聖職より堕ちた教師 純一の場合

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リライト21 歪んだ初恋 1 戸惑い SIDE:純一

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窓から差し込む朝の光が、来生純一の寝室を容赦なく照らし出した。

目が覚めた瞬間、純一を襲ったのは、股間に感じる不自然な熱と、ねっとりと湿った不快な感触だった。

「……っ!?」

腰の辺りに、絞り出した後のような奇妙な虚脱感と、突き抜けるような快感の残滓が漂っている。

ハッとして掛け布団を剥ぎ取り、下着の中を確認した純一の顔が歪む。

夢精をしてしまった、、、

射精という行為は、純一の中で煩悩の最たる現象である。

健康で自慰行為を行わない青年にとって、当たり前の肉体反応であるが、人一倍ストイックな純一にとってはそれが自分の精神の弛みからのように思ってしまう。

教師である自分が淫夢を見て夢精など、、、

大量に放出された愛液でグチョグチョのブリーフが穢れたもののように感じる。

そして、、、

純一の顔が歪む。

純一の脳裏には、夢の光景が鮮明に蘇ってきた。

夢の中に現れたのは、、、

おそらく浜田、、、

生徒を夢見て放出をしてしまったのか、、、

純一は頭を抱える。

夢の中に現れた男、、、(おそらく浜田)、、、は、野性味に溢れ、恐ろしいほどの雄としてのオーラを放っていた。

全体像はハッキリとは分からない、、、

が、鮮明に覚えている眼光鋭い意志の強そうな両目は間違いなく浜田のものだ、、、

霧の中に浮かび上がったような盛り上がった分厚い上半身、、、

日に焼けた肌は汗で鈍く光っていた。

胸毛に彩られた巨大な大胸筋が目の前で波打つ。

純一は夢の中で怯える。

ぶっとい腕、、、

それが純一を捕まえようと迫る、、、

身を翻し逃げようとする純一、、、

太い脚が近付いてくる、、、

股間の辺りは霧のような、靄のようなベールで包まれ見えない、、、

純一の喉が渇き、グビッと音がする、、、

なぜか身体がゾクゾクと慄える、、、

動かぬ身体を無理矢理動かそうとし、逃げようとした瞬間、、、

霧の中の男が遠ざかる、、、

遠ざかっているのにその逞しい胸毛、、、

逞しい腕の付け根に覆い茂る漆黒の腋毛、、、

男らしさの象徴である夢の中の男の体毛が、純一の目の前に強調される

その胸毛の生えた逞しい胸に自らの頬を擦り付け、理性をかなぐり捨てて甘えたい、、、

男らしい腋毛に、純一は顔を埋め、貪り喰らいたい、、、

逃げようとしていたのに、なぜか純一は必死で後ろ姿を追う、、、

その丸太のように太い腕に、骨が軋むほど荒々しく抱きしめられ、その暴力的な愛撫に身体を委ねたい、、、

急に、浜田の目をした夢の男は、純一に軽蔑するような冷酷な一瞥を喰らわせ消える、、、

行かないでくれっ!

純一は必死にその背中を追い求めようとするが、足元は底なしの沼に嵌まったように重く、一歩も動けない、、、

ああっ!、、、と叫び声を上げた瞬間、純一の肉体は解放され、快楽に貫かれた、、、

最低だ。俺は、本当に、、!最低だっ!!

純一は濡れた下着を脱ぎ捨てた後、裸の尻でベッドに座り、項垂れた。

生徒に対して、あろうことか性的な妄想を抱き、あまつさえ夢精までしてしまう。

自己嫌悪の泥沼が彼を飲み込んでいく。

浜田の存在を意識したおかげで、純一の日々のペースは完全に狂っていた。

マンションで過ごす夜は、落ち着いた安らぎの時間だった。

これまでは、、、

一日の疲れ落とし、翌日への鋭気を養う時間、、、

それが、眠れなくなってしまった、、、

これまでは、横になればすぐに寝付けたのに、、、

純一は鍛えられた肉体で、幾度も寝返りを打つ。

身体が妙に火照る。

っ、なぜ、眠れないんだっ、、、、

毎夜、繰り返す自問、、、

これまで築き上げてきた自制心が、たった一人の教え子の存在によって、音を立てて崩壊していく。

頭から振り払おうとすればするほど、その生徒の姿が浮かんでくる。

夜だけではない。

昼間、学校の廊下を歩いていても、視線は無意識に着崩した体格の良い黒い学生服の広い背中を追い求めてしまう。

角を曲がる影、階段を昇る後ろ姿。

そのたびに心臓がギュッと掴まれたようになるが、確認すればいつも別人だ。

彼じゃなかった、、、

その落胆は、もはや教師のそれではない。

恋に焦がれ、身を焦がすうぶな乙女のように、純一の厚い大胸筋の奥はウジウジとした空虚感で満たされる。

制御不能な感情、、、

俺は教師なんだ、、、

一人の生徒のことだけを考えるなんて最低だっ!

理性は自身を叱るが、動きはじめた心は止まらない。

純一の自己嫌悪は増していく。

始まりは、あの、オドオドしながら教員室へ三人の一年生がやって来たことから始まる。

          *

緊張した面持ちでやって来た三人の生徒。

何か話があるようだ。

一人が言う。

残りの二人はその子を守るように付き添っている。

3年生の浜田が、2年の生徒と揉めたことは知っていた。

胸ぐらを掴み、2年の生徒の制服の裏地が破れたらしい。

親が厳重に浜田を処分するようクレームを付けてきたと教員会議で報告があった。

2年の生徒がどちらかと言えば目立たず問題を起こしたことがないのに対し、浜田は、学校で勝手放題している札付きだった。

土地の権力者の息子で、学校は腫れ物に触るように対応している。

浜田が授業をサボってもさほど注意されないのは、彼が粗暴なだけでなく、親に対する配慮もあったのだ。

現在、この学校では、モンスターペアレント対策もあり、自分の受持ち生徒以外には、極力関わらないよう指導されていた。

複数の教師が係わることで方針がぶれてしまうというのが表向きの理由だが、要は責任を取りたくない役付き教師達が、理想に燃える若手に余計な口出しされたくないというのが本当のところだ。

そのことなかれ主義が純一には、歯がゆかった。

どうやら、2年の子は以前より近所に住む1年を使いっぱしりのように扱い、ゲームと称してはイジメ紛いのことをしていたようだ。

そして、それを咎めた浜田と揉み合いになったらしい。

3年生の浜田さんが助けてくれたと教え子が言う。

目に涙を浮かべている。

今、学年主任が一方的に浜田か悪いと決め付けて廊下で叱りつけているのを見て、いても立ってもいられなくなり、同級生とともに、純一に相談しようと教員室へやって来たそうだ。

純一が心を動かされない訳はない。

素早く立ち上がり、1年の生徒達に「先生に任せろ」と言い、浜田と学年主任が揉めている廊下に向かう。

ヒステリックに騒ぐ学年主任と、その前でふて腐れた様子の猛者と呼ばれる3年生の姿。

やはり、猛者、、、浜田が一方的に責められている。

純一は、主任に声を掛ける。

浜田が一方的に悪い訳ではないと上司の教師に、今、教え子が訴えてきた内容を説明する。

きちんとなにが起こったかを把握してほしいと。

一年生に事情を聴いてくれと伝える。

被害者と思われていた生徒のいじめ行為が原因の可能性が高いと言うと、いじめという言葉に敏感に反応した上司は、浜田をほったらかし、一年に事情を聞くために教員室に向かう。

そして、純一は、教え子を救ってくれ、その事情を説明せず濡衣を着た猛者に感謝の言葉を述べる。

その時、、、

猛者と目があった。

その瞬間、、、

純一の魂は、激しい衝撃に貫かれた。

トキメキなどという生やさしいものではない。

突然の暴力に曝されたような激しい痛み、、、

不敵に、そして、ふてぶてしく自分を見据える浜田の漆黒の瞳。

意志の強そうな眉、鋭い鼻筋、そして若さに似合わぬがっしりとした顎のライン。

だらしなく着崩した制服の隙間から、若々しくも荒々しい雄の匂いがムッと立ち上がり、純一を包み込み、絡め取っていく。

、、、、

声が出ない。

純一が心の奥底で、無意識に、そして本能的に求めていた暴力的なまでの男臭さを、目の前の少年が体現していた。

浜田の姿が純一の脳髄に焼き付く。

もし浜田が先に目を逸らさなければ、純一の身体はガクガクと力を失い、その場で跪いてしまっていたかもしれない。

純一は無理やり笑顔を貼り付け、“猛者”とあだ名されている生徒に礼を述べると、逃げるようにその場を去った。

主任と一年の間を繋がなくてはという理由を心の中で自分の言い訳にし、、、

惹きつけられているのに、離れたい。

その生徒から受けた感情の揺さぶりの正体が分からず、ただ、その顔を思い出そうとしても、なぜかボヤけて思い出せない不思議な感覚。

彼に会いたい、、、いや、会わなきゃいけないんだ、、、一年生をイジメから救ってくれた礼を言うために、、、

そんな自分への言い訳を巡らせる。

普段の純一なら、やるべきことは即座に行動に移す。

しかし、浜田のことを思うだけで、足が竦むような躊躇いが生まれる。

浜田に会いに行き、もし相手にされなかったら? 

もし、その冷たい瞳で見返されたら?

考えなくても良いネガティブな想像が浮かんでしまう。

教員室で事務作業をしていても、心はフワフワと宙を浮いている。

浜田はよく屋上でサボっているという。

礼を言うだけだ、、、

教師として当然のことだ、、、

なぜか言い訳のように自分に言い聞かせていることに純一は戸惑う。

屋上へ行く決心をする。

純一は、心臓の鼓動が耳元で鳴り響くのを感じながら、ゆっくりと屋上への階段を昇ふ。

一段昇るごとに、胸に澱のような不安が溜まる。

逃げ出したいような衝動と、早く会いたいという渇望がせめぎ合う。

ようやく辿り着いた屋上の扉を、汗ばんだ手で開ける。

青空が広がっていた。

だが、そこには誰もいない。

フゥ、、、

安堵しつつ、同時に世界の終わりかのような途方に暮れる感覚を味わう。

フラフラと屋上の端まで歩き、ふと柵の下、、、校舎裏を見下ろした。

居た。

猛者、浜田。

その姿を見た瞬間、純一はビクンと反応する。

校舎裏、木に巻き付けたマットに向かい、一心不乱に蹴りを入れている。

その躍動する背中、若き雄のエネルギーの迸りが屋上まで届いてくるようだ。

衝動が、純一を動かした。

純一は踵を返すと階段を全力で駆け降りた。

教師の鎧は剥がれ、恋する男と化していることに純一は気付いていない。

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