無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。

きゅうとす

文字の大きさ
28 / 159
冒険者Dと王都

王都

しおりを挟む
王都の貴族街の程近くに不思議な屋敷がある。

以前は低位な貴族の屋敷だったが理由は不明ながら手放し、冒険者の物となったらしい。近隣に住む証人や貴族でさえそこの住人にあったことが無い。
しかし、時には夜になれば明かりが灯り、屋敷の周りの木々やかなり広い庭も手入れされている様に見えた。
時折、冒険者ギルドの職員の制服を着た女性が訪れたりするのを見かける。
唯一、屋敷の主人を見かけない不思議な屋敷なのだ。

その屋敷から久しぶりに人の声が聞こえた。
「ほら、ここで暫くは暮らせQT」

A級冒険者Dであった。
庭に出たQTが叫ぶ。
「わぁー広ーい」

QTが駆け回り庭の広さを体験しているのを遠くから庭師の老人が微笑ましそうに見ていた。

走り回って満足し、家の中に戻ったQTはこの屋敷に入って不思議に思った事を聞く。
「ねぇD、この家に誰も住んで無いの?」
「ああ、住んでないぞ。」

「でも、久しぶりに帰って来たんだよね?にしてはとっても綺麗だし、誰かに掃除とか手入れして貰ってるの?」
ソファにどっかりと腰を落ち着けているDに聞く
「いんや、人の手は借りてない。」

QTはDと話をしながらもあちこちを開けたり、覗いたり忙しく動き回る。
「のど乾いたね、あたしが何か入れて来ようか?」

ソファに座ったDの後ろからQTが声を掛けるが
「そうだな、何か飲みたいな」
とDが言うとソファの前のテーブルに2つ紅茶が現れた。

目を剥いて驚くQTを見てニマニマするD。
「ねぇ!今の何?Dのスキルかなんか?」

QTはDの反対側のソファに座って湯気を立てている紅茶に手を伸ばす。
両手で落とさない様にゆっくり持ち、啜る。
「美味しいー」

その姿を見て満足したのか種明かしをDはする。
「もう、出てきて良いぞ、チッチェ」

Dの言葉にソファの横にエプロン姿の女性が現れた。
「ハウスキーパーのチッチェですの。よろしくおねがいしますわ、QT様」

チッチェはふくよかな老婆でフリルの付いた白く可愛いエプロンをしていた。頭には同じような白い帽子を被っている。
「ふわぁ~びっくりした~」

QTの声にチッチェはにっこりする。
「チッチェは家幽霊シルキーとか言われる精霊なんだ。俺が居ない間の管理と家事を任せてる。」

DがQTに説明した。
「家や家具を大事にしないとチッチェに怒られるからな、気を付けろ」

ふざけたような口調だったが真剣味もあり判断に迷うQTだったがにっこりしたチッチェから圧力を感じたので本当の事だと思う。
「これからよろしくね、チッチェさん」

頷くチッチェは
「チッチェとお呼び下さいまし、では食事の用意を致しますね」
と言ってキッチンに普通に歩いて行ってしまった。
チッチェを見送ったQTに改めてDが視線を向ける。

「それでだ、お前のことだが・・・」
Dの話の途中でガランガランとドアが開く音がした。
そしてバタバタと足音が近づいて来て誰かがソファに座るDに飛び付いた。

赤髪のセミロングの何処かの制服を着た大柄の女性だった。
「やっと返ってきた!」

抱きつきながら頬をDにすりすりしている。QTは訳が判らずに頬を引き攣かせた。暫くそのままだったがやがてDがその女性に声を掛ける。
「ヨハンナ、それくらいにしてくれ。前を見てくれ、QTがびっくりしてるぞ」

ヨハンナと呼ばれた赤髪セミロングの女性がDから離れると服装を叩いて直し、QTに向かって口を開いた。
「ヨハンナ•セリーヌと言います。王都東地区冒険者ギルドの副ギルドマスターをしています。QTさんと仰ったかしら、よろしくね」

にっこりするヨハンナだがQTには油断しないぞという風に見えた。
体を包む軍服のようなカーキ色で赤いラインが胸の所で大きく盛り上がっている。思わずQTは自分の胸を撫でた。つるぺた•••負けたと思う。
「ちょうど良かった。ヨハンナの事をQTに話して置こうとしていたんだ。」

そしてQTのことをDは説明していく。 
貿易街ヨークゼンの浮浪者だったがDの手伝いをしたせいで夜の組織に攫われ、危険だったので王都迄連れてきた事。
ヨハンナに預けて仕事を見つけてほしいことを言う。

そこでQTは声を上げた。
「俺は冒険者になりたい。Dと一緒にパーティを組みたい!」

これは馬車の中で色々考えていた事だった。
「あーあのな、QT」
「それは無理ですよ、QTさん」

Dとヨハンナの声が重なる。Dとヨハンナは顔を見合わせてヨハンナが説明する。
「冒険者になるのは問題なさそうですがパーティを組むのは規程上出来ないです。DはA級冒険者なのでB級でないと出来ない事になってます。パーティを組むなら腕を上げないといけません。」
「連れて行ってやりたいのは山々だが、守りながら戦うのはきついからな。取り敢えず冒険者に限らずやりたいことを見つけろ。ヨハンナは顔が広いから頼りになるぞ」

落胆して頭を俯かせ、ソファに座り込んでしまったQTを慰めるかのようにDも声を掛けた。
「それからな、孤児だったお前の素性だが俺のスキルで判った事を教えてやる。」

そう言って驚いた顔を見せるQTにDは事実を告げた。

本名  キュート・テレジア・ハニー
16歳 女 通称QT スリ
固有スキル『まねまね』
一般スキル 『スリ』『逃走』『擬態』

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...