無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。

きゅうとす

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冒険者Dとダドンの街

塩漬け案件1ー森の中ー

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森を少し行くと荷馬車があり、近くにアランが立っていた。
俺=ゾットが近づくと気が付いたのかこちらを向いて怪訝な顔をする。

「あれ?ザーザイ達が来るんじゃ無かったのか?」
ザーザイ達とはさっき俺が殺した3人組の事だ。

「いや、俺に代わった。ザーザイ達は戻ったよ」

俺の言葉にアランは
「またかよ、あいつ等さぼり過ぎじゃねえのか?」
と愚痴る。

「いや、良いんだ。オレンに言われて代わったからな」
と俺が庇うと「へー」とアランは気のない返事をした。

「それよりまだ来ないのか?」
と聞くと「そろそろの筈だ」とアランは答える。
それが証拠に森の暗がりから荷馬車と数人の男達が現れた。

アランが手を上げて合言葉を言う。

「砦待ち」
男達の一人が答えを返す。

「街並みの砦」
元より知っている顔なのかアランがホッとする。
男の視線が俺=ゾットに向いて怪訝な顔をした。それに気が付いたアランが俺の代りに答えた。

「ゾットさ。砦の料理人だよ、モートンさん」
「成程」とモートンが納得したようだ。
そして続けて言った。

「いつも通り食料と日曜消耗品だ。確認してくれ」
アランと俺=ゾットはお互いに頷いて、男達が囲っている荷馬車に近付いた。すると荷馬車から少し後ろに身体の大きな男が立っていた。
アランは気にも止めずに荷馬車に入ってモートンから受け取った紙を見ながら見分している。

俺=ゾットは男から目が離せなかった。男は冒険者と言うより兵士のような鎧を着ていた。全身を覆う様な正式な物ではなく急所だけを覆う簡易な物で、兜も無く無骨な顔を晒していた。
可もなく不可もない平均的な顔立ち。どちらかと言うと俺の顔に近い。威圧されている訳でも睨まれている訳でも無いのに悪寒が走る。
ヤバイ、こいつは絶対にヤバイ。
俺と言うよりゾットが怯えている。俺はゾットの記憶と姿かたちを借りているだけだからゾットの意思なんて無いのにゾットの意識が怯えているのだ。こいつには敵わないと。

「ゾットぉ~、何やってんだよ。手伝えよ!」
アランが俺=ゾットの気持ちも知らずに苛立つ。

「ああ、すまん。貸してくれ」
と言ってアランの手からリストを渡され、見分を手伝う。

男の事を頭から振り払う様に熱心に見分する。得に間違いは無いようだ。アランも同じようでホッとしている。
モートンもこちらが持ってきた武器を見分し終えた様だった。

アランも共にモートンとお互いに問題ないと確認していると先程の男が近寄って来た。
俺=ゾットが思わず身を引いてしまう。

「私の名はクレイシア。副街長に雇われた者だ。失礼だが、貴方は?」
と俺=ゾットに声を掛けてきた。少し緊張して答える。

「俺はゾット、料理人だよ」
クレイシアは眉を顰めてさらに言った。

「貴方の身のこなしは料理人とは思えない。」
すると蚊帳の外に置かれたアランが口を出す。

「何が気に食わねえのかわかんねえけどゾットは料理人だよ。但し、元騎士だけどな」
それでも納得出来なかったのかクレイシアは

「失礼した。何故引退を?」
と更に問い掛ける。こんな所で問答したくないので告白する。

「オレン達と一緒に騎士を抜けて来たんだかこの傷のせいで戦いからは身を引いたんだよ」
と俺=ゾットは左腕を捲って見せる。
そこには肘まで届く長い傷が有った。それを見てやっとクレイシアは納得したようだ。

「野暮な事を聞いて済まなかった」
と謝る。

「良いって事よ。それよりあんた凄腕だな。この俺が怯えたぜ」
とクレイシアの実力を褒める。

「いや、まだ修行中の身だ。」
と言って荷車の方に戻って行った。

見えない冷や汗を搔いた俺は深く息を見えない様に吐いた。
これは計画を断念するしかねえな。あわよくば副街長の所まで忍び込んで不正の証拠でも掴んで強請ってやろうと思ったがクレイシアみたいな強い男が雇われている様では無理だと分かったからだ。ここは大人しく身を引くしかないだろう。

俺達が見ている前でモートン達は武器の積まれた荷馬車を引いて道を帰っていった。
アランが帰ろうと言うのでアランの荷馬車の御者を任せて、荷馬車に乗る。

暫くしてそっと荷馬車から降りて森の中に隠れ、見えなくなってから俺はギリに『無貌』のスキルで姿を変えた。

そして、来るときに来た道を目指して森の中を進んだ。
余り早いとクレイシア達の荷馬車に追いついてしまうから森の中の滝まで戻って時間を潰す。

今頃アランは城塞の状態を見て驚いているだろう。
機に敏感ならあるだけの金を持って何処かに逃げるだろう。
恐らく俺が冒険者ギルドに報告してギルドが確認の人員を派遣する頃には生きている者は居まい。

朝方に俺=ギリは街に戻った。そして俺は元の姿で冒険者ギルドに報告に行ったのだった。

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