無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。

きゅうとす

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冒険者Dとダドンの街

とんずら

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◆◆ゴルバカ視点◆◆
くそっ、くそっ、くそうー
腸が煮え繰り返りのと胸の痛みを我慢して儂は立ち上がった。

あのスイッチがアンナの所にあるとアンナに近づけないのはもう諦めるしかあるまい。だが、あのDとかいう冒険者には意趣返ししないと腹の虫が収まらない。

それにはまず、クレイシアを見つけなければ。
儂は痛みを我慢しながら大声を上げた。
「誰か居ないか!」

儂の声を聞いた誰かがドア越しに近づいて来るのを待った。
自分の吐瀉物が臭い。


◆◆ビクン視点◆◆
気がつくとベッドに拘束されていた。
あれ?あれ?
なんでだ?

ガチャガチャしていると足元に鍵が見えた。

拘束は手だけなので何とかして足で手まで持ってこないと!
体を曲げて足の指で掴もうとするがなかなか上手くいかない。
作業を続けながら自分に起きた出来事を反芻する。

そうだ!何か大きな音がしたと思って外を覗いたらでかい龍が居たんだ!
思わず隠れたら今度は厳つい男が現れて殴られて・・・

良くわからないが悪行の付けが回って来たのかも知れない。
そう思っていると胸の違和感に気がついた。
何時も感じる胸に仕込まれた魔導具の圧迫感が無い。

体を起こして足で引き寄せた鍵を何とか手で掴み、片側の拘束を外した。片方が外せればもう片方も簡単だ。
自由になった両手で胸を触り、魔導具がやっぱり無くなっているのを確認して思わず叫んだ!

「やった!やったぞぉー」
あの魔導具さえ無ければここにいる意味は無い。理由なんてどうでも良い。
王都の父、街長のマクレガー•モンタル男爵の屋敷に逃げよう。
俺が人質になっていなければ父上も実権を取り戻すに違いない。

そう思って何気なくベッドの近くのテーブルの上を見ると乱雑に書類が置いてあった。
手にした書類を斜め読みして驚愕した。

それはゴルバカ・トンマーの不正や悪事の記録だった。


◆◆アンナ視点◆◆
気がつくと薄く朝日が差し込んでいた。
んん~
ベッドの上で伸びをしてはたと気がつく。
あれ?いつの間に自室に戻ったんだっけ?

思い出した。
Dに助け出されたんだ。とっても甘い夢を見たような気がする。

3年ほど前の嫌な思い出さえ色褪せてしまうような幸せで甘美な夢。
心に刻まれた狂気と心をすり減らされそうな恐怖から守るために無意識に生み出した防波堤を無くして、身も心も全てを任せて、委ねて、甘えらるとても幸せな夢を見た。
エッチな行為をして誤魔化すのではない心からの幸せと喜びを感じた。

過去の亡霊は今尚存命だろうけどその傷心を誤魔化す為になった冒険者ギルドの受付嬢と言う仮初の身分で逃げた。お父様の縁を頼って王都からも離れたくてこのダゾンの街に来たのだ。
それまでとは全く違う市井の暮らしも一年もすれば慣れ、代わりに生まれたような寂しさを埋め合わせるかのように男漁りもするようになった。

ようやく受付嬢としての生活を卑下することもなくなった所に現れた冒険者D。
塩漬け案件が増えるに連れて寂れていく街と蔓延る不正と治安の悪化。
冒険者離れが進んで更に、依頼の減少。
A級冒険者などがやってくる街では無くなった。

そう言えばゴルバカ•トンマーが副街長になってから街がおかしくなったと冒険者ギルドマスターが言ってた事があったのを思い出した。あたしが2年程前にダゾンの街に来た時には居た様な気がする。
ゴルバカ•トンマーの事を思い出して寒気がした。元々興味は無かったが目の前にして更に嫌悪感を感じた。
位上高な物腰と変に腰の低い喋り方、笑い声はとても生理的に受け付けられなかった。

両腕で身体を抱くと寒気がしたのでベッドサイドの上着を羽織ると、テーブルに何かあった。
小さな四角い箱のような魔導具と手紙だった。
読むとDからだった。
ゴルバカからアンナを攫うのを複数に見られ襲われる恐れがあるのでこの街を去ること、魔導具はアンナの身をゴルバカから護る為の物だからゴルバカが視界に入ったら押すことが書かれていた。ついでにゴルバカの仕業と思われる事が合っても押して良いともあった。

急に不安が襲ってきた。
Dが居なくなる?そう考えた途端に身震いが出た。

軽口を叩き、自分を抱いた男。
A級冒険者を名乗る傲岸不遜な男。
なのに一緒に過ごすのが自然で楽しく力になりたくなった男。
この身を抱いた男は居たけどそんな気分になった男は居なかった。

頭を振って、身支度を始めた。先ずは、冒険者ギルドに行こう。
Dの行き先のヒントが見つかる筈だ。
絶対に逃さない!あたしをこんな気持ちにさせておいて何処かに行くなんて!


◆◆受付嬢マリリン視点◆◆
アンナを助けると言った冒険者Dを市庁舎まで案内したがお金を掴まされて返されたマリリンは冒険者ギルドまで戻った。
夜勤でもあるがとても休める気分では無かった。
薄明るいギルド内で残りの書類を片付けながら早くギルドマスターが帰ってくる事を願っていた。頼れるのは彼しか居なかった。

真夜中の誰も居ないギルドに冒険者Dがやって来た。

「Dさん!」
思わず叫び、カウンターからDに駆け寄った。

Dはマリリンを認めると口を開いた。
「アンナは無事だ。さっき自宅に送り届けてきた。」

その言葉に安心して腰が抜けそうになる。
「良かった・・・本当に良かった。」

涙ぐんでいることに自分で気づいて手で吹き飛ばし、恥ずかしさに笑う。
「で、俺はここを出る。」

Dの言葉にマリリンは緊張した。何か不味いことがやっぱりあったのだろうか。その様子を見たDが笑って言った。

「アンナに迷惑を掛ける訳にはいかないからな」
少し、妬けてしまう。

マリリンには止める権利は無い。只、アンナが可愛そうな気がした。
自然に口を付いて出たのは

「何処に行くつもりですか?」
と言う言葉だった。
少しDは考えて言った。

「ラザンバから来たからその先だな。」

ラザンバ、ダドンときたならその先は・・・・そして、更にその先は?
考えている内にDは身を翻して背を向けながら言った。

「アンナをよろしく」

颯爽と冒険者ギルドを出ていく冒険者Dを見送りながらマリリンは眇になった。その表情は気の優しい受付嬢では無く、何かを疑う底知れぬ何かだった。



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