国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました。もう聖女はやりません。

香木陽灯

文字の大きさ
34 / 80

5-11


 目の前の三人はニーナのことを興味深そうに見た。
 先ほど断ったのに、あっさり受け入れたからだろう。

「何でも申してみよ」
「では……瘴気発生源の探索に、私も入れてください」
「なるほど、そうきたか」

 皇帝は実に面白そうな笑みを浮かべた。

「先ほど伺ったお話が気になりまして。もし聖女が瘴気を浄化していないのなら、今回の水質汚染の原因にも繋がるかと」

 ニーナは新聖女の活動には興味はないが、この国に弊害があるなら解決したかった。

「それなら俺が指揮を執るから、一緒に来ると良い」

 マーティスの朗らかな声がした。

 彼の方を見ると、その後ろにいつの間にかヤンが控えていることに気がついた。
 先ほどまでとは雰囲気がまるで違う。ヤン真剣な面持ちでマーティスに何かを耳打ちした。

 マーティスは少し怪訝そうな顔をして頷いている。
 けれど、ニーナと目が合うと柔らかな表情になり、パチっとウインクをした。

(マーティス様は、いつものマーティス様みたい)

「よろしくお願いいたします」

 ニーナは微笑みながら深く頭を下げた。
 それを見ていた皇帝は、玉座からゆったりと立ち上がる。

「さて、ニーナ・バイエルン、本日のことは他言無用だ」
「はい、承知しております」
「ではマーティスに瘴気探索を正式に命じよう。ルティシア情勢の観察も引き続き進めておくように。フェルディナンドは瘴気解消の策を考えよ」
「「仰せのままに」」



 皇帝が退出すると、フェルディナンドが早足でニーナのところへやってきた。

「兄の使いが迎えに来たそうだね。来てくれてありがとう。それと……申し訳ない。突然のことで驚いただろう。話の流れでニーナを呼び出すことになって、僕は止められなかった」

 フェルディナンドがものすごい勢いで頭を下げるので、ニーナは思わず笑い声をこぼした。

「フェルが謝ることは何もないわ! こんな機会でもないと、帝国のお城には入れないでしょう? それに皇帝陛下ともお話できたし、とても楽しかったわ。フェルとマーティス様のお父様って感じの人だったわね」

 ニーナは笑いながら「今度はお母様にもお会いしたいわ。なんてね」と冗談を付け足した。

「ニーナには敵わないな……。話したくないこともあっただろうに、本当にありがとう。ルティシアのことを守ったのも立派だった」

 ニーナは頭を下げ続けるフェルディナンドの手を、そっと取った。

「フェルの足手まといになりたくない。役に立ちたいと思っただけなの。だから、もう頭を上げて。一緒に帰りましょう! フェルが案内してくれないと、私はこのお城から出られないわ」
「……はははっ、そっか。じゃあ道案内は僕に任せて」

 ようやく顔を上げたフェルディナンドは、スッキリとした顔で笑っていた。

「ニーナちゃーん、お疲れ様。見ていてとっても面白かったよー。三日後に使いの者を出すから、二人とも探索の用意をしておいてね」

 帰り際、遠くにいるマーティスに声をかけられた。

「分かりました。よろしくお願いいたします」

 ニーナが大声で返事をすると、マーティスはヤンとともに帰っていった。

「フェル、今日はいっぱい買い物してきたの。帰ったら美味しいご飯を作って、のんびりしましょうよ。浄水が上手くいったお祝いがしたいわ!」
「そうしようか。今日はご馳走にしよう」

 二人は用意されていた場所に乗り込むと、ご飯のメニューについて熱心に話し合ったのだった。





感想 1

あなたにおすすめの小説

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

偽聖女と蔑まれた私、冷酷と噂の氷の公爵様に「見つけ出した、私の運命」と囚われました 〜荒れ果てた領地を力で満たしたら、とろけるほど溺愛されて

放浪人
恋愛
「君は偽物の聖女だ」——その一言で、私、リリアーナの人生は転落した。 持っていたのは「植物を少しだけ元気にする」という地味な力。華やかな治癒魔法を使う本物の聖女イザベラ様の登場で、私は偽物として王都から追放されることになった。 行き場もなく絶望する私の前に現れたのは、「氷の公爵」と人々から恐れられるアレクシス様。 冷たく美しい彼は、なぜか私を自身の領地へ連れて行くと言う。 たどり着いたのは、呪われていると噂されるほど荒れ果てた土地。 でも、私は諦めなかった。私にできる、たった一つの力で、この地を緑で満たしてみせる。 ひたむきに頑張るうち、氷のように冷たかったはずのアレクシス様が、少しずつ私にだけ優しさを見せてくれるように。 「リリアーナ、君は私のものだ」 ——彼の瞳に宿る熱い独占欲に気づいた時、私たちの運命は大きく動き出す。

追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜

三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。 「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」 ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。 「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」 メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。 そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。 「頑張りますね、魔王さま!」 「……」(かわいい……) 一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。 「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」 国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……? 即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。 ※小説家になろうさんにも掲載

聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん
恋愛
聖女が代替わりするとき、魔力の多い年頃の令嬢十人の中から一人選ばれる。 選ばれる基準は定かではなく、伝聞もない。 ひと月の間、毎日のように聖堂に通い、祈りを捧げたり、奉仕活動をしたり。 十人の中の一人に選ばれたラヴェンナは聖女になりたくなかった。 不真面目に見えるラヴェンナに腹を立てる聖女候補がいたり、聖女にならなければ婚約解消だと言われる聖女候補がいたり。 「聖女になりたいならどうぞ?」と言いたいけれど聖女を決めるのは聖女様。 そしていよいよ次期聖女が決まったが、ラヴェンナは自分ではなくてホッとする。 ラヴェンナは聖堂を去る前に、聖女様からこの国に聖女が誕生した秘話を聞かされるというお話です。

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。 そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。 この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。 聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。 ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!

えとう蜜夏
恋愛
 ミレニア王国にある名もなき村の貧しい少女のミリアは酒浸りの両親の代わりに家族や妹の世話を懸命にしていたが、その妹や周囲の子ども達からは蔑まれていた。  ミリアが八歳になり聖女の素質があるかどうかの儀式を受けると聖女見習いに選ばれた。娼館へ売り払おうとする母親から逃れマルクト神殿で聖女見習いとして修業することになり、更に聖女見習いから聖女候補者として王都の大神殿へと推薦された。しかし、王都の大神殿の聖女候補者は貴族令嬢ばかりで、平民のミリアは虐げられることに。  その頃、大神殿へ行商人見習いとしてやってきたテオと知り合い、見習いの新人同士励まし合い仲良くなっていく。  十五歳になるとミリアは次期聖女に選ばれヘンリー王太子と婚約することになった。しかし、ヘンリー王太子は平民のミリアを気に入らず婚約破棄をする機会を伺っていた。  そして、十八歳を迎えたミリアは王太子に婚約破棄と国外追放の命を受けて、全ての柵から解放される。 「これで私は自由だ。今度こそゆっくり眠って美味しいもの食べよう」  テオとずっと一緒にいろんな国に行ってみたいね。  21.11.7~8、ホットランキング・小説・恋愛部門で一位となりました! 皆様のおかげです。ありがとうございました。  ※「小説家になろう」さまにも掲載しております。  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」 広間に高らかに響く声。 私の婚約者であり、この国の王子である。 「そうですか」 「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」 「… … …」 「よって、婚約は破棄だ!」 私は、周りを見渡す。 私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。 「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」 私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。 なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。

【結婚式当日に捨てられました】身代わりの役目は不要だと姉を選んだ王子は、隣国皇帝が私を国ごと奪いに来てから後悔しても手遅れです。

唯崎りいち
恋愛
結婚式当日、私は“替え玉”として捨てられた。 本物の姉が戻ってきたから、もう必要ないのだと。 けれど—— 私こそが、誰も知らなかった“本物の価値”を持っていた。 世界でただ一人、すべてを癒す力。 そして、その価値を知るただ一人の人が、皇帝となって私を迎えに来る。 これは、すべてを失った少女が、本当に必要とされる場所へ辿り着く物語。