国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました。もう聖女はやりません。

香木陽灯

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「この度の水質汚染解決に多大な尽力をしたニーナ・バイエルンに褒美を授けよう。何が欲しいか言ってみよ」

 皇帝は険しい顔を崩さぬままそう言った。

(意図が分からないわ。普通、こんなことで皇帝陛下が直々に褒美を授けたりしないでしょうに)

 ニーナはフェルディナンドの視線に気づいたが、あえてそちらを向かなかった。
 皇帝だけを見つめ、そして慎重に言葉紡いだ。

「身に余るお言葉でございます。ですが、私はその場に居合わせただの者。褒美ならば発見者であるパン屋の店主、および解決案を示した大賢者様にお贈りください」

 皇帝の眉がピクリと動いた。

「断るというのか?」
「最初から私は褒美を受け取るに値しない、という話です」

 ニーナの言葉に広間は静寂に包まれた。それでもニーナは決して皇帝から目を逸らさなかった。

(急に呼び出しておいて、一方的に話を進めようなんて……そんなやり方、私には通用しないわよ。貴方より何年長く生きていると思っているの?)

 目に力を込めてじっと睨んでいると、皇帝はふっと表情を和らげた。

「さすがはルティシアの元聖女。そう簡単に権力に靡いたりしないのだな。フェルディナンドからの報告の通りだ」
「それは一体……どういうことでしょう?」

 ニーナがちらりとフェルディナンドに視線を向けると、ものすごく申し訳なさそうな顔をしていた。
 言葉を発することはなかったが、口の動きで『申し訳ない』と言っているのが分かった。



「はっはっはっ、褒美を授けようとしたのは本当だ。だが、その人物がルティシアの聖女だったと聞けば、会ってみたくなるものだろう?」

 豪快に笑う皇帝からは嘘をついている気配を感じなかった。

「それでは、会ってみたご感想をお聞かせ願えますか?」
「年の功を感じたな。こちらのことを赤子のように見ていただろう?」
「そのように見えましたか? 褒め言葉として頂戴いたしますわ」

 ニーナも笑顔をつくり深々とお辞儀をする。
 どうやら拘束や罰はなさそうだ。

 ホッと肩の力を抜くと、皇帝の目が再び鋭く光った気がした。

「ところで……お前を追放した後、ルティシアの聖女となった者はどんな奴だ。知っているか?」
「……私はよく存じ上げません。王子と婚約したのは確かですが」
「ふむ……新聖女は派手な就任式を行った後、目撃が確認されていない。こちらに隠しているのかもしれないな。浄化や治癒を行っているところを見せないのは、新たな聖女の力を隠したいのかもしれん」

 皇帝の言葉にニーナは口をつぐんだ。

(聖女の任務を隠すなんて可能かしら? 浄化は現地に赴かないと出来ないし、治癒だって相手に触れないと出来ないわ。もしかして、ほとんど活動していない……?)



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