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しおりを挟む義弟が引きこもるようになってから今日で四日目。
相変わらず義弟は部屋から出てこない。
たいして状況が変わらず時間ばかりがすぎていく。
今の所これ以上悪くはならないけれど、良くもならない進展のない日々にため息を禁じ得なかった。
暗い顔をした私を心配した葉子には「まあ、なるようになるさ」なんて言われている。
確かに今はなるようにしかならないとは思う。
けれども何もできずに焦燥感ばかり生まれるこのもどかしさから早く抜け出したかった。
どうしよう。どうしたらいいのかな。どうしようもない。
そんな風に今日も、授業に集中できないままもんもんとしながら過ごして。
「あ、の! お姉さん!」
少しだけうわずった少女特有の高い声が後ろから聞こえたのは、せめて食事だけでも義弟に楽しんでもらえるようにと献立を考えながら歩いている最中だった。
ぱっとまわりを見ても帰路に私以外の人影はない。
おそらく私を呼び止めたものだろうと後ろを振り返ると、
少しばかり離れた場所にランドセルを背負った女の子がいた。
「えと、すみません、いきなり声、かけて……」
「繭ちゃん?」
私にかけより礼儀正しくお辞儀をする、今どき珍しいお下げ髪の大人しそうな女の子。
その姿には見覚えがあった。
義弟が学校を休むようになってから、いつも連絡帳やプリントを家に届けてくれているご近所さんの繭ちゃんだ。
「どうしたの?」
「えっと、あの……あ、今日の分、先に渡しますね」
「いつもありがとう」
「いえ……」
なんだか歯切れの悪い繭ちゃんの様子から、届け物だけのために声をかけてきたわけではないことがなんとなく伝わってきた。
普段から届け物を渡してしまったら、お辞儀をしてすぐに去ってしまう繭ちゃん。
多分、人と話すことが苦手らしいそんな繭ちゃんが私に伝えたいことってなんだろう。
差し出されたプリントと連絡帳を受け取りながら、なるべく話しやすい空気を作るように穏やかに笑んで繭ちゃんの次の言葉を待つ。
私の無言の促しに、しばらくしてひと呼吸した繭ちゃんは少し緊張したような面持ちで口を開いた。
「あの、翔くんの、ことなんですけど……」
「うん」
「翔くん、休むようになっちゃったの、もしかしたらっていう、心当たりがあって……」
「え……?」
選ぶようにたどたどしく告げられた言葉。
その内容に、私は目を丸くした。
…………心当たり、とは。
「昨日、なんですけど。学校の近くで、見たんです」
ごくりと、喉を鳴らしたのはどちらか。
いつの間にか固く握っていた手が、妙に汗ばんでいた。
人の目を見ることも不得手らしい繭ちゃんの、いつもは微妙に合わない視線がしっかりと私を見据えている。
「翔くんの、お母さん」
そう口にした繭ちゃんの瞳は、今にも泣き出しそうに潤んでいた。
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