光が眩しすぎて!!

きゅうとす

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変わる世界

未来は開ける

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無事にエレの杖も選べて僕達はオーステナイト侯爵邸を出て帰った。

あの若い執事は結構ぐったりとしていたが命令を完遂出来て満足はしていたようだ。帰り際にエレと僕に握手を求めるくらいには仲良くなれたようだ。
もし、もう一度侯爵邸に来るようなら執事は自分を呼んでくれるように名乗った。侯爵の遠縁に当たる子爵家の3男のロジエルと言うそうだ。

昼もだいぶ回ってしまったので腹も空いていたから何処かで食事をしたかった。でも、新しく手に入れた武器の効果も試したかった。それはエレも同じ気持ちだったようで真っすぐに冒険者ギルドには戻らず寄り道をするように南の門を抜けて草原へ向かった。
オーステナイト侯爵邸がウィードラドの街の南西にある為だった。武器の威力を試したいので草原でエレと離れて魔物を探した。

魔剣ホトムラを持つと話し掛けて来た。

>魔物を探すならまかせろ。

どうやら僕の意思とは関係なく考えを読めるらしい。一応魔剣クルナワは声を掛けないと応え無かったけどな。

>>右手5mに瘤兎(ウィ)だ。風下から近づけ

しかも、戦い方まで指導して来るし、まぁ従うけど。魔剣ホトムラの言うように風向きに気をつけて近づくと草むらの中に瘤兎(ウィ)の姿が見えた。2m先くらいだ。

>>俺をあの瘤兎(ウィ)に向けて魔力を絞るようにして届かせろ

「えっ?細くして伸ばすの?」

>>そうだ、早くしないと逃げるぞ

僕は魔剣ホトムラの言うようにやって見ると指ほどの細さの光の剣が伸びて瘤兎(ウィ)に突き刺さった。キャンと言う短い鳴き声を上げて瘤兎(ウィ)が力なく倒れた。

魔剣ホトムラを腰に戻し、近づいて瘤兎(ウィ)を持ち上げて見ると首筋に指の太さの穴が空いていた。穴の周りは焦げていて血も流れて居ない。びっくりだ。

「この光の剣は何処まで伸ばせるの?」

僕は死んだ瘤兎(ウィ)を見ながら魔剣ホトムラに聞いた。

>>基本的には魔力が続く限り真っすぐに伸ばせるぞ。お前でも1000m伸ばせば直ぐに魔力枯渇するだろう

そりゃあ意味ないな。普通の剣として扱うのが正しそうだ。

>>1m程度であればお前の魔力枯渇まで2分は保つな

「うわぁー、使えない!」

>>何を言うか、我が無敵の力を振るえるのだぞ。

魔剣ホトムラは自慢したけどカンデラ様の形の無い光魔法と同じだ。グラム様の砂魔法やガロン様の水魔法で防げるかも知れない。ひょっとしたらジュール様の熱魔法にも負けるかも知れないな。
だから、魔剣クルナワを造ったんだろうな。

>>ぐぬぬぬぬ、そこまで言うならば我を捨てるが良い!

いいや、そんな事はしないよ。常用は出来ないけどいざと言う時には役に立つと思う。

>>ふん、我を認めるなら少し良いことを教えてやろう。

機嫌を直したのか魔剣ホトムラが言い出した。

>>お前の魔力使いは無駄が多いぞ。身体の各所に魔導具を埋め込んでいるようだが常に留める魔力は今の十分の1で充分だ。一度留めたならそれ以上は身体の自然に任せても問題なく動かせるぞ。魔力とは意思に依って動くものだからな。

ホントかよ?まぁやって見るか、損は無いしな・・・本当だ。

>>だろう?我の事を信じるが良い。

「少しは役に立つな魔剣ホトムラ。ただのお喋りだと思ってた。」

>>おっと話してる場合では無いぞ。背面2mに毒蛇(ポイズンスネイク)シャーリが迫ってる。逃げた方が良い。

「いや、この剣で倒す」

僕が持ったのは魔剣ホトムラでは無くてだいぶ刃先が毀れているノベムから借りている剣だった。振り返りながら少し後ずさり、毒蛇シャーリが姿を現すのを待った。

草が揺れて毒蛇シャーリが飛び掛かって来た所を横薙ぎに剣を振るうと少しズレて毒蛇シャーリの後ろを斬りつけられた。斬ったせいで毒蛇が僕の横を通り過ぎる。
振り返り草むらで足掻く毒蛇シャーリの頭に剣を突き刺して留めを刺した。

それなりに素早かったけどよく見れば対応出来た。もちろん毒蛇の血で剣は汚れたけど振り払えば良い。毒は牙にある毒腺からしか出ていないから心配は要らない。

>>ほう、なかなかやるじゃないか

魔剣ホトムラが僕を褒めるけどこのくらいなんでもない話だ。それから瘤兎(ウィ)と毒蛇(ポイズンスネイク)シャーリを影の中に収納する。

>>ほう、闇魔法か。良いものを持ってるな

「収納出来るからかな」

>いや、違うぞ。他の魔法は限定された力しか振るえないが闇はその全てを含むからだ。

「良くわからないな」

>>ほら、今度は左から泥鼠(ダートマウス)キッキだ。

草むらから顔を出した泥鼠キッキが口から泥を僕に向かって吐いた。小さな泥だったけど避ける為に動いた隙を狙って飛び掛かってくる。
僕の足を齧ろうとしたのだろうけどそれは下策だ。僕の足は魔導具でとても泥鼠に齧れるものじゃない。泥鼠は歯が立たなくて小さく鳴いた。歯でも欠けたかな。
隙かさず僕は泥鼠を蹴り上げた。ブーツに小さな穴は空いたかも知れないな。高く蹴り上げられた泥鼠を落ちてくる瞬間に殴りつけた。キュと鳴いて泥鼠は草むらで動かなくなった。そのまま僕は影に取り込んだ。

やっぱり、草原の魔物は弱いな。動きも遅いし楽勝だ。そう思っていると魔剣ホトムラが意外な事を言い始めた。

>>気付いて居ないのか、お前

「何のことかな」

>>やれやれだな。動きも遅い・・・・・しじゃないぞ。
お前の動きが早すぎるんだよ

「え?どう言うことだ」

>>『身体強化』されていると言う事だ

「え?ノベムには『強化魔法』は出来ないって言われてるぞ。」

>>そりゃ『身体強化』出来てる相手に更に『強化魔法』は掛けられないだろうさ

「・・・いつの間に『身体強化』出来る様になったんだろう」

>>その、ノベムだったか?そいつが魔導具を動かす為にお前に教えた方法が『身体強化』を兼ねて居たんだろうさ。魔導具に魔力を留める様に訓練を続けて居たんだろ。それが『身体強化』の方法と同じだったと言う事だ。

そうか、そうなんだな。僕は納得した。
身体の中に肉体よりも重い魔導具を埋め込んでいるんだから動かすには普通の筋力じゃ動けないよな。冒険者として動けるだけの『身体強化』が出来ている時点で理解して居ないとおかしかったんだろう。

>>各所の魔導具に込める魔力を増やせばそれだけ『身体強化』を強める事は出来るが意識して『身体強化』すれば身体に負担が掛かるから自分で気付くまで言わなかったんじゃ無いのか。

改めてノベムに感謝だな。それにホトムラにも感謝だな。ありがとう、ホトムラ

>>ほら、言っている間にも毒蛇(ポイズンスネイク)シャーリが2匹近づいているぞ。

今度は攻撃される前にこちらから近づき、動きを見ながら剣を突き刺すように振るい、2匹を串刺しにした。魔剣ホトムラの言う通り、留めた魔力を意識すると更に動きが良くなった。

「ホトムラの言う通りだ」

感心するように言うと魔剣ホトムラが答える。

>>当然だ。俺はクルナワよりも先に創られて経験も豊富だからな。

「これで剣がもっとまともなら良かった」

僕のボヤキに魔剣ホトムラは言った。

>>クルナワが欲しいか?

確かに魔剣クルナワがあれば話し相手にもなるし色んな知識を教えて貰える。それ以上にノベムに剣を借りていると言う負い目を感じずに済む。
僕の子持ちを読んだ魔剣ホトムラが言う。

>>俺ならクルナワの居場所が分かるぞ

とんでもない驚きの発言だ。

「本当か!ならば知りたい!」

少し喜び過ぎたのか魔剣ホトムラは間を置いて調べてくれた。

>>北西の方向に気配を感じるな

この草原から北西と言ったら先ほどまで居た領主オーステナイト侯爵の屋敷の方だ。屋敷の宝物庫には無かった筈だからいったい何処にあるのか。
広範囲に風魔法で草刈りを楽しんでいるエレに声を掛ける。

「おーい、エレ!」

僕の呼び掛けにエレが振り返って走って来た。

「ブルク!凄いのよ、この杖!」

近くに来た途端にお喋りが始まった。エレが選んだ杖によってエレの魔力の効率が2割アップして威力も上がったけど、精密な調整が出来る様になったらしい。
説明しながらエレが魔法を放ってみせる。エレが杖を振るうとエアカッターが上下2段で同時に放たれた。こんな魔法は見たことが無かった。他にも丸い形にしたり波打った様にしたり様々な形に出来るようになったと言う。エレが魔法を放つ時に杖を動かす形に出来るらしい。

炎系で魔法を放てば形もはっきりと見えるだろうけど火事になってしまうのでしないと言う。まぁだからどうなんだと言う事でもあるけど。どう応用出来るのか分からないらしい。
水魔法も水弾として飛ばすだけでなく霧吹きの様に飛ばしたり、地面を水溜りで蛇のように這って進んだりさせる事が出来るらしい。水芸としてなら面白いかも知れない。むろんそんな事は口にしないけれど。

「魔法の幅が広がる事は良い事だよ」

僕に言える事はこのくらいなものでとても褒める事が出来なかった。もっと喜んで貰えると思っていたみたいで少し不満顔だったけれど「頼りにしてる」と言う言葉に喜んだ。

僕は話を変えて魔剣ホトムラの話をする。僕の魔剣クルナワが豚鬼王オークキングと共に無くなった事はノベムに聞いた時にエレも居たから知っていた。
ノベムによれば豚鬼王オークキングと一緒に冒険者ギルドに運ばれた筈だと言っていた。普通なら持ち主に返される筈なのに解体場でいつの間にか無くなっていたらしい。

元気になってから僕も冒険者ギルドで色んな人に聞いて回ったけど見つからずノベムが同情して今の剣を貸してくれたのだった。でも、もうサウザンドトレントで酷使されて刃先がボロボロだった。ノベムに直して欲しいと言えば直してくれるだろうけどあまり頼りすぎるのは悪いと思っている。

そこで魔剣ホトムラが魔剣クルナワのある場所が分かると教えてくれた事をエレにも言った。エレも魔剣クルナワを探すのは賛成してくれてオーステナイト侯爵邸の方向にあると言ったら凄く怒ってしまった。

「絶対、デッセンバーグが盗んだのよ!」

根拠は無いけど確かに人知れず持ち出せる人物ではある。そして持ち出す動機のある人でもある。

「とにかく、魔剣ホトムラの言う場所に行ってみよう」

僕はエレとオーステナイト侯爵邸に向かう為に南門に歩き出した。

>>おい、何処に向かうんだ?

いきなり魔剣ホトムラが言った。

「何処って、ありそうな場所?ウィードラドの街中だろ?」

僕が言うと魔剣ホトムラは言った。

「方向が全然違うぞ。もっと西だ」

魔剣ホトムラの言っていることをエレに説明すると少し考えて言った。

「もしかしたら街中じゃなくて城壁の外なのかも知れないわ」

「それじゃあ、取り敢えず言う通りの方に行ってみようか」

僕達は道を逸れて草むらの中を歩いた。時折魔物が出てくるのは魔剣ホトムラが教えてくれるので交互に倒して進んだ。

到着した場所は城壁の外で見上げるとオーステナイト侯爵邸が見えた。魔剣クルナワは草むらの中に突き刺さって立っていた。どうやらオーステナイト侯爵邸から投げ捨てられたようだ。どう言う事だろうか。

僕が魔剣クルナワを持つとクルナワが怒涛の如く恨み節を吐いた。

>いったい、いつまで放って置くつもりなんだ!遅すぎるぞ来るのが!全く、俺がナマモノだって事を少しは理解しやがれ!お前の魔力を記憶してるんだからお前以外の奴らに話しかける事も出来ねえし、喋ってる事は分かってもどうにも出来ねえ!
やっと見つけてくれやがったかよう、頼むぜ!本当にもう、くそっ!やっと見付けた相棒なんだからよう、もっと大切に頼むぜ。俺は役に立つだろー、立つからさぁ、頼むから捨てねえでくれよぅー、ぐす。

最後は泣き出す始末だった。暫く泣いて落ち着いた魔剣クルナワに事情を聞いた。それに依ると豚鬼王オークキングに刺さっていたのを抜かれた後は手入れもされずに解体場に放って置かれて居たのをデッセンバーグに持ち去られた。
デッセンバーグは暫く冒険者ギルドマスターの部屋に隠して居たがオーステナイト侯爵に献上した。でも、うんともすんとも言わない上に汚い魔剣クルナワを魔剣と認めず受け取らなかった。それでデッセンバーグは処置に困ってオーステナイト侯爵邸の窓から投げ捨てたらしい。

確かに話し掛けられないとだいぶ痛んだただの剣にしか見えないものな。同情はするけど。魔剣クルナワの話をエレに伝えるとエレの表情が極鬼オーガの様になった。

>それより何でソイツがお前の側に居るんだ!

「ああ、魔剣ホトムラのお陰でお前を見つけられた」

>そうかよ

嫌そうな声音で魔剣クルナワが答えた。

>>そうだぜ、俺のお陰でまた使って貰えるんだ。感謝しろよクルナワ

すると、魔剣ホトムラがクルナワを煽った。仲が悪いんだろうか。

>けっ、ありがとうよ

僕は魔剣ホトムラをオーステナイト侯爵邸の宝物庫で見つけて褒賞で貰った事を説明する。

>そういや、お前その足と身体はどうした?

今頃魔剣クルナワは僕の身体の変化に気付いたらしい。簡単に魔剣クルナワを失ってからの事を説明する。途中、泣きだしたり驚いたり感激したり矢鱈と感情が上下した。もっと冷静な奴だったと思うけど一刀で少し性格が変わったのかも知れない。

>こらからは俺を頼れ。そこの出来損ないよりも使えるからな!

魔剣クルナワが魔剣ホトムラを貶める。余程競争心が高いようだ。

>>ははっ、拾って貰った奴が何を言う。

魔剣ホトムラがクルナワに言い返して喧嘩を始めた。賑やかではあるが僕にしか聞こえないから少しうるさい。頭を抱えたエレが僕を心配してくれる。

「いやいや、魔剣達が喧嘩して言い争いしてるんだ」

「触れなければ声は聞こえないんじゃ無いの?」

エレの言う通り触れなければ声も聞こえないけど腰に挿して置くだけで触れている事になるらしく声が聞こえるのだ。少しエレが考えて対処の仕方を教えてくれた。

「気を逸らせば良いのよ。魔剣の触れてる所だけ魔力を薄められないかしら」

なるほど、魔力を滞留させたり出来るのだからその部分から魔力を抜く様にしてみる。腰の部分には魔導具が無いので身体の動きには問題が起きないようだった。すると魔剣達の声が遠ざかり煩さが少なくなった。

「うん、出来たみたいだ。ありがとうエレ」

「良かった。魔剣を扱うのも大変ね」

確かに煩いけど魔剣クルナワは僕が冒険者を始めた時からの仲間だから居ないとやっぱり寂しいのだ。



魔剣クルナワを回収出来た僕達は再び南門へと移動してウィードラドの街中へ戻った。
日も大分回ったからお腹が凄く空いた。エレも、また草原で魔法を使いまくったから同じ思いだった。何処へ行こうかと言う話になって真っ先に思い付いたのはやっぱりノベムとも行った食べ放題だった。
夕ご飯を食べるには早い時間と思えたけれど行ってみれば店は盛況でふたりで座るにも席を探すのが大変だった。今日はお金稼ぎは出来ていなかったけど腹の虫には代えられない。結局沢山食べて飲んで明日から何処へ行こうかと言う話をすることになった。

ざわめく周りの声の中に異国での戦争の話やとんでもなく強い魔物の話などが聞こえて来る。そんな中でエレの耳を引いたのはパーティ『生命の樹』の躍進の話だった。元討伐者(バスタード)の仲間だったアランはC級の、階段を駆け上がって居るらしくもうすぐB級らしい。アランの話をしているエレの後ろの男はかなり酔っているらしく身振り手振りが激しかった。
聞き耳を起てていたエレが立ち上がろうとしたところで後ろの男の手がエレの背中を叩いた。小さい悲鳴を上げたエレに男が振り向く。

「な、何だぁ~、エレじゃねえか、ぐへっ」

その男はエレの事を知っていたらしく馴れ馴れしく声を掛けて来た。僕の方からはエレの表情は見えなかったけどエレの声はトゲトゲしかった。

「バダン!人を叩いて置いて良くもまあ平気で居られるわね!」

「えへへへ、そりゃ済まねえ。でも、お前良いのかぁ~」

「何がよ」

「アランの事だよぉ」

「もう、昔の話よ!」

気にはなるが聞きたくない気持ちが言葉に表れていた。

「そうか、そうか、捨てられたんだもんな、げはははは」

笑い声を上げて尚も言い募ろうとしたバダンが後ろから誰かに首を掴まれて持ち上げられる。

「ぐぇ~、く、苦しいぃ~、だれぇ~」

「バダン!見苦しいぞ!」

バダンを持ち上げたのは僕たちも知っている人物だった。銀翼の盾のザインさんだった。

「「ザイン!」さん」

僕とエレの声が重なった。バダンを片手で持ち上げたザインさんが僕たちの方へ笑顔を向けて軽く開いた手を上げた。

「よぉ!」

それからバダンに向けて言う。

「バダンよ、幾らお前が萬年D級だからと言ってエレを羨むな。エレを馬鹿にしようとお前の力が上がるわけじゃ無いぞ。酒も大概にしとけ!」

ザインさんがバダンを放り投げると首を掴まれていたせいか、酒に酔いすぎたのかバダンの顔が青くなっていた。咳き込んた後にザインさを見て何も言わずに震えて去って行った。

「ザイン、ありがとう」

エレがザインに礼を言う。

「何、バダンの言い草が気に食わなかっただけだ」

「ザインさん、ひとり?」

僕が周りを見て聞くと顔を歪めた。何か理由があるようだった。

「ひとりなの?良いわ、礼をするから座って!」

エレが僕たちの座っていたところを勧めた。騒ぎて逃げ出した者がいたらしい。
改めて3人で座り、エレが通りかかった店員にエールを頼む。

それから互いに近況を報告しあった。結局のところ、ザインさんはパーティ銀翼の盾を解散してソロになったらしい。仲間だったカッティが大金が入ったと言う事で勝手に姿を消してしまったみたいだ。
ザインさんは昔から仲間に恵まれて無いと腐って居た。どうやら運が悪いらしい。サウザンドトレント戦でたまたま僕たちに助けられはしたけど僕たちがいなければ今頃俺は死んでたと嘆いた。苦労はしたけど僕たちも強い相手と戦えたし実入りも良かったから結果的には良かった。

ザインさんがソロと聞いて僕はエレを見た。エレも僕を見て頷いた。どうやらエレも同じ気持ちらしい。

「ねえ、ザインさん。良かったら僕たちのパーティに入らないか?」

僕の誘いを聞いたザインが突拍子もない事を聞いたと言う顔をした。

「ん?どう言う事だ。お前達の間に入られたらやり難いだろう?」

「そんな事無いわよ。現にサウザンドトレントの時は凄く上手く戦えたじゃない」

エレの言葉にザインが困惑した。

「だって、お前達は恋人同士だろ?」

「えーっ!違うわよ!!」

即断して返したエレにザインが面食らう。エレって、、、少し涙目の僕は言った。

「ち、違います」

エレは美人と言うよりは可愛いよりの元気な年上の女の子で僕には眩しい存在だ。だから恋人では無いにせよはっきり断言されると少し辛い。

「そうなのか」

ザインは僕とエレを見比べて言った。

「そうねぇ、ブルクはあたしに取って『命の恩人』でもあるし『頼りになる弟』みたいなものよ」

エレが僕を見る視線を感じると気恥ずかしい。

「ブルクに取ってエレはどうなんだ?」

温くなったエールを口にしながらザインが僕に聞く。興味深そうに笑みを浮かべてエレが僕を覗き込む。

「あは、あははは。エレは頼もしい魔法使いです。それに今の身体になる前から優しかった。」

しみじみと思い返すとアランもエレも足の不自由な僕を馬鹿にする事も蔑む事も無く普通の冒険者として見てくれていたと思う。だから僕は彼らに好意を抱いたんだ。もっともアランは僕の能力不足に苛立つ時もあったかな。

「分かった、俺にとっても助かる話だ。仲間にしてくれ」

ザインが僕たちに遠慮する必要が無いと分かって言った。

「実のところ、ソロではあまり稼げなくて困ってた」

頭を掻きながらザインが言った。

「それと俺の事はザインと呼んでくれ。仲間なんだからな」

ザインさんがそう言うので僕も呼び捨てにする事にした。自分のお父様くらいの年齢の男性を呼び捨てにするのは少し抵抗があったけど。でも、エレは初めから呼び捨てだったか。
それから少し自己紹介を始めた。ザインは41歳で妻子持ちだった。妻の名前はエレーヌ、息子はマインと言った。宿屋『天使の翼』のエレーヌにザインが惚れて一緒になったそうだ。息子のマインも宿屋を手伝っているらしい。奥さんと子供の話をするザインはただの親父だった。

ザインが最初に所属したのがあの有名なパーティ『金の大翼(ゴールドウィング)』だったらしい。『金の大翼(ゴールドウィング)』は今のギルドマスターのデッセンバーグも所属していたと言う。その頃からザインはデッセンバーグと仲が悪かったようだ。なるほど、知り合いどころじゃない仲だったんだ。

言わば逃げるようにパーティを脱退してからは色々なパーティの助っ人になったり、気の合う仲間と新しいパーティを組んでも長続きしなかったみたいだ。ザインの実力と経験はパーティがちゃんと働けばBランク相当なのに運悪くパーティを組めなくて、一時期冒険者を辞めていた時があったせいで今はCランクらしい。

「ブルク、なんだかお前の顔は見た事がある様な気がするんだよなー」

そう言われても僕には会った記憶が無かった。それで話の流れから僕も自分の事を話す羽目になった。とは言ってもそんなに話せる事は無い。

小さい頃にお父様、お母様がこの国にやって来てから僕が生まれ、お父様が冒険者をやって生活費を稼いで生活して居るうちに妹のラスが生まれた事、お父様が亡くなり、1年程後にお母様が後を追うように亡くなった事を話す。
お父様、お母様と言ったところで2人に怪訝な顔をされ、お父様が冒険者だった事を言うとザインが頭を叩いて何かを思い出そうとした。
それから孤児院に引き取られ、病弱だった妹が貴族の養女として引き取られてからはひとりで孤児院にいた事を話す。エレが孤児院の事を聞きたがったので子供に取っては酷い場所だったし、自分は虐めにあっていた事を話した。
エレが涙して同情してくれたけど過ぎた話だ。孤児院で耐えた後に魔法が使える様になって直ぐに孤児院を逃げ出して冒険者になったと話す。後はエレも知っているとおりだ。

「あのさ、ブルク。お前の父ちゃんの名前は何と言うんだ?」

やけに真剣な顔でザインが聞いてきた。そのせいでお父様に外では出来るだけ名前を言わないように言われた事を思い出した。だから少し躊躇したけどザインには言っても良いだろう。

「お父様はナメシ、お母様は・・・」

「やっぱり!お前の父ちゃんは金髪青目の五分刈りの優男だろ?。魔物(赤色ワイバーン)討伐の依頼中に行方不明になった筈だ!」

「なんでお父様の事を知ってるんですか?!」

僕がびっくりして叫ぶとエレまで驚いた。

「実はなナメシと組んで依頼を熟した事があるんだ。もう何年前だ?」

「お父様が亡くなったのは僕が8歳の時だから・・・もう5年も経つんですね」

「そうか、5年か。」

「お父様、ナメシはどんな冒険者だったんです?結構お金を家に入れてくれてたと思いますけど」

優しかったお父様、悲しい視線を向けて来る事もあったけど僕達を愛してくれていた。僕達が寝てしまった後もお母様と話し込んでいたな。何を話していたんだろ。

「ん?知らなかっのか?ナメシは冒険者になって直ぐ頭角を現してあれよあれよとB級まで上り詰めて、後少しでA級になるところで死んだんだ。」

「そんなに強かったんですか!」

今冒険者をしているから分かるけど級を上げるのは大変だ。なのにB級にまでなっていたなんて!家で寛いでいたお父様はそんな素振りは微塵も見せてなかった。

「ああ、何度ナメシに助けられたか。知ってるか、ブルク。ナメシの得意技は”瞬歩”からの”死角突き”だったんだ」

”瞬歩”も”死角突き”も全く知らないスキルだ。どんなスキルなんだろう。

「おっと、ナメシが槍使いだったのは知ってるよな」

「いえ、全然。お父様は家では仕事の話はされませんでしたから」

「・・・あのさ。ブルクのその言葉遣い貴族みてえだな」

そうだった。この言葉遣いで孤児院では虐められる事になったんだ。

「すみません。お父様、父の事を思い出したら言葉遣いも戻っちゃいました。」

「小さい頃からお父様お母様なの?」

エレが聞いてきた。今更取り繕っても仕方ない。

「ああ、そうだ」

「う~ん、ナメシも出自は少しも話さなかったけど言葉遣いは丁寧だったな。もしかして異国の貴族だったのかも知れんな」

言葉遣いだけで貴族と言う事も無いと思うけど、今から思うと少しも何処から来たのか教えて貰った事が無かった。

「おっと、話が逸れたな。悪かった。それでナメシの事だかあいつが死んだ事に今も合点がいかないんだ。」

「どういう事です?父が死んだ事を教えてくれたり、母の葬儀を手伝ってくれたヴァーザさんは詳しくは話してくれませんでした」

ザインが何故か驚いて立ち上がった。

「何だって!今、何と言った?」












    
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