【完結】1000年後に目覚めた転生勇者が、もふもふ毛玉になって少年と旅をするお話

すくらった

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23. 「邪魔者は排除する」

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 雲を切り裂く突風が、澄んだ青空を駆け抜けた。

 ヴィーノ、ホリー、そしてトレセルをそれぞれ乗せたフライングドッグたちが、横隊を組んだ飛犬騎士団の一角で翼を広げていた。陽光を浴びた飛犬の毛並みはきらめき、背に据えられた専用の鞍と補助具が戦いの重みをまとわせる。

 ホリーは、その背に、まるでサーフボードに乗るように軽々と立っていた。片耳だけぴょこんと跳ね、風を切る横顔は楽しげだ。

「すっごい! 気持ちいい、これ!!」

「絶対、落ちるなよ!?」
トレセルが叫ぶと、ホリーはひらひらと手を振った。

「あはは、だいじょーぶだいじょーぶ! 安定してるってば!」

 隣を飛ぶナコが心配そうに見つめる。
「ホリーちゃん、立ち乗りはほんとはダメだからね!」

「へーい!」

 そのやり取りの下、空を裂くように、暗い影が渦巻いていた。

 巨大魔蟲の群れだ。

 密集した群体が黒い雲のように広がり、耳にざわつく羽音が空気を震わせていた。

「下! 会敵!」
タイタロウの号令で、イヌガホシ、イヌガネ、イヌガミエら精鋭を乗せたフライングドッグが散開する。

「来るぞッ! 迎撃用意!!」

 魔蟲の群れが陽光を反射し、空の青が黒に塗りつぶされていく。

 ヴィーノは腕輪に触れた。
「トレセル、いける?」
「もちろん。……身体を借りるぞ」
「うん!」

 ヴィーノは飛犬の前足に銀色の腕輪をはめる。
「これ、預かってて!」

 一瞬、トレセルの姿が光になり、ヴィーノの身体へと溶け込んだ。開いた瞳は深い赤。射抜くように虫の群れを見据える。

「燃やし尽くす! エンチャント!ファイヤー・ブロー!」

 紅蓮の拳が空を薙ぎ、熱風のうねりが虫の群れを切り裂く。甲殻が破裂し、炎の奔流が空に橋のように架かった。

 ホリーが叫んだ。
「私もいっくよーッ!」

 鞍を蹴り、跳躍。そのまま空中で回し蹴りを放つ。空気が弾けるように半月形の衝撃波が拡散し、数体の虫が裂けて散った。

「すげぇな、ホリー……」
トレセルが感嘆する。

ホリーは器用に鞍へ降り立ち、満面の笑みを浮かべる。
「もっと褒めていーよー!」

ナコが声を上げる。
「炎と衝撃波で敵が分断されてる! すごい!」

タイタロウも唸るように言う。
「全員わが騎士団に欲しいくらいだ……! 我らも勇者たちに続け!」

触発された飛犬騎士団も、次々と虫たちを切り捨て、燃やしてゆく。

しかし……

残った魔蟲たちが再び集合し、背後から迫る。

「ちょっと! 後ろ後ろ!めっちゃ来てるよ!」
「下がれ、ホリー!」

再びトレセルが炎を放ち、射線上の虫を焼き払う。

「いいぞー!」
ホリーが嬉しそうに叫んだ、その時。

「やはり貴様がいたか。『裏切り者』ホリーよ」

増援の群れの中心に、禍々しい影が姿を現した。

深緑の甲殻。軍旗のように広がる翅。整った兵士のような肢体。
眼に宿る深い緑の複眼は、冷たい威圧を放っていた。

トンボの戦士、セク。

「裏切り者……ね」
ホリーの胸奥に、鋭い痛みが走る。
「『虫』のセク。相変わらずやなやつ」
「ホリー、フェイドゥーラ様の恩を忘れたか。貴様の罪、許されぬ」

セクの姿にタイタロウが驚く。
「親玉が出てきただと。これも勇者どのの働きのおかげか」

一方、ヴィーノとトレセルの表情は緊張で硬くなる。
「あいつ……『影』だ」
「強いぞ、ヴィーノ。覚悟しろ」

「フェイドゥーラ様が降臨されるという時、貴様らのようなゴミが空に残っていては困るのだ。ここで一人残らず消えてもらう!」
セクが両腕を広げた瞬間、周囲の魔蟲たちが一斉に動き、整然と陣形を組み始める。

わずかな時間で、制空権が奪われた。

「囲まれ……た?」
ホリーが呟く。

「てーっ!」
次の瞬間、空を覆う陣形から、無数の毒弾が降り注いだ。
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