7 / 13
視廻り旅・4ヶ月目・
魔口探し
しおりを挟む
魔物の巣は、魔口とも言う。
大概は湿った落ち葉が沢山積み重なって腐っている地面の森と、剥き出しの山肌との境目に洞窟があったら、まずそこは魔口で間違い無い。
俺とサリエナは縮地走術で五刻を掛けてあちこちを観て廻り、如何にもな洞窟を見付けた。
「…ここで間違い無いね…奴らの臭いで鼻が曲がりそうだよ…」
「…ああ、そうだな…如何にもな場所だし、如何にもな雰囲気だ…」
そう言いながら洞窟の正面、10歩辺りに立つ木まで歩く。
「! ちょっと! アンタ! 何してんのよ!? 」
「…何って匂い付けだろ。デカイ声出すなよ! 気付かれるだろうが! 」
「…匂い付けって、小便してんじゃんよ! トコルじゃないんだからさ! 何もそこまでしなくったって! 」
「…お前と組んで魔口封じの退魔行をやるんだからさ、五千歩先からでも判る匂い印があった方が好いだろ? 」
「…アンタの小便の臭いはね! アタシなら二万歩先からでも判るよ! 」
その悪態には応えずにさっき見付けた沢まで降りて手を洗い、冷たい沢水を飲んだ。
「…さ、裏口を探そうぜ? 」
思いっ切り嫌そうな顔で俺を見返したサリエナとそこで分かれて俺は左回りに、サリエナは右回りでその岩山を廻り込み、それぞれ別の場所で裏口を見付けた。
「…思ったより、この魔口は大きいね? 」
「…ああ、そうだな…この岩山の内側、殆どをくり抜いて巣にしたんだな……奴らを始末した後で、卵や蛹を運び出すのに大きい荷車で七台ってところかな? 」
「…十台頼もうよ…足りなくなったらマズいだろ? 」
「…そうするか……あとは火攻め・煙攻め・微塵発破の準備だけど、村の雑貨屋じゃ用意出来ないだろうから、町まで行かなきゃだな…」
「…魔口攻めに要り用な物なら、あたしがトリムに乗って買いに行くよ。帰りは荷物をトリムに載せて、縮地走で帰るからさ…」
「…大丈夫かよ? ひとりで…」
「…大丈夫さ、トリムの餌も買いたいしね…」
「…そうか…どっちにしても今夜の視廻り狩りで、目星は付けるようだな…」
「…ああ…アンタ、昼飯はどうする? 」
「…今朝はご馳走をたらふく食ったからな…まだ腹は減ってないよ…力水を二口飲めば、明日の朝までは大丈夫さ…」
「…そうかい? じゃあ一度戻って、日が沈むまで休もうか? 」
「…ああ、そうした方が良いな…」
俺達はそのまま縮地走で泉の畔まで戻り、サリエナの寝床を作った。
「…なあ、やっぱり馬で行くにしても1回じゃ買い揃えられないからさ…明日、ここと隣村の村長に相談しに行こうぜ…」
「…そうだね…落ち着いて考えりゃトリムに乗って行ったって、買って帰れる量はたかが知れてる…アンタの言う通り、村の衆の力を借りた方が良い…」
「…へえ…あの意地っ張りだったお前が、結構柔らかくなったもんだな…」
「…まあね…どんなガキでも3ヶ月ありゃ、ちっとは成長するだろ? 」
「…それもそうだな……俺は瞑想してから寝るよ…お前はどうする? 」
「…トリムを世話してから寝るよ…音は立てないから…」
「…分かった…」
剣と共に持ち物を総て身体から外して傍らに置く。
草むらを巧く畳んでその上に半跏趺坐で座る。
数息観を経て、内観に移行する……自分の存在と感覚を客観的に観じながら、魔物どもの存在を探る……まだ日中だから、彷徨いている奴らは観じない…だから先刻に見付けた魔口に焦点を当てる。
凄い気配だ…動いている奴と蛹や卵の区別はまだ付かないが…ひっくるめて凄い…とてもじゃないが、俺達ふたりだけで今直ぐどうこう出来るようなものじゃない…彷徨いている奴らを片付けてから、村の衆の力も借りて魔口は潰すしかない。
瞑想で、内観に入りながらブルってた…魔口から意識を引き離して自分の中心を集中して観ながら、俺の身に染み付いているこれまでの修行・鍛錬・お師さんの言葉を確認した。
全部確認してから自分の中心の奥から少しずつ戻り、瞑想のレベルを下げて目を開く…そろそろ組んでいた脚も痺れて痛くなってきている……最後に総ての生き物の幸せを願って立ち上がった。
観るとサリエナはもう寝ている。
ゆっくり…筋肉と腱を解してから、俺も寝た。
大概は湿った落ち葉が沢山積み重なって腐っている地面の森と、剥き出しの山肌との境目に洞窟があったら、まずそこは魔口で間違い無い。
俺とサリエナは縮地走術で五刻を掛けてあちこちを観て廻り、如何にもな洞窟を見付けた。
「…ここで間違い無いね…奴らの臭いで鼻が曲がりそうだよ…」
「…ああ、そうだな…如何にもな場所だし、如何にもな雰囲気だ…」
そう言いながら洞窟の正面、10歩辺りに立つ木まで歩く。
「! ちょっと! アンタ! 何してんのよ!? 」
「…何って匂い付けだろ。デカイ声出すなよ! 気付かれるだろうが! 」
「…匂い付けって、小便してんじゃんよ! トコルじゃないんだからさ! 何もそこまでしなくったって! 」
「…お前と組んで魔口封じの退魔行をやるんだからさ、五千歩先からでも判る匂い印があった方が好いだろ? 」
「…アンタの小便の臭いはね! アタシなら二万歩先からでも判るよ! 」
その悪態には応えずにさっき見付けた沢まで降りて手を洗い、冷たい沢水を飲んだ。
「…さ、裏口を探そうぜ? 」
思いっ切り嫌そうな顔で俺を見返したサリエナとそこで分かれて俺は左回りに、サリエナは右回りでその岩山を廻り込み、それぞれ別の場所で裏口を見付けた。
「…思ったより、この魔口は大きいね? 」
「…ああ、そうだな…この岩山の内側、殆どをくり抜いて巣にしたんだな……奴らを始末した後で、卵や蛹を運び出すのに大きい荷車で七台ってところかな? 」
「…十台頼もうよ…足りなくなったらマズいだろ? 」
「…そうするか……あとは火攻め・煙攻め・微塵発破の準備だけど、村の雑貨屋じゃ用意出来ないだろうから、町まで行かなきゃだな…」
「…魔口攻めに要り用な物なら、あたしがトリムに乗って買いに行くよ。帰りは荷物をトリムに載せて、縮地走で帰るからさ…」
「…大丈夫かよ? ひとりで…」
「…大丈夫さ、トリムの餌も買いたいしね…」
「…そうか…どっちにしても今夜の視廻り狩りで、目星は付けるようだな…」
「…ああ…アンタ、昼飯はどうする? 」
「…今朝はご馳走をたらふく食ったからな…まだ腹は減ってないよ…力水を二口飲めば、明日の朝までは大丈夫さ…」
「…そうかい? じゃあ一度戻って、日が沈むまで休もうか? 」
「…ああ、そうした方が良いな…」
俺達はそのまま縮地走で泉の畔まで戻り、サリエナの寝床を作った。
「…なあ、やっぱり馬で行くにしても1回じゃ買い揃えられないからさ…明日、ここと隣村の村長に相談しに行こうぜ…」
「…そうだね…落ち着いて考えりゃトリムに乗って行ったって、買って帰れる量はたかが知れてる…アンタの言う通り、村の衆の力を借りた方が良い…」
「…へえ…あの意地っ張りだったお前が、結構柔らかくなったもんだな…」
「…まあね…どんなガキでも3ヶ月ありゃ、ちっとは成長するだろ? 」
「…それもそうだな……俺は瞑想してから寝るよ…お前はどうする? 」
「…トリムを世話してから寝るよ…音は立てないから…」
「…分かった…」
剣と共に持ち物を総て身体から外して傍らに置く。
草むらを巧く畳んでその上に半跏趺坐で座る。
数息観を経て、内観に移行する……自分の存在と感覚を客観的に観じながら、魔物どもの存在を探る……まだ日中だから、彷徨いている奴らは観じない…だから先刻に見付けた魔口に焦点を当てる。
凄い気配だ…動いている奴と蛹や卵の区別はまだ付かないが…ひっくるめて凄い…とてもじゃないが、俺達ふたりだけで今直ぐどうこう出来るようなものじゃない…彷徨いている奴らを片付けてから、村の衆の力も借りて魔口は潰すしかない。
瞑想で、内観に入りながらブルってた…魔口から意識を引き離して自分の中心を集中して観ながら、俺の身に染み付いているこれまでの修行・鍛錬・お師さんの言葉を確認した。
全部確認してから自分の中心の奥から少しずつ戻り、瞑想のレベルを下げて目を開く…そろそろ組んでいた脚も痺れて痛くなってきている……最後に総ての生き物の幸せを願って立ち上がった。
観るとサリエナはもう寝ている。
ゆっくり…筋肉と腱を解してから、俺も寝た。
1
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる