122 / 125
第122話 妊娠と結婚式
王都の中心にそびえ立つ、白亜の壮麗な大聖堂。空はどこまでも高く澄み渡り、ステンドグラスを通して差し込む朝の光が、祭壇へと続く長いバージンロードを神々しく照らし出していた。
パイプオルガンの荘厳な調べが響き渡る中、祭壇の前で待つ王国最強の騎士にして氷の宰相、レオナルド・ヴェルンシュタイン辺境伯は振り向いて息を呑んだ。
大聖堂の扉が開き、そこに立っていたのは、この世のあらゆる美しさを凝縮したような、純白のウェディングドレスに身を包んだエリザであった。
最高級の絹とレースが彼女の滑らかな肌を包み金糸のような美しい髪には、ヴェルンシュタイン家に代々伝わる星屑のようなティアラが輝いている。
一歩、また一歩とバージンロードを歩みを進める彼女の姿は、まるで天から舞い降りた女神そのものだった。
「これは……まさに目に眩しい」
「心を奪われるとはこのことか」
「油断すると我を忘れそうだ」
「まあ、ドレスの色が肌に映えて、光をまとっているみたい」
「嗚呼、まさに天上の輝き!」
参列する王族や大貴族たちが、そのあまりの美しさに感嘆の溜息を漏らす。
レオナルドは、ゆっくりと近づいてくる愛しい女性から、片時も目を離すことができなかった。
この時レオナルドは、オスカーやマリアに冷遇されながらもひたむきに生きる彼女を、密かに想い続けていた日々を思い返した。
(あの時、エリザの涙を拭き、手を取り、彼女を支えながら困難を乗り越えた……)
オスカーとマリアを退け、積み重ねてきたレオナルドの想いのすべてが今、目の前で花開こうとしている。
祭壇の前に立ったエリザの、ヴェール越しの瞳がレオナルドを見上げた。
レオナルドの逞しくも洗練された手が、エリザの華奢な手を優しくも絶対に離さないという強い意志を持って包み込む。
「……とても、美しい。私の命に代えても、君を幸せにすると誓う」
レオナルドの情熱的な声に、エリザの頬が薔薇色に染まった。
「レオナルド様……私の方こそ、貴方と共に歩めることが、人生の最大の喜びです」
神父の厳かな言葉が響き、二人は神の前で永遠の愛を誓い合った。
レオナルドがそっとヴェールを上げ、エリザの唇に深く甘くも誠実な誓いの口づけを落とす。大聖堂に、割れんばかりの祝福の拍手が鳴り響いた。
「母様……すっごく、綺麗……っ!」
「うん。世界で一番、綺麗だ」
最前列の特等席。立派な燕尾服を着こなしたノアとカイルが満面の笑みを浮かべ、目に涙をためながら両親に向けて力いっぱい拍手を送っていた。
もうオスカーの顔色を気にして震えていたノアも、マリアの歪んだ愛情に依存していたカイルの姿もない。
そこにあるのは、これから共に歩む家族の絆に包まれ、自信と希望に満ち溢れた二人の少年の姿だった。
祝福の鐘の音が、王都の青空に高く響き渡る。鳴り止まない拍手と歓声の中、レオナルドと腕を組んだエリザは幸福の絶頂にいた。
「これほどの喜びを感じる日が来るなんて、思ってもみませんでしたわ」
そう言いながらエリザは空いている方の手を、無意識のうちに自身のお腹へとそっと当てた。
純白のドレスの下。そこは、ほんのり愛らしく柔らかい膨らみを見せていた。
エリザのお腹の中には、レオナルドとの間に授かった新しい命が宿っている。
(ああ、やっと……過去の苦しみ、虐げられた傷みも、あの人たち(元夫と愛人)の影も、私から離れていったのだわ……)
それらはすべて、今朝早く王都を後にして氷獄へと向かったあの馬車と共に、永遠に彼女の人生から排除された。
レオナルドはエリザのその手に自らの手を重ね、愛おしそうに微笑みかけた。エリザもまた、この世のすべての幸福を噛み締めるように極上の笑顔を返した。
パイプオルガンの荘厳な調べが響き渡る中、祭壇の前で待つ王国最強の騎士にして氷の宰相、レオナルド・ヴェルンシュタイン辺境伯は振り向いて息を呑んだ。
大聖堂の扉が開き、そこに立っていたのは、この世のあらゆる美しさを凝縮したような、純白のウェディングドレスに身を包んだエリザであった。
最高級の絹とレースが彼女の滑らかな肌を包み金糸のような美しい髪には、ヴェルンシュタイン家に代々伝わる星屑のようなティアラが輝いている。
一歩、また一歩とバージンロードを歩みを進める彼女の姿は、まるで天から舞い降りた女神そのものだった。
「これは……まさに目に眩しい」
「心を奪われるとはこのことか」
「油断すると我を忘れそうだ」
「まあ、ドレスの色が肌に映えて、光をまとっているみたい」
「嗚呼、まさに天上の輝き!」
参列する王族や大貴族たちが、そのあまりの美しさに感嘆の溜息を漏らす。
レオナルドは、ゆっくりと近づいてくる愛しい女性から、片時も目を離すことができなかった。
この時レオナルドは、オスカーやマリアに冷遇されながらもひたむきに生きる彼女を、密かに想い続けていた日々を思い返した。
(あの時、エリザの涙を拭き、手を取り、彼女を支えながら困難を乗り越えた……)
オスカーとマリアを退け、積み重ねてきたレオナルドの想いのすべてが今、目の前で花開こうとしている。
祭壇の前に立ったエリザの、ヴェール越しの瞳がレオナルドを見上げた。
レオナルドの逞しくも洗練された手が、エリザの華奢な手を優しくも絶対に離さないという強い意志を持って包み込む。
「……とても、美しい。私の命に代えても、君を幸せにすると誓う」
レオナルドの情熱的な声に、エリザの頬が薔薇色に染まった。
「レオナルド様……私の方こそ、貴方と共に歩めることが、人生の最大の喜びです」
神父の厳かな言葉が響き、二人は神の前で永遠の愛を誓い合った。
レオナルドがそっとヴェールを上げ、エリザの唇に深く甘くも誠実な誓いの口づけを落とす。大聖堂に、割れんばかりの祝福の拍手が鳴り響いた。
「母様……すっごく、綺麗……っ!」
「うん。世界で一番、綺麗だ」
最前列の特等席。立派な燕尾服を着こなしたノアとカイルが満面の笑みを浮かべ、目に涙をためながら両親に向けて力いっぱい拍手を送っていた。
もうオスカーの顔色を気にして震えていたノアも、マリアの歪んだ愛情に依存していたカイルの姿もない。
そこにあるのは、これから共に歩む家族の絆に包まれ、自信と希望に満ち溢れた二人の少年の姿だった。
祝福の鐘の音が、王都の青空に高く響き渡る。鳴り止まない拍手と歓声の中、レオナルドと腕を組んだエリザは幸福の絶頂にいた。
「これほどの喜びを感じる日が来るなんて、思ってもみませんでしたわ」
そう言いながらエリザは空いている方の手を、無意識のうちに自身のお腹へとそっと当てた。
純白のドレスの下。そこは、ほんのり愛らしく柔らかい膨らみを見せていた。
エリザのお腹の中には、レオナルドとの間に授かった新しい命が宿っている。
(ああ、やっと……過去の苦しみ、虐げられた傷みも、あの人たち(元夫と愛人)の影も、私から離れていったのだわ……)
それらはすべて、今朝早く王都を後にして氷獄へと向かったあの馬車と共に、永遠に彼女の人生から排除された。
レオナルドはエリザのその手に自らの手を重ね、愛おしそうに微笑みかけた。エリザもまた、この世のすべての幸福を噛み締めるように極上の笑顔を返した。
あなたにおすすめの小説
婚約者のことが好きで好きで好きで仕方ない令嬢、彼に想い人がいると知って別れを切り出しました〜え、彼が本当に好きだったのは私なんですか!?〜
朝霧 陽月
恋愛
ゾッコーン伯爵家のララブーナは、3日間涙が止まらず部屋に引きこもっていた……。
それというのも、ふとした折に彼女の婚約者デューキアイ・グデーレ公爵子息に想い人がいると知ってしまったからだ。
※内容はタイトル通りです、基本ヤベェ登場人物しかいません。
※他サイトにも、同作者ほぼ同タイトルで投稿中。
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました
マーサ
恋愛
国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールから婚約破棄を宣告された侯爵令嬢オルタンス。
真意を問いただそうとした瞬間、隣国の王太子や第2王子、学友たちまでアルベールに反論し始め、オルタンスが一言も話さないまま事態は収束に向かっていく…。
罠に嵌められたのは一体誰?
チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。
誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。
そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。
しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。
私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです
風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。
婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。
そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!?
え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!?
※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。
※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
貴方でなくても良いのです。
豆狸
恋愛
彼が初めて淹れてくれたお茶を口に含むと、舌を刺すような刺激がありました。古い茶葉でもお使いになったのでしょうか。青い瞳に私を映すアントニオ様を傷つけないように、このことは秘密にしておきましょう。
【完結】私より優先している相手が仮病だと、いい加減に気がついたらどうですか?〜病弱を訴えている婚約者の義妹は超が付くほど健康ですよ〜
よどら文鳥
恋愛
ジュリエル=ディラウは、生まれながらに婚約者が決まっていた。
ハーベスト=ドルチャと正式に結婚する前に、一度彼の実家で同居をすることも決まっている。
同居生活が始まり、最初は順調かとジュリエルは思っていたが、ハーベストの義理の妹、シャロン=ドルチャは病弱だった。
ドルチャ家の人間はシャロンのことを溺愛しているため、折角のデートも病気を理由に断られてしまう。それが例え僅かな微熱でもだ。
あることがキッカケでシャロンの病気は実は仮病だとわかり、ジュリエルは真実を訴えようとする。
だが、シャロンを溺愛しているドルチャ家の人間は聞く耳持たず、更にジュリエルを苦しめるようになってしまった。
ハーベストは、ジュリエルが意図的に苦しめられていることを知らなかった。