国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました。もう聖女はやりません。

香木陽灯

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「えー実際に浄化してるところを見てからでも」
「駄目です。ここに来るための時間確保で予定が詰まっているんですから」
「ちぇっ、仕方ないなぁ。あーそうだ、ルティシアの治安が滅茶苦茶悪くなってたよ。ちょっと動向には注意してね」

 マーティスは背中を押されながら、そう言い残して去っていった。

「相変わらず嵐のような人達だな」

 フェルディナンドが水晶を整理しながら苦笑した。

「マーティス様はヤンさんにしっかり管理されていたのね。あの二人、なんだか合っているわ」
「幼い頃からの付き合いだからね。僕も城にいた頃はヤンによく叱られたよ」
「皆の兄的存在だったのね。なんだか想像つくわ……フェルは勉強のしすぎで叱られていたのでしょう?」

 ニーナがクスクスと笑うと、フェルディナンドもつられて微笑んだ。

「よく分かったね。焦るな、メリハリをつけろって散々言われたよ。そのおかげで今は自分のペースで研究を進められてる」
「そう……。じゃあ今日もマイペースで頑張りましょう!」
「そうだね。早速水晶を試してみようか」

 ニーナとフェルディナンドは、森の土とルティシア産の水晶を持って、実験室へと向かった。



 早速水晶を手に持ってみたニーナは、しばらくすると違和感を覚えた。

「これ……とても温かいわ」
「本当? さっき兄さんが持った時、特に何も言ってなかったけど……確かに温かいな」

 フェルディナンドも水晶を手に取り、目を丸くした。

「それに、なんだかすごく懐かしい感覚がするの」

 ニーナは水晶を持ったまま、そばにあった森の土に触れた。

 その瞬間、水晶がほんのりと光りだした。

「フェル! 見てちょうだい。瘴気が……!」
「これは……! 瘴気が水晶に吸い取られている!」

 黒い靄が、光り輝く水晶へと吸い込まれていく。
 そしてあっという間に靄は消え、靄が消えると水晶も光を失った。

 あとに残ったのは、少しだけ黒く濁った水晶だけだった。
 先ほどまでの熱はなく、ひんやりとしている。

 ニーナは小さく震える唇で呟いた。

「これだったのね……」

 ニーナの触れていた土からは、もう瘴気の匂いはしない。

(久しぶりの浄化……)

 今はもう失われた感覚に思いを馳せていると、フェルディナンドが同じく水晶を持って土に触れていた。

 フェルディナンドの水晶も光り、瘴気を吸い取っていく。

「フェルにも出来るのね! すごいわ、ついに浄化方法を見つけたのよ!」

 ニーナが声をかけると、フェルディナンドは険しい顔のままニーナに近づいてきた。
 そして、何も言わずにニーナを抱きしめた。

「良かった……ようやくだ……」

 小さく掠れた声がニーナの耳にそっと届く。
 ニーナは思わずフェルディナンドの背中に両手を回した。

「本当にやり遂げたのよ。フェルが見つけたの。あーぁ、私の負けね」

 涙声がバレぬよう、ニーナは明るくそう言った。



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