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・・・『集結』・・・

アイソレーションタンクと艦長対談番組

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翌日(2/7・日)・・アリソンより先に目覚める・・降りてバスローブを羽織り、キッチンでコーヒーを点てて2つ淹れ、2つとも持って寝室に戻ると、ベッドテーブルをセットして一つをソーサーと一緒に置き、私は椅子に座って飲み始める・・。

コーヒーの香りが刺激したのか、アリソンはひとつ寝返りを打って目覚めた。

「・・・あら・あなた・・早いわね・・お早う・・・昨日は3回もしたから、疲れたわよ・・・」

「・・お早う、アリソン・・・コーヒーを飲んだら、マッサージをしてやるよ・・・」

「・・ありがとう・・朝起き掛けのあなたのマッサージは久し振りね・・やって貰うとものすごくスッキリして、サッパリするのよ・・・ねえ・・これは言ったかしら・・?・・あなたに初めて朝起き掛けのマッサージをして貰った時・・私、あなたと結婚しようって決めたのよ・・・」

「・・そうだったんだ・・いや、俺もだよ・・君にプロポーズしようって決めていたから・・起き掛けのマッサージをしたんだよ・・」

「・・そうだったの・・ねえ・・彼女達には、マッサージしないでね・・?・・」

「・・ああ・・分かってるよ・・」

私はそう言ってコーヒーを飲み干すと、軽い柔軟体操を始める・・。

アリソンはコーヒーを少しずつ飲んで飲み干すと、全裸のままベッドに俯せになる・・。

私はベッドテーブルを取り外して両手にオイルを馴染ませると、両膝立ちでアリソンの背中に跨り、頭からマッサージを始めた・・。

頭から首、肩、背中は時間を掛ける・・両腕、腰、両脚、足の裏と掌のツボ押しは繰り返し念入りに行う・・一通りに終えると90分が経過していた・・。

一通り終わると、かなり疲れるし汗もかく・・ベッドから降りて椅子に座ると、肩と首と手首を自分で丹念に廻す・・。

ふと気付いて顔を上げると、アリソンがバスローブを羽織って大きめのグラスに冷えたジンジャーエールを満たして渡してくれる。

「・・ありがとう、あなた・・お疲れ様・・すごくスッキリしたわ・・シャワーを浴びてから、朝食にするわね・・?・・」

「・・ああ・・ありがとう・・頼む・・」

そう応えて受け取り、一息で半分くらい飲む・・グラスを置いて立ち上がり、思い切り伸びをする・・。

「・・一緒に浴びよう・・」

2人で一緒にシャワーを浴びてサッパリした・・アリソンはキッチンに入り、私はジンジャーエールの残りを飲み干して、部屋着を着るとダイニングに入る・・。

「・・アリソン・・朝食を摂ったら、悪いけど戻るよ・・『ディファイアント』にアイソレーションタンクベッドを配備して貰いたい件を、番組の制作サイドに申し入れに行くから・・」

「・・あらそう・・分かったわ・・気を付けて行ってね・・スープストックを持って行ってね・・他に要る物はある・・?・・」

「・・会社の相互共済課に購入代行を申し込んだから、大丈夫だよ・・」

「・・分かったわ・・アリシアを起こすわね・・」

そう言ってインターコールのカフを取る。

「・・アリシア・・朝食が出来たから、いらっしゃい・・」

私はコーヒーとミルクティーとホットミルクチョコレートを淹れた・・。

「・・お早う、パパ、ママ・・早いね・・」

「・・お早う・・親衛隊長は、よく眠れたかな・・?・・」

「・・テストが近いからね・・頑張ってますよ・・」

そう言ってホットミルクチョコレートを一口飲む・・。

「・・ああ・・どうして自分で淹れるとこの味が出ないのかなあ・・?・・パパってママと同じくらい料理の才能があるんじゃない・・?・・」

「・・そうかあ・?・ママの料理の才能は、パパの3倍は上だと思うぞ・・」

「・・うん・・あたしもそうは思うんだけどね・・」

(・・おいおい・・そこはフォローを入れるところだろう・・?・・)

「・・アリシア・・朝食を食べたら、番組の制作会社に申し入れたい事があるから、パパは行くよ・・」

「・・そうなんだ・・行ってらっしゃい、気を付けてね・・来週は帰れるの・・?・・」

「・・金曜日は無理だな・・土曜日に帰れるようなら帰るよ・・それまでには連絡するから・・」

「・・了解しました・・」

朝食を食べ終わると、もう一杯淹れたコーヒーを飲みつつ休みながら、マルセル・ラッチェンス・マスタープロデューサーの携帯端末に通話を繋ぐ・・。

型通りに朝の挨拶を済ませて、早朝からの通話応答に謝意と感謝を示すと、もう起きなければならない時間だったから有り難かったと言われる・・。

『ディファイアント』の装備について申し入れたいアイディアがあるので面談させて欲しい言うと、こちらも丁度お願いしたい案件があるので良いタイミングでしたと応じられる。

もう出社されているのですかと訊くと、ここ数日は泊まり込みで対応していると言う・・。

では、これから向かいますと伝え、お待ちしていますと応じられて通話を終えた。

次にリサ・ミルズの携帯端末に通話を繋いだ。

「・・もしもし・・」

「・・あっ、アドルさん、お早うございます・・」

「・・お早う、今、話しても大丈夫・・?・・」

「・・大丈夫です・・」

「・・元気・・?・・」

「・・元気です・・ご心配をお掛けしました・・」

「・・うん・・今、自宅なんだけれどもね・・これからアイソレーション・タンク・ベッドの件で、マルセル・ラッチェンスプロデューサーに会いに行くんだけど、君も来るかい・・?・・」

「・・行きます・・直接行かれますよね・・?・・」

「・・そうだね・・君を迎えに行くと、かなり時間が掛かるから・・」

「・・分かっています・・私はタクシーで向かいますから・・」

「・・了解だ・・せっかくの必要経費だから、バンバン使ったら良いよ・・じゃあ、タクシーに乗って大体の到着時刻が分かったら、また掛けてくれる・・?・・」

「・・分かりました・・それでは、現地で・・」

「・・うん・・」

それで通話を終えた。

アリソンがアリシアを呼んでいる・・。

「・・アリシア・!・ちょっと手伝って頂戴・!・パパにスープストックを持って行って貰うから・・」

妻と娘は2人で大型のパワーフリージングケースに、カチカチに凍らせたスープストックを8割程まで入れ、ドライアイスで一杯に満たして蓋を閉める。

次いでアリソンは、残っているポトフを大きめのタッパー3つに全て入れた。

「・・泊まり込みでお仕事をされているなら、ちゃんとしたお食事もあまり出来ていないでしょう・・?・・エルク家からのお裾分けと言うことで、差し上げて下さいな・・」

「・・ありがとう、アリソン・・皆、喜ぶと思うよ・・」

私はフリージングケースと3つのタッパーを電動台車で運び出し、車のトランクに収めると戻って娘の見ている前だったが、妻を抱き竦めて深い接吻を交わした・・。

「・・ねえ・・私、娘なんだけど、妬けちゃうからやめてくれない・・?・・」

堪らずアリシアがそう言うまで、たっぷり70秒ほど・・。

「・・帰れる前には、連絡するから・・」

「・・分かってる・・愛してるわ・・あなた・・」

「・・俺もだよ・・それじゃね・・悪いな、アリシア・・パパにとって、ママは最高だからさ・・ああ、それとな・・親衛隊長には、これを渡して置こう・・『ディファイアント』全乗員の名簿だ・・一般クルーに関しては、まだ発表していないから機密情報だ・・友達には話しても良いけど、ネットにはアップするなよ・・じゃあ、また来週にな・・」

妻と顔は離したが、抱き合ったままで言葉を交わす・・最後、2人に向けて右手を挙げ、娘には全員集合会議の時に貰っていた、乗員名簿のプリントを渡して、私は玄関から出た・・。

エレカーをスタートさせて20分ほどで、リサ・ミルズからの通話が繋がる。

「・・どのくらいで着ける・・?・・」

「・・2時間弱ですね・・」

「・・そうか・・あまり変わらないな・・君が先に着いたら待っていて・・?・・僕はちょっと買物があるから・・多分そんなにズレないと思うよ・・」

「・・分かりました・・お気を付けて・・」

「・・了解です・・」

通話を終えた私はコンビニエンスストアにエレカーを滑り込ませると、ちょっと高級な栄養ドリンクを5箱買い、後部座席に積み込んで出た。

そのまま運転を続けて、到着まであと15分程になったくらいで、またマルセル・ラッチェンスに通話を繋ぎ、もうすぐ到着しますと告げた上で、台車の貸し出しを頼んだ。

通話を終えた直後にリサ・ミルズからの通話が繋がる・・。

「・・リサです・・アドルさんの車の2台後ろにいます・・」

「・・そうなんだ・・あと10分くらいで着くからね・・着いたらちょっと手伝ってくれる・・?・・」

「・・分かりました・・今日は、どなたかいらしているんでしょうか・・?・・」

「・・はっきりとは聴いていないけど、誰かが誰かを引率して来てはいると思うよ・・」

そう応えた時、右手に『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』の社屋が視えて来た・・。

「・・じゃあ、入るよ・・」

そう言って通話を終えると、右折して正門から入る・・。

入るとすぐ左手のガードステーションから警備員が走って来る・・ウインドウを開けて顔を見せると、敬礼して笑顔で歩み寄って来た・・。

「・・お早うございます・・いらっしゃいませ、アドル・エルクさん・・アポイントはございますか・・?・・」

「・・ええ、マルセル・ラッチェンスさんと、面会の予定です・・」

「・・分かりました・・申し訳ありませんが、一応PIDカードを拝見させて頂きまして、右手の掌紋での生体認証をお願いします・・」

警備員と遣り取りしている間にリサ・ミルズを乗せたタクシーが正門から入って私のエレカーの後ろに停車した・・。

「・・大変ですね・・」

と、そう言いながらカードを手渡す・・。

「・・職務ですから・・」

と、そう応じながら確認したカードを私に返してスキャナーを提示する・・。

右掌をスキャンさせて確認が終わると、マルセル・ラッチェンスさんに来客ですと無線で短く伝えた。

「・・どうぞ、お車は私が駐車スペースまで運びますので・・」

「・・いや、ラッチェンスさんにお渡ししたい物がありますので、すみませんが乗って貰えますか・・?・・」

「・・分かりました・・」

警備員を助手席に乗せるとゆっくりスタートさせ、社屋の正面玄関に横付けする・・タクシーも付いて来て、また後ろで停車する・・。

「・・ありがとう・・」

そう言いながらスマートキーを警備員に渡して降りる・・リサ・ミルズもタクシーから降りて来た・・丁度マルセル・ラッチェンスが、若いスタッフ2人に台車を押させて玄関口から出て来る・・それを見て警備員も降りて来る・・。

「・・お早うございます、マルセルさん・・早朝に訪問させて頂いて、ありがとうございます・・」

「・・お早うございます、アドルさん・・こちらこそ、早朝からおいで頂きまして、ありがとうございます・・ああ、リサさんも来られましたね、お早うございます、ようこそおいで頂きました・・それで・・何を持って来られたのですか・・?・・」

「・・いやあ、皆さんに陣中見舞いの差し入れですよ・・すみません、ちょっと台車を寄せてください・・」

そう言って手招きした・・リサさんも警備員も近寄ってくる・・後部座席のドアを開けて警備員と一緒に栄養ドリンクの箱を台車に乗せ、その上に3つのタッパーを乗せた・・。

「・・陣中見舞いを差し入れて下さるなんて、艦長さん達の中で初めてですよ・・これは充分に良いニュースですね・・アドルさん・・ドリンクは分かりますが、このタッパーの中身は何ですか・・?・・」

「・・あまり大袈裟に採り上げないで下さい・・お互い様ですから・・いや、女房が皆さんの食事を心配していましてね・・これはエルク家からのお裾分けと言う事で、大変に申し訳ないのですけれども、宜しければ食べてみて欲しいと申しておりましたので、持って来ました・・お口に合えば良いのですが・・」

「・・アドルさん・・私は今猛烈に感動しています・・我々にここまで気を遣って下さる艦長さんは、貴方だけでしょう・・本当にありがとうございます・・喜んで頂きます・・奥様にも、我々が深い感謝を申し上げていたとお伝え下さい・・すみませんが、お先に頂いても宜しいでしょうか・・?・・」

「・・勿論どうぞ・・お早目にお召し上がり下さい・・ああ、すみませんでしたね・・車はお預けしますので、宜しくお願いします・・」

そう言うと警備員は会釈して運転席に乗り込み、スタートさせた・・。

マルセル・ラッチェンスが若いスタッフに今居る全員を一階のラウンジに集めて、食器を準備するように指示する・・。

「・・アドルさんもご一緒に如何ですか・・?・・」

「・・いえ、私はもう食べて来ましたので、大丈夫です・・遠慮なさらずに全部食べてください・・少し離れた所でリサさんと一緒に座っていますので、コーヒーだけお願いします・・」

「・・分かりました・・」

そう言って受付の女性社員に指示した。

一階のラウンジにスタッフが集まり始める・・私とリサさんは、離れた場所に対面で座る・・食器が運び込まれてポトフが盛り付け分けられて、スタッフに配られる・・私達のコーヒーが届けられる・・。



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