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第26話 お花畑コンビ再び
「嘘をつくな! 殿下の王籍を剥奪させたのも、君の実家が圧力をかけたからだろう! 彼らがどれほど深く愛し合っていたか、身近にいた君なら分かっていたはずだ! なぜ、身分差の恋を祝福してやらなかった! なぜ、持てる者である君が、少しの寛容さを見せてやらなかったんだ!!」
ジャックが、己の正義に酔いしれた顔で熱弁を振るう。
そのあまりにも身勝手で幼稚な主張に、エレオノーラが呆れてため息をつこうとした、その瞬間だった。
「――持てる者、だと? 寛容さ、だと?」
空気を切り裂くように、全身の血を凍らせる冷たい声が辺りを満たした。
エレオノーラの一歩前に進み出たアーサーが、剣の柄に手をかけもせず、ただ静かに二人を見下ろしていた。
「あ、アーサー副団長……? なぜ騎士団を辞めて、こんな魔女の元に……いや、そうか。貴方もこの女の金と権力に魂を売ったのですか! 騎士の名に泥を塗るような真似はやめてください! 貴方の強さも人格も尊敬していたのに、裏切られた気分です!」
若くして王国騎士団の副団長に就任したアーサーは、騎士団長をも凌ぐ実力を持っていた。辺境伯家の御子息という家柄だけでなく、その人柄の良さでも仲間の騎士たちに慕われていた。
少し年上のアーサーの卓越した力と誠実な人間性に、ジャックはいつも憧れを抱いていた。だからこそ、彼が騎士団を辞めると知った瞬間、胸が締め付けられるほど驚いた。
「魂を売った? 裏切られた? ……ふざけるなよ、三流」
紫水晶のように澄んだアーサーの瞳が、まるで矢のようにジャックを貫いた。
その瞬間、ジャックとクロエの全身に、目に見えない巨大な重圧がのしかかった。
「お前たちが美しいと讃える『真実の愛』とやら。あの馬鹿王子と男爵令嬢の逢瀬や、身の丈に合わない贅沢品、煌びやかなドレス。……それらが一体、誰の金で賄われていたか、まさか考えたこともないとは言わせないぞ」
「そ、それは……殿下が……」
「殿下の金ではない! 全て、この十年間、エレオノーラ様とローゼンクロイツ公爵家が国庫を支えるために流し込んだ、莫大な血税と私財だ!!」
アーサーの怒声が、雷鳴のように庭園に轟いた。
ビクッと肩を震わせる二人に向かって、アーサーは容赦なく言葉の刃を突き刺していく。
「お前たちは『寛容さを見せろ』と言ったな? 良いだろう。あの二人の愛がそれほどまでに尊く、守るべきものだというのなら、簡単なことだ。……お前たちの実家の領地と財産を全て売り払い、王家が抱えた『五年分の国家予算と同等』の借金を肩代わりしてやれ。そうすれば、殿下も男爵令嬢もすぐに自由の身だ」
「なっ……!」
「ご、五年分の、国家予算……!?」
初めて突きつけられた借金の具体的な規模に、ジャックとクロエは顔面を蒼白にした。
愛だの恋だのというフワフワした言葉では絶対に乗り越えられない、圧倒的で暴力的な数字。
「どうした? 払えないのか? お前たちの言う真実の愛の価値は、その程度か? 他人の財布で遊んでいる間だけ祝福し、いざ自分たちが泥を被るとなれば尻込みする。……虫唾が走るな。その薄っぺらい口で、二度とエレオノーラ様の前で『愛』を語るな」
「ぐっ……! こ、この騎士団の裏切り者め!!」
論理で完全に追い詰められ己の偽善を暴かれたジャックは、屈辱と怒りで顔を真っ赤にしてついに腰の剣に手をかけた。
ジャックが、己の正義に酔いしれた顔で熱弁を振るう。
そのあまりにも身勝手で幼稚な主張に、エレオノーラが呆れてため息をつこうとした、その瞬間だった。
「――持てる者、だと? 寛容さ、だと?」
空気を切り裂くように、全身の血を凍らせる冷たい声が辺りを満たした。
エレオノーラの一歩前に進み出たアーサーが、剣の柄に手をかけもせず、ただ静かに二人を見下ろしていた。
「あ、アーサー副団長……? なぜ騎士団を辞めて、こんな魔女の元に……いや、そうか。貴方もこの女の金と権力に魂を売ったのですか! 騎士の名に泥を塗るような真似はやめてください! 貴方の強さも人格も尊敬していたのに、裏切られた気分です!」
若くして王国騎士団の副団長に就任したアーサーは、騎士団長をも凌ぐ実力を持っていた。辺境伯家の御子息という家柄だけでなく、その人柄の良さでも仲間の騎士たちに慕われていた。
少し年上のアーサーの卓越した力と誠実な人間性に、ジャックはいつも憧れを抱いていた。だからこそ、彼が騎士団を辞めると知った瞬間、胸が締め付けられるほど驚いた。
「魂を売った? 裏切られた? ……ふざけるなよ、三流」
紫水晶のように澄んだアーサーの瞳が、まるで矢のようにジャックを貫いた。
その瞬間、ジャックとクロエの全身に、目に見えない巨大な重圧がのしかかった。
「お前たちが美しいと讃える『真実の愛』とやら。あの馬鹿王子と男爵令嬢の逢瀬や、身の丈に合わない贅沢品、煌びやかなドレス。……それらが一体、誰の金で賄われていたか、まさか考えたこともないとは言わせないぞ」
「そ、それは……殿下が……」
「殿下の金ではない! 全て、この十年間、エレオノーラ様とローゼンクロイツ公爵家が国庫を支えるために流し込んだ、莫大な血税と私財だ!!」
アーサーの怒声が、雷鳴のように庭園に轟いた。
ビクッと肩を震わせる二人に向かって、アーサーは容赦なく言葉の刃を突き刺していく。
「お前たちは『寛容さを見せろ』と言ったな? 良いだろう。あの二人の愛がそれほどまでに尊く、守るべきものだというのなら、簡単なことだ。……お前たちの実家の領地と財産を全て売り払い、王家が抱えた『五年分の国家予算と同等』の借金を肩代わりしてやれ。そうすれば、殿下も男爵令嬢もすぐに自由の身だ」
「なっ……!」
「ご、五年分の、国家予算……!?」
初めて突きつけられた借金の具体的な規模に、ジャックとクロエは顔面を蒼白にした。
愛だの恋だのというフワフワした言葉では絶対に乗り越えられない、圧倒的で暴力的な数字。
「どうした? 払えないのか? お前たちの言う真実の愛の価値は、その程度か? 他人の財布で遊んでいる間だけ祝福し、いざ自分たちが泥を被るとなれば尻込みする。……虫唾が走るな。その薄っぺらい口で、二度とエレオノーラ様の前で『愛』を語るな」
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