新米道騎士の視廻り旅

トーマス・ライカー

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視廻り旅・4ヶ月目・

夜廻り魔物狩り

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 ふっと目覚める…起き上がって服を直しながら夜空を見上げて、星座の位置関係を観る…日が沈んで二時ふたとき程だ。

「…おい、大丈夫か? 行けるか? 」

「…う…ん…もう、夜? 」

「…ああ、日が沈んで二時ふたときだな…行けるか? 」

「…うん…大丈夫…」

「…支度するぞ…」

「…分かった…」

 泉で顔を洗い、服を着直してケープをまとう。余計なものは身に着けない…一度剣を抜いて確認し、さやに収めて腰に差す。

「…好いか? 」

「…ああ…好いよ…」

「…取り敢えず、この村からな? 」

「…うん…」

 顔を見合わせて呼吸を合わせる…縮地走術で走り出した。

 並んで走って村の周りを廻りながら、魔物供の数…それぞれの居場所…種類を…気配を読んで読み取っていく。

 3周廻り終えた処で、走りを歩みへと緩める。

「…13匹だね…それも5匹はもう村の中に入り込んでる…」

「…ああ…俺達が毎晩、夜の視廻りで始末してるから…魔口の奥に居る奴らも出て来始めているんだな…こりゃあ、このまま俺達が7晩視廻って始末し続けても…奴らの大凡おおよそまで、始末できるかどうかは分からねえな…」

「…日が沈んでも出て来なくなるまで、続けるしかないね…」

「…まあ…そんなところだな…村長さんに相談しに行くのは、その後か…」

「…うん…それで、どうするんだい? 」

「…やっぱり、外側にいる8匹から先に始末しよう…それで…臭いに釣られて出て来た奴らも始末する…」

「…分かったよ…」

「…行くぞ…」

「…うん…」

 ふたり同時に穏行の印を組み、真言を唱え、切って祓う…剣を抜いて左手に持ち替え、右手の指2本を剣の腹に当てる。

「…リン・ウン・タン・ジャン・カン・ダト・バザン・ウン・ティン・ビラン! 」

「…ナウン・クサン・ボダン・ビラン・バザラン・ウッタ・マハーラー・ジエン! 」

 ふたり共、真言を唱え終わると同時に指で剣の腹を祓い、祓いの神気を剣気に乗せた。

 息を合わせた縮地走術で走り出し、村の外側を彷徨いてうろついていた魔物8匹の死角から迫ると、くび、腋、太腿の動脈を斬って走り抜けた。

 そのまま付いた血を拭き取り、草叢くさむらに隠れて待つ…半刻で村の中に入っていた5匹が出て来る。

 同じようにして、その5匹も斬った。必要最小限の斬撃ざんげき斃すたおす…そうしないと、直ぐに剣の刃は魔物の血糊ちのりで斬れなくなる。

「…取り敢えず…終わったか…今、この村の廻りにはいない…近くに水場はあったかな? 水の匂いはどう感じる? 」

「…感じてるけど、遠いよ…あの泉に戻る道のりと大差ない…」

「…そりゃ、マズいな…戻ってから隣村に行くんじゃ、時間が足りねえ…仕方ねえな…火を焚いて、煙で燻すか…血の臭いを曳きながら行くよりゃ、増しだろう…」

 そう言って火起こしの支度をする…雨さえ降ってなけりゃ、5半時はんときもありゃ火は起こせる…枯れ枝を何本か焚べてから、ちょっと油を垂らして燃え上がらせる…その上から青葉を10枚覆いおお被せてかぶ煙を熾すおこ

 激しく立ち昇る煙で、ふたりとも口と鼻を押さえながら、全身を充分に燻すいぶ

「…こんなもんかな? じゃあ、火を消して行くぞ…」

「…ああ…」

 ふたりで手早く火を消して周りと紛らまぎわせてから、また呼吸を合わせて隣村に向け、縮地走術で走り出した。

 6万歩余りを4半刻で駆ける…走りながら奴らの気配を探る。

「…8匹だな…まだ村の中には入り込んでないみたいだ…」

 息を合わせて、脚を緩めゆるながら言う。

「…そんなところだね…臭いでも、そう感じるよ…」

「…待てば、もう少し出て来るだろうけどな…」

「…じゃあ、待ってみるかい? 」

「…いや、この8匹を先ず斃そうたお…その上で暫くしばら待つ…」

「…分かった…」

「…もう少し近寄るぞ…」

「…うん…」

 また息を合わせて走り出し、20拍で緩める…お誂えあつら向きに8匹が30歩程の間隔で並んで歩いていた。

 退魔動剣を抜いて左手に持ち替える。

「…リン ピン トウ シン ゼン キエン カン セン! 」

「…レン フン チー ラン クエン ゲン ミン テン! 」

 水戦神と風戦神の焔光えんこうを動剣に纏わせまと速斬力そくざんりょくを借り受けて走り出す。

 ふたりで4匹ずつの脇を、超速で交互に斬り抜ける…走り抜けて振り向くと、最後に斬った奴が血が迸るほとばしくびを押さえながらサリエナに襲い掛かろうとしていたので、跳び蹴りを喰らわせて倒した。

「…走りを弛めるゆるのが早過ぎる! 気を付けろ! 」

「…ごめん…」

「…血をよく拭き取って隠れるぞ…服に血が付いていないか確かめろ…」

「…分かった…」

 剣に付いた血を丁寧に拭き取って鞘に収め、先ず自分のケープを外して確かめる…次にお互いの服を丁寧に観る…大丈夫だな…付いてない。

 近い草叢くさむら入って隠れる…そのまま一時いっとき

「…来ないね…」

「…うん…近くにはいねぇのかも…な…」

「…どうする? 」

「…帰るか…今夜はこれでやめて、明日は村長むらおさを訪ねよう…」

「…そうだね…」
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