『真説・宇宙世紀・明日へと放たれた矢』

トーマス・ライカー

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旅立ち

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 KARCカーク9900をその中心に収めたセンター・コア・ノーズ・コーンと、『ワイズ・ディスカヴァリー』本体とのドッキング・接続工程は予定通りに始まり、予定通りに終了した。


 タグ・ボートに曳かれて姿勢を制御され、ハイパー超伝導スペース・マス・ドライヴァーの入り口へと進みながら、総合最終チェックが併行して行われた。


 その模様が太陽系の全域に解説コメント付きで生中継されながら準備は進み、やがて船体は定位置で固定された。


 その年にボトリングされた、最高級シャンパンのボトルがクルクルと回転しながら船体に近付き、ぶつかって粉々に割れる。


 それを合図にマス・ドライヴァーが起動し、『ワイズ・ディスカヴァリー』はゆっくりと前進を始める。


 ミドルクラス・クルーザー『ジャニス・アイズリー』のブリッジでは、『ワイズ・ディスカヴァリー』の船体に直接触れて作業をしていたスタッフが全員集まって、その模様を注視している。


 エレナ・ミラーとゲイリー・シモンズは、ブリッジ後部の壁に背中を付けて並んで立っている。


「…なあ…エレナ……KARCカークの奴……本当に冗談だったと思うかい? それとも、もしかしたら……」


「…やめて! ゲイル……そんなこと……考えさせないで! 」


 7分と20秒で『ワイズ・ディスカヴァリー』は、マス・ドライヴァーでの加速を終えて発進した。


 マッハ7.25まで加速した上で、化学反応ロケットエンジンに点火。


 次いでハイパー核融合ペレット・ブースターも起動させて、本格的な加速航行に入った。


【…航星日誌…宇宙歴・3270724…『ワイズ・ディスカヴァリー』は正常に発進を終了…総て異常無し…私はカーク船長だ……】

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