『星屑の狭間で』

トーマス・ライカー

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地上界にて…

3月2日(月)・4・

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「……アドルさん……アドルさん……」

 誰かの声が聴こえて、胸と肩が軽く揺すられる……気が付くと、その手を取って身体を起こした。

「……やあ…マレット……もう1時間…経ったのかい? 」

 マレットの手を離してソファーに座り直し、首と肩を回して解した。

「……ええ……よく眠っておられたのですが……すみませんでした……」

「…いや、好いんだよ……おかげでだいぶスッキリしたから……」

「…アドルさん、つい先程ですが『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社から、配信リアル・バラエティ・ライブショウ
『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』についての、公式発表が為されました…」

 と、ハル・ハートリーが私の対面に座って言う。

「…そう。どう言うものかな? 」

「…はい。先ず、配信の体制についてです。番組の配信は、週に2回。木曜日と金曜日の20:00から22:00となりました…」

「…へえ……そう……2日間で収録した素材を編集しようとして、カットし切れなくなったのかな? これは初回配信だけなのかい? 」

「…いいえ、毎週の木曜日と金曜日です…」

「…時間帯も同じ? 」

「はい、同じです」

「…そう……毎週の出航までに4時間の配信……毎週の配信内容が、各艦司令部に与える影響は大きくなるだろうね……それと……運営推進本部が次のチャレンジ・ミッションを構築しようとする際に、配信視聴者からの反応や感想をも吸い上げて考慮し、判断材料のひとつとする可能性も大きくなるだろう……他にはあるかい? 」

「…番組の司会は、プロデュース・チームとディレクション・チームで2名ずつ、ほぼ交互に務めるようです…アシスタントとして、男女それぞれ1名ずつ…コメンテーターとしては、男女の芸能人が2名ずつ…これは毎週代わります。他にエンジニアリング・コメンテーターが
1名…軍事評論家が1名入ります。この2名は、ほぼ常駐のようです…」

「……軍事評論家? 何だい、それは? たかがゲーム大会なのにな……こう言う処からも、運営推進委員会の胡散臭さ・キナ臭さが薫って来るよね?……本当の思惑は、何処にあるのかな? 気になるけど今はまだ判らないんだろうね……そう……うん……4時間か……『ディファイアント』が1番注目されてるんだから、1番尺を取って紹介されるんだろうなって事だけは、解るけどね……シエナ副長? 」

「…はい、何でしょう? 」

「…クルーのご家族及び関係者への挨拶廻りは、来週から月・火・水で行おう。他に用事が入らない限り、毎週この3日間の日程で続けよう。これを前提として、設定と連絡と準備を頼みます…」

「…分かりました…そのように始めます…」

「…基本的にはバラエティ番組だから、面白可笑しくコメントされるんだろうけど、何を言われたにしても感情的に動揺しないようにと、全クルーに通知して下さい……尤もこんな事改めて言わなくても、女優として既に知名度の高い君達だから、大丈夫だとは思っているけどね……医療部と厨房とバックバーの皆さんは、少し心配だな……」

「……分かりました。私とハルとハンナとリーアとエマとで、医療部と厨房とバックバーの皆さんひとりひとりに、お話します……」

「…宜しく頼むよ。ナンバー・ワン…」

「…お任せ下さい…」

「…うん…それじゃいこうか? 」

「はい! 」

 同時に立ち上がって脱衣所に入る。私自身は軽く流すだけにして、シエナにはよく温まって貰う。抱き合ったりキスしたりはしない。シエナとの関係は、もうそう言うレベルではない。

 シエナは全裸にバスローブを絡い、私はパンツ1枚で絡って寝室に入る。

 シエナの裸体は、ハンナとは違う次元で完璧だ。成熟度合いはハンナよりも少し進んでいる。

 細身のフェイスタオルを渡すとふたつ折りにして噛み締め、俯せに寝る。

 全く同じ段取りで準備し、同じ手順とアプローチ・パターンで施術を始める。

 彼女も感じ易い性質だ。だがタオルを深く噛み締めているせいか、ハンナが揚げていたような大きい唸り声ではないものの、強い呻き声を断続的に洩らし始める。

 シエナの肌は肌理が細かく、滑らかな肌触りで手の滑りも好い。それに何処からどう観ても、シミひとつ無い。アリソンと同じレベルの肌質であり、肌感でもある。アリソンの肌を思い出してしまって、思わず局部が反応してしまった。シエナに気付かれないように、他の事を考えて気を逸らしながら施術を続ける。

 シエナはハンナと同じぐらいのレベルで絶頂に達し易い。だが肉体的な反応は程良く抑制が効いていて、派手に自ら跳ね跳んだりはしない。それでも反応自体は分かり易いから、45分の施術時間に24回達したのは視認した。

 終わると私も結構息があがる……が、肉体的にはまだ大丈夫だ……だがマズイ……こっちがまだ収まらない……。

 ベッドに腰掛けて、上半身を伸ばしながら深呼吸をする。喉が乾いて口の中が粘付いている。何か飲みたい。

 失神状態だったシエナが目を覚ました。

「……アドルさん……初めてですね……硬くされたのは……」

(気付かれている! と言う事は、そう言う話をしていたのか……)

「……ああ……君の肌が……アリソンのそれに…よく似ていたものだから……」

「……ありがとうございます……」

「……礼を言われるような事じゃないよ……さ、シャワーを浴びよう……」

「…はい…」

 シエナの身体を丹念に洗い流してあげて、自分は軽く洗い流しただけで済ませて出る。

 またバスローブを絡っただけでリビングに戻り、ソファーに座った。

「……ああ、悪いけどソーダ水をくれないか? 喉が乾いた……」

「……お待ちを……」

「……お疲れ様でした…アドルさん……お疲れでしたら、お休みになられても? 」

「……う~ん……6人連続で施術したのは初めてだからな……それでも休み休みでやればイケると思ってたけど……やっぱりちょっとキツいかな……ああ、どうもありがとう……(二口飲んで)あと4人……それで明日も4人か……どうするかな……」

 ソーダ水のグラスを手渡してくれたフィオナが、私の左隣に座る。

「……もう一度フィオナにマッサージして貰って、頑張ってあと3人やろうか……それで、あと5人だからな……そうだ! 1時間タンクベッドで寝て、30分フィオナにマッサージして貰って、それでやろう……それなら3人続けて施術しても、なんとか大丈夫だろう……じゃあ、あと10分休んだらタンクベッドに入るよ……」

「……分かりました。30分コースの準備をしておきます……」

「…うん。宜しく頼む…」

 ソーダ水を、また二口飲んだ。

「……そうか……4日の水曜日は宣伝計画会議に、夜は接待があるし……5日と6日にはもう配信が始まるから、5日の木曜日は午後から半休を取って、艦内に持ち込みたい物を推進本部の受付に届け出ないとな……自宅には帰れないから、アルトサックスは持ち込めないし……楽譜のファイルをもう少し整理して、新しいファイルに入れるのと……下着に部屋着にスーツを2着ぐらい……酒のボトルを2本にグラスに、ティーセットをもっと増やして……クッションとか座れる物も持ち込まないとな……マッサージに使う、間接材料や小物も持ち込んで……あとはまた後で考えよう……」

 携帯端末にそこまでメモしてテーブルに置くと立ち上がり、タンクベッドを起動して設定をプログラムする。使用可能になるまでに約10分。戻ると端末をハンナに渡した。

「眠っている間に連絡が来たら、話を聞いておいて? 」

「分かりました」

「洗濯が揚がったら、出して畳んで置いてくれるかな? それで2回目の洗濯も頼む……」

「OKです」

「よ……し…じゃ、ちょっと1時間だけ失礼するよ……」

 そう言って立ち上がり、脱衣所に入る。ドアを閉めて裸になり、バスタオルをラダーに掛け、タイマーをセットして登り、ハッチを開けて中に入る。身体を入れてハッチを閉め、密閉ゴーグルと耳栓と鼻栓を着け、ソフトシュノーケルを咥えて、38℃のエプソム・ソルト水溶液に、その身を横たえる。

 忽ち身体中から総ての力と緊張が抜き去られ、1分もしないで眠りに落ちた。

 私がタンクベッドのハッチを閉めて1分後……

「…シエナ……アドルさん……アンタとの時に…硬くしていたよね? 」

「ハンナ! アナタ! 何を、そんな! 」

「……ええ……そうね……」

 ハル・ハートリーが思わずハンナ・ウェアーに対して声を荒げかけたが、シエナ・ミュラーは普通に応えた。

「……どうして…?…」

「……私と奥様の肌質や肌感がよく似ているって言われたわね……」

「……そうなんだ……悔しいね……でも、流石はシエナだわ……この中で、肌艶で言うならアンタが1番だからね……」

「……ありがとう、ハンナ……」

「……ねえ…クライトン商社から貰ったオファーの事……アドルさんには言わないの? 」

「…アナタも宣伝部のアグシン・メーディエフさんに言われたでしょ? サプライズで驚かせたいから、彼には何も言わないで来てくれって?……」

「……だって……怒られたくないんだもん……」

「(笑)アドルさんがハンナに怒る訳ないでしょ? 例え何があってもね? アドルさんはね……アナタを1番可愛がっているのよ……」

「……シエナ……もしもそうなら私、本当に嬉しい……泣いちゃうくらい……」

 きっかりと1時間でタイマーアラームが鳴り、5秒で覚醒した。

 ソフトシュノーケルを外し、ハッチを開けて立ち上がる。耳栓と鼻栓を外して容器に入れ、外に出てタオルで身体を拭ってからバスルームに入る。

 エプソム・ソルトを洗い流して出る。もう今日はシャワーを浴び過ぎだな。

 よく水気を拭き取り、パンツ1枚だけでバスローブを絡ってリビングに戻る。

「…やあ、フィオン。じゃあ、宜しく頼むよ…」

 そう言って、残していたソーダ水を飲み干した。炭酸ガスはもう粗方抜けていたが、まあそれでも好い。

「…分かりました。それでは…」

 そう応え、2人とも立って寝室に入り、フィオナの耳に口を寄せる。

「(小声で)3回目はもういいからな。もう出し過ぎてる…」

「(更に小声で)でも、シエナを観て硬くされてましたよね? 」

「(笑)だからさ…そこばかりに視点を置かなくても好いから…」

「…分かりました…すみません…」

「…好いよ。じゃあ、頼むね? 」

「…はい…」

 フィオナの施術は30分を少し超えたと思う。私の施術とは、手順やアプローチ・パターンも微妙に異なるのだが、実に適切で的確で適当なものだった。

 心身共に深く充分に癒されたし、疲労が根源から揉み解されて、解き放たれて洗い流されて行った。

「…フィオン……今日の最後は君に施術するから、その時にな? だから今はいいよ……な? 」

 施術の終わりにまた私のものを含もうとしたのだがそう言って説得し、取り敢えず止めて貰った。

 シャワーを浴び、バスローブだけを着て20分休む。

「……エマ……君はまるで本物以上に体操選手だな……」

 寝室でエマ・ラトナーの裸体を目にした時、思わず口を吐いて出た。

 そして直ぐに想い致す。それもそうだ。これ程に強靭な肉体でなければ、ハイパー・スピード・ポッド・レースの世界最高峰…エクセレント・フォーミュラ・パイロットにはなれないのだろう…。

 彼女の肉体は筋肉質で皮下脂肪は比較して少ないが、力を抜いていればとても柔らかく、施術の指先は充分に入るし、肌の肌理細かさ、良好な肌質もタイプは違うが、シエナのそれと同等だろう。

 彼女の反応は強くなく、薄いが判り難くもない。だが充分に気持ち好いと感じてくれているのだろうとは分かる。

 それでも45分の間で、7回は達したようだ。その後2人でシャワーを浴び、また軽く汗を流して20分休む。タンクベッドで1時間眠り、フィオナの施術を35分受けたのは、大正解だったようだ。

 殆ど疲れを感じない。あと3人控えているが、このまま勢いで乗り切れるかも知れない。

 ミーシャ・ハーレイは施術中に気持ち好さ気な寝息を立てて眠ってしまった。想像以上に疲れさせてしまったのだろうか……深く眠り込んでしまっているその様子を見て、痛々しさと申し訳なさを感じる…。

 様々に姿勢を換えて貰ったが、ハッキリとは目覚めなかった。施術が終わって30秒で、更に深く寝入ってしまった。

 これで起こすのは気の毒だ。シャワーを浴びてローブを絡うと、リビングに戻って事情を説明し、手伝って貰ってストレッチャーを引っ張り出した。昔に購入したこいつに、役立つ日が来るとは思わなかった。

 皆と相談してストレッチャーにビニールシートを被せ、寝室に乗り入れてシエナ、ハンナ、フィオナと4人でミーシャをストレッチャーの上に乗せて、そのままバスルームに乗り入れる。

 あとは3人に任せて、あまり動かさないように優しくシャワーを浴びさせて丁寧に洗い流し、よく水分を拭き取ってから毛布を2枚重ねて掛けてあげ、バスルームから運び出してリビングの隅に安置した。

「……よく眠れるものだね……」

「…それだけ疲れていたんでしょう…」

 と、マレット。

「…疲れさせてしまったのかな? 」

「…そんな事はありませんよ…」

「…自然に目覚める迄は寝かせて置いてやろう…」

「そうですね」

「…ああ、ハンナ…誰かから連絡はあったかい? 」

「…いいえ…何方からも、ありませんでした…」

 そう応えながら携帯端末を手渡しで返してくる。私はそのままテーブルに置いた。

 それから15分後、エドナ・ラティスと寝室にいる。彼女からハグをしに来て立ったまま抱き合い、20秒だが深い接吻を交わした。

「…君には集中力を使わせているから、少し変わったメニューにするよ? 」

「…分かりました…」

 弱まった集中力を回復させ、心身に蓄積されたストレスを昇華軽減する独自メニューを3割程導入して施術を進めていく。施術時間も少し長く延びるだろう。

 エドナ・ラティスも感じ易い性質だ。だが感じて示す身体の反応を観られるのが恥ずかしいとする想いと姿勢が強く、恥じらいの所作に力が入っていてなかなか充分にリラックス出来ない。

 10分に1度中断し、リラックスを促すように言葉を掛けながら、施術アプローチ・プロセスをひとつ戻して再開していく。

 おかげで終わる迄に1時間を超えたが、効果は充分にあったようだ。

 感情的に恥ずかしさがどうしても先に立ったようで絶頂回数は少なかったが、それでも5回はイッたようだ。

 一緒にシャワーを浴びながら、また抱き合って接吻を交わす。40秒程で、もっと濃厚に交わした。

 またパンツ1枚にバスローブを絡っただけでリビングに戻り、フィオナの隣に座る。

「……なあ、君への施術が今日の最後だけど、晩飯を食って休んでからの、寝る前でも好いかい? ちょっともうシャワーを浴び過ぎちゃって、身体がふやけているからさ……」

「……お疲れ様です、アドルさん。はい、分かりました。私は何時でも大丈夫です。寧ろその方が、アドルさんが充全に力を発揮出来るでしょうし、私もその方が期待出来ます……」

「……悪いね、フィオン……その代わり、ちゃんと力を尽くして施術するからね? 」

「…はい、分かっています。ありがとうございます……」

「……OKだ。じゃあ、皆をここに呼んで来てくれるかな? ちょっと話して置きたい事があるから……」

「…分かりました。お待ち下さい…」

 それから5分後には、全員がリビングのソファーセットに座り着いた。

「……ええとね……益々予感が強くなって来ているから、君達にも話して置くよ……今夜の…19:00前ぐらいで…スコット・グラハムが、誰かと一緒にここに来る……それが誰なのかは判らない……何故ここに来るのか? ある重大な事を俺に告白して…謝罪するためだな……重大な事とは何なのか? おそらくあいつは『ロイヤル・ロード・クライトン』のメイン・スタッフとして、ブリッジで席に着いている……それはおそらく多分……メイン・パイロットだな……もしかしたら付き添いは2人かも知れない……ここで君達に頼みがある……もしもスコットが…俺にそう告白したら…俺は感情を激昂させて…あいつに掴み掛かるだろう…君達は…俺があいつを殴る前に俺を止めてくれ……頼む……」

「……分かりました……お任せ下さい……全力で止めます……」

 フィオナが冷静に応える。

「……これは以前にも…誰かに言ったな……誰だったかな? まあ好いか……スコット・グラハムは…俺よりも高い能力を持っている……言い方を換えれば……あいつは俺の知る限り……現状で唯ひとり……俺の裏を掻ける存在なんだ……他にもそう言う存在・人材は沢山いるだろうが……現状で俺が知っているのは、あいつ1人だ……『ディファイアント』と『ロイヤル・ロード・クライトン』が遭遇して……もしも戦う事になったら……その戦闘は間違い無く……血水泥の死闘になるだろう……間違い無くな……どちらも唯では済まなくなる……だから……俺はあいつとだけは、戦いたくないんだよ……なのにどうしてこうなる? もしもあいつが……俺に対してのサプライズのつもりで乗ったんだと言ったら……その次の一瞬で俺はあいつを殴るだろう……だからその前に俺を止めてくれ……本当に、頼む……」

 沈黙が暫くリビングを支配した。

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