追放された聖女は半妖精に拾われて優しさに触れる

香木陽灯

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第五章

それから

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 それから数週間の間に、私を取り巻く環境は大きく変化した。

 スカイテルーシ帝国の皇帝から、森の管理人に任命されたのだ。ゴーシュラン王国とスカイテルーシ帝国の間にある森は、妖精たちの力が強く、人が通ることが出来ない。そのため二国間の交流が希薄となっていた。
 そこで緊急性や重要度の高い移動のみ、私が保護をして森を通り抜けるられるようにしたのだ。これで少しずつ二国間の交流が盛んになるだろう。

(私がゴーシュラン王国の国王に渡した手紙にはこの件が書かれていたようね……。皇帝もヘルマンさんも抜け目ないんだから)

 国交に関わる役職だからと、それなりに高い地位も与えられてありがたい限りだ。おかげで仕事を探す手間が省けた。意外とやることが多く、余計なことを考える暇がなくなったのも助かった。
 
 


 風の噂では、シャーロット様はいまだに目が醒めていないようだ。ルーファス様は罪を認め、自ら幽閉されることを望んだらしい。

 ゴーシュラン王国は正当な後継者がいなくなったことで、近隣国とのバランスが崩れているようだ。このままだと、スカイテルーシ帝国の従属国になるかもしれない。故郷の国が他国に支配されるというのは複雑だったが、それも仕方ないことだろう。

「もしゴーシュラン王国が沈むことがあれば、そなたに王国を任せても良いぞ」

 管理人に任命された日、皇帝が冗談交じりに言った言葉が思い出される。軽口のようだったが、ある程度本音も混じっていただろう。正直、今の立場くらいが丁度良いから、ゴーシュラン国王には頑張ってほしい。

(国王はまだご健在だし、これから新しい跡継ぎが出来れば少しは安定するでしょう)

 ため息をついてふと顔をあげると、目の前にクラウスがいた。

「ため息なんてついちゃって、どうしたの? ちょっと休憩したら? 僕も今から一息つくところなんだ」

「クラウス……そうですね。少し休もうかしら。お茶を淹れますね」

 ぼんやりしていたけれど、今は仕事中だった。皇帝から与えれらた執務室で書類仕事をしていたのだった。クラウスはヘルマンさんの手伝いで、よく様子を見に来てくれる。

 私たちは恋人同士になったけれど、互いに忙しくてあまり遊びに行けていない。こうして仕事の合間にお茶を飲むのがデート代わりだった。それでも私はじんわりと幸せを感じていた。

「クラウスの顔を見たら、なんだか元気が出ました。もう少し頑張れそうです」

「僕もだよ。でも無理はしないで。今度の週末からしばらく休暇を貰ったから、どこか旅行にでも行かない? リディアも休みになるように頼んであるからさ」

「本当ですか? ……確かにしばらく森を抜ける人はいないようです。クラウスが調整してくださったのですね。ありがとうごいざいます! 私、南の方に行ったことがないので行ってみたいです。海がとても綺麗だと聞きました!」

 クラウスの思わぬ提案にテンションが上がってしまった。急に元気になった私を見て、クラウスは面白そうに笑った。

「分かった、宿の予約をしておくよ。楽しみだね」

「はい! 週末まで頑張ります!」

 なんて幸せだろう。王国を追放された時は、こんな未来が待っているなんて思いもしなかった。
 もし過去に戻れるのなら、あの頃の自分に大丈夫だよと声をかけてあげたい。こんなにも幸福な未来が待っているのだからと。


【完】
 最後までお読みいただきありがとうございました。

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