『星屑の狭間で』

トーマス・ライカー

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地上界にて…2…

シエナ・ミュラー…5…

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 エレカーをメリッサ・エメリックさんの生菓子店に向けて走らせている…まだ早い時間帯なので、道路は混んでいない。

「…アシュリー・アードランドさん…素敵な女性ひとですね…」

「…みんな素敵だよ…艦長も副長も、スタッフ・クルーもね…僕達が選ばれたのは、絶対に偶然じゃない…」

「…はい…」

「…そう言えば、アーネット・プロダクションの社長からは降りたのかい? 」

「…ええ…辞表は役員会に提出して、受理されました…正式には、次の株主総会にて承認されます…」

「…そうか…まあ、何はともあれ長い間ご苦労様でした…お疲れ様でした…」

「…ありがとうございます…アドルさんの方はどうですか? 」

「…明日中に…課長に昇進する内示の通達が来るって言う話だね…それから1週間くらいで社内でも通知されて…創設される営業第4課のスタッフ募集も始まる…と言う流れだね…課長研修の日程も出て来るし、忙しくなるな…」

「…何もお手伝い出来ませんが…体調には、お気を付け下さい…」

「…ありがとう…まあ、会社の仕事は同僚達と一緒に何とかするよ…残業には、ならないだろうしね…」

「…明日はリアル・ライブ・ショウの配信ですね…」

「…うん…それもあるけど、明日はネヘマイヤさんがお一人で初めて来社されるんだ…それで、今日のアシュリーさんと同様に業務提携条項締結に向けての初協議と言う流れになる…続いて金曜日にはアリミさんも来社されるからね…今週の後半は、かなり神経を使うことになるな…」

「…心身ともに、バイオリズムとコンディションにはご留意下さい…」

「…ありがとう…気を付けるよ…」

 その後は様々な雑談を楽しみながら運転を続け、やがてエレカーはメリッサ・エメリックさんの生菓子店に到着…パーキング・スペースに滑り込んだ。

 私達が入店すると母娘らしい1組と、お友達同士らしい3人1組のお客様方が、ラッピングと精算を待っていた。

 私達に気付いたメリッサさんが接客対応しながら微笑で軽く会釈する…受けて私も無言で軽く右手を挙げ、そのままシエナと一緒にディスプレイ・ケースに視線を移した。

 お客様方には入店して直ぐ視認されたが、その後20数秒で私達であると気付かれてそれからは、暫く時間を取ってのファン対応となった。

 話をして求められるままにサインの依頼にも、セルフィーの要請にも応える…メリッサさんをも交えて7人での集合画像も撮った…シエナ副長の美しさに感心して下さるのは、私としても気分が好い…握手しながら応援の言葉を下さる皆さんを笑顔で見送った。

「…いらっしゃいませ…アドルさん、シエナさん…接客のお手伝いもして頂きまして、ありがとうございました…」

「…いやいや、これくらいは何でもありません…お元気そうで安心しました…お店も繁盛されているようですね…」

「…はい…おかげさまでご贔屓ひいきにして下さるお客様が沢山増えました…アドルさんのおかげです…ありがとうございます…」

「…いいえ…私は別に何もしてないです…総ては貴方方ご夫婦の実力と姿勢と人柄の成果です…それに、これからもっとこのお店は繁盛しますよ…間違いありません…ですので…アルバイトを雇いましょう(笑)…平日でも宜しければ、ウチのクルーを出向させる用意もありますが(笑)…」

「(笑)ありがとうございます、アドルさん(笑)もしも本当にてんてこ舞いになるようでしたら、お願い致します(笑)それで本日は何をご用意致しましょう…」

 そこでシエナを促して前に出す。

「…すみません…もしも無理なら良いんですけれども…少し多めに苺を乗せた、デコレーション・ケーキをお願いします…」

「…かしこまりました…何号でご用意致しましょう? 」

「…家族が多いですので、8号でお願いします…」

「…かしこまりました…少し調整しますので、暫くお待ち下さい…」

「…できるんですか? 」

「…出来ますよ…少しお待ち下さい…」

「…ありがとうございます…」

「…どう致しまして…キャンドルは如何しましょう? 」

「…いえ、お土産なので結構です…」

「…分かりました…」

 その後12分で箱に納められたケーキが出て来る。

「…ラッピングします…」

 綺麗に、ラッピングが仕上げられる。

 私の前に出ようとするシエナの更に先を廻り、上着の内ポケットからビット・カードを取り出した。

「…アドルさん…」

「…良いから…」

 そのまま精算を済ませて箱を受け取る。

「…それではメリッサさん、今週末も宜しくお願いします…ご主人にも宜しくお伝え下さい…」

「…はい…ご来店、ありがとうございました…スターター・セレモニー・ホールでお会いしましょう…」

 その言葉に笑顔の会釈で返し、2人で生菓子店を後にした。

 彼女の実家を目的地にセットして走り出す…所要時間は観なかった…別に長くても構わない。

「…えと…ご両親と? 」

「…はい…兄夫婦と兄夫婦の娘…私の弟妹ていまい…それに母の妹がいます…」

「…分かった…特に注意すべきことは? 」

「…特にはありませんが…アドルさんの人柄をまだよく知らないので、興味本位で失礼な事を言ったり訊いたりするかも知れません…出来れば穏やかに受け流して頂いて…私もフォローに入りますので…」

「…分かったよ…気を付けよう…あまり深い話を振られる前に失礼するのも良いかも知れないね…」

 それから30分走り、とある公園のパーキングスペースに停めて3分後に外に出た私は、煙草を1本喫い終えてからレストルームで用を足し、車に戻ってスタートさせた。

 それから40分走って到着した彼女の実家は、割合に大きい民家で2階建だった…開いている門扉からエレカーを乗り入れさせて貰い、庭先に停めさせて貰った。

「…連絡は? 」

「…ええ…カフェで待っている時に…」

「…OK…じゃ、行こう…」

 並んで玄関先に立つ…人感センサーがインターコールを鳴らす…20秒もしないで、中からドアが開けられた。

「…いらっしゃいませ。ようこそおいで頂きました。アドル・エルクさんですね? 娘から連絡を貰いまして、お待ちしておりました。シエナの母でございます…さあ、どうぞ。お入り下さい…寒いですから…」

 会釈してお誘いに従い、玄関に足を踏み入れる。

「…初めまして。お迎え頂きまして、ありがとうございます。アドル・エルクです…ご挨拶が今になってしまい、申し訳ありませんでした…」

「…アドルさん、母のマリッサです。お母さん、アドル・エルク艦長です…」

「…宜しくお願い致します…」

「…さあさ、お上がり下さいな。遠いところをありがとうございました…大したお持て成しは出来ませんけれども、ゆっくりなさって下さい…」

「…はい、お言葉に甘えさせて頂きまして、お邪魔致します…」

 そう応えてから靴を脱ぎ、上がらせて頂いた。

 シエナ副長のご家族は皆さん、明るく朗らかで優しく思い遣りに溢れた方々だった。

 持参したケーキも喜んで貰えた。

 ご家族全員が揃われたのが21:30だったので促されるままに夕食をご馳走になったのだが、お酒は辞退した。

 皆さんはそれぞれのレベルで、私を肯定的に暖かく受容してくれた。

 実は今夜ご馳走になった夕食の中で、1番感動したのが味噌汁だった。

 暫くぶりに食したのだが、すごく感動させて頂いた。

 勿論、感動させて頂いた想いは、言葉にしても伝えた。

 この味噌汁だけは、今後もご馳走になりたいと率直に思った。

 私とシエナとの関係について、艦長と副長としての関係性以外の側面で訊かれた事はなかったが、それぞれのレベルに於いて興味津々ではあったのだろう。

 夕食を終えて辞する事となった。22:30だった…ご家族全員の見送りを玄関で受けて、シエナと2人で外に出る。

 車の側まで一緒に歩く。

「…素晴らしいご家族だね…」

「…ありがとうございます…失礼な事は言わなかったと思いますが…ちょっと馴れ馴れしい感じで、すみませんでした…」

「…フランクでフレンドリーな会話で良かったよ…あれくらいの会話の方が、こっちも気を遣わなくて好い…」

「…それにしてもお母さんのお味噌汁は旨かった…絶品だったよ…あれだけでも、もう一度ご馳走になりたいと率直に思ったよ…」

「…ありがとうございます…伝えておきます…」

「…私が帰った後であれやこれや訊かれるようなら、申し訳ないね…」

「…大丈夫です…適当に応えますから…」

「…じゃあ、帰るよ…」

「…気を付けて…」

「…うん…また土曜日にね…」

「…はい…」

 車に乗り込む前、家から観えない角度の場所で軽く抱き合って5秒キスした。

 乗って最後に手を振り合って出した。

 社宅に帰着して、そのままタンクベッドに入った。





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