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第四章

心の整理

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「お待たせいたしました。……わあ! 美味しそう!」

 リビングでは三人が私のことを待っていてくれた。テーブルには料理が所狭しと並んでいる。豪華なご馳走ではなく、お腹に優しそうな料理ばかりだ。

「リディアちゃん、昨日もロクに食べていないでしょう? この中で食べれるものだけ食べてちょうだいね。あなたが元気になるように、祈りを込めたのよ」

「ありがとうございます。見ているだけでお腹がすいてきました。いただきます」

 クリスティーナさんの優しさが心にしみた。クリスティーナさんはいつでも私を見守ってくれている。私のすることにあまり口を挟まず、帰って来た時に何を言わずに抱きしめてくれる。そんな彼女の優しさにいつも救われていた。
 
 どの料理も美味しく、私の気力を回復してくれた。先ほどまで混乱していた気持ちが、ゆっくりと解れていく。

「とても美味しいです。元気が出てきました」

 私がそう告げると、クリスティーナさんは心底嬉しそうに顔を綻ばせた。

「辛いときにはご飯を食べるのが一番なの。身体が元気になれば、心もつられて元気になるものよ。心が元気になれば、リディアちゃんは大丈夫よ。自分の思うままに進めば良いの」

 クリスティーナさんの言うことがストンと心に入ってくる。そうだ、私は真実を知っただけ。この後どうするかは自分で決めて良いんだ。

「ありがとうございます。実は、呪いをかけた人物を特定できたのです。やはりシャーロット様でした。ですが、実は兄のルーファス様も少なからず原因がありまして……」

 自分が見てきたことを三人に聞かせるのは気分の良いものではなかったが、皆黙って聞いてくれた。話が進むにつれて、三人は苦虫を噛み潰したような顔になっていた。

「……ですから、呪いを返す先はシャーロット様ですが、いずれルーファス様のことも解決したいと思っています」

「ものすごく不快な野郎だ……! リディア、あいつからネックレスを貰っただろう? 早く捨てたほうがいい。あれこそ何か呪いでもかかっていそうじゃないか!」

「そういえば、仕舞いっぱなしにしてあります。確かに、ちょっと気味が悪いので処分しますね」

 帝国に来て以来、クラウスに貰ったネックレスばかり着けていたから忘れていた。確かに、何か仕掛けがあるのかもしれない。手放した方が良いだろう。ある程度の力で封印して処分してしまおう。




「リディア、たくさんの情報が入ってきて混乱していると思うが、とりあえずは呪いを返すことを優先しなさい。命に関わることだ。第一王子のことは、一旦保留でも良いだろう。危険な相手だが、すぐに何かしてくることはないはずだ。君がどうしたいか決めたら行動しなさい」

 渋い顔をして話を聞いていたヘルマンさんは、私の目を見て諭すように言った。私の身体を本当に心配してくれているのが分かる。

「そうですね。数日休んだら、森に行って呪いを返してきます。その間に自分がどうしたいのか考えてみます」

「どうするのか報告を待っているよ。私たちは手伝いたくてたまらないんだからね」

 私は、どうしたいのだろう。誰が犯人か分からなかった時は、生き抜いて復讐してやると思っていたけれど……

(このまま濡れ衣を着せられたままは嫌だけれど、シャーロット様やルーファス様に何か復讐……したいのかしら?)

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