実は有能?

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武田来たる

駿府館改築?!

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1566年 十月

今川家では毎月四のつく日に評定が行われる
決まりがある。

そして今日はその評定が行われる日なのだ。

「では、評定を始める!」

進行役は今川家一の猛将岡部元信が務めることに
なっていた。

「三河の情勢はどうだ。」

「はっ。東三河は完全に掌握いたしましたが、
西三河では徳川家を中心に未だ頑強に抵抗を
続けておりまする。」
(三河方面を担当するのは朝比奈泰朝)

「左様か...、遠江の情勢はどうだ?」

「はっ。武田は遠江に密かに調略の手を伸ばして
おりまするが今のところ武田につこうという国人
達はおりませぬ。」

そう答えたのは、遠江の国人領主である井伊直親
である。先の大戦でわずか100の兵を率いて徳川
の城に一番乗りを果たすなど、武勇に優れている
と共に徳川の大軍を相手に一歩も引かず十日間も
城を守るなど戦に非凡の才を持っていたので、
北遠江の纏め役としてこの評定に参加させていた。

徳川や武田に関する話し合いがひと段落ついた
頃を見計らって氏真は本題に入ることにした。

「皆の者!今川家は長らく駿府館を拠点として
勢力を拡大してきた。しかし、駿府館は防御力
の低い城であり、来るべき武田の侵攻を食い
止めるにはいささか不安だ。」

氏真が何が言いたいのかわかってきたのか、
皆顔色を変え始めた。

「そこで、俺はこの駿府館を大々的に改築
して武田の侵攻に耐えることができる城に
したい!どうだろうか?」

「しかし、武田がそれを見過ごすとは思え
ませぬ。何か難癖をつけて攻めてくるので
はないでしょうか?」

そう疑問を投げかけてきたのは武田と領地が
接している今川家の重臣庵原忠縁であった。

「いや、それはあるまい。」

「何ゆえそうと言い切れるのでございますか?」

「考えてみよ。武田は九月に箕輪城を落とし、
上州を平定したが元々独立不羈の強い上州では
武田の支配に内心不満を持っておろう。上州が
そんな状態では信玄も攻めにくかろう。おそらく
上州を完全に掌握するには二年ほどかかろう。
そこで我々は二年の間に力を蓄え、武田の侵攻に
備えるのだ!」

「なるほど。しかし、そうなれば徳川がまた勢力
を盛り返す刻を与えてしまいますな。西三河では
徳川家を中心に依然として頑強に抵抗を続けてお
りますし、徳川の後ろには織田が控えております
るゆえそう簡単には潰せませぬかと。」

バタバタバタバタ

「申し上げます!」

「いかがいたした?」

「織田家の家臣だと名乗る者が殿にお会いしたい
と申しておるのですが...」

「何!織田だと!」

「お会いしたいなどとどの口がほざくか!!」

「殿!会う必要などありませぬ!それよりも首を
切って、先代の義元公の墓前に供える方が良かろう!!」

「そうじゃ!それが良い。」

「では、それがしが。」

「いや、拙者が!」

「いやいや、ここは年配のそれがしが!」

「いい加減にせぬか!」

シーーーーン

「織田家にとってここ駿河は敵地のど真ん中、
そこにわざわざ来るということは死を覚悟して
来たということだ。そのような度胸があるの
者をこれ幸いと殺しては周辺諸国から卑怯者
と誹りを受けよう。それに当家の信頼が揺らぐ
かもしれないのだぞ。」

「申し訳ありませぬ。」(家臣一同)

「分かれば良い。すぐその織田の家臣と名乗る
者をここにつれて参れ。」

「はっ。」






◇◇◇◇駿府館 大広間

「殿の御成!」

(平伏)

「織田信長が家臣村井貞勝と申します。」

「今川治部大輔氏真である。」



「この度は急な訪問でありながら、御目通りが
かなったこと、誠に有り難く思っておりまする。」

「何が急にか、前から仕組んでいたに違いない...」

「止めよ泰朝!」

「フン!」

「我が家臣が失礼いたした。」

「いえいえ、あまりお気になさらず。」

「そう言ってもらえるとありがたい。」

「ところで、何故織田家の家臣である其方が
駿府館を訪れたのだ?三河の徳川との停戦でも
求めてきたのかと思ったがその顔を見るに違う
のであろう。申せ!」

さっきとは打って変わって貞勝を突き放すかの
ような冷たい一言に大広間は一瞬で静まり返った。

...公家の真似事をして遊んでいた軟弱者と甘く
見ておったが、これほどの人物だったとは...

...氏真、恐るべし!...

...もはや、誤魔化すことはできまい...

(息を吸う音)

「我が主君、織田信長様は氏真様のご息女である
椿姫を御嫡男奇妙丸の正室に迎え入れたいとの
こと。」

(ガタ)

「ふざけるな!何故織田に椿姫様をやらねば
ならんのだ!」

「左様じゃ!しかも、それでは人質として椿姫様
をやるようなもの!そのようなふざけた話古今聞
いたことがないわ!」

「殿斬ってもよろしゅうございますか!!!」

「ならぬ!!」

「無論、ただでとは言いませぬ。」

「ほぅ。」

「今川家が三河に出兵した際、織田家は徳川に
加勢いたしませぬ!」

「織田は徳川との同盟を破棄したのか?」

「左様。」


「殿!騙されてなりませぬ。」

「朝比奈殿の申す通りです。織田と同盟を
結ぶのはおやめくだされ。」


「確かに織田との同盟は我等にとって到底
受け入れられるものではない。」

「では!」

「じゃが、よく考えてみよ!もし武田が攻めて
きたとき、味方か敵どちらに回るかわからぬ輩
が西におっては安心して戦うこともできぬ。それ 
より織田家と手を組むことで武田に圧力をかける
方が良い。」(織田家は武田と婚姻同盟を結んで
おり、今川家の姫が織田家に嫁げば織田家は武田
と今川の両家と婚姻関係を持つことになるので
どちらに味方するのかわからない。氏真はそれ
を懸念している。)

「貞勝殿、織田殿に承知したとお伝えくだされ。」

「かしこまりました。」

「だが、すぐにとはいかぬ。」

「徳川ですか?」

「左様。尾張に行くにはどうしても三河を通ら
ねばならぬ。ゆえに縁組を行うのは娘が11歳に
なってからということにしてもらいたい。」

「それまでに徳川を倒すと?」

「そうだ。」

「わかりました。ではここいらでお暇させて
いただきまする。」


この婚約により今川は東の武田に戦力を集中させ
ることができるようになったのだった。




椿姫…氏真の長女























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