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武田来たる
駿府会談
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駿府城に着いた氏康達一行は駿府城に設えてある
一室に通されていた。
「遅い、遅すぎる!何をやっておるのだ今川は!」
「綱高、声を抑えよ!ここをどこだと心得る。」
「しかし...」
綱高がこう思うのも無理がなかった、なぜなら
山県昌景が帰った後、氏真達は武田に対する
備えを万全にする為に評定を開いていたのだ。
しかし、それを知らされていない氏康達一行は
ただ使いの者が現れるのを待つしかなかったの
である。
それ故に綱高の機嫌が悪くなるのも無理は
なかった。
氏康に一喝されて、縮こまっていた綱高だが、
だんだんイラついてきたのか、せわしなく動き
出したので、なだめようと氏規が声をかけよう
としたとき、どこからか声が聞こえてきたので
ある。
「姫さま~、お待ちくだされ!」
「嫌じゃ!叔父上様、会いたいのじゃ!」
「なりませぬ、氏康様は殿と大事な話をする
為に参っているのですぞ!」
「でも...」
「でも、ではありませぬ!」
「うぅ、グスン、グスン」
氏康は何があったのか、気になり外に出て
みることにしたのだった。
(襖を開ける音)
「いかがいたしたのだ?」
「あっ、叔父上様!」
「おお、椿か...」
氏康は数ある孫の中でも特に氏真の長女である
椿姫をこよなく愛しており、椿姫が織田に嫁ぐ
ことを知った際には信忠が椿姫とつり合うような
男なのか、見定める為にわざわざ風魔衆を用いて
信忠のことを探ろうとして、叔父である幻庵に
たしなめられたという逸話があるほどである。
また、椿姫が風邪をこじらせた時には、合戦の
最中にもかかわらず、陣中から見舞いの手紙を
出したこともあったようで、このことから孫を
可愛がる祖父のことを氏康というようになった
とも言われている。
話が逸れたが、氏康が椿姫との再会を喜んで
いると、使いの者が来て、氏康達を大広間
へと案内したのだった。
大広間には今川の重臣、一門が集まっていた。
氏康は一番奥に設けられていた上座に座り、
氏真が来るのを待ったのだった。
しばらくすると、襖が開いて氏真が入ってきたの
だった。
上座は二人が向かい合うように設けられていた
ので、氏康は氏真の顔をまじまじと見つめたの
だった。
...優男のような雰囲気を出しておるが、筋骨逞しい
若者じゃな...
...背丈は6尺より少し低いぐらいかの...
...聡明そうな顔立ちだ...
「今川治部大輔氏真にござる。」
「...北条相模守氏康である。」
氏康は氏真から発される若々しさを目の当たり
にし、自身が老いた事を実感したのだった。
「早速ですが、武田家嫡男である義信殿が
謀叛の罪で自害なされました。」
「何?!真か、婿殿!」
「はい、すでに武田家では駿河を攻める支度
をしておりましょう。」
「それはいつ頃からくるのだ?」
「恐らくは、七月ごろから武田が攻めてくる
でしょう。」
氏康は氏真が微塵の焦りも見せないことに
内心感嘆していた。
...武田と戦いになるやもしれぬというのに、
焦りを感じさせないとは、なかなか肝が
座っているようじゃな...
...氏政にもこれだけの度胸を持って欲しいものよ...
「もし、武田が今川を攻めるのなら、北条は
今川に味方しよう!」
「おお~!」(家臣一同)
「して、いかにして武田と戦うのか?」
「はい、信玄を駿河に誘い込んで叩こうと
思うのですが...」
「誘い込む...?どのようにして...」
「まず、武田をここ駿府城まで誘い込みまする。」
「!」(氏康、北条、今川家臣一同)
「本拠地まで退くというのか...」
「義父上のやり方を真似したいと思います。」
「駿府城に籠り、武田を迎え討つというのか...」
「義父上には我等が武田を惹きつけている間
に相模より甲斐に圧力をかけていだだきたいの
ですが...」
「あいわかった。北条は津久井城から富士吉田城
に圧力をかけよう。」
「ありがたく。」
「では、諸々の支度があるゆえ、失礼する。」
氏康との会談が終わり、自身の居室に戻っていた
氏真は慌ただしく向かってくる足音を聞いて溜息
をついたのだった。
...あいつか...
(襖が開く音)
中に入ってきたのは自身の弟である今川氏清
であった。
※今川氏清(架空の武将)…今川義元の四男で
武芸に秀でていたと言われる。歳は十九歳。
母が遊女であったため、蔑まれていた。
「兄者聞いたぞ、武田と戦になるそうだな!」
「...」
「それがしも今や一人前の男だ、戦に出さして
くれ!」
「ならん!」
「何故じゃ!」
「そなたは確かに武芸に秀でており、
戦さ場に出れば、一騎当千の働きをするで
あろう。だが、まわりが見えておらぬ。
それでは、すぐに死ぬことになるぞ!」
「...」
「そなたが、影で武芸の鍛錬を積んでおるのも
知っておる。」
「ならば...」
「まずはその勝ち気な性格を直せ。」
「...承知つかまつりました。」
(氏清が退出する音)
...生れながらに卑しい子と呼ばれ、それを
見返す為に、武芸の鍛錬を重ねてきた故に
どうしても早く、自らの腕の見せ所を探って
いるのだろう...
...まぁ、しばらくすればあやつの名が知れ渡る
ようになろう...
...公家の真似事をして、軟弱者と蔑まれていた
私が、今川家を少しずつ大きくしていることに
嫉妬しておるのかもしれぬな...
氏真は弟である氏清の境遇に若干の憐れみを
感じながら来たるべき武田との戦いについて
考えを巡らすのであった。
一室に通されていた。
「遅い、遅すぎる!何をやっておるのだ今川は!」
「綱高、声を抑えよ!ここをどこだと心得る。」
「しかし...」
綱高がこう思うのも無理がなかった、なぜなら
山県昌景が帰った後、氏真達は武田に対する
備えを万全にする為に評定を開いていたのだ。
しかし、それを知らされていない氏康達一行は
ただ使いの者が現れるのを待つしかなかったの
である。
それ故に綱高の機嫌が悪くなるのも無理は
なかった。
氏康に一喝されて、縮こまっていた綱高だが、
だんだんイラついてきたのか、せわしなく動き
出したので、なだめようと氏規が声をかけよう
としたとき、どこからか声が聞こえてきたので
ある。
「姫さま~、お待ちくだされ!」
「嫌じゃ!叔父上様、会いたいのじゃ!」
「なりませぬ、氏康様は殿と大事な話をする
為に参っているのですぞ!」
「でも...」
「でも、ではありませぬ!」
「うぅ、グスン、グスン」
氏康は何があったのか、気になり外に出て
みることにしたのだった。
(襖を開ける音)
「いかがいたしたのだ?」
「あっ、叔父上様!」
「おお、椿か...」
氏康は数ある孫の中でも特に氏真の長女である
椿姫をこよなく愛しており、椿姫が織田に嫁ぐ
ことを知った際には信忠が椿姫とつり合うような
男なのか、見定める為にわざわざ風魔衆を用いて
信忠のことを探ろうとして、叔父である幻庵に
たしなめられたという逸話があるほどである。
また、椿姫が風邪をこじらせた時には、合戦の
最中にもかかわらず、陣中から見舞いの手紙を
出したこともあったようで、このことから孫を
可愛がる祖父のことを氏康というようになった
とも言われている。
話が逸れたが、氏康が椿姫との再会を喜んで
いると、使いの者が来て、氏康達を大広間
へと案内したのだった。
大広間には今川の重臣、一門が集まっていた。
氏康は一番奥に設けられていた上座に座り、
氏真が来るのを待ったのだった。
しばらくすると、襖が開いて氏真が入ってきたの
だった。
上座は二人が向かい合うように設けられていた
ので、氏康は氏真の顔をまじまじと見つめたの
だった。
...優男のような雰囲気を出しておるが、筋骨逞しい
若者じゃな...
...背丈は6尺より少し低いぐらいかの...
...聡明そうな顔立ちだ...
「今川治部大輔氏真にござる。」
「...北条相模守氏康である。」
氏康は氏真から発される若々しさを目の当たり
にし、自身が老いた事を実感したのだった。
「早速ですが、武田家嫡男である義信殿が
謀叛の罪で自害なされました。」
「何?!真か、婿殿!」
「はい、すでに武田家では駿河を攻める支度
をしておりましょう。」
「それはいつ頃からくるのだ?」
「恐らくは、七月ごろから武田が攻めてくる
でしょう。」
氏康は氏真が微塵の焦りも見せないことに
内心感嘆していた。
...武田と戦いになるやもしれぬというのに、
焦りを感じさせないとは、なかなか肝が
座っているようじゃな...
...氏政にもこれだけの度胸を持って欲しいものよ...
「もし、武田が今川を攻めるのなら、北条は
今川に味方しよう!」
「おお~!」(家臣一同)
「して、いかにして武田と戦うのか?」
「はい、信玄を駿河に誘い込んで叩こうと
思うのですが...」
「誘い込む...?どのようにして...」
「まず、武田をここ駿府城まで誘い込みまする。」
「!」(氏康、北条、今川家臣一同)
「本拠地まで退くというのか...」
「義父上のやり方を真似したいと思います。」
「駿府城に籠り、武田を迎え討つというのか...」
「義父上には我等が武田を惹きつけている間
に相模より甲斐に圧力をかけていだだきたいの
ですが...」
「あいわかった。北条は津久井城から富士吉田城
に圧力をかけよう。」
「ありがたく。」
「では、諸々の支度があるゆえ、失礼する。」
氏康との会談が終わり、自身の居室に戻っていた
氏真は慌ただしく向かってくる足音を聞いて溜息
をついたのだった。
...あいつか...
(襖が開く音)
中に入ってきたのは自身の弟である今川氏清
であった。
※今川氏清(架空の武将)…今川義元の四男で
武芸に秀でていたと言われる。歳は十九歳。
母が遊女であったため、蔑まれていた。
「兄者聞いたぞ、武田と戦になるそうだな!」
「...」
「それがしも今や一人前の男だ、戦に出さして
くれ!」
「ならん!」
「何故じゃ!」
「そなたは確かに武芸に秀でており、
戦さ場に出れば、一騎当千の働きをするで
あろう。だが、まわりが見えておらぬ。
それでは、すぐに死ぬことになるぞ!」
「...」
「そなたが、影で武芸の鍛錬を積んでおるのも
知っておる。」
「ならば...」
「まずはその勝ち気な性格を直せ。」
「...承知つかまつりました。」
(氏清が退出する音)
...生れながらに卑しい子と呼ばれ、それを
見返す為に、武芸の鍛錬を重ねてきた故に
どうしても早く、自らの腕の見せ所を探って
いるのだろう...
...まぁ、しばらくすればあやつの名が知れ渡る
ようになろう...
...公家の真似事をして、軟弱者と蔑まれていた
私が、今川家を少しずつ大きくしていることに
嫉妬しておるのかもしれぬな...
氏真は弟である氏清の境遇に若干の憐れみを
感じながら来たるべき武田との戦いについて
考えを巡らすのであった。
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