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嫉妬(1)

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 翌週、クリスティーナとヘンリーは研究所に来ていた。

「お久しぶりです。カーミラ様」
「伯爵、ヘンリー様、お待ちしていました」

 笑顔で迎えてくれたカーミラは上機嫌だったが、目の下に薄っすらと隈が出来ていた。
 相変わらず研究が忙しいようだ。

「今日見ていただきたかったのは、こちらです」

 案内された実験室には、ハーブのペーストがいくつか並んでいた。

「クリスティーナ様の提案を採用させていただきました。いくつかのハーブをブレンドさせてみたのです」

 クリスティーナが思いつきでメモしておいたことが、ヘンリーによって纏められ、採用されたのだ。

(それにしてもすごいスピード感ね。そりゃあ目の下に隈も出来るわよ)

 過労で倒れた身としては、カーミラが少し心配になった。

「今日はこの中からいくつか好きな物を選んでいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「私たちが?」
「えぇ、効能や炎症の有無は検証済みですので、香りで選んでいただければと。こればっかりは、それぞれ好みがありますから」

 確かに、領民全員に好みを聞いてもバラけてしまうだろう。それはこれまでの聞き取り調査から、簡単に予想できた。
 誰か代表が、とりあえずの好みで選ぶのが良いのかもしれない

「分かりました。じゃあ早速……」

 ペーストの入った容器に近づいて、一つずつ蓋を開けて香りを確かめていく。
 あまりきつい香りはなく、どれも柔らかで良い香りだった。
 
「うーん……私はこれと、これが好みかな。嫌いな人が少なそうだし。ヘンリーは?」
「僕は、こっちですかね」

 クリスティーナとヘンリーがそれぞれ指をさすと、カーミラが興味深そうにメモを取った。

「やはりこの辺りが人気なのですね。所員たちに聞いた時も、似たような結果でした。早速サンプルを量産出来るかやってみます!」

 カーミラはやる気に満ち溢れていた。今にも実験を開始しそうな勢いだ。

「カーミラ様、差し出がましいかもしれませんが、無理をなさらないでくださいね。ソフィアが悲しみます。友人の悲しむ顔は見たくありませんから」

 そう伝えると、カーミラは少し驚いていたが、しばらくするとじんわりと笑みを浮かべた。

「心配していただいてありがとうございます。ソフィアもそう言ってくれたんです。気をつけますね」

 ソフィアのことを思い出したのだろう。なんとも微笑ましい関係だ。



 帰り際、カーミラは研究所の外まで見送りに来てくれた。

「今日はお越しいただき、ありがとうございました。ここまで進められたのは伯爵のおかげです。本当にありがとうございます」
「こちらこそ、サンプルを提供いただいて感謝しています。領民たちもすっかり良くなったんですよ。売り出されたら絶対買うって人が多いです!」
「絶対に商品化までさせます。楽しみにしてきてくださいね。あぁ、そうだ……」

 カーミラが手に持っていた鞄から、いくつかの包みを出した。開くとそこには先ほどクリスティーナたちが選んだペーストが入っていた。

「こちらは領民の皆さんへお渡しください。もし良ければ感想をお聞かせいただけると」
「わぁ! ありがとうございます。皆の感想聞いておきますね!」

 まだ量産していないだろうに、結構な量を渡されてしまった。これは絶対に感想を集めないと、とクリスティーナは気合を入れた。
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