国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました。もう聖女はやりません。

香木陽灯

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 確かにマリアは聖女の立場に興味があっただけで、活動に興味があったわけではない。
 精力的に活動しなくても不思議はない。

 ただ、それを教会側が許すとは思えなかった。

 ニーナが考え事をしていると、皇帝が興味深そうに尋ねた。

「何か心当たりがあるのか?」
「彼女のことはよく知りませんので。ただ……」

 言いかけてニーナは唇を噛んだ。

 どこまで話すべきだろうか。国同士の話に自分が加担して良いのだろうか。
 悩んでいると、フェルディナンドと目が合った。

「ニーナ、知っていることを話してくれると嬉しい。どんな些細な事でも構わない」

 どうか、と頭を下げるフェルディナンドを見て、ニーナは全てを話す決心をした。

(お世話になっているフェルに私が返せるものなんて、これくらいよね。それに、フェルなら渡した情報を悪いようにはしないわ)

「彼女のことは分かりませんが、教会に籠っていては浄化は不可能です。現地の瘴気に直接触れなければ浄化は出来ませんから」
「ほお?」
「治癒も同様です。相手に触れなければなりません。だから聖女は各地を回るのです。その目撃情報がないというのは……ほとんど力を使っていないということでしょう。ただ、通常なら聖女が活動を拒むことは出来ません。教会は決してそれを許しませんから。彼女の場合は未来の妃ですから、特別な事情があるのかもしれません」
「ふむ、実に興味深い情報だ」

 皇帝は深く頷いた。フェルディナンドもマーティスと何かを目くばせしている。
 何か思い当たる節があるのかもしれない。



「ルティシアを手に入れるおつもりですか?」

 気がついたらそんな言葉が口から出ていた。

 フェルディナンドとマーティスが目を丸くしている。
 皇帝は口角を片方だけ上げた。

「お前はどう思う?」
「どうでしょう……地理的には手に入れるべき地ではあると思います。ですが今のルティシアを無理矢理手に入れても、負債になってしまうかもしれませんね。その理由は……もちろん皇帝陛下はご存じでしょう」

 ニーナの答えに、皇帝は面白そうに喉を鳴らした。

「ルティシアは実に愚かだな! このように聡明な者を手放してしまったのだから」

 どうやら皇帝にはニーナの意図が通じたようだ。

(ルティシアの国には未練はないわ。だけど、そこに暮らす人々に罪はないもの。争いに巻き込ませたくない)

 武力によって手に入れても価値はない、と暗に示したのだ。

「やはり元聖女には褒美を授けよう」
「え?」

 皇帝の言葉にニーナは間の抜けた声を出した。けれど今度はすぐには断らなかった。

 ひとつ、願いを思いついたからだ。

「では僭越ながら、一つだけ願い事を聞いていただけますか?」



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