国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました。もう聖女はやりません。

香木陽灯

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 それからニーナとフェルディナンドは、水晶による浄化方法の効率を上げるため、ひたすら実験を繰り返した。

 透明度が高いもの、中に金鉱石が含まれているもの、多面体に加工されたもの……。
 様々な水晶を取り寄せて、検証していく。

 そんな地道な日々を送っていたある日、賢者の塔に客人がやって来た。

「やっほー。二人が頑張っているから、様子を見に来たよー」
「お、お久しぶりです。ご所望の品をお持ちしました。で、殿下、勝手に入ったら失礼ですよー!」
「マーティス様! ヤンさんも! お久しぶりです」

 二人は大きな箱を抱えてやって来た。

「兄さん、早かったですね。ありがとうございます」

 フェルディナンドは嬉しそうに箱を受け取ると、早速中身を取り出した。

 中から出てきたのは全て水晶だった。

「ニーナ、見てごらん。ルティシアから水晶を取り寄せてもらったんだ。日記に出てきた水晶は、大司教が用意したものだろう? だからルティシア産に秘密があるのかもしれないと思って」
「あぁそれで……。マーティス様とヤンさんが取り寄せてくださったのですか?」
「そうだよー。ちょっとルティシアに用があったから、直接買い付けてきたんだ」

 マーティスが水晶を手に取りながら「良い品ばかりだよ」と自慢気にしている。

「で、殿下……素手で触らない方が……実験用ですから」

 ヤンが慌ててマーティスに駆け寄って、彼の腕を掴む。

「良いじゃないか。減るもんじゃないし。なあ?」
「ふふっ……大丈夫ですよ。素手で触っても効果に変化はないと分かっていますから。……それより」

 ニーナはヤンに視線を送る。

「ヤンさん、もう素を出して構いませんよ。私がいるから、そのオドオドとしたキャラを続けているのでしょう? 無理なさらないでくださいね」

 ニーナの言葉にヤンは目を丸くしていた。
 その隣でマーティスが盛大に吹き出す。

「はははっ! ニーナちゃん良いねぇ。ほらヤン、許可が下りたぞ。もとに戻れよ」

 ヤンはマーティスを掴んでいた手を離し、マーティスを睨みつける。

「どうせ殿下が『ヤンから評価を聞いたよー』だのと入れ知恵したのでしょう? ……ニーナ様、騙すような形になって申し訳ありませんでした」

 ヤンは深く丁寧なお辞儀をした。
 オドオドした雰囲気が一瞬で消え失せ、いかにも頭の切れそうな男性が目の前にいた。

 ニーナも丁寧に礼を返す。

「私は底知れぬ女なのでしょう? そんなことありませんから、これからよく知ってくださいな」
「寛大なお心に感謝します。ほら殿下、用が済んだら帰りますよ。まだお仕事が終わっていませんので」

 ヤンはマーティスの背中を無遠慮にグイグイと押した。





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