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緊急事態
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「……何だって?! もう一度言ってくれ! 」
司令官はメインビューワと3Dチャートでも刻々と移り変わる戦況を眼で追うのに忙しく…傍まで来て報告した通信士官の顔を見られなかった。
「……本国首都にて緊急事態が発生しました! クーデターです!! 」
「……クーデター?! 」
思わず上体ごと向けて、その士官の顔を見る。
「……誰からだ?! 」
「……統合作戦本部…アラン・ガーランド准将からです! 回線は2分後に切られました……」
「……我が艦隊に対しての命令は? 」
「……そこまでは……」
「………宇宙艦隊司令部の誰でもいい…何とか繋いで状況を訊いてくれ……」
「……分かりました……」
彼はそれで退がった。
「……提督……」
副官と参謀2名……情報士官が集まる。
「……可及的速やかに戦線を収拾して、本国への帰還行程に入る……んだが……実は…これが難題だな……」
「……副司令には、どう連絡しますか? 」
「……それも難題だな…ってか、もう報せが行ってるかも知れんが……」
「……各分艦隊司令官には、戦術共有回線を通じ…私信として挿みましょう……分艦隊旗艦は、数隻の僚艦と共に本隊に合流するようにと……」
「……それでいこう……重巡3隻に砲艦10隻の支援分艦隊を30隊編成……それらを配置して戦線を支え…維持しつつ、艦隊主力は本隊に逐次合流……」
「……了解しました……」
「……要塞は、もう無力化したと言うのにな……」
「……全くですね……急いで帰らねばならないのは解りますが……この要衝を放置するのは……如何にも惜しいです……」
「……同感だな……何ができるか…考えてみよう……」
40分後……コマンダー・シートに座ったまま…料理を盛り付けた皿にフォークを乗せ…それを左手で持ちながら、携帯端末を右手で操作して状況を聞いたり…指令を発していた提督だったが……艦隊参謀長と情報士官と、最初に来た通信士官の3人がブリッジに現れて提督のもとに歩み寄る。
「……どうした? 」
皿を左のアームレストに乗せて、端末を耳から離した。
「……艦隊の集結ですが…順調です……と言うよりも、順調過ぎます……」
「……と言うと? 」
「……帝国艦隊と同盟艦隊に於ける…それぞれの内部交信を、切れ切れにですが傍受して分析した処……どうやら両国の首都中枢に於いても緊急事態が発生したようで……今は両国からの派遣艦隊に於いても、戦線を収拾して艦隊を集結させ…本国への帰還を急ぐと言う方針が出されているようです……」
「……両国から艦隊に宛てた命令は傍受したか? 」
「…いえ、それは傍受しておりません…」
「……タイミングが良過ぎる……判ってきたぞ……これは『結社』の仕業だな……」
「…提督もそう思われますか? 」
艦隊参謀長が訊く。
「…ああ…『結社』がブレーキを掛けてきたって訳だな…」
「…『結社』って…都市伝説じゃなかったんですか? 」
若い通信士官が訊いた。
「…いや…『結社』は古くから存在する……それにしても、奴らの思惑に乗せられるのは忌々しい……どうしたものかな……副司令はどうしている? 」
「…副司令の分艦隊旗艦と主力は既に旗艦艦隊に合流して…副司令を含む幕僚グループが、この『グラスタン』に向かっているとの事です……」
「…そうか…じゃあ乗ったら、彼らには直ぐここに来るように頼む……時間を合わせて参謀長と参謀次官……戦略課長に、情報部長と参事官……後方支援部長も集合だ……今思い付いている事を協議する……」
「…了解しました…」
そう応えて彼らは退がった。
提督は一息吐いて座り直してから、艦隊司令部幕僚人事ファイルを3Dモニターに呼び出すと、1人1人を吟味し始めた。
その40分後……艦隊副司令以外のメンバーが、もう揃っている。
「…艦隊副司令のお見えです! 」
「…ああ、こっちだよ! 呼んでくれ! 」
「…遅くなりました…」
「…いや……この状況では、早い方だろう……支援分艦隊の働きはどうだ? 」
「……よくやってくれています……が…そろそろ彼らにも撤退準備に入って貰わないと、間に合わなくなります……」
「…うん……そこら辺はタイミングを観て……彼らにもこちらに急速合流して貰おう……話は変わるが…このメンバーに集まって貰ったのは、他でもないんだ……どうやら3国の首都……それぞれの政府中枢でほぼ同時に…緊急事態が起こったらしい……だから3個艦隊とも、急速に戦線を収拾しつつ…艦隊を集結させて帰還行程に入ろうとしている……」
「……『結社』の仕業ですな……タイミングが良過ぎます……」
「…君も、そう思うか? 」
「…それしか考えられません……この6周期間……3国間の戦闘は激化傾向にありましたからね……『結社』がブレーキを掛けたんでしょう……」
「…流石に『結社』の勧誘を2回も蹴っただけの事はある……」
「……3回も蹴った司令には及びませんよ(笑)……それで…どうするんです? 」
「…可及的速やかに帰還しなければならないのは仕方ないが……帰還行程に入る間際に数名をこの地に残す……」
「…その目的は? 」
「……ぶっちゃけ……あの要塞を我が艦隊の根拠地としたい……非公式なね……帰還すればクーデター勢力との戦闘は避けられないだろうし……『結社』が裏で糸を曳いているなら、このクーデター事件……一筋縄では収拾できないかも知れない……艦隊戦闘の結果で傷付けば……少なくとも、1時的な寄港地が必要になる……その頃にはあの要塞も……少しは使えるようになっているんじゃないかとね……期待したいんだよ……その為の……布石の措置だ……有能な若手士官を数名選び……必要なツール…情報…権限…武器と機動力・戦闘力をも与えて、あの要塞に派遣する……」
「……なるほど……分かりました……それで……具体的には誰を? 」
「…彼だ…」
そう応えて提督は、宙空に3Dモニターを投影する……そこには既に、ある若手士官に於ける人事ファイルのページが映し出されていた。
「…? スコット・バウアー中尉……3等戦略幕僚参事官……まだ宇宙艦隊戦術幹部学校の3回生ですね……若手にしては好い面構えをしていますが…彼が適任であると? 」
「……そう思うな……とにかく話をしてみよう…ここに呼んでくれ……人事レポートだけで、人は推し量れないからな……」
「…分かりました…」
提督はスタッフに言って、人数分のパイプ椅子を用意させた……するとコマンダー・シートから降りて、パイプ椅子のひとつに座る。
「……皆も、それぞれに座ってくれ……高圧的な話し方にならないようにな……」
2分後だった。
「…スコット・バウアー中尉、入ります…」
かなり緊張しているようだ。
「……やあ、中尉…よく来てくれた……忙しい処をご苦労さん……こっちに来て、ここに座ってくれ……別に怖い話じゃないから、固くならなくても良いよ……やあ、ありがとう……確認するが、スコット・バウアー中尉で間違いないかな? 」
「……はい、間違いありません……」
「……良かった……何故君に、ここまで来て貰ったのかと言うとね……君に先ず相談をして……承知して貰えるなら、新しい仕事に就いて貰いたいと思って呼んだんだ……」
「…そうですか…」
「…うん…まだかなり堅いな……悪いがコーヒーと紅茶を人数分で頼むよ……もっとリラックスして話そう……それで、中尉……先ず訊くんだが、『結社』については…どう思う? 」
「……『結社』…ですか? 自分は…都市伝説のようなものかと、考えていましたが……」
「……そうか……尉官の諸君らの捉え方では、そうなのだろうな……残念なんだがバウアー中尉……『結社』は古くから存在している……」
「…そうですか…分かりました…」
「…うん…今はそう認識していてくれ……後で、様々に絡めた話も出るだろう……」
「…はい…」
「…うん…話は変わるが、クーデター事件については、認識しているね? 」
「…はい、それは承知しています……」
「…よし…我が艦隊は、クーデター勢力と相対するため……可及的速やかに帰還する……のだが……クーデター勢力の実態と…首都機能の何処までがクーデター勢力に押さえられているのか、が…判明していない……我が艦隊とクーデター勢力との戦闘は避けられないだろう……艦隊戦闘ともなれば、我が艦隊も傷付き…1時転進を余儀なくされるかも知れない……」
「……厳しい…情勢ですね……」
「……ああ……その場合に備え、あの『要塞』を……我が艦隊の1時的な寄港地と言うか、根拠地として非公式にだが……少しでも使用できるようにしたい……」
「……なるほど……」
ここで全員にコーヒーと紅茶が配された……それぞれが好みのカップを取り上げて、口を付ける。
「……そこで君に相談だ……君をリーダーとして7名の士官を選び……我が艦隊が帰還行程に入る間際……あの『要塞』に派遣する……勿論、必要なツール…情報…権限…武器と機動力…戦闘力も与えて、君達を送り出す……」
「……大変な任務になりそうですね……」
「……ああ…そうなるだろうな……なおこれは特別秘密任務だ……公式記録には一切残さない……と言うのは、君達の異動を『結社』に知られたくないからだ……このクーデター事件は……『結社』が裏で確実に糸を曳いている……何故そう言えるか? ここに来ている『帝国』と『同盟』からの派遣艦隊も…今は戦線を収拾しつつ本国への帰還を急いでいるからだ……彼らと本国との交信を…切れ切れながらも傍受して分析した処……彼ら本国の首都中枢に於いても…艦隊を速やかに帰還させねばならない程の、緊急非常事態が発生したらしいと分析された……」
「……その両国首都中枢での緊急非常事態の裏にも…『結社』が存在していると? 」
「……ああ…『結社』の目的は金儲けと、権力の掌握・強化だ……そのために彼らは…実に2000周期以上もの間……この星雲世界の裏側で、独自のネットワークを張り巡らして…暗躍してきたのだ…」
「……そうだったのですか……」
「……うん……『ドラス帝国』と『ウォーレス星間同盟』と…我が『アンガラーナ共和国』に於ける三巴の戦闘は、この6周期間…激化傾向にあった…だから『結社』は、ある程度のブレーキを計画的に掛けようとしたんだろう……戦争を止めさせてしまっては、彼らの儲けにならない……だがあまりに激化させて相互確証破壊にまで至らせてしまっては、元も子も無くなると言う訳だ……」
「……なるほど……そうですか……分かりました……」
「……話を戻すが、君達の任務は隠密任務だ……記録上君達は、戦闘中に行方不明と言う事にする……ご家族にも、そのように伝えられる……だがここの記録での君達は……艦隊司令官としての権限と、戦時特例登用措置法とを以て……この特別秘密任務への異動となる……また同じように、スコット・バウアー中尉に於いては……私の権限と、戦時特例登用措置法をとを以て……宇宙艦隊戦略・戦術幹部学校を首席で繰り上げ卒業したと決定する……艦を離れるまでの間には、卒業証書も届けさせよう……どうだろうか、バウアー中尉? やって貰えるかな? 」
「……具体的な任務の内容は? 」
「……それを伝える前に…やって貰えるのかどうか? についての返答を聞かせて貰いたいんだが……どうかな? 」
「……拝命……します……」
「……ありがとう……宜しく頼むよ……」
そう言いながら提督は胸の内ポケットから1枚のカードを取り出して、スコット・バウアーに渡した。
「……これからの君だ……このカードは誰にも見せるなよ……たった今から君は、スコット・バウアー特務少佐だ……今の君の権限でなら、総ての人事ファイルが閲覧できる……君の部下となる7人の選抜については、君自身に一任する……ここに居るメンバーになら、誰に相談しても良い……最大限に協力してくれる……」
「……ありがとうございます……」
「……急いで作ったものだが、そのカードは正式なものだ……では、具体的な任務内容だが……今は無力化して放置されているあの宇宙要塞を再建して欲しい……その為には先ず、先立つものが必要だろう……君に与えたアクセス権限を以て……我が『アンガラーナ共和国』中枢での……機密レベル3以下の情報に於ける……閲覧・コピーを含む取得を許可し……情報と情報の交換などの遣り取りや……情報の売買によっての……金銭の取得を許可する……」
ものすごく驚いた表情を見せて固まっているスコット・バウアーに向けて、提督は更に続ける。
「……君ら8人のチームはあくまでも……我が『アンガラーナ共和国』の名の下に……考え得るあらゆる方策…取引…商売などの経済活動により……経済力を高め……必要な物資・資材などを購入して要塞を再建……人員を組織し…含めてシステムを運用し……あらゆる側面の強化……影響力・支配力を向上させ……要塞を基点とした制宙域の確立…拡大…強化を図り……一大制宙・支配・影響の及ぼせるエリアを確定させて、維持することだ……」
司令官はメインビューワと3Dチャートでも刻々と移り変わる戦況を眼で追うのに忙しく…傍まで来て報告した通信士官の顔を見られなかった。
「……本国首都にて緊急事態が発生しました! クーデターです!! 」
「……クーデター?! 」
思わず上体ごと向けて、その士官の顔を見る。
「……誰からだ?! 」
「……統合作戦本部…アラン・ガーランド准将からです! 回線は2分後に切られました……」
「……我が艦隊に対しての命令は? 」
「……そこまでは……」
「………宇宙艦隊司令部の誰でもいい…何とか繋いで状況を訊いてくれ……」
「……分かりました……」
彼はそれで退がった。
「……提督……」
副官と参謀2名……情報士官が集まる。
「……可及的速やかに戦線を収拾して、本国への帰還行程に入る……んだが……実は…これが難題だな……」
「……副司令には、どう連絡しますか? 」
「……それも難題だな…ってか、もう報せが行ってるかも知れんが……」
「……各分艦隊司令官には、戦術共有回線を通じ…私信として挿みましょう……分艦隊旗艦は、数隻の僚艦と共に本隊に合流するようにと……」
「……それでいこう……重巡3隻に砲艦10隻の支援分艦隊を30隊編成……それらを配置して戦線を支え…維持しつつ、艦隊主力は本隊に逐次合流……」
「……了解しました……」
「……要塞は、もう無力化したと言うのにな……」
「……全くですね……急いで帰らねばならないのは解りますが……この要衝を放置するのは……如何にも惜しいです……」
「……同感だな……何ができるか…考えてみよう……」
40分後……コマンダー・シートに座ったまま…料理を盛り付けた皿にフォークを乗せ…それを左手で持ちながら、携帯端末を右手で操作して状況を聞いたり…指令を発していた提督だったが……艦隊参謀長と情報士官と、最初に来た通信士官の3人がブリッジに現れて提督のもとに歩み寄る。
「……どうした? 」
皿を左のアームレストに乗せて、端末を耳から離した。
「……艦隊の集結ですが…順調です……と言うよりも、順調過ぎます……」
「……と言うと? 」
「……帝国艦隊と同盟艦隊に於ける…それぞれの内部交信を、切れ切れにですが傍受して分析した処……どうやら両国の首都中枢に於いても緊急事態が発生したようで……今は両国からの派遣艦隊に於いても、戦線を収拾して艦隊を集結させ…本国への帰還を急ぐと言う方針が出されているようです……」
「……両国から艦隊に宛てた命令は傍受したか? 」
「…いえ、それは傍受しておりません…」
「……タイミングが良過ぎる……判ってきたぞ……これは『結社』の仕業だな……」
「…提督もそう思われますか? 」
艦隊参謀長が訊く。
「…ああ…『結社』がブレーキを掛けてきたって訳だな…」
「…『結社』って…都市伝説じゃなかったんですか? 」
若い通信士官が訊いた。
「…いや…『結社』は古くから存在する……それにしても、奴らの思惑に乗せられるのは忌々しい……どうしたものかな……副司令はどうしている? 」
「…副司令の分艦隊旗艦と主力は既に旗艦艦隊に合流して…副司令を含む幕僚グループが、この『グラスタン』に向かっているとの事です……」
「…そうか…じゃあ乗ったら、彼らには直ぐここに来るように頼む……時間を合わせて参謀長と参謀次官……戦略課長に、情報部長と参事官……後方支援部長も集合だ……今思い付いている事を協議する……」
「…了解しました…」
そう応えて彼らは退がった。
提督は一息吐いて座り直してから、艦隊司令部幕僚人事ファイルを3Dモニターに呼び出すと、1人1人を吟味し始めた。
その40分後……艦隊副司令以外のメンバーが、もう揃っている。
「…艦隊副司令のお見えです! 」
「…ああ、こっちだよ! 呼んでくれ! 」
「…遅くなりました…」
「…いや……この状況では、早い方だろう……支援分艦隊の働きはどうだ? 」
「……よくやってくれています……が…そろそろ彼らにも撤退準備に入って貰わないと、間に合わなくなります……」
「…うん……そこら辺はタイミングを観て……彼らにもこちらに急速合流して貰おう……話は変わるが…このメンバーに集まって貰ったのは、他でもないんだ……どうやら3国の首都……それぞれの政府中枢でほぼ同時に…緊急事態が起こったらしい……だから3個艦隊とも、急速に戦線を収拾しつつ…艦隊を集結させて帰還行程に入ろうとしている……」
「……『結社』の仕業ですな……タイミングが良過ぎます……」
「…君も、そう思うか? 」
「…それしか考えられません……この6周期間……3国間の戦闘は激化傾向にありましたからね……『結社』がブレーキを掛けたんでしょう……」
「…流石に『結社』の勧誘を2回も蹴っただけの事はある……」
「……3回も蹴った司令には及びませんよ(笑)……それで…どうするんです? 」
「…可及的速やかに帰還しなければならないのは仕方ないが……帰還行程に入る間際に数名をこの地に残す……」
「…その目的は? 」
「……ぶっちゃけ……あの要塞を我が艦隊の根拠地としたい……非公式なね……帰還すればクーデター勢力との戦闘は避けられないだろうし……『結社』が裏で糸を曳いているなら、このクーデター事件……一筋縄では収拾できないかも知れない……艦隊戦闘の結果で傷付けば……少なくとも、1時的な寄港地が必要になる……その頃にはあの要塞も……少しは使えるようになっているんじゃないかとね……期待したいんだよ……その為の……布石の措置だ……有能な若手士官を数名選び……必要なツール…情報…権限…武器と機動力・戦闘力をも与えて、あの要塞に派遣する……」
「……なるほど……分かりました……それで……具体的には誰を? 」
「…彼だ…」
そう応えて提督は、宙空に3Dモニターを投影する……そこには既に、ある若手士官に於ける人事ファイルのページが映し出されていた。
「…? スコット・バウアー中尉……3等戦略幕僚参事官……まだ宇宙艦隊戦術幹部学校の3回生ですね……若手にしては好い面構えをしていますが…彼が適任であると? 」
「……そう思うな……とにかく話をしてみよう…ここに呼んでくれ……人事レポートだけで、人は推し量れないからな……」
「…分かりました…」
提督はスタッフに言って、人数分のパイプ椅子を用意させた……するとコマンダー・シートから降りて、パイプ椅子のひとつに座る。
「……皆も、それぞれに座ってくれ……高圧的な話し方にならないようにな……」
2分後だった。
「…スコット・バウアー中尉、入ります…」
かなり緊張しているようだ。
「……やあ、中尉…よく来てくれた……忙しい処をご苦労さん……こっちに来て、ここに座ってくれ……別に怖い話じゃないから、固くならなくても良いよ……やあ、ありがとう……確認するが、スコット・バウアー中尉で間違いないかな? 」
「……はい、間違いありません……」
「……良かった……何故君に、ここまで来て貰ったのかと言うとね……君に先ず相談をして……承知して貰えるなら、新しい仕事に就いて貰いたいと思って呼んだんだ……」
「…そうですか…」
「…うん…まだかなり堅いな……悪いがコーヒーと紅茶を人数分で頼むよ……もっとリラックスして話そう……それで、中尉……先ず訊くんだが、『結社』については…どう思う? 」
「……『結社』…ですか? 自分は…都市伝説のようなものかと、考えていましたが……」
「……そうか……尉官の諸君らの捉え方では、そうなのだろうな……残念なんだがバウアー中尉……『結社』は古くから存在している……」
「…そうですか…分かりました…」
「…うん…今はそう認識していてくれ……後で、様々に絡めた話も出るだろう……」
「…はい…」
「…うん…話は変わるが、クーデター事件については、認識しているね? 」
「…はい、それは承知しています……」
「…よし…我が艦隊は、クーデター勢力と相対するため……可及的速やかに帰還する……のだが……クーデター勢力の実態と…首都機能の何処までがクーデター勢力に押さえられているのか、が…判明していない……我が艦隊とクーデター勢力との戦闘は避けられないだろう……艦隊戦闘ともなれば、我が艦隊も傷付き…1時転進を余儀なくされるかも知れない……」
「……厳しい…情勢ですね……」
「……ああ……その場合に備え、あの『要塞』を……我が艦隊の1時的な寄港地と言うか、根拠地として非公式にだが……少しでも使用できるようにしたい……」
「……なるほど……」
ここで全員にコーヒーと紅茶が配された……それぞれが好みのカップを取り上げて、口を付ける。
「……そこで君に相談だ……君をリーダーとして7名の士官を選び……我が艦隊が帰還行程に入る間際……あの『要塞』に派遣する……勿論、必要なツール…情報…権限…武器と機動力…戦闘力も与えて、君達を送り出す……」
「……大変な任務になりそうですね……」
「……ああ…そうなるだろうな……なおこれは特別秘密任務だ……公式記録には一切残さない……と言うのは、君達の異動を『結社』に知られたくないからだ……このクーデター事件は……『結社』が裏で確実に糸を曳いている……何故そう言えるか? ここに来ている『帝国』と『同盟』からの派遣艦隊も…今は戦線を収拾しつつ本国への帰還を急いでいるからだ……彼らと本国との交信を…切れ切れながらも傍受して分析した処……彼ら本国の首都中枢に於いても…艦隊を速やかに帰還させねばならない程の、緊急非常事態が発生したらしいと分析された……」
「……その両国首都中枢での緊急非常事態の裏にも…『結社』が存在していると? 」
「……ああ…『結社』の目的は金儲けと、権力の掌握・強化だ……そのために彼らは…実に2000周期以上もの間……この星雲世界の裏側で、独自のネットワークを張り巡らして…暗躍してきたのだ…」
「……そうだったのですか……」
「……うん……『ドラス帝国』と『ウォーレス星間同盟』と…我が『アンガラーナ共和国』に於ける三巴の戦闘は、この6周期間…激化傾向にあった…だから『結社』は、ある程度のブレーキを計画的に掛けようとしたんだろう……戦争を止めさせてしまっては、彼らの儲けにならない……だがあまりに激化させて相互確証破壊にまで至らせてしまっては、元も子も無くなると言う訳だ……」
「……なるほど……そうですか……分かりました……」
「……話を戻すが、君達の任務は隠密任務だ……記録上君達は、戦闘中に行方不明と言う事にする……ご家族にも、そのように伝えられる……だがここの記録での君達は……艦隊司令官としての権限と、戦時特例登用措置法とを以て……この特別秘密任務への異動となる……また同じように、スコット・バウアー中尉に於いては……私の権限と、戦時特例登用措置法をとを以て……宇宙艦隊戦略・戦術幹部学校を首席で繰り上げ卒業したと決定する……艦を離れるまでの間には、卒業証書も届けさせよう……どうだろうか、バウアー中尉? やって貰えるかな? 」
「……具体的な任務の内容は? 」
「……それを伝える前に…やって貰えるのかどうか? についての返答を聞かせて貰いたいんだが……どうかな? 」
「……拝命……します……」
「……ありがとう……宜しく頼むよ……」
そう言いながら提督は胸の内ポケットから1枚のカードを取り出して、スコット・バウアーに渡した。
「……これからの君だ……このカードは誰にも見せるなよ……たった今から君は、スコット・バウアー特務少佐だ……今の君の権限でなら、総ての人事ファイルが閲覧できる……君の部下となる7人の選抜については、君自身に一任する……ここに居るメンバーになら、誰に相談しても良い……最大限に協力してくれる……」
「……ありがとうございます……」
「……急いで作ったものだが、そのカードは正式なものだ……では、具体的な任務内容だが……今は無力化して放置されているあの宇宙要塞を再建して欲しい……その為には先ず、先立つものが必要だろう……君に与えたアクセス権限を以て……我が『アンガラーナ共和国』中枢での……機密レベル3以下の情報に於ける……閲覧・コピーを含む取得を許可し……情報と情報の交換などの遣り取りや……情報の売買によっての……金銭の取得を許可する……」
ものすごく驚いた表情を見せて固まっているスコット・バウアーに向けて、提督は更に続ける。
「……君ら8人のチームはあくまでも……我が『アンガラーナ共和国』の名の下に……考え得るあらゆる方策…取引…商売などの経済活動により……経済力を高め……必要な物資・資材などを購入して要塞を再建……人員を組織し…含めてシステムを運用し……あらゆる側面の強化……影響力・支配力を向上させ……要塞を基点とした制宙域の確立…拡大…強化を図り……一大制宙・支配・影響の及ぼせるエリアを確定させて、維持することだ……」
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