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リライト10 教員室~猛者の目覚め SIDE:浜田
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怯えきった様子の水島が教員用ロッカー室から外に連れ出される。
浜田は尊大な態度を崩さない。
肉色の彫刻を模したリトグラフのような教師のシルエットが映るシャワーブースの曇りガラスを後ろに激しい音を立てて扉を閉めた。
その行為は、この場の緊迫した空気の中での支配関係を明確に示した。
閉ざされた空間となったロッカールーム。
曇りガラスの向こう、教師のシルエットはそれまで正していた姿勢を崩し、必死で下腹部に襲う苦痛を我慢する惨めな体勢に変わっている。
信じられない光景を見続けたショックで水島は体が震ている。
そんな後輩の肩を抱くように、菊池がロッカールームへの扉の脇の応接セットのもとへ連れて行く。
浜田はどっかりとソファに座る。
まるでそこが自分の定位置であるように。
水島と同学年の栗山は、この状況を心底楽しんでいるように、くつろいだ様子でいる。
水島は、限界に達したように怯えた声を絞り出す。
「ぼ、僕、、、帰ります、、、帰りますっ、、、」
彼は、自分を後ろから抱きかかえるような体勢になっている菊池の腕から、震えながら身を解こうとする。
「おいっ、ここまで来てそれはないだろう。どうせなら、最後まで見てけよ。お前は今夜のサプライズゲストだ」
浜田が、冷たい視線を水島に投げかけながら言った。
菊池は、水島の身体をより密着させるように抱え直し、鋭さを帯びた声で囁く。
「そんなに怯えるなよ。驚いたか?憧れの先生の思いもしない姿を見て」
だが、その鋭い声の下には、なぜか頼っても良いと思わせる優しさが混じっているように水島には思えた。
ボクシングで鍛えられた鋭い肉体を持つ菊池。
水島はそのシャープな横顔を見上げる。
菊池は、机の上に投げ出すように置かれた自分の鞄からペットボトルの水を出すと、水島に差し出した。
「飲んで、落ち着け、、、」
無愛想な態度。
だが、気遣いが感じられた。
水島は差し出された水を飲む。
彼の顔からはいつもの爽やかさは消え失せ、青ざめたまま気が動転している。
浜田は、その二年生をジッと見る。
自分に屈した思うと、急に自我を見せ、命令から逃げようとする教師。
“卒業までは清い関係でいよう”
その言葉を聞く度にムカつく。
その言葉が、浜田の中での教師に対する執着を増していることには、口にした純一も、その言葉をかけられた浜田も気付いていない。
これまでに堕とし、組み敷き、そして、捨てていった男達とは全く異なる存在。
屈服させてやりたい、、、
浜田が純一を翻弄しているように、浜田自身も純一に翻弄されていることに、若い彼はまだ気付いていない。
そして、今目の前に、その教師が心から可愛がっている爽やかで純粋な輝きを持つサッカー部の生徒がいる。
その生徒、水島の姿を見て、浜田は今まで感じたことのない黒い澱が胸の内に溜まっていくような気持ちを味わう。
もちろん、浜田はその二年生に恨みなどない。
何より、これまでに接点すらないのだ。
彼を、いたぶる言われもない。
だが、面白くない。
サッカー部顧問の純一とサッカー部員の水島の間に強く築かれたスポーツを通した絆、青春の清らな輝きといったものが、腹立たしい。
なぜかイライラが止まらない。
このやり場のない黒い気持ちが、この後、年長の教師への八つ当たりのような、より惨い仕打ちに繋がるのだが、、、
浜田の脳裏に、数ヶ月前のグラウンドの光景が浮かび上がる。
やることもないので、溜まり場としている校舎の屋上で、菊池、栗山と共に時間を潰していた。
眼下のグラウンドでは、他校を招き、サッカー部の親善試合が行われていた。
競り合いの末、初めて対戦相手に勝利したサッカー部員たちは、歓喜を隠そうともせず、お互いに抱き合い、そして顧問の教師である来生にも次々抱きついた。
教師もまた、喜びに溢れた顔で生徒たちと抱き合い、頭を撫で、最後は部員たちから胴上げをされていた。
最初に顧問教師に飛びついたのが、まさに今、目の前で青ざめている水島だった。
目の前で繰り広げられる陳腐な学園モノのような爽やかぶった光景を、浜田は白けた目で見ていたが、生徒たちの手で胴上げされ、宙に浮く大柄で爽やかな教師の肢体は、なぜか彼の意識に印象深く焼き付いた。
「あの来生って教師、チンチンがメチャクチャでかいんだよ」
校内なのに、下着一枚のボクサーブリーフ姿の栗山が言った。
その手は、上半身にシャツを羽織っているものの下半身はズボンを下ろし、剥き出しとなっている菊池の怒張した股間に当てられている。
指が、菊池のモノを優しくまさぐっている。
「あん?あの爽やかぶった嫌味な野郎か。青春ぶってマジ、ウザい奴っ」
露骨に不機嫌な口調だ。
「去年のプールの授業の時、半端のないデかさで驚いた。スイムウェアを引っ剥がしちゃいたかった。ケツにぶっこんで欲しい」
「てめぇ、体育の授業中になに考えてんだ」
そんな菊池と栗山の学生とは思えぬ戯れを聞きつつ、浜田はもう校庭のサッカー部の試合からは興味を失っていた。
彼は、体育倉庫から勝手に屋上に持ってきた古びたマットを出入り口の壁に立てかけ、正拳の練習を始めた。
ゴスッ!ゴスッ!
鋭く重い音が響く。
栗山が跪き、腰を突き出した菊池の股間をしゃぶり始めたのにも気を向けない。
浜田は、すでにその日、栗山の尻に二度も放出しており、肉体の欲望は満たされていた。
もともと彼は、格闘家として自分の技を磨く以外の事には、ほぼ興味が湧かなかった。
浜田は、中学時代から骨太の体格に恵まれ、普段は無口で静かだが、キレると手がつけられない性格で、教師からも匙を投げられ、腫れ物扱いをされていた。
高校入学時には、もうマイペースに好き勝手過ごす癖がついていた。
同級生はガキばかりで、真面目に会話をする気にはならない。
授業も退屈だ。彼は学校で何も学ぶことはないと冷めた気分で、屋上で過ごす時間の方が多かった。
だが、この学園に入学してからしばらくして、彼は思いもかけず、人生における大きなことを学ぶ。
それは、ガタイのいい大人の男を服従させ、奉仕をさせることの喜びだった。
皮肉なことに、浜田にそれを教えたのは、彼にとって鬱陶しく退屈な大人の象徴だった体育教師である。
その教師は、尊大で偉そうに振る舞う男で、ラグビーをやっていたらしく、頑丈な身体をしていた。
盛り上がった筋肉に、男盛りを示す程よい脂肪が乗った、男臭い体躯。
30を過ぎたばかりの、脂の乗った男盛りだった。
自分でもその腕力と存在感を分かっていたのだろう。彼は竹刀を片手に生活指導を厳しく行っていた。
それは行き過ぎたものだったが、生徒たちはもちろん、同僚教師たちも、その粗暴で荒々しい教師に口を出さなかった。
教師という立場で、生活指導を名目に、自らの立場を誇示する、矮小な男だった。
登校時刻には校門の脇に立ち、遅刻しそうな生徒を大声で怒鳴りつける。
制服の乱れは容赦なく摘発する。
そんな教師の目に、新入生なのに太々しい態度の浜田が止まらないわけがなかった。
ネクタイを緩めにし、シャツもはだけた浜田の服装に、入学早々から難癖をつけ始めた。
煩がりながらも、最初のうちは従っていた浜田だが、次第に無視するようになる。
そうすると、短気でプライドも高い体育教師もムキになる。
一触即発の状態が何度か訪れたが、教師は生徒を竹刀で打てば、暴力事件と社会的な問題になることを理解しており、微妙な均衡の中での緊張が続いた。
教師がいくら竹刀を振り下ろし、地面に叩きつけ威嚇してきても、浜田は挑発に乗らず、涼しい顔で無視する。
それが教師をさらに怒らせた。
その体育教師は、気に入らない生徒を問題とならず合理的にやっつける手段を心得ていた。
それは、授業中にその一環として行うことだった。
K学園の体育の授業には柔道が伝統的に組み込まれている。
その授業のカリキュラムの一つである乱取りの最中に気に入らない生徒と組み、徹底的に締めるのだ。
投げ技、寝技、足払い、、、
生徒がギブアップしてもさらに続ける。
大抵の生徒は、それで教師に従うようになる。
「何度も言わせるなっ!制服をきちっと着ろっ!」
「うっせぇな、、、てめぇも教師のくせに髭面だろっ!」
朝の校門で、荒々しい男臭さをぶつけ合い、睨み合う教師と新入生。
「よし、分かった。勝負をしよう」
その日、突然の教師の言葉に、生徒である浜田は虚を突かれた。
「今日の柔道の授業。俺と乱取りをしろ。勝てとは言わん。万が一、俺に技を決めることが出来たら、何でも一つ言うことを聞いてやる。真剣にかかってこい。その代わり、少しも技をかけられなかったら態度を改めろ」
体育教師は、自分の腕力と柔道経験に絶対の自信を持っていた。
技をかけられる云々の前に、浜田と乱取りを組み、授業という大義名分のもとでボコボコにして、屈服させるのが狙いだったのだ。
「ああ、解ったよ。真剣勝負だなっ。受けて立つよ」
そして柔道場。
準備体操、数組に分かれての乱取り。
やがて授業も中盤を過ぎたころ、“試技”だと言い、体育教師は他の生徒を柔道場の壁沿いに座らせ、浜田を前に呼び出す。
同級生たちの前で浜田を嬲り、恥をかかせることが目的だった。
柔道着の帯を締め直し、脂の乗った男盛りの体育教師が、竹刀を置いてニヤリと傲慢な笑みを浮かべる。
対する浜田は、一切の表情を動かさず、獲物を見定める獣のような静かな眼差しで、教師の屈強な体躯を見つめ返した。
向かい合う二人。
先に動いたのは教師だった。
「行くぞ!」
教師は、ラグビーで培った頑丈な体躯を活かし、真正面から圧倒的な重みと荒々しい力で浜田の柔道着を掴みにいった。
彼の太い指が、浜田の左襟と袖を掴む。
だが、浜田は一瞬で教師のそれに応じ、そして凌駕する。
教師が力で押し込もうとした瞬間、浜田は骨太の体格に似合わぬ電光石火の速さで、教師の袖を切り、逆の襟元を掴んだ。
その低い重心と、岩のように硬い手のひらの感触に、教師は最初の違和感を覚える。
重い、、、
コイツ、柔道をやっていたのか?
だが、負ける気はない。
教師は、自身の体重と長年の経験に基づく強引さで、浜田の体勢を崩そうと、グイッと引きつけ、横に捌こうとした。
しかし、浜田の体はまるで大地に根を張った巨木のように、微動だにしなかった。
教師は、予想外の展開に焦りを覚え、表情を一変させた。
チクショウ、新入生が、舐めるんなよっ!
彼はプライドをかけ、一気に体重を浴びせかけるように組み合い、豪快な大外刈りを仕掛けようと足を出した。
その瞬間、教師の荒々しい力と体重の全てを、浜田は受け流すことなく、真正面から受け止めた。
浜田の全身を覆う鍛えられた筋肉が、教師の体重の衝撃を受け止め、そして、身体を少し反らし、受け流す。
教師は、自分が、重い鉄板に技をかけようとし、弾き返されたような圧を感じる。
なんだこの圧倒的な重さは?
こいつ、、、どれだけ鍛えているんだ?
ま、まるでプロの格闘家のようだ、、、
教師の顔色が変わった。
冷や汗が背中を伝う。
今まで抑えつけてきた他の生徒たちとは違う実力を悟る。
浜田の眼差しは、依然として無表情で静かだったが、その瞳の奥には、教師の焦燥と恐怖を正確に捉え、楽しんでいるかのような、冷酷な光が宿っていた。
負けるわけにはいかない、、、
教師は熱くなる。
次々と技を掛けようとするが、生徒、、、浜田は動じずにそれを受け流す。
教師の形相が変わる。
浜田は尊大な態度を崩さない。
肉色の彫刻を模したリトグラフのような教師のシルエットが映るシャワーブースの曇りガラスを後ろに激しい音を立てて扉を閉めた。
その行為は、この場の緊迫した空気の中での支配関係を明確に示した。
閉ざされた空間となったロッカールーム。
曇りガラスの向こう、教師のシルエットはそれまで正していた姿勢を崩し、必死で下腹部に襲う苦痛を我慢する惨めな体勢に変わっている。
信じられない光景を見続けたショックで水島は体が震ている。
そんな後輩の肩を抱くように、菊池がロッカールームへの扉の脇の応接セットのもとへ連れて行く。
浜田はどっかりとソファに座る。
まるでそこが自分の定位置であるように。
水島と同学年の栗山は、この状況を心底楽しんでいるように、くつろいだ様子でいる。
水島は、限界に達したように怯えた声を絞り出す。
「ぼ、僕、、、帰ります、、、帰りますっ、、、」
彼は、自分を後ろから抱きかかえるような体勢になっている菊池の腕から、震えながら身を解こうとする。
「おいっ、ここまで来てそれはないだろう。どうせなら、最後まで見てけよ。お前は今夜のサプライズゲストだ」
浜田が、冷たい視線を水島に投げかけながら言った。
菊池は、水島の身体をより密着させるように抱え直し、鋭さを帯びた声で囁く。
「そんなに怯えるなよ。驚いたか?憧れの先生の思いもしない姿を見て」
だが、その鋭い声の下には、なぜか頼っても良いと思わせる優しさが混じっているように水島には思えた。
ボクシングで鍛えられた鋭い肉体を持つ菊池。
水島はそのシャープな横顔を見上げる。
菊池は、机の上に投げ出すように置かれた自分の鞄からペットボトルの水を出すと、水島に差し出した。
「飲んで、落ち着け、、、」
無愛想な態度。
だが、気遣いが感じられた。
水島は差し出された水を飲む。
彼の顔からはいつもの爽やかさは消え失せ、青ざめたまま気が動転している。
浜田は、その二年生をジッと見る。
自分に屈した思うと、急に自我を見せ、命令から逃げようとする教師。
“卒業までは清い関係でいよう”
その言葉を聞く度にムカつく。
その言葉が、浜田の中での教師に対する執着を増していることには、口にした純一も、その言葉をかけられた浜田も気付いていない。
これまでに堕とし、組み敷き、そして、捨てていった男達とは全く異なる存在。
屈服させてやりたい、、、
浜田が純一を翻弄しているように、浜田自身も純一に翻弄されていることに、若い彼はまだ気付いていない。
そして、今目の前に、その教師が心から可愛がっている爽やかで純粋な輝きを持つサッカー部の生徒がいる。
その生徒、水島の姿を見て、浜田は今まで感じたことのない黒い澱が胸の内に溜まっていくような気持ちを味わう。
もちろん、浜田はその二年生に恨みなどない。
何より、これまでに接点すらないのだ。
彼を、いたぶる言われもない。
だが、面白くない。
サッカー部顧問の純一とサッカー部員の水島の間に強く築かれたスポーツを通した絆、青春の清らな輝きといったものが、腹立たしい。
なぜかイライラが止まらない。
このやり場のない黒い気持ちが、この後、年長の教師への八つ当たりのような、より惨い仕打ちに繋がるのだが、、、
浜田の脳裏に、数ヶ月前のグラウンドの光景が浮かび上がる。
やることもないので、溜まり場としている校舎の屋上で、菊池、栗山と共に時間を潰していた。
眼下のグラウンドでは、他校を招き、サッカー部の親善試合が行われていた。
競り合いの末、初めて対戦相手に勝利したサッカー部員たちは、歓喜を隠そうともせず、お互いに抱き合い、そして顧問の教師である来生にも次々抱きついた。
教師もまた、喜びに溢れた顔で生徒たちと抱き合い、頭を撫で、最後は部員たちから胴上げをされていた。
最初に顧問教師に飛びついたのが、まさに今、目の前で青ざめている水島だった。
目の前で繰り広げられる陳腐な学園モノのような爽やかぶった光景を、浜田は白けた目で見ていたが、生徒たちの手で胴上げされ、宙に浮く大柄で爽やかな教師の肢体は、なぜか彼の意識に印象深く焼き付いた。
「あの来生って教師、チンチンがメチャクチャでかいんだよ」
校内なのに、下着一枚のボクサーブリーフ姿の栗山が言った。
その手は、上半身にシャツを羽織っているものの下半身はズボンを下ろし、剥き出しとなっている菊池の怒張した股間に当てられている。
指が、菊池のモノを優しくまさぐっている。
「あん?あの爽やかぶった嫌味な野郎か。青春ぶってマジ、ウザい奴っ」
露骨に不機嫌な口調だ。
「去年のプールの授業の時、半端のないデかさで驚いた。スイムウェアを引っ剥がしちゃいたかった。ケツにぶっこんで欲しい」
「てめぇ、体育の授業中になに考えてんだ」
そんな菊池と栗山の学生とは思えぬ戯れを聞きつつ、浜田はもう校庭のサッカー部の試合からは興味を失っていた。
彼は、体育倉庫から勝手に屋上に持ってきた古びたマットを出入り口の壁に立てかけ、正拳の練習を始めた。
ゴスッ!ゴスッ!
鋭く重い音が響く。
栗山が跪き、腰を突き出した菊池の股間をしゃぶり始めたのにも気を向けない。
浜田は、すでにその日、栗山の尻に二度も放出しており、肉体の欲望は満たされていた。
もともと彼は、格闘家として自分の技を磨く以外の事には、ほぼ興味が湧かなかった。
浜田は、中学時代から骨太の体格に恵まれ、普段は無口で静かだが、キレると手がつけられない性格で、教師からも匙を投げられ、腫れ物扱いをされていた。
高校入学時には、もうマイペースに好き勝手過ごす癖がついていた。
同級生はガキばかりで、真面目に会話をする気にはならない。
授業も退屈だ。彼は学校で何も学ぶことはないと冷めた気分で、屋上で過ごす時間の方が多かった。
だが、この学園に入学してからしばらくして、彼は思いもかけず、人生における大きなことを学ぶ。
それは、ガタイのいい大人の男を服従させ、奉仕をさせることの喜びだった。
皮肉なことに、浜田にそれを教えたのは、彼にとって鬱陶しく退屈な大人の象徴だった体育教師である。
その教師は、尊大で偉そうに振る舞う男で、ラグビーをやっていたらしく、頑丈な身体をしていた。
盛り上がった筋肉に、男盛りを示す程よい脂肪が乗った、男臭い体躯。
30を過ぎたばかりの、脂の乗った男盛りだった。
自分でもその腕力と存在感を分かっていたのだろう。彼は竹刀を片手に生活指導を厳しく行っていた。
それは行き過ぎたものだったが、生徒たちはもちろん、同僚教師たちも、その粗暴で荒々しい教師に口を出さなかった。
教師という立場で、生活指導を名目に、自らの立場を誇示する、矮小な男だった。
登校時刻には校門の脇に立ち、遅刻しそうな生徒を大声で怒鳴りつける。
制服の乱れは容赦なく摘発する。
そんな教師の目に、新入生なのに太々しい態度の浜田が止まらないわけがなかった。
ネクタイを緩めにし、シャツもはだけた浜田の服装に、入学早々から難癖をつけ始めた。
煩がりながらも、最初のうちは従っていた浜田だが、次第に無視するようになる。
そうすると、短気でプライドも高い体育教師もムキになる。
一触即発の状態が何度か訪れたが、教師は生徒を竹刀で打てば、暴力事件と社会的な問題になることを理解しており、微妙な均衡の中での緊張が続いた。
教師がいくら竹刀を振り下ろし、地面に叩きつけ威嚇してきても、浜田は挑発に乗らず、涼しい顔で無視する。
それが教師をさらに怒らせた。
その体育教師は、気に入らない生徒を問題とならず合理的にやっつける手段を心得ていた。
それは、授業中にその一環として行うことだった。
K学園の体育の授業には柔道が伝統的に組み込まれている。
その授業のカリキュラムの一つである乱取りの最中に気に入らない生徒と組み、徹底的に締めるのだ。
投げ技、寝技、足払い、、、
生徒がギブアップしてもさらに続ける。
大抵の生徒は、それで教師に従うようになる。
「何度も言わせるなっ!制服をきちっと着ろっ!」
「うっせぇな、、、てめぇも教師のくせに髭面だろっ!」
朝の校門で、荒々しい男臭さをぶつけ合い、睨み合う教師と新入生。
「よし、分かった。勝負をしよう」
その日、突然の教師の言葉に、生徒である浜田は虚を突かれた。
「今日の柔道の授業。俺と乱取りをしろ。勝てとは言わん。万が一、俺に技を決めることが出来たら、何でも一つ言うことを聞いてやる。真剣にかかってこい。その代わり、少しも技をかけられなかったら態度を改めろ」
体育教師は、自分の腕力と柔道経験に絶対の自信を持っていた。
技をかけられる云々の前に、浜田と乱取りを組み、授業という大義名分のもとでボコボコにして、屈服させるのが狙いだったのだ。
「ああ、解ったよ。真剣勝負だなっ。受けて立つよ」
そして柔道場。
準備体操、数組に分かれての乱取り。
やがて授業も中盤を過ぎたころ、“試技”だと言い、体育教師は他の生徒を柔道場の壁沿いに座らせ、浜田を前に呼び出す。
同級生たちの前で浜田を嬲り、恥をかかせることが目的だった。
柔道着の帯を締め直し、脂の乗った男盛りの体育教師が、竹刀を置いてニヤリと傲慢な笑みを浮かべる。
対する浜田は、一切の表情を動かさず、獲物を見定める獣のような静かな眼差しで、教師の屈強な体躯を見つめ返した。
向かい合う二人。
先に動いたのは教師だった。
「行くぞ!」
教師は、ラグビーで培った頑丈な体躯を活かし、真正面から圧倒的な重みと荒々しい力で浜田の柔道着を掴みにいった。
彼の太い指が、浜田の左襟と袖を掴む。
だが、浜田は一瞬で教師のそれに応じ、そして凌駕する。
教師が力で押し込もうとした瞬間、浜田は骨太の体格に似合わぬ電光石火の速さで、教師の袖を切り、逆の襟元を掴んだ。
その低い重心と、岩のように硬い手のひらの感触に、教師は最初の違和感を覚える。
重い、、、
コイツ、柔道をやっていたのか?
だが、負ける気はない。
教師は、自身の体重と長年の経験に基づく強引さで、浜田の体勢を崩そうと、グイッと引きつけ、横に捌こうとした。
しかし、浜田の体はまるで大地に根を張った巨木のように、微動だにしなかった。
教師は、予想外の展開に焦りを覚え、表情を一変させた。
チクショウ、新入生が、舐めるんなよっ!
彼はプライドをかけ、一気に体重を浴びせかけるように組み合い、豪快な大外刈りを仕掛けようと足を出した。
その瞬間、教師の荒々しい力と体重の全てを、浜田は受け流すことなく、真正面から受け止めた。
浜田の全身を覆う鍛えられた筋肉が、教師の体重の衝撃を受け止め、そして、身体を少し反らし、受け流す。
教師は、自分が、重い鉄板に技をかけようとし、弾き返されたような圧を感じる。
なんだこの圧倒的な重さは?
こいつ、、、どれだけ鍛えているんだ?
ま、まるでプロの格闘家のようだ、、、
教師の顔色が変わった。
冷や汗が背中を伝う。
今まで抑えつけてきた他の生徒たちとは違う実力を悟る。
浜田の眼差しは、依然として無表情で静かだったが、その瞳の奥には、教師の焦燥と恐怖を正確に捉え、楽しんでいるかのような、冷酷な光が宿っていた。
負けるわけにはいかない、、、
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次々と技を掛けようとするが、生徒、、、浜田は動じずにそれを受け流す。
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