26 / 55
24. 天空への道
しおりを挟む
空気を裂くように、ナコが鋭く叫ぶ。
「回避!回避! とにかく動かないと、的にされるよ!」
三人と犬騎士団を背に乗せたフライングドッグたちが、急角度で旋回する。毒の矢が空を埋め、避けても避けても鋭い針が迫る。風の流れが刺さるように体を打つ。
タイタロウの鋭い声が指示を飛ばす。
「慌てるな! 風上へ移動! 火炎攻撃を風下に向けろ!」
犬騎士たちは指示に従い、一斉に炎の矢を放つ。数条の炎が空を横切り、魔蟲の群れが次々と焼け落ちる。しかし、焼けたそばからさらに新たな群れが押し寄せ、まるで空全体が敵に覆われたようだった。
ナコが急上昇し、声を張る。
「あのトンボ野郎が司令塔だよ! あいつを倒さないと、いくら焼いても意味がない!」
「なら……弾幕を突破するしかない」
しかし、セクの周囲は蜂の巣のように魔蟲が密集し、近づくどころか視界さえ阻まれる。セクは虫を指先だけで操り、群れを瞬時に動かす。
「ふん、燃やすのが得意らしいが、焼ける範囲より、焼け残りのほうが多いな」
セクが手をあげる。その瞬間、空全体から強酸が降り注いだ。金属を溶かすような臭いが鼻を刺し、空気が煙のように白く濁る。タイタロウの警告が絶叫のように響く。
「散開! 一滴でも当たれば命はないぞ!」
犬騎士団は必死に身をかわし、編隊は瓦解する。羽ばたきと叫び声が空中で混ざり、戦況は完全にカオスと化した。
ホリーの声が焦りを帯びる。
「炎の範囲……もっと広げられないの!? 今のままだと抜けられちゃう!」
トレセルは唇を噛み、冷汗をぬぐう。
「……これで限界だ。もっと『風』があれば……!」
その言葉に、ナコの瞳が光った。
「風なら私たちで作れるよ!」
タイタロウも力強く頷く。
「よし、フライングドッグの羽ばたきで、炎を面にして押し広げろ! 突破口を作るんだ!」
ナコが叫ぶ。
「みんな! フォーメーション『風の合図』!」
「はいっ!」
飛犬騎士団が手綱を引き、隊列は美しい扇形に変化する。無数の翼が一斉に震え、空気が唸り、戦場全体がうねるように動き出した。
トレセルが拳を突き出し、魔力を解き放つ。
「じゃあいくぜ!最大火力!エンチャント!ファイヤー・ブロー!!」
炎は渦となり、空に橋を架けるように広がった。
タイタロウが号令する。
「翼風支援、開始!!」
羽ばたきが炎を押し広げ、風が渦を巻く。紅蓮の壁が、空を覆い尽くすほど巨大に膨張する。燃え盛る炎の津波が魔蟲の群れを押し流し、空の向こうまで染め上げた。
「うおおおおおッ!!」
セクの目に、わずかな恐怖が映る。いつもは冷静なはずの顔に、初めての焦燥が走る。
「な……なに……!? 馬鹿な……!」
トレセルが叫ぶ。
「今だ! 一気に叩く!」
「く、させるか!」
セクは必死に虫を呼び戻すが、もはや制御は効かない。
やがて炎の奔流がセクの体をも包み込む。甲殻が弾け、その輝きが瞬く間に消え去った。
「ぐわああっ!……フェイドゥーラ様……申し……訳……」
その声は風に溶け、影は跡形もなく消滅する。
焼け残った巣は炎に包まれ、灰の雨となって落ちながら砕けていく。敵影は完全に消え、空は静寂を取り戻した。
「勝った……勝ったよ私達!」
完全勝利に、騎士団の歓声が響いた。
数刻後、飛犬の里。
ナコがフライングドッグから降り、ヴィーノたちへ駆け寄る。
「本当に助かったよ……! ありがとう!」
タイタロウも笑みを浮かべる。
「親玉を倒したことで、空域の虫の指揮系統は完全に崩壊した。もし残党が来ても我々だけで対処できるだろう。本当に、あなたたちがいなければ我々は全滅していたところだった」
ホリーはへたり込み、息を荒げる。
「ひーっ……空中戦、疲れすぎた……!」
ヴィーノも力なくうなずく。
「僕も……腕がまだ震えてる……」
トレセルが微笑み、深く息を吐いた。
「だが――悪くない連携だったな」
ホリーが胸を張り、にやりと笑う。
「だよね!」
タイタロウがトレセルの手を取り、まっすぐな目で告げる。
「ありがとう勇者どの。約束通り、空の図書館まで案内しよう。あなたたちは『天空図書館の客人』としてふさわしい」
三人は互いに視線を交わし、同時に頷く。
「行こう。雲の上の図書館へ!」
村でゆっくりと休んだその翌日。ナコが笛を吹き、ヴィーノ達を乗せたフライングドッグたちが翼を広げて空を舞う。
「じゃ、行くよ」
ナコと三人は、大空へ飛び立った。
空の向こうのその先には、まだ誰も知らない秘境が広がっていた。
「回避!回避! とにかく動かないと、的にされるよ!」
三人と犬騎士団を背に乗せたフライングドッグたちが、急角度で旋回する。毒の矢が空を埋め、避けても避けても鋭い針が迫る。風の流れが刺さるように体を打つ。
タイタロウの鋭い声が指示を飛ばす。
「慌てるな! 風上へ移動! 火炎攻撃を風下に向けろ!」
犬騎士たちは指示に従い、一斉に炎の矢を放つ。数条の炎が空を横切り、魔蟲の群れが次々と焼け落ちる。しかし、焼けたそばからさらに新たな群れが押し寄せ、まるで空全体が敵に覆われたようだった。
ナコが急上昇し、声を張る。
「あのトンボ野郎が司令塔だよ! あいつを倒さないと、いくら焼いても意味がない!」
「なら……弾幕を突破するしかない」
しかし、セクの周囲は蜂の巣のように魔蟲が密集し、近づくどころか視界さえ阻まれる。セクは虫を指先だけで操り、群れを瞬時に動かす。
「ふん、燃やすのが得意らしいが、焼ける範囲より、焼け残りのほうが多いな」
セクが手をあげる。その瞬間、空全体から強酸が降り注いだ。金属を溶かすような臭いが鼻を刺し、空気が煙のように白く濁る。タイタロウの警告が絶叫のように響く。
「散開! 一滴でも当たれば命はないぞ!」
犬騎士団は必死に身をかわし、編隊は瓦解する。羽ばたきと叫び声が空中で混ざり、戦況は完全にカオスと化した。
ホリーの声が焦りを帯びる。
「炎の範囲……もっと広げられないの!? 今のままだと抜けられちゃう!」
トレセルは唇を噛み、冷汗をぬぐう。
「……これで限界だ。もっと『風』があれば……!」
その言葉に、ナコの瞳が光った。
「風なら私たちで作れるよ!」
タイタロウも力強く頷く。
「よし、フライングドッグの羽ばたきで、炎を面にして押し広げろ! 突破口を作るんだ!」
ナコが叫ぶ。
「みんな! フォーメーション『風の合図』!」
「はいっ!」
飛犬騎士団が手綱を引き、隊列は美しい扇形に変化する。無数の翼が一斉に震え、空気が唸り、戦場全体がうねるように動き出した。
トレセルが拳を突き出し、魔力を解き放つ。
「じゃあいくぜ!最大火力!エンチャント!ファイヤー・ブロー!!」
炎は渦となり、空に橋を架けるように広がった。
タイタロウが号令する。
「翼風支援、開始!!」
羽ばたきが炎を押し広げ、風が渦を巻く。紅蓮の壁が、空を覆い尽くすほど巨大に膨張する。燃え盛る炎の津波が魔蟲の群れを押し流し、空の向こうまで染め上げた。
「うおおおおおッ!!」
セクの目に、わずかな恐怖が映る。いつもは冷静なはずの顔に、初めての焦燥が走る。
「な……なに……!? 馬鹿な……!」
トレセルが叫ぶ。
「今だ! 一気に叩く!」
「く、させるか!」
セクは必死に虫を呼び戻すが、もはや制御は効かない。
やがて炎の奔流がセクの体をも包み込む。甲殻が弾け、その輝きが瞬く間に消え去った。
「ぐわああっ!……フェイドゥーラ様……申し……訳……」
その声は風に溶け、影は跡形もなく消滅する。
焼け残った巣は炎に包まれ、灰の雨となって落ちながら砕けていく。敵影は完全に消え、空は静寂を取り戻した。
「勝った……勝ったよ私達!」
完全勝利に、騎士団の歓声が響いた。
数刻後、飛犬の里。
ナコがフライングドッグから降り、ヴィーノたちへ駆け寄る。
「本当に助かったよ……! ありがとう!」
タイタロウも笑みを浮かべる。
「親玉を倒したことで、空域の虫の指揮系統は完全に崩壊した。もし残党が来ても我々だけで対処できるだろう。本当に、あなたたちがいなければ我々は全滅していたところだった」
ホリーはへたり込み、息を荒げる。
「ひーっ……空中戦、疲れすぎた……!」
ヴィーノも力なくうなずく。
「僕も……腕がまだ震えてる……」
トレセルが微笑み、深く息を吐いた。
「だが――悪くない連携だったな」
ホリーが胸を張り、にやりと笑う。
「だよね!」
タイタロウがトレセルの手を取り、まっすぐな目で告げる。
「ありがとう勇者どの。約束通り、空の図書館まで案内しよう。あなたたちは『天空図書館の客人』としてふさわしい」
三人は互いに視線を交わし、同時に頷く。
「行こう。雲の上の図書館へ!」
村でゆっくりと休んだその翌日。ナコが笛を吹き、ヴィーノ達を乗せたフライングドッグたちが翼を広げて空を舞う。
「じゃ、行くよ」
ナコと三人は、大空へ飛び立った。
空の向こうのその先には、まだ誰も知らない秘境が広がっていた。
10
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~
たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。
辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。
壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。
その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。
ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。
死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。
命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。
自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる