国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました。もう聖女はやりません。

香木陽灯

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 翌日、フェルディナンドの宣言通り、朝から二人で街に繰り出していた。

 ファイズは相変わらずにぎやかな街だ。
 活気ある雰囲気を味わっているうちに、ニーナの気分も自然と上がる。

「外に出たのは良いけど、どこか行きたい場所があるの? 買いたい物があるとか?」

 今日の外出を提案したのはフェルディナンドなのだから、当然行きたい場所があるはずだ。
 ニーナはそう考えていた。

「いいや、特には。昨日も言っただろう? 勉強ばかりするニーナを無理矢理休憩させるための外出だって。それ以外に目的はないよ」
「えぇ?! じゃ、じゃあ今はどこへ向かって歩いているの?」

 ニーナは、迷いなく歩いているフェルディナンドの腕を思わず掴む。
 フェルディナンドは気にもとめない様子で、道の先を指差した。

「適当だよ。ブラブラ歩いているだけ。あ、もう一本道を越えた先に美味しいパン屋さんがあるよ。行ってみようか」

(フェルって時々、突拍子もないことをするのね……)

 少しはフェルディナンドのことを分かってきたと思っていたニーナは、自分が浅慮だったと考えを改めた。

 フェルディナンドはそばにいるだけで、色々な景色を見せてくれる人なのかもしれない。

「ふふっ……分かったわ、行きましょう!」

 ニーナは遅れまいとフェルディナンドの腕に自分の腕を絡ませた。



 目的のパン屋に到着すると、そこには張り紙が張ってあった。

『材料不足のため休業中です。再開時期未定』

 と書かれている。

「休業……残念だな」
「フェルおすすめのパン、食べてみたかったわ。また時期を改めて……あら?」

 ニーナはパン屋の中からこちらを見ている人影に気づいた。

 目があったその人物は、申し訳無さそうに店から出てきた。

「パンをお求めでしたか? 申し訳ありません……こちらに書いてある通りでして……」

 ふくよかな男性だが憔悴しきった様子で、顔はげっそりとしていた。

 ニーナは思わず男性に駆け寄る。

「大丈夫ですか? どこか具合でも悪いのですか?」

 男性は力なく首を振った。

「いいえ……ここ一ヶ月程店が開けなくて、もう貯金も尽きてしまいまして。お恥ずかしながら、生活がままならなくて……」

 ポツポツと事情を話してくれたその男性は、どうやらこの店の店主らしい。
 材料が集まったらいつでも店を開けるように、店の掃除をしていたようだ。

「その足りない材料とは何なんだ?」

 フェルディナンドが口を挟む。
 すると店主はフェルディナンドの顔を見て、深くお辞儀をした。

「あぁ……大賢者様! またいらしてくださったのですね。パンを売れずに申し訳ありません。実は……パン作りに使用していた湧き水が、使えなくなったのです」


 
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