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お茶会(5)

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 ヘンリーが好き。そう気づいたら、急に手紙の続きが書けなくなってしまった。
 ふとソフィアを見ると、熱心に書き続けている。クリスティーナの視線に気がついたソフィアは、少し恥ずかしそうに笑った。

「私……今まで決められた相手なんて、絶対好きになれない。そう思っていました。だけど、こうしてあの人を思い浮かべながら手紙を書くと、なんだか……楽しいです。クリスティーナ様のおかげですね」

 少し顔を赤らめながら手紙を書くソフィアは、とても可愛らしかった。
 他の三人も同じような表情をしている。真っ直ぐな思いが伝わってくるようで、皆魅力的だった。

「折角のご縁ですもの。楽しんだら良いのよ」
「そうですね……喜んでくれるかしら?」
「えぇ、きっと」

 そう答えながらクリスティーナは、息が苦しくなった。彼女たちは前を向いているのに、自分だけが立ち止まっている。彼女たちには家族を作る相手がいるのに、自分は一人だ。

(偉そうに説教したのは私なのに……滑稽ね)

 クリスティーナはため息をつくと、手紙に封をした。



 帰り際、ソフィアがソワソワとした様子で近付いて来た。

「あの伯爵! お名前でお呼びしてもよろしいですか……?」
「もちろんです。私もソフィアって呼んでも良いかしら?」
「ぜ、是非! そう呼んでください」
「ありがとう。今度は私が皆さんをお茶会にご招待しますね」

 ソフィアと取り巻きたちは、すっかりクリスティーナに懐いていた。
 名残惜しそうに皆で話していると、背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。

「随分楽しそうですね」
「ヘンリー! どうしてここに?」
「貴女を迎えに来たのですが……不要でしたね」

 ヘンリーの登場に、小さくキャーという悲鳴が聞こえた。

「やっぱり素敵だわ」
「本当にお似合いね」
「お二人が並んでいると眼福っ……」

 クリスティーナと仲良くなったことで、遠慮がなくなったのだろう。令嬢たちは二人を眺めて楽しむことにしたようだった。

(嫌味を言われるよりマシだけど、そんな憧れの眼差しを向けないでほしいわ……)

 それでも好意的な眼差しはありがたかった。今後パーティーなどに参加した時、彼女たちの声が批判を小さくさせるはずだから。

「ソフィア、お迎えが来たのでそろそろ失礼するわ」
「クリスティーナ様、今日はありがとうございました。私、頑張ってみます!」
「こちらこそ。でもね、無理しないで。もしお相手と合わなかったたら、恋愛はすっぱり諦めて私と一緒に新しい事業でも立ち上げましょう。きっと楽しいわ」
「わぁっ! 良いんですか? それ、すっごく素敵です!」

 ソフィアがカーミラ・レイモンドと上手くいくかは分からない。ダメだった時に落ち込まないようにと言葉をかけたが、その言葉は自分に言い聞かせる言葉べき言葉だった。

(私は始まる前から終わっているもの。恋愛のことは忘れて、伯爵としての仕事を頑張ろう……!)

「私はどうなるか分かりませんが、クリスティーナ様とヘンリー様は、きっと愛に溢れた夫婦になるのでしょうね。結婚式には是非読んでくださいね!」

 ソフィアの悪気のない言葉が、クリスティーナの心を抉る。先ほどの決意も崩れ去りそうだった。

「あ、ありがとう。さ、行きましょうヘンリー。では失礼」

 この場にいるのが辛くて、立ち去りたくて、ヘンリーを押して公爵家から出た。
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