光が眩しすぎて!!

きゅうとす

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真実の世界

世界は

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しかも、結構日差しが強かった。じっとりした湿気に日差しで僕達は参ってしまったよ。既にこの場所では他の冒険者がワイバーンを狩ってしまって居ないのかもと場所を移動しようと言う話になった時にクルシュ高原の崖下の景観を眺めていたレーアが声を上げたんだ。

「あれれれ~?あんな所に人がいるわね」

その声に僕達は指さす場所を見ると確かに人影らしいのが複数動いていたんだ。ザインによるとクルシュハラン大河につながるアマゾ大森林の一部らしかった。ザインに確認したけど見た目はどうにも他の冒険者には見えなかったんだ。

「亜人?」

エレが言った事でザインが声を潜める様に指示したんだ。

「ザインにはあの亜人らしき影が何だか分かるの?」

僕の質問に岩陰に潜んで崖下を見詰めたザインが言った。

「あれはたぶんピペット族だ。でも、変だな。1匹だけやけに背が高い。人に見えるな。」

ピペット族とはクルシュハラン大河とライアーソー海に面した村に住む亜人種の半人半魚のシーマーマンらしい。アマゾ大森林からの魔物には大河に逃げたり、海に逃げたりする臆病な亜人らしい。食料はアマゾ大森林の果実やクルシュハラン大河やライアーソー海の魚と言う事だった。それでもザインに言わせると殆ど噂の域を出ない。

「う~ん、あの背の高いピペット族が指示して他の者が狩りをしているみたいだな」

数を数えて見ると10匹程度で森の外の川の獲物を狩っているように見えた。

「もっと近くで探ろう」

僕は裏依頼の事を考えて提案した。エレもレーアは頷いたからザインも渋々同意してくれた。ワイバーンがいなけりゃ仕方ないよね。

先ずはザインが注意深くクルシュ高原の崖道を下り始めた。その後をレーアとエレが続く。最後は僕が空中からの魔物を注意しながら後を追った。
ワイバーンはいなかったがいつ姿を現すか分からない。青く広がり薄く棚引く雲は長閑に見えた。遠くから野鳥の鳴き声も聞こえるから余計に緊張感が薄れる。

先頭を行くザインの向こうにザインが指し示したピペット族達が一生懸命に魚とりをしている様子が見えた。人族が亜人族を警戒していなければこんなに気を使うことも無いのにと思う。ピペット族と言うシーマーマンは此方に気付いていないようだった。目が悪いのか、夢中で川に潜っているせいなのか分からない。

崖を降りきって川沿いの岩陰沿いに近付いて行くとザインがいきなり立ち止まった。後100m程くらいに近付いていた。視力強化をしていてピペット族と言うシーマーマンの顔立ちが判別出来るようになったのかも知れない。

「まさか・・・」

唖然とした様なザインの声がしたと思ったらザインが大声を上げながらさっきまでの注意は何だったのかと思うような走り方で近付いて行った。

「ナメシー!ナメシー!」

エレもレーアも僕も唖然としたんだ。何故ザインは急にお父様の名前を上げながらピペット族と言うシーマーマン達に走り寄ったのだろうか。
僕も視力強化してザインが向かった背の高いピペット族と言うシーマーマンを見た。

その背の高い亜人がザインの声に気付いて此方を見た。ザインの言う通りお父様の顔をしていた。髭面で焼けた顔は逞しかったけど見違える筈のないお父様ナメシだった。短くざっくばらんに切り揃えられた髪には白髪が目立っていたけど確かにナメシお父様だった。

目が潤んで良く見えなくなってしまったけど僕も我に返ってザインの後を追った。ピペット族と言うシーマーマン達の間に立っていたナメシお父様が何か叫んで手を振ると亜人達が魚取りを慌てて止めて川から上がり森に逃げていく。

手を振りザインがナメシお父様の名を叫びながら数mまで近寄って立ち止まった。何故ならナメシお父様が背中に背負った手作りの槍を構えたからだった。
どうやら亜人達が逃げる為の時間稼ぎをしようとしているようだった。

「お父様・・・」

僕はザインの隣まで来て呟いた。近くから見ても間違いようが無かった。何年ぶりだろうか、懐かしさがこみ上げて声が漏れた。追いついたエレとレーアがナメシお父様を囲む。囲まれた事を気にしながら良く分からない言葉で此方を威嚇して来るナメシお父様に唖然とする。

「ナメシ!分からないのか?俺だ、ザインだよ!」

警戒しながらもザインの名前に眉を潜めるナメシお父様だった。どうやら此方の言葉を理解出来ていないけど名前には反応しているらしい。

「お父様、ブルクだよ!貴方の息子のブルクだよ!分からないの?」

僕の名前にも驚きの顔を見せて頭を振るナメシお父様だった。戸惑いながら僕とザインの名前を呟くと警戒していた槍の先端が下がって行く。
エレもレーアも驚きながら見詰めていた。レーアにも仲間になってから僕の素性については話をしてあるから誰なのか分かっている筈だった。ナメシお父様が僕とザインの名前を呟く。

「ザイン?・・・ブルク?」

目を見開きながら頭を振って叫んだ。それから亜人の言葉で何かを叫んでから槍を構えた。僕達は警戒して囲みを広げる。どうやらナメシお父様は僕達を覚えて居ないらしい。鋭い目つきで敵を見るように警戒する。ザインが言った。

「どうやら忘れているらしいな。埒が明かないから取り押さえよう」

ザインが大剣を背中から抜いて構えた。ナメシお父様に剣を向ける?そんな事出来ないよ。僕が戸惑っているとレーアが言った。

「大丈夫!あたしが治すから気にしないで!」

「いつも通りにいくよ!」

エレがデバフの魔法をナメシお父様に掛けるとそれに気付いたナメシお父様がエレに振り向いて槍を突き出す。背を向けたナメシお父様にザインが大剣を振る。
剣の腹で攻撃したのを感じたのか僅かな動きでナメシお父様が大剣を躱し、槍の持ち手でザインの大剣を弾いた。体勢が崩れたザインに向かって身体を回したナメシお父様の槍先が短剣の様に振るわれる。

デバフが掛かっている身なのに早い!僕もザインの助けになるように魔剣クルナワを抜いてナメシお父様の脚を狙って突きを仕掛ける。
川の中なのに踊るような脚さばきで僕の突きを躱し、少しレーアの方に跳んだ。レーアが組みし易いと判断したのか腰回りで回転する槍の柄がレーアを打ち据えようとするのをレーアは屈んで寸での所で躱した。デバフで少し動きが遅くなっていたからこそ躱せたのだ。

体勢を崩したザインが川面を叩かずに強引に大剣を引き上げてナメシお父様の背後に走った。さらに、エレが水魔法で川の水をナメシお父様の腰辺りまで持ち上げて動きを鈍くする。僕もレーアを守る方向に走り、手首だけで器用に槍をレーアに突き出したナメシお父様の攻撃を弾き返した。

エレの水魔法のお陰で僕達の足元の水位が下がり動きやすい。ナメシお父様に纏わりついた水は嵩を増して肩を越えた。エレは水で捕らえようとしているようだった。それに気づいたナメシお父様が叫んで暴れて水から逃げ出そうとするけど頭まで包んだせいでゴボゴボと息を吐いて動きが鈍った。

ザインが大剣を背中に戻しナメシお父様に近づく。もう、拘束したも同然だったから大剣は不要と判断したのだろう。僕も魔剣クルナワを腰に戻し、川に両手をついていたレーアに手を貸して立ち上がらせた。

水柱に閉じ込められたナメシお父様は目をつむり動いていない。槍も手から離したせいで川面に浮いていた。僕がそのお手製の槍を拾い上げてまじまじと見ているとザインが近付いて言った。

「あー、やっぱりナメシの槍だ。刃先だけ使い回して直したんだな」

確かに穂先は鋭く大きめの槍で持ち手は真っ直ぐでは無い歪んだ木の枝を使って、あちこちに蔓が巻いついていた。少し擦れて汚れているのはかなり使い込んでいると言うことだろう。

「死んでないよな」

僕がエレに言うとにっこりして言った。

「『水牢』は相手を気絶させて拘束するだけの魔法だから問題ないよ。それでもかなり魔力で抵抗してるけどね」

なるほどS級冒険者に迫っていたナメシお父様程の実力者だと魔力を纏って自衛出来るのか。

「武器は奪ったから水魔法を解除してくれ、エレ」

エレが頷いて水魔法『水牢』を解除すると筒状の水が崩れて中に囚われていたナメシお父様が出て来た。川に両手両足をついてナメシお父様がゲホゲホすると頭を振った。

エレは気絶していると言ったけど振りだったみたいだ。もう暴れる様子が無かったから僕はレーアに言ってナメシお父様に回復魔法を掛けて貰った。近距離からレーアの魔法が飛んでナメシお父様の身体が淡く光る。普通の回復魔法は相手に触れて掛けるものらしいけどレーアの回復魔法は飛ばせる。さらには曲げたり、遅効も出来る訳の分からない力がある。
それが効いたらしい。立ち上がって周りを見て言った。

「ザイン・・・それにブルク、か?」

さっきまで言葉さえ分からなかったみたいだったのにちゃんと話せたし、僕達が分かるようだった。もう、我慢出来なかった。

「お父様!!!!」

僕は駆け寄って抱き着いた。ナメシお父様は僕を優しく抱いてくれた。そして身体を押してしみじみと僕の顔を見て言った。

「ブルク、大きくなったな」

「そうです!もう14歳ですよ!」

「ナメシ、ブルクはB級冒険者なんだぜ」

ザインが声を掛けるとナメシお父様は言った。

「そうか、冒険者になったのか」

「はい、お父様と同じ冒険者です!」

「こんなところじゃ何だから川から出ようよ」

エレが言うので僕達は川から出て森の近くに来た。すると森の木々の陰から此方をピペット族のシーマーマン達が覗いていた。さっきまで魚取りをしていたナメシお父様の仲間が心配をして様子を見ているとようだった。ナメシお父様か彼らに向かって何かを言うとお互いに見合ってからぞろぞろと木の陰から出て来て近寄って来た。見た目は僕より少し背が低いけど耳や手や脚の部分には鰭があり、全身が細かな鱗で覆われていて虹色に輝いていた。口は横に広く耳辺りの鰓まであった。体形からは性別が分からなくて股間には何も無かった。それでも顔つきには違いがあってよく見れば個性的でもあった。一番近くまで寄ってきたピペット族の一人がナメシお父様に何かを聞いてそれに答えると胸に手を当ててホッとしたようだった。僕達はその様子を黙って見ていたらナメシお父様か説明してくれた。

「お前達を警戒していたけどわたしの家族なかまだと説明した。」

その言葉でザインも安心したのか言った。

「ナメシ、お前は死んで無かったんだな。あんな落ち方をしたからてっきり駄目だと思っていたぜ」

「ああ、俺もさ。まあその経緯はもっと落ち着いた所で話そう。お前達の事も知りたいしな」

そう言ったナメシお父様はピペット族の村に案内すると言って森の中を川沿いに歩き始めた。

川は森の中まで入り込んで複雑に流れでいた。ピペット族は川の中を泳いだり木々の間を跳ねたりして僕達を囲むように進んでいた。特に僕達がナメシお父様と一緒に村を目指す事に異論は無いようだった。

進む速さは身体強化をしていないとついて行けない程だったからナメシお父様に話し掛けるのが難しかった。ナメシは片手に手製の槍を持ち、軽々と木々の間を跳び、乾いた木の根を歩いて行く。
その直ぐ後を僕、エレ、レーア、ザインと続いて行く。ザインが最後尾を行くのは周りを警戒するためだった。でも、時折ピペット族の誰かが声を上げているらしく魔物を避けるように大回りしたり、川沿いに出たりしていた。音はしないけど耳の奥が痛む様な声を出しているみたいだった。
進むこと小一時間で川沿いをゆっくりと歩き始めた。

「お父様、村は近いのですか」

僕は意を決して話し掛けた。するとナメシお父様は振り返って教えてくれた。

「ああ、もう潮の匂いがしてきたろう?海が近いんだ。」

そう言っている内に森の先が開けて来て青空が大きくなった。そして大きな水が見えた。色は青空に負けない程に青い。風に依って打ち寄せる波は白く打ち寄せていた。僕達は思わず声にならない感嘆を上げて立ち竦んだ。

「海だよ。ブルクは見るのは初めてだろう?」

ナメシお父様の声に答えられずに空の果てまで続く水の塊である”海”を見詰めた。僕の隣にエレとレーアが並んで見ているとザインが言った。

「相変わらずすげぇなあー」

ザインは海を知っていたらしい。足下は白い砂が海の縁に沿って左右に見渡す限りに広がっている。右手は大きな河口があってその先には森を湛えた半島があった。左手は森、砂浜、海、空で他に何も無く続いていた。その大きさに圧倒されて声も出ない。

「さあ、そろそろ行くぞ」

驚いている僕達を待ってくれていたナメシお父様が声を掛けて砂浜を歩き出した。僕達は慌てて後をついて行った。更に30分程歩くとその先に小屋の塊が見えて来た。その手前は海から引き入れたらしい堀の様な物が見えた。それなりに広く深そうだった。

砂浜に引き揚げられた木の塊をナメシお父様が水に浮かべて乗るように言った。”筏”と言う乗り物らしい。ナメシお父様が器用に細くて長い棒を撓らせながら対岸まで進めた。

どうやら”筏”はナメシお父様専用らしかった。ピペット族は簡単に泳いで渡ってしまう。進む間にナメシお父様が説明してくれた事には森から出てくる魔物対策にナメシお父様が考えて造った堀だと言った。半分水没している様な森に住む魔物には対した障害にはならないけど時間稼ぎにはなるみたいだ。

狩りをした仲間が帰ってきたから村人が出迎えていたけど僕達がいるせいで近付いて来ない。僕達を囲んでいたピペット族の中から杖を付いた小柄なシーマーマンが一人近づいてきてナメシお父様に何か言った。それにナメシお父様が身ぶり手ぶりを交えて説明する。

たぶん、僕達が危険でない事を説明してくれているようだった。何度か言葉を交わした後にナメシお父様が僕達を村外れのひとつの小屋に案内してくれた。小屋は細い木の幹に何かの葉を巻き付けて壁にした様な物で屋根はその大きな葉を葺いてあった。床は砂浜の上に同じ様な葉を積み重ねて座れる様になっていて一段と高いところがベッドの様だった。中央には焼けた岩が円形に置かれていて、そこが竈らしかった。燃えた灰や燠が燻っている。

「まあ、その辺に適当に座ってくれ」

そうナメシお父様が言ってナメシお父様の身に何が起きたのか教えてくれた。クルシュ高原の崖から落ちたナメシお父様は運良く川の滝壺に落ちたらしい。その衝撃で気絶したまま川を流され海辺まで流れピペット族に見つけられたらしい。
何故かピペット族はナメシお父様を助けて村まで運び介抱してくれたのだそうだ。

ナメシお父様が気付いた時には体中海藻に包まれ身動きが取れなかったそうだ。その海藻は身体の傷を癒し、栄養を与えてくれる物でピペット族が良く使っているものだった。ナメシお父様が気が付いた後に村の長老(出迎えてくれた小柄なシーマーマン)が来て、片言の人族の言葉で教えてくれた。

どうにもピペット族では逃げるしか無い魔物が村の奥の森からやって来て村人を餌に襲っていた。そこでナメシお父様に退治をさせる為に助けたと言う事だった。長老は呪術師でナメシお父様に縛りの呪術を掛けたらしい。隷属まで行かないけれど長老から遠く離れると動けなくなる様な呪術だった。

既に海藻でぐるぐる巻にされていたナメシお父様は村を襲う魔物退治を引き受けた。食事をして体力を回復して万全になった所で長老の指示で村にやって来た魔物と対峙した。

その魔物は2つ首のフォレストウルフの様だったけど脚は6本もあるし、尻尾は体長程長かった。とても普通とは思えない魔物だった。戦えないピペット族の代わりにナメシお父様が修理した槍で丸一日戦い通してやっと討伐した。

かなりの激戦で倒した後にナメシお父様も寝込んでしまう程だったらしい。異形のフォレストウルフは解体されてその皮は鞣され長老の家に敷かれているらしい。床いっぱいに広がっていて今は長老の、お気に入りらしい。肉以外の骨や内臓などの部分は海に帰されて肉は村人に平等に振る舞われたらしい。

寝込んでいたナメシお父様は食べていなかった。最も人族は魔物の生肉なんて食べたら病気になる。亜人だからこそ出来る事だろうと思う。ピペット族の大敵である魔物を倒した事でお父様は村に留まる事になった。また、いつ魔物に襲われるかも知れなかったからだった。

そして重大な事にナメシお父様は滝壺に落ちた衝撃で記憶を失っていた。自分がどこから来たどんな名前の人間かも忘れてしまっていたのだった。でも戦いに付いての記憶は失わず、守りを固める為に海の水を引き入れた堀を作り防衛に努めた。それでも、数年後に長老が亡くなってからはピペット族の言葉を言葉を覚えるに連れて話す相手の無い人族の言葉を忘れてしまったのだ。

長老が亡くなってピペット族はナメシお父様を当てにするようになったから新しい長老として村人を率いていた。食料は海と森から得ていたけど最近歪な魔物や魚が増え、まともな食料を得るために濫瀧の迷路ダンジョンまでやって来ていたらしい。普通、ピペット族は森に滅多な事では入らなかったけどナメシお父様と言う戦力を得て入れる様になった。それ故の食料調達だったらしい。

今回、僕達に囲まれて倒された事でショックを受けて記憶を取り戻したとナメシお父様は言った。
一通り聴き終えてザインが言う。

「お前も苦労したな」

「ああ、どうやらそうらしい。で、お前達は?」

それからザインがナメシお父様がクルシュ高原の崖から落ちてからの経緯を話す。ザインも仲間の筈だったヴァーザから見放されて死にそうだったけれどナメシお父様がくれたポーションで生き延びる事が出来て、ウィードラドの街に戻ったら『希望の光(アスカティア)』に依って死んだ事にされていた事。そのせいで一時、冒険者を止めていた事。再び冒険者になってから最近ブルクに助けられてパーティに加わった事を話した。

「アカスは元気か?」

何も知らないナメシお父様の言葉が僕に辛い思い出を思い起こさせた。僕の歪んだ顔を見て察したのかナメシお父様がいざり寄って肩を掴んで言った。

「どうした?何があった?」

僕は俯きながら少しづつ話した。
ナメシお父様が死んだと聞いてからアカスお母様が臥せる様になり、薬もポーションも買えずに1年後には亡くなった事。
それから妹のラスと一緒に孤児院に預けられた事。
ラスがバルバルディア王国のマシナ•ライアー子爵に養子に引き取られたけど、今は何故かウィンディア伯爵家に引き取られている事。
10歳になって足が不自由なまま冒険者になった事。
ダンジョン崩落の闇の近くの森で運悪く豚鬼王オークキングに出会って両足を失い死線を彷徨ったけど死ななかった事。
軍神の息吹パーティのノベムと言う元錬金術師の力を借りて両足やダメージを受けた身体に魔道具を埋め込む事で何とか冒険者をやれている事。

また、ノベムの調査でアカスお母様が死んで居なくてもしかしたらヴァーザに死霊術で攫われてバルバルディア王国ゾーン•ダメダ•パルディア公爵の元に匿われて居るかも知れない事を話した。ナメシお父様はパルディア公爵の名前を出したら物凄い形相になった。

「あいつ!許せん!」

とっても怖かったから僕は話を変えた。

「ノベムのお陰で分かったけど自分たちがバルバルディア王国の元貴族だったんだね」

怒りが引っ込む程にナメシお父様は目を白黒させて顔を背けてから、僕に頭を下げた。

「すまん、ブルク。10歳になったら話すつもりだったんだ。バルバルディア王国とは距離を取ったし、アカスと駆け落ちをする時に国王ローエンとも話したんだ。」

バルバルディア王国の王様とナメシお父様は知り合いだったなんてびっくりな話だった。男爵と言えど貴族を捨てて他国に逃げれば死ぬまで追っ手が出るらしい。

「アカスティアがゾーンに横恋慕されていた事を知っていたから俺に同情していたんだ。だから苦肉の策として俺とアカスティアを駆け落ちとして見逃す代わりに追手を出さない事にして貰ったんだ。追手なんか出たらゾーンに居場所が知られちゃうからな。」

国王ローエンはナメシお父様と学園での友人だったらしい。その伝手で王国で近衛師団に就いていたみたいだ。そりゃあ凄いスキャンダルだよね。追手を出さない様に特赦と言う手段が取られたらしいよ。お陰でナメシお父様とアカスお母様はル・シェール神聖国に逃れ隠れる事が出来たんだとか。

話の蚊帳の外に置かれたエレとレーアは簡単な自己紹介をして終わったけどエレの故郷のの事でナメシお父様から衝撃的な話があった。

「あーエレだっけ。君の村に”勇者”居ないか?」

勇者とは世界が終焉を迎える時に世界を滅ぼす者から人々を護る者の事だ。常人を超えた力を持ち仲間と共に迎え撃つのだ。世界を護る事から神の代理人とも言われる存在だ。

「何故?たぶん居ないわよ」

「あーこれ言っても良いよね。エレって精霊ウィンデーネの血を引いてるみたいだからさ」

「!、なんの事?」

ナメシお父様の言葉にエレだけでなく皆がびっくりしてエレが聞き返した。

「あれ、自分で分かんないかなあ。このピペット族の村で暮らしたせいか精霊の気配みたいのが分かるみたいでさあ。」

みんなはエレとナメシお父様とのやり取りを聞いていた。

「森の魔物の変異がさあ、精霊の変質のせいみたいで、邪精霊みたいのが分かるんだわ。そいつらもついでに討伐してたんだけどね。その感覚からエレから精霊ウィンデーネって分かるってかさあ。水魔法が矢鱈と強くなってたりして無い?」

エレが秘密にしていた事を言い当てられたと言う顔をしたんだ。伝承では確かにナメシお父様の言う通り精霊ウィンデーネは水精霊の最高位の精霊で勇者を支えた精霊と言われているのだ。

「そ、それでわたしが精霊ウィンデーネの子孫って言う事なの」

「そ!精霊ウィンデーネには勇者が付き物だからさ。同じ村に勇者が居たんじゃないかと思うんだよね。同い年の友達って居ない?」

「だ、だとしても最近水魔法が強くなって来ただけよ。それに・・・同い年のと言ったら・・・アラン?まさかぁ」

久しぶりにエレの口からアランの名前が出て来た。

「まぁ伝説によれば『勇者剣グランソード』を掴む事で覚醒するらしいけどな」

戸惑いを隠せないエレが考えながら言った。

「そんな物がオノコ村にあるなんて聞いたこと無いわよ」

「ああ、あんまり知らんのな。『勇者剣グランソード』のある聖域は精霊ウィンデーネが指し示すらしいぞ」

いきなり大層な事を言われてエレもびっくりだ。

「とにかく、あたしにはそんな力なんて無いわよ。特別な力と言ったらレーアのほうが凄いわよ。まるで伝説の『聖女』様みたいだって思ってるもの」

照れ隠しなのかエレが自分に向いた矛先をレーアに向ける。ナメシお父様がレーアを上から下までジロジロ見るとスタイルの良いレーアが身動ぎして胸を両手で隠した。

「う~ん、特に精霊とか憑いて無いぞ」

ナメシお父様は別にいやらしい目で見ていた訳では無かった。

「伝説の『聖女』に精霊が憑いているなんて話は知らんな」

ザインが言うとナメシお父様も言った。

「俺も知らん」

あまりに呆気なく言うのでみんなに笑いが起きた。冗談を言った訳じゃ無いけどナメシお父様にはそんな天然なところがあった。

「さて、話もおおよそ着いたからメシにしよう。みんなは此処で待って居てくれ」

そう言ってナメシお父様は外に出ていった。確かに話し込んでしまったから昼も過ぎて外は薄暗くなっていた。ナメシお父様が出ていくのをじっと見詰めていたザインがそっと息を吐いた。

「嘘は言って無かったようだ。」

その言葉にザインはナメシお父様を少し疑っていたようだ。僕は腹がたったけど思い直した。確かにあれだけの戦いをする敵対行為をしたのだから本人だとしても疑って掛かるべきだったのかも知れない。僕はナメシお父様を見て直ぐに心許してしまったけれど。

「邪気みたいなのは感じられませんでしたよ」

レーアが回復職らしい事を言った。

「あの人がブルクのお父ちゃんねぇ」

エレは色々知らない事を言われてナメシお父様の事を感心したようだった。

「間違い無いです、ザイン。本当に記憶を無くしていたんだと思います。」

僕の言葉にザインも頷いて言った。

「そうだな。少し雰囲気が変わったが昔のナメシだった。」

「でも、これからどうするんでしょうね」

レーアがザインに聞く。なんの事だろうと僕が思っているとエレも頷いていた。

「そうね、ナメシさんは私達と一緒に此処を出ていけるのかしら」

僕はてっきりそうするものだと思って疑って無かった。ナメシお父様が居ない間に家族はバラバラになってアカスお母様もラスもバルバルディア王国にいるんだから迎えに行かない訳が無い筈だ。

「まぁ、罠では無いだろうからナメシの判断を待とう」

そう、ザインが結論付けて言った後にナメシお父様との戦い形にみんなの論評を加え始めた。お互いに戦い形を褒め合っているとナメシお父様が戻って来て言った。

「さあ、祝宴だ!」


















    
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