十人十色の強制ダンジョン攻略生活

ほんのり雪達磨

文字の大きさ
206 / 296

蠅と宇宙は会話ができない3

しおりを挟む

「それに……そういう意思があるのかどうかすらわかんないけど、あれカミサマに『こいつら邪魔だな』とか思われたら終わりだってのは私たちだってわかってるよ。
思い出したみたいに、とはいえやりすぎたっぽいやつは唐突に、当たり前みたいに潰されて殺されたりしてるところも君より見てるんだよ?
世界の終わりだって、あれに最終的に回収されて完了っぽいんだからさ。
倒して終わりとかそういうRPGにもなんない、どーしようもない存在なんだし。というかあれ、倒すとか以前に敵対もできないけど、もしどうにかできたらできたで一斉に全部消滅して終わっちゃいそうだしね」

 再び思い出してかキャラがぶるりと震える。
 敵対すらできない存在。
 絶対的な存在。
 元であるとわかる大いなるもの。
 意思があるのか、あってもそれは理解できるものではないのか。
 おそらく全ての創造主でありながら、もっとも己たちから遠いようにも思える、親しみがかけらも湧くことがない何か。

「誰が言い始めたか知らないけどさ、カミサマ、とはよくいったもんだよ。
手を出しても出さなくても厄介でどうしようもないって意味でさ。触っても触らなくても祟り来る感じ?」

 皮肉気に言う。
 反論はしないし、しようとは思わなかった。
 きっと1度でもそれを認識してしまえば、何をしようと無駄だとわかるのだ。
 しようと思うことがおこがましく傲慢――ですらないのだと。そう思えるレベルの差ではない。蟻のひとかみは余程何か超常的に運が良ければゾウも倒れさせるかもしれないが、蠅1匹飛んだところで宇宙が滅びることはないし、蠅1匹では宇宙に到達できもしないのだ。
 そして、横たわっているのはそれ以上の言葉では言い表せないほどの差。

「終わりによて生み出される生き延びるための、その世界の中心生物最後の子。私たちが生きれているのだって、能力があるからじゃなくて……結局あれの気まぐれなんだろうしね。やんなるよ」

 なりそこないではなく、完成品というべきその世界で1番優先されている生物が生み出した最高。

「私たちみたいな逃げるための、種として生き残らせるための完成品じゃなくて……種自体が目をそらさずに精一杯やる気出して、真面目に最初からどーにかできる立ち向かうタイプの完成を目指していたら、できたならよかったのかな」

 ただそれは、立ち向かう為ではない。
 一個ではわからない事でも、種という単位なら理解せざるを得ないのだ。終わりかけているという事は、それが、己という種ではどうしようもないということが。
 だから生み出すのだ。
 せめて、滅びより逃げ出す可能性が生まれるようにと。

 その種を無理やりな進化をし続けて、摩耗して、そのまま世界が続いたらそのせいで絶滅してしまうような力技で。
 逃げるための、別の世界に飛び散らせるための1つ。
 最後の種子。
 その力は、逃げ、生きるための力。
 同じ種に縛り過ぎられないように、見捨てて生き延びることができるように、多くの場合他のくくりを与えられる。
 どうしようもないという、現実逃避の完成品。
 その先のものを見れば、もう逃げることさえ考えられない。だから、逃げ出すことをどうか許してくださいという運頼みさえ感じるものでしかない現実逃避。

「叩き潰されて終わりでしょう? それこそ、俺たちをまとめても恐らく一方的にどうにかできる同類の仲でも異次元的存在であるウォッチャーが目を付けられはしないようにと恐れて運頼みしかできないんですから……そもそも、とんでも自分たちを越える作品ができたところたかが知れている。1世界の1種でしかない存在に、何を期待できるっていうんです? 世界全体の力を集合したところでプチっと潰されて終わりなのに。だったら、現実逃避の実質運ゲーでも逃げて生き延びるに特化したような我々の方がよほどましというものでしょう」
「……そらそーか。というか、そもそも現実逃避と生き延びるというのが合体事故みたいにうまくかみ合ったからこその私たちだしねぇ……立ち向かおう! なんて下手にしたら、そらその場合結果的に私たちよりどころか、なりそこなったモンより弱弱しいのが生まれてそうだ……あぁーあ、なんか気が滅入ってきたよ……なんか話題がぐるぐる回ってるだけな気がしてきたし。
はぁーあ。自由な遊び場が欲しいもんだよねぇ。あれに見つかりにくく、勝手に滅びる可能性もない。そんな遊び場になる世界、どこかにないもんかなぁ」
「そんなところがあったらそれこそウォッチャーとかがはりきっちゃって独占状態とかになりそうですけど……とりあいで崩壊してしまうのでは……?」
「そこは……ほれ、なんか……話し合いでルール決めれば長く遊べるんじゃない? ……無理かなぁ? 関係ねぇぜ! でウォッチャーとかが張り切っちゃう?」

 うーんと、お互いが首を捻る。
 新しい遊び場、というか自由にできるような環境があれば助かるのは2人とも同じだ。
 キャラはいじって遊ぶ場所があるという意味で。
 スカウトは余計なことをそっちに集中することでされないという意味で。

「都合のいいルールを決めることができて、崩壊からは免れる感じ、あれから目もつけられにくい……理想的すぎて現実感ないですよね」
「うぅーん。何か考えておくれよ。そこはほれ、うまくできれば『その目的のためにも必要なんですぅ』っていったらウォッチャーも多分行動抑え目になると思うよ? だって、私もそんなのが実現できるんならちょっとくらいは我慢しようと思うもの」

 確かにと納得する。
 スカウト自身、そういうものができる確証があって、だからこの世界の同類は諦めてくれ、なんて言われたらいくつかくらいは我慢できそうだと思った。思った後に嫌悪した。
 そもそもが、そんな自由な遊び場というのがいじられる生物がいることが前提で、それを己もあまり気にできないことも。
 自分は他より人間らしいと思っているが、同じ穴の狢でしかないと強く感じてしまうのはこういう時だ。
 どちらに寄り切ることもできない中途半端さに嫌気がさすのは。

「……いっそ、新しく作ってしまうというのはどうなんでしょう」
「いやぁ……新しい宇宙創るのとか無理でしょ。私たちの力はそこまで強くないでしょ? ウォッチャー他が全員協力してくれたとしてもそれは無理だよ」
「……そこまで大きくなくてもいいでしょう?」
「うん? あぁー……なるほど? 文字通り、箱庭サイズならってこと?」
「えぇ……それも、1から作るのではなく他も流用すれば……とっさの思い付きですが、考えてみる価値があるとは思いませんか? 癇に障らない程度にかすめ取ることができたなら……」

 キャラが笑う。

「君もやっぱり、同類以外からみたら十分趣味悪いし残酷だし……傲慢で、邪神めいていると思うよ。そんな君が私は嫌いじゃないけどね」
「俺は嫌いですけどね」
「空気読めよ、そこは」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

処理中です...