請求できないし、入金されなければ給料も支払ってもらえなくなる。
叔父が従業員が少なくて困っていると聞いて、安易にその会社に就職を決めたのが運の尽き。大きな間違うの始まりだった。身内の会社だから、お願いされると断りづらいし、辞めるというのも、二の足を踏んでしまう。
疲労が限界だったが、かろうじてスーツを脱いで、疲れた体をベッドに投げ出す。72時間ぶりの布団はとても気持ちが良く、すぐに睡魔が襲ってくる。
「そういえば、ここの所、飯を食べた記憶が……」
そう呟きながら、俺の意識は心地よい闇の中に引き釣りこまれていった。
………………
「ん?」
心地よい眠りに身を任せていると、微睡みの中にいる俺の耳に綺麗で透き通った女性の声が入ってくる。
「4962435612493番さんですね?」
「4兆9624億……何だって?」
夢か現実かよくわからないが、ウトウトしながら返事を返す。
「4962435612493番さん。あなたは次の生に何を望みますか?」
「次の生って言われてもなぁ。まぁ夢だろうから深く考えてもしょうが無いよな」
なんか良くわからない状況で、頭の中もボゥっとしている俺に、変な質問が飛んでくる。
「えっと、煩わしい人付き合いがない所で一からやり直したいかな。あとは、これ!と言った特出すべき才能がある人生なら、きっと楽しいだろうなぁ」
今まで周りに気を使って歩んできた人生と、簡単に選んでしまった進路。そして今の過酷な労働条件から逃げたくて、そんなことを答えてみる。夢なのに何を本気になっているんだろうとか思いながら。
「かしこまりました。では4962435612493番さんの転生処理を実行致します。あなたに良き次生があらんことを」
綺麗で透き通った女性の声がそう告げると、俺の意識は再び心地よい闇の中に落ちていった。
………………
プシューッ!
全てを金属の壁で覆われたその部屋は、日の光などは入らない真っ暗でだだっ広い部屋だった。部屋の大きさは、長辺が100m近くある楕円形の部屋で、下から上に向かって段々に広がっていて、まるで競技場のような作りになっている。
その段差の所には幾つもの卵型の装置が並んでいる。蓋が開いているもの、閉まっているもの、蓋が割れているもの。状態は様々だが、とにかく何百個という単位で卵型の装置がびっしりと敷き詰められている。
その内の一つの卵型のカプセルの蓋が開き、蓋と本体の間から激しい蒸気を吹き出して、蓋がゆっくりと開いていく。それに合わせて、部屋の天井や各所に設置されている照明が少しずつ明かりを灯していく。
「朝……か?」
瞼の奥から感じる光に、俺の意識は覚醒していく。少し眩しすぎるなと、手で瞼を覆い隠しながら少しずつ目を開こうとして違和感に気付く。
「ん?なんか手が短くて柔らかいんだが?」
俺の開いた目に飛び込んできたのは、プニプニでフニフニな手だった。
「なんだこれ?」
少しずつ光に目が慣れていく。その目に映る光景は、無機質な巨大な施設で、とてもじゃないか、眠りについた俺の部屋ではない。しかも、俺の手足や、身体が妙に小さく感じる。
身体を確認するとガラスのような蓋が開ききったので、俺は寝ていたベッドのようなものの縁に手をかけると、身体を起こそうとする。
「とっとっと……」
何か身体に力が入らず、中々起き上がることが出来ない。四苦八苦しながら、何とか体を起こして周りを見渡すと、飛び込んでくるのは無機質なだだっ広い部屋で、俺が寝ていたベッドのような装置が大量に設置されているのがわかる。
「何だここ?」
ベッドのような装置の上で立ち上がり、一帯を見渡す。立ち上がったと言うのに視点が低い。身長は1mも無いんじゃないだろうか?ガラスの蓋に自分の顔を移してみると、やはり寝る前の自分の顔とは程遠い、見たこともない幼稚園児くらいの銀髪蒼眼で、透き通るように白い肌の男の子の顔が映っていた。
ペタペタ顔と体を触ってみるが、その触れようと動かした手足、触ってみた感覚、どう考えても自分自身以外にありえない。
「コレはアレか。はぁ……」
俺は何故かあまり混乱せずに、その答えに結びつき大きく溜息をつく。
「仕事が忙しくて過酷で逃げたくて、出来たら良いな、なんて思っていたけど、本当になってみると不安しか無いな……異世界転生」
こうして俺は異世界に降り立ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる