14 / 14
伯爵とルイ ※ルイ視点
しおりを挟む
シランにプロポーズをした後、伯爵に一杯付き合ってもらうことにした。
「申し訳ありません、伯爵。なんだか寝つけそうになくて……」
「気持ちは分かるよ。シランの前では弱音を吐けないだろう?」
彼女には幸せにすると宣言したが、私に出来るだろうか……。その不安が押し寄せてきていた。
「帝国での自分の立場が、これほど憎く思えたことはありません。何かあれば命すら狙われるような立場で、彼女を守ることなんて出来るでしょうか……」
「それでもシランを好いているのだろう?だったら守り抜け。シランに何かあれば、私は承知しないからな」
言葉とは裏腹に優しい声音で笑いながら話す伯爵には、一生敵わないかもしれない。
私が伯爵と出会ったのは、十年以上前だ。私はまだ子供で、公爵の地位には父がいた。
父の古くからの友人だという彼は、お土産を抱えきれないほど持ってくる気の良いおじさん、という印象だった。
父が病で死去した時には真っ先に駆けつけて、私にたくさんのアドバイスをくれた。
帝国の政治に深く関わる立場である以上、彼のような国外の権力者の存在には大変助けれらた。
王族たちが王位継承権でもめ始めた時には、すぐに手を差し伸べてくれた。
「我が家に身を隠すと良い。使用人のふりをしていれば、隠れやすいだろう。ついでに……娘がいるのだが、話し相手になってくれると嬉しい。実は今、落ち込んでいてね」
伯爵の話を聞いて、どんなことであれ役に立ちたいと思った。
シランという娘のために何ができるか思い浮かばなかったが、話を聞くことくらいなら出来ると思ったのだ。
「では私が彼女専属の執事になりますよ。力になれるか分かりませんが、見守ることは出来ます。それに、幼い頃から使用人に紛れて身を隠すことには慣れていますから」
そうしてシランお嬢様の執事となったのだ。
お嬢様は最初、元気がなく眠ってばかりいた。しかし食事が摂れるようになって以降、どんどんと明るくなっていった。
元々の性格に戻ったのだろう。彼女は素直で明るく、使用人達にも好かれていた。
私も彼女の素直さに惹かれていった。帝国では、私に対して媚びへつらう者か、腫れ物に触るように接する者ばかりだった。
その点、彼女は私に屈託なく笑いかけてくれるのだ。この笑顔を壊した者が許せない、この笑顔を守りたい、そう思うようになった。
それからサイモンとかいう男に制裁を下し、彼女を自分のものにした。
伯爵の言うとおり、絶対に守り抜いてやる。
翌日、お嬢様は私と目を合わせると、照れたように顔を伏せていた。そんなところも可愛らしく思えるのは、重症だろうか。
「お嬢様、どうして目を逸らすのですか?せっかく婚約者になったというのに」
「……分かっていて聞くのですね。意地悪だわ。ルイこそ、いつまで私のことをお嬢様と呼ぶの?私は婚約者なのに……」
確かに、いつまでもお嬢様と呼ぶのは良くない。
うつむいたまま顔を赤くしている彼女の頬に手を当て、こちらを向かせる。
「そうでしたね。シラン、大好きですよ」
そう言うと、彼女はますます顔を赤くした。
あぁ、早く帝国に連れて帰りたい。そんなことを思っていると、シランが私のことを抱きしめた。
「私も大好きです、ルイ。これからよろしくお願いしますね」
彼女がいれば、どんな困難も乗り越えられる気がした。
【完】
「申し訳ありません、伯爵。なんだか寝つけそうになくて……」
「気持ちは分かるよ。シランの前では弱音を吐けないだろう?」
彼女には幸せにすると宣言したが、私に出来るだろうか……。その不安が押し寄せてきていた。
「帝国での自分の立場が、これほど憎く思えたことはありません。何かあれば命すら狙われるような立場で、彼女を守ることなんて出来るでしょうか……」
「それでもシランを好いているのだろう?だったら守り抜け。シランに何かあれば、私は承知しないからな」
言葉とは裏腹に優しい声音で笑いながら話す伯爵には、一生敵わないかもしれない。
私が伯爵と出会ったのは、十年以上前だ。私はまだ子供で、公爵の地位には父がいた。
父の古くからの友人だという彼は、お土産を抱えきれないほど持ってくる気の良いおじさん、という印象だった。
父が病で死去した時には真っ先に駆けつけて、私にたくさんのアドバイスをくれた。
帝国の政治に深く関わる立場である以上、彼のような国外の権力者の存在には大変助けれらた。
王族たちが王位継承権でもめ始めた時には、すぐに手を差し伸べてくれた。
「我が家に身を隠すと良い。使用人のふりをしていれば、隠れやすいだろう。ついでに……娘がいるのだが、話し相手になってくれると嬉しい。実は今、落ち込んでいてね」
伯爵の話を聞いて、どんなことであれ役に立ちたいと思った。
シランという娘のために何ができるか思い浮かばなかったが、話を聞くことくらいなら出来ると思ったのだ。
「では私が彼女専属の執事になりますよ。力になれるか分かりませんが、見守ることは出来ます。それに、幼い頃から使用人に紛れて身を隠すことには慣れていますから」
そうしてシランお嬢様の執事となったのだ。
お嬢様は最初、元気がなく眠ってばかりいた。しかし食事が摂れるようになって以降、どんどんと明るくなっていった。
元々の性格に戻ったのだろう。彼女は素直で明るく、使用人達にも好かれていた。
私も彼女の素直さに惹かれていった。帝国では、私に対して媚びへつらう者か、腫れ物に触るように接する者ばかりだった。
その点、彼女は私に屈託なく笑いかけてくれるのだ。この笑顔を壊した者が許せない、この笑顔を守りたい、そう思うようになった。
それからサイモンとかいう男に制裁を下し、彼女を自分のものにした。
伯爵の言うとおり、絶対に守り抜いてやる。
翌日、お嬢様は私と目を合わせると、照れたように顔を伏せていた。そんなところも可愛らしく思えるのは、重症だろうか。
「お嬢様、どうして目を逸らすのですか?せっかく婚約者になったというのに」
「……分かっていて聞くのですね。意地悪だわ。ルイこそ、いつまで私のことをお嬢様と呼ぶの?私は婚約者なのに……」
確かに、いつまでもお嬢様と呼ぶのは良くない。
うつむいたまま顔を赤くしている彼女の頬に手を当て、こちらを向かせる。
「そうでしたね。シラン、大好きですよ」
そう言うと、彼女はますます顔を赤くした。
あぁ、早く帝国に連れて帰りたい。そんなことを思っていると、シランが私のことを抱きしめた。
「私も大好きです、ルイ。これからよろしくお願いしますね」
彼女がいれば、どんな困難も乗り越えられる気がした。
【完】
82
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
妹は私から奪った気でいますが、墓穴を掘っただけでした。私は溺愛されました。どっちがバカかなぁ~?
百谷シカ
恋愛
「お姉様はバカよ! 女なら愛される努力をしなくちゃ♪」
妹のアラベラが私を高らかに嘲笑った。
私はカーニー伯爵令嬢ヒラリー・コンシダイン。
「殿方に口答えするなんて言語道断! ただ可愛く笑っていればいいの!!」
ぶりっ子の妹は、実はこんな女。
私は口答えを理由に婚約を破棄されて、妹が私の元婚約者と結婚する。
「本当は悔しいくせに! 素直に泣いたらぁ~?」
「いえ。そんなくだらない理由で乗り換える殿方なんて願い下げよ」
「はあっ!? そういうところが淑女失格なのよ? バーカ」
淑女失格の烙印を捺された私は、寄宿学校へとぶち込まれた。
そこで出会った哲学の教授アルジャノン・クロフト氏。
彼は婚約者に裏切られ学問一筋の人生を選んだドウェイン伯爵その人だった。
「ヒラリー……君こそが人生の答えだ!!」
「えっ?」
で、惚れられてしまったのですが。
その頃、既に転落し始めていた妹の噂が届く。
あー、ほら。言わんこっちゃない。
白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので
鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど?
――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」
自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。
ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。
ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、
「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。
むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが……
いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、
彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、
しまいには婚約が白紙になってしまって――!?
けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。
自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、
さあ、思い切り自由に愛されましょう!
……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか?
自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、
“白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。
妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?
カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。
フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。
従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
婚約破棄をされるのですね、そのお相手は誰ですの?
綴
恋愛
フリュー王国で公爵の地位を授かるノースン家の次女であるハルメノア・ノースン公爵令嬢が開いていた茶会に乗り込み突如婚約破棄を申し出たフリュー王国第二王子エザーノ・フリューに戸惑うハルメノア公爵令嬢
この婚約破棄はどうなる?
ザッ思いつき作品
恋愛要素は薄めです、ごめんなさい。
【完結】王女の婚約者をヒロインが狙ったので、ざまぁが始まりました
miniko
恋愛
ヒロイン気取りの令嬢が、王女の婚約者である他国の王太子を籠絡した。
婚約破棄の宣言に、王女は嬉々として応戦する。
お花畑馬鹿ップルに正論ぶちかます系王女のお話。
※タイトルに「ヒロイン」とありますが、ヒロインポジの令嬢が登場するだけで、転生物ではありません。
※恋愛カテゴリーですが、ざまぁ中心なので、恋愛要素は最後に少しだけです。
『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』
鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」
その一言で、私は婚約を破棄されました。
理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。
……ええ、どうぞご自由に。
私は泣きません。縋りません。
なぜなら——王家は、私を手放せないから。
婚約は解消。
けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。
失ったのは殿下の隣の席だけ。
代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。
最初は誰もが疑いました。
若い、女だ、感情的だ、と。
ならば証明しましょう。
怒らず、怯えず、排除せず。
反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。
派手な革命は起こしません。
大逆転も叫びません。
ただ、静かに積み上げます。
そして気づけば——
“殿下の元婚約者”ではなく、
“揺れない王”と呼ばれるようになるのです。
これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。
王冠の重みを受け入れた一人の女性が、
国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる