ちびっこ無双 ~手加減しないと環境破壊しちゃう過剰魔力を持った僕と、ちびっこい仲間達で異世界を無双しちゃいます~

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

文字の大きさ
66 / 80

第066話(一晩煮込?!)

しおりを挟む
「御主人様、朝なのです」
 ポメがユサユサと僕を起こす。部屋の中は暗く、まだ日が昇っているわけではなさそうだが、眠い目を擦りながら僕は起きる。

 まだ寝たいような気がするが、よくよく煮込まれた香味野菜と肉の香りを感じて、そういえば一晩中、野菜と肉を煮込んでいたことを思い出す。
 そういえば火蜥蜴の精霊サラマンダーとゴーレムで調理してたんだっけと、ベッドから降りて厨房に向かう。
 幸いクーフェさんとキリクさんはまだ起きていなかったようだ。

「オッパイお化けが起きると面倒なことになりそうだから早めに起こしたのです」
 僕がそんな事を考えていると、ポメが自信満々に胸をそらしながらドヤ顔で言う。だから、そんな失礼なこと言うと、また怒られちゃうよ……

 一晩中火に掛けていた鍋の中身は相当に煮込まれていて、スープの量が元々の1/3くらいになっている。香味野菜とはトロトロに溶けており、一角兎ホーンラビットの肉も、かなり煮込まれてホロホロと崩れそうだ。
 僕はそっと一角兎ホーンラビットの肉を取り出すと、骨から外していく。少し力を入れるだけでホロホロに崩れるから、用意に骨から外れる。
 肉を一通り処理した後は、別の鍋に粗目の布巾を被せ、その上から一晩中火にかけていた鍋を傾けて、ゆっくり注いでいく。いわゆる濾しの作業だ。
 まずはスープだけ注ぎ込み、最後に香味野菜やガラも注ぎ込み、布巾を丸めて優しく水分だけ押し出す。力を入れすぎてバラけてしまったり、無理やり抽出すると雑味が入ってしまうからね。

 そして新しい鍋には、黄色く透き通ったスープだけになる。表面には一角兎ホーンラビットから抽出された脂が膜を貼っている。灰汁はゴーレムが一晩中きれいに撮ってくれたので雑味も無いはずだ。

 僕はサジでスープを掬うと、舌に乗せてみる。

「うん。良い出汁フォンが取れている。これなら十分だ」
 僕がスープの出来に満足していると、日が昇り始めたのか、室内が明るくなってくる。

「何だ?このいい匂いは」
「朝からこんな匂いさせてたら、お腹空いちゃうよ」
 そんな事を言いながらクーフェさんとキリクさんが起きてくる。

「おはようございます。すぐに用意するから待っていてください」
「シン君、朝早くから料理とか、お姉ちゃん感心しちゃう。あ、パンを焼くのくらい手伝うわ」
「あ、お願いします」
 クーフェさんが竈にやってくる。既に火蜥蜴の精霊サラマンダー送還リターンし、ゴーレムはポメが何処かにしまってくれたので、大騒ぎにはならないだろう。

 本当は出汁フォンをベースにもうひと手間加えたいところだけど、時間もないので、朝は塩で味を整え、緑色のオリガの粉末を少しだけ振って出すことにする。いわゆるコンソメスープみたいな感じだ。

 メインは多めの卵にホロホロになった一角兎ホーンラビットの肉をほぐしながら加えてオムレツ風にしてみる。牛乳がないので、柔らかさとまろやかさが足りないが、そこは仕方がないだろう。肉に下味を付けておきたいのだが、調味料があまりないので、ちょっと強めに塩を加えておく位しか出来ないけど。
 そしてトロトロの半熟になるように焼き上げて、昨日残しておいたリコピルのソースをかける。

「お待たせしました。一角兎ホーンラビットのオムレツに、一角兎ホーンラビットと香味野菜のスープになります」
 手早く作った二品を食卓に持っていくと、丁度クーフェさんの手掛けていたパンも焼けたようだ。

「地の女神イシュター様、今日も大地の恵みをありがとうございます」
 そう祈りを捧げると、もう我慢ならないとキリクさんが先ずスープをスプーンで掬い口をつける。

「?!!!」
 目を見開き、声にならない叫びを上げる。

「な、なんなんだコレ?!」
「どうしたの?ただのスープじゃないの?」
 驚きの声を上げるキリクさんに驚きながらクーフェさんもスープを飲む。

「?!!!」
 キリクさんと同じようにクーフェさんも固まる。

「な、何コレ?見た目はただの少し色のついた透明なお湯なのに。この味の奥深さと滋味は何?」
「複雑な旨味が溶け合って、何がなんだか!」
「「とにかく旨い!!」」
 二人が声を揃えて言う。そんなに喜んでくれると僕も嬉しい。

「オムレツの方も食べてくださいね」
 スープに夢中になっている二人に声を掛ける。スープばかり飲んでしまうのもね。

 キリクさんがオムレツにスプーンで切れ込みを入れると、トロっと卵が流れ出す。

「?!コレまた凄い焼き加減だな」
 表面の硬めの卵と、とろける卵、そしてリコピルのソースを付けて口に運ぶ。

「?!!!」
 再び目を見開いて固まるキリクさん。

「昨日のも旨かったが、これまた違う旨さじゃないか!!卵とリコピルの相性もバツグンじゃないか!!」
「この硬いのと柔らかいのが混ざった微妙な焼き加減も堪らないわ!」
「パンとの相性も抜群だな!」
一角兎ホーンラビットの肉もホロホロだけど、噛むと旨味が出てくるのね!」
 スープとして一緒に煮込んだので、一角兎ホーンラビットのすじ肉はスープも吸っているからね。

「これもギルドのメニューに組み込み必須よね」
「あぁ、朝からこんな旨いものが食えるなら依頼クエストも捗りそうだ」
 こうして朝食も二人から絶賛をもらうのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...