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冒険者Dの道行
足跡
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調べれば調べるほど訳が分からない。
それがアンナの本音だった。
Dはラザンバの前はクルヘッドと言う東の辺境の街に居たらしい。傭兵が多く、隣国との諍いの多い場所だった。隣国トルネン公国からの侵略を防いでいるバチェット伯爵領の最前線だ。荒くれが多い街と聞いていた。
そこでDは冒険者ギルドの依頼をこなすより傭兵仲間と暴れまわっていたようで、具体的に何をしていたのかは定かではない。
ラザンバの街では冒険者ギルドに顔は出したが依頼を受けていなかった。うらぶれた安宿に逗留してふらふらしていただけのようだ。ラザンバの街はダゾンと同じリヒャルト領にあった。Dはクルヘッドで稼いた金で娼館などに入り浸っていたようだった。他に情報は無かった。
クルヘッド、ラザンバに行きDの噂話を実際に聞いて見たが特に活躍した訳でもなくめぼしい話は聞けなかったが、つるんだり関係を持った者達の評判は悪くなかった。
気安いし、金払いも悪くなく、酔っての乱暴も無い。出世するように見えないのはどこでも同じだったようだ。
クルヘッドの前は何処から来たのか辿れなかった。
行き先も不明ではあるが東から西に移動して来ているならダドンの街を過ぎたその先は王都になるだろう。
マリリンも王都に行くと聞いた訳でもないのではないはっきりしていない。
でも、いずれ王都に姿を見せる可能性はあるとアンナは睨んだ。
冒険者の情報は冒険者ギルドにいると手に入りやすい。だからアンナは王都への転勤をダゾンのギルドマスターに願い出たのだ。
ギルドマスターは渋った。王都の冒険者ギルドの受付嬢のレベルは高いがアンナの能力なら問題はなかった。ただ、アンナの後釜が不足していることにいい顔をしなかったのだ。しかもアンナはギルドマスターの親友の頼みで預かった娘でもある。
でも、アンナが提示してきた手段はギルドマスターも認めるしかなかったようで最終的には頷いたのである。
そうしてアンナは王都に向かうことになった。
途中の村や町でも冒険者Dの姿は無かったが噂話は聞けた。
ある村で吸血鬼を討伐したとかある町で浮浪者を助けて賞金首を退治したとかいう話である。
村の名前は分かったので遠回りになったが直接聞きに行けば既に冒険者Dは居なく、かんばしい情報も無かった。
町に行けば当の浮浪者も冒険者Dの姿も無く、無駄骨になった。
冒険者Dは気ままに冒険者ギルドや傭兵ギルドに顔を出したり、新人冒険者の指導をしたりしているらしい。
聞くのはだらし無い性格と金払いの良さと気さくさばかりである。悪い噂話聞くことが無いが品行方正と言う訳でもなく、娼館では有名だったりするのだ。アンナは忌々しさを感じながらもDらしいとも思ってしまう。
アンナはハサイエル侯爵の長女である。3年ちょっと前のある事件から追放の様な扱いを受けていたが今回実家に戻ることにした。
領地はダドンの街があったリヒャルト領と王都を挟んだ反対側にあるが王都の邸宅に父親に会いに行ったのである。父親は王都で宰相の地位にあり、少なからぬ力を持っている。
ダドンの街の冒険者ギルドを辞めることにも関連して父親ブリエ•ハサイエル侯爵に頼み事をする積りなのだ。
幸いにしてアンナが到着した晩に王城より父親が帰って来た。仕事で忙しかった筈であるがアンナが久しぶりに顔を見せたと聞きつけ、戻ったのである。
◆◆ブリエ•ハサイエル視点◆◆
執務室で父親として応対したブリエはアンナを見て安心すると共に悟った。女の顔になっている。
宰相として別ルートからダドンの街で起きた事を聞き及んでいた。冒険者ギルドマスターは古くからの友人で信頼するに値する男だったが、あの街に行かせるのでは無かったとも思った。
だから、アンナから出された提案を飲む事にしたのだ。手元に置いて毒虫がたからない様にしたいと思ったのである。
放って置けばアンナは二度と帰って来ないような気がした。ますます、亡くなった母親に似てきたと思う。
言うだけ言って退室するアンナを見送ってブリエはため息をつく。
アンナから頼まれた冒険者Dなる男の身辺調査は王城より持ち込んだダドンの街の冒険者ギルドマスターからもたらされた冒険者Dの素行調査結果と重なった。ブリエはふと、3年前の事件を思い出していた。
あの時は冒険者ギルドを介してある冒険者にアンナの為に隠れて護衛を頼んだのだった。S級のとても優秀な男でアンナには何も気づかれなかったが3度のアンナへの襲撃を阻んだ手腕は見事だった。
どこか今回の冒険者と重なるところがあるような気がして後で調べようと思いながらブリエは仕事の煩雑さにそのことを忘れた。
ダドンの街の始末をつけないといけない事に意識を取られてしまったからだ。街長の職にありながら王都で暮らすマクレガー•モンタル男爵とその息子と会わなければならない。
その後に王に謁見して許可を得た後に王都軍騎士団長と膝詰めで計画を練らねばならない。
王都冒険者ギルドマスター主幹を呼び、アンナの件と冒険者Dなる者の身辺調査を依頼する必要があるだろう。
私邸に戻っても仕事漬けのブリエの夜はまだまだ終わらない。
それがアンナの本音だった。
Dはラザンバの前はクルヘッドと言う東の辺境の街に居たらしい。傭兵が多く、隣国との諍いの多い場所だった。隣国トルネン公国からの侵略を防いでいるバチェット伯爵領の最前線だ。荒くれが多い街と聞いていた。
そこでDは冒険者ギルドの依頼をこなすより傭兵仲間と暴れまわっていたようで、具体的に何をしていたのかは定かではない。
ラザンバの街では冒険者ギルドに顔は出したが依頼を受けていなかった。うらぶれた安宿に逗留してふらふらしていただけのようだ。ラザンバの街はダゾンと同じリヒャルト領にあった。Dはクルヘッドで稼いた金で娼館などに入り浸っていたようだった。他に情報は無かった。
クルヘッド、ラザンバに行きDの噂話を実際に聞いて見たが特に活躍した訳でもなくめぼしい話は聞けなかったが、つるんだり関係を持った者達の評判は悪くなかった。
気安いし、金払いも悪くなく、酔っての乱暴も無い。出世するように見えないのはどこでも同じだったようだ。
クルヘッドの前は何処から来たのか辿れなかった。
行き先も不明ではあるが東から西に移動して来ているならダドンの街を過ぎたその先は王都になるだろう。
マリリンも王都に行くと聞いた訳でもないのではないはっきりしていない。
でも、いずれ王都に姿を見せる可能性はあるとアンナは睨んだ。
冒険者の情報は冒険者ギルドにいると手に入りやすい。だからアンナは王都への転勤をダゾンのギルドマスターに願い出たのだ。
ギルドマスターは渋った。王都の冒険者ギルドの受付嬢のレベルは高いがアンナの能力なら問題はなかった。ただ、アンナの後釜が不足していることにいい顔をしなかったのだ。しかもアンナはギルドマスターの親友の頼みで預かった娘でもある。
でも、アンナが提示してきた手段はギルドマスターも認めるしかなかったようで最終的には頷いたのである。
そうしてアンナは王都に向かうことになった。
途中の村や町でも冒険者Dの姿は無かったが噂話は聞けた。
ある村で吸血鬼を討伐したとかある町で浮浪者を助けて賞金首を退治したとかいう話である。
村の名前は分かったので遠回りになったが直接聞きに行けば既に冒険者Dは居なく、かんばしい情報も無かった。
町に行けば当の浮浪者も冒険者Dの姿も無く、無駄骨になった。
冒険者Dは気ままに冒険者ギルドや傭兵ギルドに顔を出したり、新人冒険者の指導をしたりしているらしい。
聞くのはだらし無い性格と金払いの良さと気さくさばかりである。悪い噂話聞くことが無いが品行方正と言う訳でもなく、娼館では有名だったりするのだ。アンナは忌々しさを感じながらもDらしいとも思ってしまう。
アンナはハサイエル侯爵の長女である。3年ちょっと前のある事件から追放の様な扱いを受けていたが今回実家に戻ることにした。
領地はダドンの街があったリヒャルト領と王都を挟んだ反対側にあるが王都の邸宅に父親に会いに行ったのである。父親は王都で宰相の地位にあり、少なからぬ力を持っている。
ダドンの街の冒険者ギルドを辞めることにも関連して父親ブリエ•ハサイエル侯爵に頼み事をする積りなのだ。
幸いにしてアンナが到着した晩に王城より父親が帰って来た。仕事で忙しかった筈であるがアンナが久しぶりに顔を見せたと聞きつけ、戻ったのである。
◆◆ブリエ•ハサイエル視点◆◆
執務室で父親として応対したブリエはアンナを見て安心すると共に悟った。女の顔になっている。
宰相として別ルートからダドンの街で起きた事を聞き及んでいた。冒険者ギルドマスターは古くからの友人で信頼するに値する男だったが、あの街に行かせるのでは無かったとも思った。
だから、アンナから出された提案を飲む事にしたのだ。手元に置いて毒虫がたからない様にしたいと思ったのである。
放って置けばアンナは二度と帰って来ないような気がした。ますます、亡くなった母親に似てきたと思う。
言うだけ言って退室するアンナを見送ってブリエはため息をつく。
アンナから頼まれた冒険者Dなる男の身辺調査は王城より持ち込んだダドンの街の冒険者ギルドマスターからもたらされた冒険者Dの素行調査結果と重なった。ブリエはふと、3年前の事件を思い出していた。
あの時は冒険者ギルドを介してある冒険者にアンナの為に隠れて護衛を頼んだのだった。S級のとても優秀な男でアンナには何も気づかれなかったが3度のアンナへの襲撃を阻んだ手腕は見事だった。
どこか今回の冒険者と重なるところがあるような気がして後で調べようと思いながらブリエは仕事の煩雑さにそのことを忘れた。
ダドンの街の始末をつけないといけない事に意識を取られてしまったからだ。街長の職にありながら王都で暮らすマクレガー•モンタル男爵とその息子と会わなければならない。
その後に王に謁見して許可を得た後に王都軍騎士団長と膝詰めで計画を練らねばならない。
王都冒険者ギルドマスター主幹を呼び、アンナの件と冒険者Dなる者の身辺調査を依頼する必要があるだろう。
私邸に戻っても仕事漬けのブリエの夜はまだまだ終わらない。
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