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第一章
僕のリディア ※ルーファス視点
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リディアを送り出した後、医務室で最後の診察を受けた。もう身体は問題ないようだ。
自室に戻って一人でいると、リディアのことばかり考えてしまう。
だけど今は誰にも会いたくない。人払いをして一人にしてもらった。
(リディアは無事だろうか? 一人きりで森を抜けて隣国へ行くなんて! あぁ……今すぐ追いかけて、守ってやりたい)
僕があの時コーヒーさえ飲まなかったら、リディアは今も僕の隣で笑っていてくれていただろう。
「こちらのコーヒーはリディア様が用意してくださったようですよ」
馴染みの使用人にそう言われて、油断してしまった。リディアが用意したコーヒーなら、と喜んで飲んだのが間違いだった。
一口飲んだ後の記憶が全くない。気がついたらベッドの上に寝かされていた。毒を摂取したのだとすぐに分かった。
心の中で自分の不甲斐なさを反省していた時、使用人が言いにくそうに最悪の事態を伝えてきた。
「ルーファス様には大変申し訳にくいのですが、毒を盛ったのはリディア様であるとのことです。リディア様には死刑判決が下りました」
「何だって? リディアが死刑だと?」
毒を盛られていたという事実より、その犯人がリディアであるということに驚いた。
彼女がそんな事するはずがない。
僕が彼女のことを一番良く知っているのだから間違いない。
「お兄様、いつまで寝ているのですか? このままだとリディア様が処刑されてしまいます。早くお父様のところへ行って、止めてもらわないと……!」
シャーロットは泣きながら僕をベッドから引っ張り出した。そして、僕が歩けると分かるとすぐに父のもとに引きずっていった。
あの時のシャーロットは、今までで一番迫力があったな。そのおかげでリディアを救えたのだから、そこは感謝している。
あと一日遅かったら、リディアは処刑されていただろう。そう考えると背筋が凍る。
だけど……
(やっと手に入れられるところだったのに……! ようやくここまで来たのに、手放すことになるなんて……)
「なんて可哀想なリディア。すぐに連れ戻して僕のそばに置いておきたいのに……」
ぽつりと呟いた声を聞く者は誰もいなかった。
リディアを最初に見たのは、もう十年以上前の事だ。
田舎に遊びに行った時に彼女を見て以来、僕は彼女に夢中だった。
(何とかして彼女と仲良くなりたい! 彼女が王宮に来てくれたら良いのになぁ……!)
どうにかして手に入れたいという僕の強い思いが、数年後、彼女を王宮に連れてきた。
リディアの両親が王都に来る機会なんて、滅多にない……他に手段なんてなかった。
リディアには可哀想なことをしたが、彼女を手に入れるためだから仕方がなかったんだ……!
王宮来たリディアは僕のことを覚えていなかったけれど、そんなことはどうでも良かった。
両親を失って傷心していた彼女は、とても儚くて美しかった。守ってあげたいと思ったんだ。
幸いにも聖女である彼女は、代々王族と結婚するしきたりだ。それなら僕と結婚すれば良い。僕は彼女を手に入れられるし、彼女も幸せに暮らせる。良いこと尽くめだ!
そう思っていたのに……
(国外追放だって? リディアは無実なのに! ……僕から離れて行かないで。あぁ僕のリディア! 彼女は僕のものなのに)
誰かがリディアを嵌めたんだ。聖女である彼女を憎む人間がこの王国にいるに違いない。一体誰なんだ……? 許せない、絶対に見つけ出してやる……!
僕を殺そうとするなら、もっと大量の毒を仕込むはずだ。思い切り飲んだのに数日間寝込むだけだなんて、こんな少量では殺せないだろう。
本当の犯人は、リディアを処刑するために僕を利用したに過ぎない。
だけど表向きはリディアが犯人ということで片付いてしまった。今から調べるのは難しい。彼女が犯人であるという証拠が揃い過ぎていた。
なぜリディアの部屋から毒が出てきたんだ? 彼女の部屋に入れる者は限られている。
彼女の部屋に自由に出入りできる人物の顔が何人か浮かんだが、どの人物も犯人だとは考えにくい。
「まさか本当にリディアが僕を……? リディアが何か気がついたのか? ……いや、あり得ない。バレるはずないんだ。彼女も僕のことを愛しているはずだ」
彼女がそんな事するはずがない。
僕が彼女のことを一番良く知っているのだから間違いない。
やっぱり誰かが彼女を嵌めたのだ。可哀想に……僕が助けてあげないと。
「あぁ、リディア。待っていてね。絶対に君を迎えに行くよ」
そのために居場所を特定できるネックレスを渡したのだから……。
人払いをしておいて良かった。今日は少し独り言が大きすぎた。
(気をつけないと。リディアとリディアの両親を引き離したのが僕だと知られたら、僕は――)
自室に戻って一人でいると、リディアのことばかり考えてしまう。
だけど今は誰にも会いたくない。人払いをして一人にしてもらった。
(リディアは無事だろうか? 一人きりで森を抜けて隣国へ行くなんて! あぁ……今すぐ追いかけて、守ってやりたい)
僕があの時コーヒーさえ飲まなかったら、リディアは今も僕の隣で笑っていてくれていただろう。
「こちらのコーヒーはリディア様が用意してくださったようですよ」
馴染みの使用人にそう言われて、油断してしまった。リディアが用意したコーヒーなら、と喜んで飲んだのが間違いだった。
一口飲んだ後の記憶が全くない。気がついたらベッドの上に寝かされていた。毒を摂取したのだとすぐに分かった。
心の中で自分の不甲斐なさを反省していた時、使用人が言いにくそうに最悪の事態を伝えてきた。
「ルーファス様には大変申し訳にくいのですが、毒を盛ったのはリディア様であるとのことです。リディア様には死刑判決が下りました」
「何だって? リディアが死刑だと?」
毒を盛られていたという事実より、その犯人がリディアであるということに驚いた。
彼女がそんな事するはずがない。
僕が彼女のことを一番良く知っているのだから間違いない。
「お兄様、いつまで寝ているのですか? このままだとリディア様が処刑されてしまいます。早くお父様のところへ行って、止めてもらわないと……!」
シャーロットは泣きながら僕をベッドから引っ張り出した。そして、僕が歩けると分かるとすぐに父のもとに引きずっていった。
あの時のシャーロットは、今までで一番迫力があったな。そのおかげでリディアを救えたのだから、そこは感謝している。
あと一日遅かったら、リディアは処刑されていただろう。そう考えると背筋が凍る。
だけど……
(やっと手に入れられるところだったのに……! ようやくここまで来たのに、手放すことになるなんて……)
「なんて可哀想なリディア。すぐに連れ戻して僕のそばに置いておきたいのに……」
ぽつりと呟いた声を聞く者は誰もいなかった。
リディアを最初に見たのは、もう十年以上前の事だ。
田舎に遊びに行った時に彼女を見て以来、僕は彼女に夢中だった。
(何とかして彼女と仲良くなりたい! 彼女が王宮に来てくれたら良いのになぁ……!)
どうにかして手に入れたいという僕の強い思いが、数年後、彼女を王宮に連れてきた。
リディアの両親が王都に来る機会なんて、滅多にない……他に手段なんてなかった。
リディアには可哀想なことをしたが、彼女を手に入れるためだから仕方がなかったんだ……!
王宮来たリディアは僕のことを覚えていなかったけれど、そんなことはどうでも良かった。
両親を失って傷心していた彼女は、とても儚くて美しかった。守ってあげたいと思ったんだ。
幸いにも聖女である彼女は、代々王族と結婚するしきたりだ。それなら僕と結婚すれば良い。僕は彼女を手に入れられるし、彼女も幸せに暮らせる。良いこと尽くめだ!
そう思っていたのに……
(国外追放だって? リディアは無実なのに! ……僕から離れて行かないで。あぁ僕のリディア! 彼女は僕のものなのに)
誰かがリディアを嵌めたんだ。聖女である彼女を憎む人間がこの王国にいるに違いない。一体誰なんだ……? 許せない、絶対に見つけ出してやる……!
僕を殺そうとするなら、もっと大量の毒を仕込むはずだ。思い切り飲んだのに数日間寝込むだけだなんて、こんな少量では殺せないだろう。
本当の犯人は、リディアを処刑するために僕を利用したに過ぎない。
だけど表向きはリディアが犯人ということで片付いてしまった。今から調べるのは難しい。彼女が犯人であるという証拠が揃い過ぎていた。
なぜリディアの部屋から毒が出てきたんだ? 彼女の部屋に入れる者は限られている。
彼女の部屋に自由に出入りできる人物の顔が何人か浮かんだが、どの人物も犯人だとは考えにくい。
「まさか本当にリディアが僕を……? リディアが何か気がついたのか? ……いや、あり得ない。バレるはずないんだ。彼女も僕のことを愛しているはずだ」
彼女がそんな事するはずがない。
僕が彼女のことを一番良く知っているのだから間違いない。
やっぱり誰かが彼女を嵌めたのだ。可哀想に……僕が助けてあげないと。
「あぁ、リディア。待っていてね。絶対に君を迎えに行くよ」
そのために居場所を特定できるネックレスを渡したのだから……。
人払いをしておいて良かった。今日は少し独り言が大きすぎた。
(気をつけないと。リディアとリディアの両親を引き離したのが僕だと知られたら、僕は――)
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