病弱な幼馴染を溺愛する彼に、愛想が尽きました。

小野 まい

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第23話 公開処刑の場

リリアーナの振る舞いに心を動かされたフェルナンドの瞳に、隠しきれぬ同情と怒りにも似た義憤ぎふんの光が瞬く。



(よし、食いついた。このまま『私が君を守るよ』と言わせれば……)


リリアーナは指の隙間から鋭く見定め、冷静さを装いながらも心の奥で計算していた。


「なんという……あのユリウス殿下は、そこまで卑劣な真似を! リリアーナ嬢、君は何も悪くない。ひどい恐怖だっただろう。もしよければ、私が君の身の安全を――」


フェルナンドが彼女の手を取ろうとした、まさにその瞬間。



「――随分と安っぽい悲劇が上演されているんだね。三流の喜劇役者でも、もう少しマシな台本を用意するよ?」



バルコニーの空気を一瞬で凍りつかせる、極寒の吹雪のような声。

フェルナンドが弾かれたように振り返り、リリアーナの肩がビクッと跳ねた。

そこに立っていたのは、白銀を基調にした光輝く衣装を身に纏い、夜よりも深い影を湛えた微笑を浮かべる比類なき美貌の青年だった。

社交界の中心にして裏では権勢をふるう、オリバー・フォン・ロードナイト辺境伯御子息だった。



「オ、オリバー様……」

「ご機嫌はいかがかな、フェルナンド卿。少しその『被害者ぶった泥棒猫』を借りてもいいかな? 駆除すべき害虫が、我が物顔で社交界(ぼくの庭)を這い回っているのは、とても目障りなんだ」


オリバーは、指先で軽くパチンと音を立てウインクし、次の瞬間には凍てつくような視線でリリアーナを鋭く捉えた。

その圧倒的な覇気と威圧感に、フェルナンドは思わず一歩後ずさった。



「オリバー様……! ひ、ひどいですわ! わたくしは本当に、殿下に脅されて……っ!」

「脅されていた? 殿下が恐ろしくて逃げたかった?」


オリバーは肩を揺らし、控えめにくすくすと笑った。そして、背後に控えていた自身の執事に指を鳴らした。



「フェルナンド卿。この女の涙に絆される前に、こちらをご覧あれ」


執事がうやうやしく差し出したのは、分厚い書類の束だった。


「これは、王都の一等地に店を構える高級ブティックや宝石商からの『リリアーナ男爵令嬢直筆の注文書』の写し。日付を見てごらん。……直近の三年間で、彼女がユリウス殿下に『おねだり』した品々の総額。男爵家の年収の余裕に百年分は超えているよ」

「なっ……!?」


フェルナンドの目が点になった。



「脅されて怯えていた可哀想な令嬢が、自分から『新作のダイヤのネックレスが欲しいわ、殿下♡』なんて、ご丁寧に愛の言葉を添えた手紙を送りつけると思う?」

「そ、それは……殿下が無理やり買えと……!」

「へぇ? では、これも殿下の命令かな?」


オリバーは、さらに数通の香水の匂いが染み付いた手紙を取り出した。



「君がユリウス殿下の庇護下にいながら、裏でこっそりと他の裕福な貴族の令息たち。例えば、隣国の豪商の息子や、子爵家の三男あたりに送っていた『色目を使った手紙』の数々だよ。『殿下は強引で困ってしまいます。あなたのような優しい方に助けていただきたいわ』……さっきフェルナンド卿に言っていた台詞と、一言一句同じじゃないか」

「――ッ!!」


リリアーナの顔から、一気に血の気が引いた。

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