『星屑の狭間で』(対話・交流・対戦編)

トーマス・ライカー

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フィフス・ゲーム…戦場まで…2…

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「…もう言わない方が好いかとも思うんだけど…さっきは済まなかったね…」

 まだはっきりと…さっきのシエナ副長の心理が理解できている訳ではなかったのだが…彼女を動揺させてしまった事には、謝罪の必要性を感じてそう言った。

 ラウンジの2人席にシエナと対面で座り、昼食を摂っている…私はベーシックなステーキ・ランチで、シエナはイタリアン・クラブハウス・サンド・ランチだ。

「…いいえ、大丈夫です…もう言わなくて良いですよ…」

 撮影されているのを意識しているのだろう…彼女は簡潔にそれだけ応える。

「…分かった…」

 それだけ言って、暫く黙って食べる…すると切り替えたように、シエナが訊いてくる。

「…午後は、どうされます? 」

「…全スタッフと…機関部と保安部の全員に、それぞれ推進装置のアクセルと…兵装のトリガーを割り振る…割り振られたクルーは、自分のヴァイザーに装備・装置へのアクセス・リンクをセットアップする…私のヴァイザーとの間にも、相互アクセス・リンクをセットアップして…私からの指示を感知したら、即時に…具体的に言えば0.5秒未満で操作できるように調整してセットアップして貰う…そんなところかな…あとはそれぞれで少し、練習して貰えれば良いだろう…」

「…もしもこの…対4隻の決闘が…連続戦闘だったとしたら、受けましたか? 」

「…受けたね…形態としては、こっちが不利になるから…その代わりにシールドと遮蔽装置の使用は認めて貰う…それなら何とか勝てるだろう…でも、かなり時間が掛かるな…下手をすると、6時間掛かるかも知れない…」

「…それなら…4対1の方が楽ですか? 」

「…楽じゃないよ、副長…楽じゃないけど、4対1の方が早く決着が付く…それに、勝てるしね…」

「…分かりました。すみません…」

 私の言い方にほんの少しの失望感を感じ取ったようで、シエナは直ぐに謝罪した。

「…いや、何でもないよ…気にしないで…それはそうと、弟さんには訊いて貰えたかな? その…非公式な協力についてだけど…」

「…はい…訊いてはみましたが、恐縮しているようで…まだ色好い返事は貰えていません…」

「…そうか…非公式なんだから、何でも良いんだけれどもね…参謀でもアドバイザーでもアンバサダーでもインフルエンサーでもね…バズるかも知れないけど、叩かれる可能性もあるからな…暫くしたら、もう一度訊いてみて? 」

「…分かりました…」

 その後はふたりとも、黙って食べて…食べ終えた…ライトビアを飲み干してから、コーヒーに口を付ける。

「…何か不安がある? 」

「…やはり他所の艦を訪問するのは、慣れません…」

「…解るよ……でも、同じ役職に就いている者同士での会合に本艦を代表して参加するんだから、言わば本艦を正式に代表する大使だ……是非堂々と参加して、交流を図ると共に情報を収集して来て欲しい…」

「…了解しました…でしたら、真剣に取り組みます…」

「…頼みます…警護役も兼ねて、シャトル・パイロットを就けるよ…」

「…ありがとうございます…」

「…うん…じゃあ、戻ろうか? 」

「…はい…」

 2人とも立ち上がり、食器を返却口に返して一緒にラウンジから退室する…ブリッジに戻るシエナに、個室で一服点けてから戻ると告げてそれぞれ別のターボ・リフトに乗った。

 個室に入るとデスクに着いてボタンを外す…灰皿とライターとプレミアム・シガレットのボックスを引出しから出して置く。

 酒は用意しなかった…ここから夜まで、アルコールは入れたくない…改めて考えをまとめながら、火を点ける。

 3服目を喫って蒸して燻らせてから、デスク・パッドを引き寄せて操作し始める。

 12服目を燻らせて喫い終わる…改めてデスク・パッドを目の前に置き、スピード・モードの80%程で6分間操作して粗方のまとめを終え、キャプテン・シート前のコンソールと共有した。

 灰皿を洗って片付けて上着を脱ぐ…丹念に洗顔してタオルで拭く…髪を整えて着直す…軽くチェックしてブリッジに向かった。

 ブリッジに上がって、シエナと席を代わる…自分のヴァイザーを取り出して起動し、頭に装着する…タッチパネルを操作して3Dディスプレイと3Dパネルも空間に表示させ、ヴァイザーとリンクさせる。

 先程自分の個室からここに送ったテキスト・データを呼び出し、エディター上で表示させる…ノーマル・パネルに3Dパネル…更にヴァイザーでの裸眼焦点編集と口頭音声編集も併用して、詳細な再編集作業に入る。

 スピード・モードからパワー・モードにまでペースを上げての編集作業を12分続けて終える…その後3分で確認して保存…対象者リストの全員に送信した。

 3D表示を切り、ヴァイザーも頭から外してOFFる…収納してから口を開いた。

「…コンピューター、艦内オール・コネクト・コミュニケーション…」

【コネクト】

「…こちらは艦長…ブリッジより、全員に向けて達します…そのままで聴いて欲しい…たった今、対象者に向けてテキスト・データを配付送信した…対象者とは、スタッフの全員と全機関部員と全保安部員です…内容は、対象者のそれぞれひとりずつに割り振った、ひとつの推進システムに於けるアクセルペダル操作リンクと、ひとつの兵装に於けるトリガーリンクです…対象者はそれぞれに内容を確認…更に自席に着き、ヴァイザーも実際に使用して接続リンクの確認と操作性をチェック…更に自分に適合する限界操作反応速度に調整…具体的に言えば、私からの指示を受け取ってから…0.5秒未満で、即時に操作を実行するようにして下さい…その後、若干の時間を取って練習して下さい…対象者全員は、明朝09:00からの戦闘行動開始10分前までには戦闘配置…総ての準備を完了させ、操作接続リンクも確認…始まったら、私の指示を0.5秒未満で即時に実行…悪いが総ての決着が付くまで休憩は無い…だが、早ければ60分…長くても120分以内には決着を付ける…全員が一丸となって戦い、勝利を掴み取ろう…それは充分に可能です…質問が無ければ、各自それぞれ確認作業に入るように…」

 ここで話を切って暫く待ったが、質問や意見は聴こえて来なかった。

「…更に続けます…本艦を含めて5隻は、本日のナイト・タイムに入る60分前までに戦場予定宙域である惑星圏の外周宙域に集合する…その後はお互い適当に接近して停止し、ナイト・タイムからミッド・ナイト・タイムに入る迄、全5隻を統合しての自由交流食事会を開催します…まあ、平たく言って宴会です…バー・ラウンジと厨房の人員以外には、基本的に自由な行動を許可します…申し訳ありませんが、機関部長と保安部長と医療部長は本艦に残って下さい…尚…この機会に、ある程度の役職に於ける特別会合も開催します…艦長は『ディファイアント』にて…副長は『ラムール・ハムール』にて…参謀は『オーギュスト・アストリュック』にて…メイン・パイロットは『フェリックス・ラトゥーシュ』にて…砲術長は『グラード・サマルカンド』にて特別会合を開催します…それぞれの会合に参加するスタッフに於いては、本艦を代表する大使・特使であるとの認識の元…自信を持って堂々と積極的に参加し、交流を図ると同時に情報を収集して下さい…参加者それぞれにはシャトルを用意し、警護役も兼ねてパイロットを就けます…散会したら全員は直ちに帰艦…準備をして、アイソレーション・タンク・ベッドにて就寝するように…質問・意見が無ければ以上です…」

 30秒待ったが、声は挙がらなかった。

「…それでは、私からは以上です…作業に入って下さい…終わります…」

 艦内相互交信を解除した。

「…副長…新たな追跡艦が感知されて、対応に苦慮するようなら報告してくれ…」

「…分かりました…」

「…私は…艦内の何処かにはいるよ…暫くはここに居る…私への交信要請は、端末に転送してくれ…」

「…分かりました…」

 その後は黙った。

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