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第四章

呪い返し

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 数日間じっくり休んだおかげで、気力も体力もすっかり回復した。そろそろ森へ行って呪いを返してこよう。

「森へ行くのだろう? 僕もついて行くよ」

 クラウスが申し出てくれたのだが、今回は遠慮した。妖精の力があるし、一人でも大丈夫だろう。

 森へ向かうと、探す間もなくパールとルチルが待ち構えていた。

「リディア来たー」
「早かった! 嬉しい!」

 二人は相変わらず無邪気にニコニコと出迎えてくれた。

「呪った相手が分かりましたので、呪いを返しに来ました」

「じゃあこれ!」
「返してあげて―」

 ポンと黒い塊を手渡された。手に持つと、どれ程強い呪いだったのかがよく分かった。これをあっさり解いてしまうのだから、やはりこの二人は侮れない。可愛い顔をしているけれど、力の強い妖精なのだ。

(私に返せるかしら? 確か、相手を思い浮かべて投げる……)

 以前二人が言っていたことを思い出しながら、黒い塊を空へ放った。
 放たれた呪いは、ふわふわと飛んで消えて行ってしまった。これで合っているのだろうか……。

「成功だよー」
「一発で返せるのはすごいんだよ!」

 呪いが消えた方角を不安そうに見つめていた私に、パールとルチルが楽しそうに声をかけてくれた。どうやら上手くいったようだ。

「パール、ルチル、ありがとうございます。お二人のおかげで死なずに済みました」

 心からお礼を言うと、二人は笑みをますます深めた。

「どういたしましてー」
「お礼に遊んでよ!」

 この間も遊ばずに帰ってしまったのだから、今日は少し遊んでから帰るべきだろう。彼らへのお礼はそれくらいしか思いつかない。

「分かりました。では少し遊びましょう!」

「やったー! リディアと行きたいところがあるの!」
「森の奥! 行こー」

 私が快諾すると、パールとルチルは飛び上がって踊り出した。遊ぶだけでこんなに喜んでくれるなんて、こちらとしてもありがたい。
 二人の踊りを眺めていると、周囲の景色が変わっていることに気がついた。どうやら森の奥に連れてこられたようだ。目の前には見たこともないくらい大きな気がそびえ立っていた。

(大きな木ね……この森を守っているような温かさを感じる)

「ここが二人の連れてきたかった場所ですか? 素敵な木ですね」

「そう! 聖女の力を作れる木なんだって!」
「リディアが気に入ると思ったの!」

「え? ここで聖女の力を生み出しているのですか?」

「えーっと……この木から作られた杖が、聖女を目覚めさせるんだって」
「他の妖精に聞いたのー! なんか難しい話だった……」

 どうやらパールもルチルも詳しくは知らないようだ。それでも私が元聖女だったから連れて来てくれたのだろう。

(この木から作られた杖……それで私は聖女になったのかしら。一体誰が? ルーファス様? でも彼にそんな権限があるとは思えない。まさか国王?)

 考えを巡らせても予想の域を出ない。聖女の力による害もなくなったので、そんなに気にしなくても良いのかもしれない。

 木に触れてみると懐かしいような感じがした。自分の中の聖女の力と木のエネルギーが共鳴しているような感覚だ。疲れが取れるような感覚に似ていた。

「連れて来てくださってありがとうございます。この木に触れると落ち着きます」

「そうでしょー! リディア疲れてたから」
「これで悩みなくなった?」

「え? 私、そんな風に見えていましたか?」

 てっきり遊ぶために連れてこられたと思っていたので、驚いた。
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