実は有能?

player147852

文字の大きさ
14 / 18
武田来たる

小笠原貞慶の士官

しおりを挟む
翌日

氏真は自身の居室に向かって歩いてくる足音を
聞いて目を覚ました。

「殿、岡部正綱様がお目通りを願っておりまする
が、いかがいたしましょう?」

「一人か?」

「いえ、筋骨たくましい若者を一人連れており
まするが...」

「今すぐ、ここに連れて参れ!」

「はっ。」

(近習が歩いていく音)





「殿、正綱にございます。 」

「入れ。」

(正綱と若者が入ってくる音)

「おお!そなたが昨日私を狙った刺客を矢で
仕留めた武芸者か?」

「はい、左様です。」

「名をなんと言う?」

「小笠原貞慶と申します。」

「小笠原というと京の...」

「いえ、それがしは府中小笠原氏の出で...」

「何、府中だと!確か府中小笠原氏は武田に
滅ぼされたと聞いたが...」

「いえ、本拠地である林城を失った後、それがし
らは、同族である京都小笠原氏を頼って上洛し、
今は三好の援助を受け、上方で過ごしておりまする。」

「そうか...。どうであろう、この際今川家に仕え
てくれぬか?無論、そなたの一族は今川がしっかり
と面倒を見よう。」

氏真の思いがけない申し出に貞慶は一瞬考える
素ぶりを見せたが、他に頼る相手がいないので
あろう。

「かしこまりました。この貞慶、今川家に忠誠
を誓いまする。」




この後、貞慶は鍾馗を率いて弓鬼と恐れられる
ようになるのだが、それはまだ先の話である。







◇◇◇◇甲斐国 躑躅ヶ崎館

「御前試合はどうであった、信豊?」

「はい、叔父上の言う通り、今川は御前試合に
参加していた武芸者達を召抱えておりました。」

「そうか。駿河はどうであった?」

「氏真の元固く結束しておりましたし、何しろ
人がおりまする。今川が本気を出して我等と戦
をするとなれば、おそらく集められる兵は三万
を超えるかと...。」

「三万か...。飯尾には会えたか?」

「はい、どちらにつくか迷っていたようですが、
遠江一国を約束すると、伝えたところ二つ返事
で内応を申し込んで参りました。」

「そうか。飯尾に伝えておけ。」

「何と伝えておけばよろしいでしょうか?」

「氏真の一挙一動を全て報告せよとな。」

「はっ、かしこまりました。」








◇◇◇◇相模国 小田原城 大広間

「今川治部大輔氏真様が家臣、庵原忠縁に
ございます。」

「北条相模守氏康である。して、庵原殿
用件とは?」

「我が主、氏真様は北条相摸守氏康様を自らの
居城駿府城にお招きし、駿府城にて対武田の会談
を行いたいとのお考えにございます。」

「ほぅ。駿府城か...」

「はい。連れてくる兵も其方にお任せする
とのことでございます。」

...今川氏真、公家の真似事にうつつを抜かして
おった軟弱者と思っておったが、父義元殿が
桶狭間で討ち死にをしてからは遠江、駿河を
よく治めておる...

...あちらに早川が嫁ぐ際に、一緒についていった
家臣達の手紙には、氏真が鍾馗の面をつけた兵達
を指揮して、徳川家との決戦に勝利したと書かれて
おったな...

...それに駿府館を改築して新しく建てられた駿府城
は東海一の巨城と噂されておる...

...今一度、今川氏真なる男見定め必要があるな...

「庵原殿、氏真殿に了承したとお伝えくだされ。」

「かしこまりました。」

(庵原忠縁が退出する。)





「皆、評定は終わりじゃ。」



半刻後

氏康は自身の居室で駿府城に連れて行く者達
を選別していると、どこからか足音が聞こえて
きた。

...はぁー、あやつか...

「父上、氏政めにございます。」

「入れ。」

(襖を開ける音)

「父上、今川から使者が参られたそうですな。」

「ああ、来た。対武田のための会談をしたい
そうだ。」

そう聞くと、氏政は顔を綻ばせていた。

「どうした?そなたも行きたいのか?」

「父上、この際駿府城を獲るべきです!会談
ともなれば今川も油断しておりましょう。
この機会に駿河を我等が支配下におきましょう!」

「ふざけたことを申すな!今川が何故、我等を
駿府城に招くのか、わからぬのか!」

「わかりませぬ。」

「本来、自身の領内に他家の兵を引き入れるなど
あってはならぬことだ。なぜなら、城を奪われる
恐れがあるからだ。それにもかかわらず氏真殿は
我等を自身の居城に招くのだぞ!今川は我等北条
を頼りにしておるのだ。以後そのようなことは申
すな!」

「しかし!」

「そなたのお叔父上はどのようにして小田原城
を手に入れたのだ?」

「あっ。」

「わかったか。わざわざ駿府城に招くのだ、十分
そのことにも警戒しておろう。馬鹿な真似はするな。」

「くっ。」

(氏政が退出する)

...あれが儂の後を継ぐのか...

...氏政は政治に関しては優れておるのだが...

...謀略に関してはどこか稚拙なものを感じさせる...






...北条はあやつの代で滅びるのかもしれぬな...


氏康は氏政の後ろ姿を見つめながら嘆息したの
だった。





























しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

ヤバイ秀吉

魚夢ゴールド
歴史・時代
題名通り、性格をヤバくした羽柴秀吉の伝記モノです。 【毎週木曜日に公開】

皇国の栄光

ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年に起こった世界恐慌。 日本はこの影響で不況に陥るが、大々的な植民地の開発や産業の重工業化によっていち早く不況から抜け出した。この功績を受け犬養毅首相は国民から熱烈に支持されていた。そして彼は社会改革と並行して秘密裏に軍備の拡張を開始していた。 激動の昭和時代。 皇国の行く末は旭日が輝く朝だろうか? それとも47の星が照らす夜だろうか? 趣味の範囲で書いているので違うところもあると思います。 こんなことがあったらいいな程度で見ていただくと幸いです

日露戦争の真実

蔵屋
歴史・時代
 私の先祖は日露戦争の奉天の戦いで若くして戦死しました。 日本政府の定めた徴兵制で戦地に行ったのでした。  日露戦争が始まったのは明治37年(1904)2月6日でした。  帝政ロシアは清国の領土だった中国東北部を事実上占領下に置き、さらに朝鮮半島、日本海に勢力を伸ばそうとしていました。  日本はこれに対抗し開戦に至ったのです。 ほぼ同時に、日本連合艦隊はロシア軍の拠点港である旅順に向かい、ロシア軍の旅順艦隊の殲滅を目指すことになりました。  ロシア軍はヨーロッパに配備していたバルチック艦隊を日本に派遣するべく準備を開始したのです。  深い入り江に守られた旅順沿岸に設置された強力な砲台のため日本の連合艦隊は、陸軍に陸上からの旅順艦隊攻撃を要請したのでした。  この物語の始まりです。 『神知りて 人の幸せ 祈るのみ 神の伝えし 愛善の道』 この短歌は私が今年元旦に詠んだ歌である。 作家 蔵屋日唱

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...