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蠅と宇宙は会話ができない2
「――どうにかって。さすがにそれはあれを知ってるんだから、無理だとわかってていってるでしょう。
ジョークにもならねぇ。だから嫌なんだ、あんたらは。俺たちは、あれから逃げ続けるしかできないし、そもそもあれが何なのか正確にはわかってないし、わかっていいものなのかもわかならないレベルなのに、気軽に冗談にしやがる神経も理解できねぇよ」
スカウトが吐き捨てるように言うと、キャラは笑ったまま子供を見るような目で見ている。
それもまた、気に食わない。
子供のようなことをしているのはどっちだ、と毎度毎度思うのが止められない。
「余裕は大事だぜぇ……大体、冗談言おうが言うまいが、それでどうこう思うよりもそもそも虫の戯言以下でしかなかろうよ……あ、でも思い出したら不快になった上に震えがきた。どうしよう」
「自業自得でしょ。というか巻き込むのやめろよ。俺だって不快だし思い出したせいで体がクソ寒い」
「あっためてあっためてぇーおにいちゃん!」
「歳考えろや。見た目はともかく、てめぇ俺よりだいぶというかわかんねぇくらい年上なんだろうが」
「若さは死ぬまで永遠だから何も問題ないでしょ!!! ぶっ殺すぞクソガキが!!!!!」
「さっきやらかしそうになった時以上の、ここ1番のキレを見せられても困るんですが」
先ほどより強い殺気を叩きつけられて若干引く。
「いやまぁそんなのがいたら気まぐれに癇に障って私たち全滅させられて終わりパターンのがありそうだけどさ。
大体、私はウォッチャーほどやりたい放題なんてしてないんじゃんか。ウォッチャーにも言えよなぁ。あいつには軽くしか言ってないの知ってるんだぞ」
「ウォッチャーは話を聞かない筆頭でしょうが」
カミサマというその姿の1部すらちゃんと見ようとすれば魂事潰れてしまうだろう存在を思い浮かべて、恐怖と共に最低の気分になる。
それに立ち向かう何かが生まれて、それが特攻して巻き添えでやられるところまで想像して更に嘔吐感さえ覚えた。
「ほほぅ。つまり私はお話を聞いてくれる優しーお姉さんだと思っていると」
「おね……?」
「素で疑問顔すんな? やっぱ殺し合っとくか……? おおん?」
確かにムカつく部分は多いが、話を聞かない奴よりはましだとはスカウトも思っている。
何せ、同類と呼ばれる仲間たちの中には話が通じているようで通じないものも多い。
ジョークのような会話ができて、それをお互いわかっていながら楽しむというか、続ける人間性が残っているのはだいぶましなのだ。ジョークにしては殺気が本気っぽいのはスルーすることにした。そんな踏まなくていい地雷までわざわざ踏む必要はないのだ。
「それにほら、こうやって加速してあげることで、同類が生まれて固定される確率だって上がるかもしれないじゃん?」
「加速、ですか。いたずらにやりたい放題しているようにしか見えませんけど」
とはいえ、それでもやはり趣味というか、やりたいことが優先であることは間違ない。
スカウトもそれは理解している。ただ、即物的すぎるしがっつきすぎなのだとは思っている。
ただ、同類がいるほどやりやすくなるのは確かなのだから待てと言いたいだけなのに、と思っている。
「それに、今言ったのって……全部この場で適当に考えたものでしょう?」
深く考えずにやるタイプが多い。
そして、目の前の女もそういう人種だと知っている。
そのくせ、言い逃れのようなことを離すのが苛立つのだ。それをできる頭と理性があるのなら、もう少し考えて行動しろと。
言い逃れさえせず『何が悪いの? 都合が悪いならお前が死んどけば?』くらいの勢いの連中はもはや言っても無駄だと逆に諦めがつくのだ。というか諦めなければスカウトという人間が文字通り死んでしまう。そういう話が通じない奴ほど力は強いのだから。
つっこみをいれられても、キャラは悪びれずに笑ったままだ。むしろ、意地悪そうな色まで足して笑いを深めた。
「あ、ばれた? 私、無意味に蠢いてわちゃわちゃしているの見たりそこに自分の作ったの投入してもっとわちゃわちゃしてるの見るのが好きなんだよねぇ。可愛くない? 無駄なのに生きあがている様とか。超可愛くない? もう全部なくなるのに今あるものが守れると思ってる姿とか」
「仮にも同じ人間の発言だとは思えませんね。邪神にでもなったつもりですか?」
「そんな馬鹿な! 恐れ多すぎるでしょ。まぎれもなく人間じゃんか。でも、世界が違えば同じでもやっぱりちょっと別の生き物っぽく見えちゃうのは仕方ない話なんだよねぇ。大体からして、人間の発言とは思えない――ったってもうない元の世界の人間だって同じ風には見えないのが私たちみたいな生き残るための最後の種なのに。そこはそれ、お前だってそうだろうに」
お前よりはましだよ。
と即座に言いたくなったが黙る。
きっと全員同じようなことを思いあっていることくらいはスカウトにもわかったからだ。
「……表向きを取り繕うだけの理性くらい残ってるっていう話ですよ。それでも、あんたでもウォッチャーよりはよほどましなんですが」
「あれはもう、いじって、整えて、見ることだけのために生きている生き物だからねぇ……同類の仲でも一等趣味だけにくくってる。一応、同類仲間とは思われているっぽいけど、なりそこないと私たちくらいの差があるように見えてたまに別の生き物見ている気分にもなる」
2人そろって遠い目をする。
『同類』というくくりではあるし、小さな集まりでしかない。しかしその中でさえ差というものは存在する。
「ウォッチャーはともかくさぁ、今適当にいってみたことではあるけど、間違ってはないっしょ。
わかってるよ。例えば介入しすぎて私たちがこの世界にこの世界の人類だってみなされたら、同類が生まれる可能性がなくなるってんでしょ? もうダメ判定しされたら勝手に加速するのも知ってる。
そこまでへまはしてないよ。君1人なら正直どうとでもできるけど、君を含めて、色々敵対するのは私だって避けたいんだからさぁ。君に賛同するのもいるだろうしねぇ……それこそウォッチャーとかに面白がられても癪だし」
同類が生まれる規則というものははっきりわかっているわけではない。
それでも何度も試して確率が高いものの中に、同類が介入しすぎると『すでに生まれた』扱いになったり『もう生み出しても無駄』扱いになったりしてその世界の最後の種子たる同類が生まれないというものがあった。
だから介入しすぎないというのはルールとしてあるのだ。
その世界では己の持った名前を名乗らないのもそうだ。別物として、いじりすぎずに存在せねばならない。
件のウォッチャーという人物も、それを気にしていないわけではないのだ。
スカウトが聞けば本人曰く、まいど『つい』やりすぎてしまうらしいが。
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