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領主代理の正体(3)
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ヘンリーはクリスティーナの存在に気がつくと、目を大きく見開いた。
「伯爵!? ……殿下、また僕を嵌めましたね? 今日伯爵を呼び出していたなんて」
「こら、伯爵の前で人聞きが悪いぞ。客人が来ると言っただろう? それに、仕事で遅れたのはお前の落ち度だ」
(わあっ……! ヘンリ―様ってこんな風に怒ることがあるのね)
遠慮なくジュリアスに盾突くヘンリーの姿はとても新鮮だった。
人と深く関わってこなかったクリスティーナにとっては、とても興味深く、好ましく感じた。もっと色んな姿を見せてほしい。そんな風に思えた。
「ねえ伯爵」
「は、はいっ!」
「ヘンリーと偶然話す機会があったんでしょう? 貴女が伯爵として働く意思があるって聞いたものだから、僕もこうして手紙を出したってわけ」
「ぐ、偶然……」
突然話を振られたクリスティーナは、何と言うべきか悩んでしまった。
確かにヘンリーと話したし、社交の場に出ることは了承したけれど、ジュリアスにどう伝わっているかは分からない。下手に何かを言ってヘンリーを困らせる訳にはいかなかった。
困惑したクリスティーナの表情を見たヘンリーは、そっとクリスティーナに近づき耳元で囁いた。
「婚約の話は殿下にも話していないのです。申し訳ありません」
「いいえ……」
ひそひそと低く優しい声で謝るヘンリーに同じくひそひそと返すと、そのやり取りを見ていたジュリアスがいっそう楽しそうに笑った。
「なにー? 仲良さそうだね」
「殿下よりはそうでしょうね」
「はぁ? 伯爵、僕とも仲良くしてくれるよね?」
「あっ……あの……モ、モチロンデス」
綺麗な顔の二人に見つめられて、クリスティーナの心臓はドキドキして破裂しそうだった。
「よし、じゃあ皆仲良しになったところで……クリスティーナ、伯爵として表舞台に戻って来る気はあるかい?」
「あ、ありますっ……!」
「良かった。じゃあ、手始めに仕事のサポートから覚えてもらおうかな。明日からこの屋敷に通ってもらえる?」
「はいっ、お願いします」
ジュリアスから差し出された手を握ると、ぎゅっと力強く握り返される。
その手の温かさに、これから本当に外の世界で生きていくのだと実感した。
「あ、それと……来月僕の生誕祭があるから、そこで顔見せでもしようか」
「え?」
「社交界デビューしないといけないでしょ? 知らない人のパーティーより気が楽じゃない? ほら、僕達仲良しだし!」
「で、でもそんな大きなパーティーなんて……」
「大丈夫大丈夫。人がいっぱいいた方が目立たないって」
瞬く間に色んな事が決まっていく。
クリスティーナはそのスピード感についていけなかった。
(殿下の生誕祭に参加するなんて……どどど、どうしよう!)
青ざめたクリスティーナを見たジュリアスは、ヘンリーに笑いかけた。
「ヘンリー、お前がエスコートしてやれ」
「かしこまりました」
ヘンリーはクリスティーナと目が合うと、少し嬉しそうにはにかんだ。
「心配いりませんよ。僕にお任せくださいね」
「伯爵!? ……殿下、また僕を嵌めましたね? 今日伯爵を呼び出していたなんて」
「こら、伯爵の前で人聞きが悪いぞ。客人が来ると言っただろう? それに、仕事で遅れたのはお前の落ち度だ」
(わあっ……! ヘンリ―様ってこんな風に怒ることがあるのね)
遠慮なくジュリアスに盾突くヘンリーの姿はとても新鮮だった。
人と深く関わってこなかったクリスティーナにとっては、とても興味深く、好ましく感じた。もっと色んな姿を見せてほしい。そんな風に思えた。
「ねえ伯爵」
「は、はいっ!」
「ヘンリーと偶然話す機会があったんでしょう? 貴女が伯爵として働く意思があるって聞いたものだから、僕もこうして手紙を出したってわけ」
「ぐ、偶然……」
突然話を振られたクリスティーナは、何と言うべきか悩んでしまった。
確かにヘンリーと話したし、社交の場に出ることは了承したけれど、ジュリアスにどう伝わっているかは分からない。下手に何かを言ってヘンリーを困らせる訳にはいかなかった。
困惑したクリスティーナの表情を見たヘンリーは、そっとクリスティーナに近づき耳元で囁いた。
「婚約の話は殿下にも話していないのです。申し訳ありません」
「いいえ……」
ひそひそと低く優しい声で謝るヘンリーに同じくひそひそと返すと、そのやり取りを見ていたジュリアスがいっそう楽しそうに笑った。
「なにー? 仲良さそうだね」
「殿下よりはそうでしょうね」
「はぁ? 伯爵、僕とも仲良くしてくれるよね?」
「あっ……あの……モ、モチロンデス」
綺麗な顔の二人に見つめられて、クリスティーナの心臓はドキドキして破裂しそうだった。
「よし、じゃあ皆仲良しになったところで……クリスティーナ、伯爵として表舞台に戻って来る気はあるかい?」
「あ、ありますっ……!」
「良かった。じゃあ、手始めに仕事のサポートから覚えてもらおうかな。明日からこの屋敷に通ってもらえる?」
「はいっ、お願いします」
ジュリアスから差し出された手を握ると、ぎゅっと力強く握り返される。
その手の温かさに、これから本当に外の世界で生きていくのだと実感した。
「あ、それと……来月僕の生誕祭があるから、そこで顔見せでもしようか」
「え?」
「社交界デビューしないといけないでしょ? 知らない人のパーティーより気が楽じゃない? ほら、僕達仲良しだし!」
「で、でもそんな大きなパーティーなんて……」
「大丈夫大丈夫。人がいっぱいいた方が目立たないって」
瞬く間に色んな事が決まっていく。
クリスティーナはそのスピード感についていけなかった。
(殿下の生誕祭に参加するなんて……どどど、どうしよう!)
青ざめたクリスティーナを見たジュリアスは、ヘンリーに笑いかけた。
「ヘンリー、お前がエスコートしてやれ」
「かしこまりました」
ヘンリーはクリスティーナと目が合うと、少し嬉しそうにはにかんだ。
「心配いりませんよ。僕にお任せくださいね」
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