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王都のQT
アンナの事情
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「知らんがな」
そこに割り込んてきたのはDだった。いつの間にか帰っていたようだ。
1番の上座にどっかりと疲れたように座ると着座している面々を見て、アンナさんの所で目を剥く。
「ア、アンナ?!何で此処にぃー!」
思わず立ち上がり掛けているDにアンナさんは平然と答えた。
「キュウの友達ですもの」
確かにアンナさんは自分の友達として屋敷に招いた。ヨハンナさんにもチッチェにもそう説明したし、チッチェからDにもアンナさんとダリを招く事は伝えていた。
食事の時の野菜ジュースでなく、いつの間にかお酒に変わっていたエールに口を付けてアンナさんは平然と答える。
Dの驚きに不機嫌になるヨハンナさんがDを睨みながら言う。
「やっぱり、アンナを知ってるのね!どういうお付き合いなのか説明して貰おうかしらぁー!」
お、鬼が見えるとダリもキュウも思った。
わちゃわちゃしそうな雰囲気の中Dがあからさまに話を強引に変えた。
「実はQTの話が通った。」
ダリとアンナさんを気にしているところを見ると部外者と見ているようだ。
当たり障りの無い表現にしてぼやかしている。軽くため息を付くとヨハンナさんが口にする。
「そう?キュウには明日からD級の破軍の星パーティに戻って貰おうと思ってるのだけど。」
ヨハンナさんを見てDは続けた。
「それはまだ、構わないぞ。予定としては10日後ぐらいに設定するつもりだからな」
それから、ちらりとダリとアンナさんを見る。
「あー、面倒だ。ダリア•マルチネス!アンナ!お前らここから聞いてないことにしろ!」
「そこにいるQTだがな、本名をキュート・テレジア・ハニーという。10年以上前に事故で行方不明になったバーライト•ギサラキ•ハニー侯爵家の孫だ。」
Dがぶっちゃけた!!
ダリとアンナさんがあたしを本当なのかという顔で見る。だからあたしも頷いて見せた。本人的にもまだ疑問なんだけどね。
「バーライトとの面談が出来そうなんだ。向こうは本物かどうかをかなり疑っているんだがな」
QTの衝撃の事実を飲み込んだのかアンナさんが普通に戻って言う。。
「仕方ないんじゃない?バーライト叔父さんのところにはかなりの偽物が現れたらしいから」
アンナさんも事情を知っているらしく、近親者のように話す。
ダリはまだ口を開けて呆けている。
「そうなのか?・・・って、待て!アンナ、お前何もんだ?」
今更ながらDがアンナさんの身元を聞く。ぷくくとヨハンナさんが笑う。
「アンナ・ハサイエル、ハサイエル侯爵家のご令嬢よ。Dも知っていると思うけど3年程前に王家を揺るがす大事件があったでしょ。あのご当人らしいわよ。」
ヨハンナさんの説明にDがアンナさんを見る。その目は詳しく教えろと言っていた。
「個人的な事だからあんまり言いたくないけど、まぁDならいいっか。」
アンナさんがヨハンナさんやダリやあたしを見て、嘆息する。
「ぶっちゃけ、ゴードウィン王太子から婚約破棄されたのよ、あたし。」
重大過ぎて誰も声を出せない。
むしろQTの正体よりも衝撃的な事実だった。
「・・・確か、あの時10人程度の貴族が降爵させられたり、廃嫡されたりしたのよね。国家転覆罪に処せられた男爵令嬢も居た筈よ。」
ヨハンナさんの説明にアンナさんが補足する。
「あぁ、アントワーヌ男爵令嬢のことね。メリー•アントワーヌ男爵令嬢は当時、あたしという婚約者が居たゴードウィン•サリ•マジェント王太子殿下を誘惑したのよ。」
そこからアンナさんが詳しく話してくれた。
3年ちょっと前、いえ、メリーがマジェント王立学院に飛入り入学したのは4年前ね。何でも辺境に自分の子供がいることに気付いたクグツ•アントワーヌ男爵が王都に娘を呼び寄せて教育したところ、とても優秀で美しかった為にマジェント王立学院に入学させたと噂されていたわ。
ピンクブロンドの巻毛に濃い碧色の瞳は美しいというより可愛らしい容姿だったわ。あたしも平民と変わらない辺境出身の娘がどんなものなのか興味はあったわ。私の取り巻きの女子達も色々な噂を聞きつけて報告してくれたもの。
編入されたクラスはあたしやゴードウィン王太子殿下のいるSクラスだったの。途中からだったのに成績は優秀だったわ。弱かったのは国の歴史や文学、それから身嗜みだったわ。特に貴族としての振る舞いや慣習にはとても弱かったのよ。言葉遣いも悪かったし、謙譲語とかできなかったのよ。
最初はクラスの女子からは浮き気味だったからあたしも教えて差上げたわ。どちらかと言えば仲間外れに近い状態だったから気に留めてあげていたのよ。
あたしの近くにはゴードウィン王太子殿下もいたので話をしてあげたりしていたのに、あの娘ときたら。図々しくもあたしの目の届かない所でゴードウィン王太子殿下とふたりきりで会うようになったのよ。
婚約者のいる男子に、しかも身分の低いものが話しかけるとか、ありえないわ。幾ら貴族になったばかりでマナーを知らないと言えど見過ごせなかったのよ。
きっと、その頃のあたしはメリーが気に食わなかったのね。教えて差し上げる気持ちからくどくど文句を言うようになってたわ。ゴードウィン王太子殿下もその時は理解出来ていなかったけど、あたしから疎遠になっていたのよ。そんな寂しさもあったのかも知れないわ。
5歳の時に婚約者として求められていて、ずっと皇太妃となるべく教育を厳しく受けて、正式に婚約者となった10歳の頃からずっとゴードウィン王太子殿下を見てきたのよ。そりゃあ気安く摂することなんて出来るわけ無かったわ。未婚の婚約者同士、助け合って、励まし合って、理想を語り合ってきたのよ。
なのに「そなたと居ると気疲れする」とか言って欲しく無いわ。そんな言葉を掛けられるようになってからクラスの中がガラリと変わったわ。あたしの恩恵を受けようと取り巻いて居た女子が離れて、メリーの周りに殿下を初め、次代の者たちが取り巻きになって行ったのは。とてもおかしな雰囲気だったわ。
危機感を覚えたあたしはお父様に相談したわ。お父様は宰相ですもの、学院のおかしな雰囲気について調べてくれたわ。
「様子を見るように」と言われて、敵ばかりになってしまったクラスに過ごして半年弱経ったわ。そして、卒業の記念式典のパーティに殿下があたしでなくてメリーを相手にして参加すると聞いてパニックになったわ。
有りえないじゃない、あたしはゴードウィン王太子殿下の婚約者なのよ。
お父様に言ったらお兄様がエスコートして下さる事になって渋々参加したわ。
何か考えがあるらしいお父様とお兄様に諭されて悔しい思いを胸にあたしは卒業の記念式典に出席したわ。
そこに割り込んてきたのはDだった。いつの間にか帰っていたようだ。
1番の上座にどっかりと疲れたように座ると着座している面々を見て、アンナさんの所で目を剥く。
「ア、アンナ?!何で此処にぃー!」
思わず立ち上がり掛けているDにアンナさんは平然と答えた。
「キュウの友達ですもの」
確かにアンナさんは自分の友達として屋敷に招いた。ヨハンナさんにもチッチェにもそう説明したし、チッチェからDにもアンナさんとダリを招く事は伝えていた。
食事の時の野菜ジュースでなく、いつの間にかお酒に変わっていたエールに口を付けてアンナさんは平然と答える。
Dの驚きに不機嫌になるヨハンナさんがDを睨みながら言う。
「やっぱり、アンナを知ってるのね!どういうお付き合いなのか説明して貰おうかしらぁー!」
お、鬼が見えるとダリもキュウも思った。
わちゃわちゃしそうな雰囲気の中Dがあからさまに話を強引に変えた。
「実はQTの話が通った。」
ダリとアンナさんを気にしているところを見ると部外者と見ているようだ。
当たり障りの無い表現にしてぼやかしている。軽くため息を付くとヨハンナさんが口にする。
「そう?キュウには明日からD級の破軍の星パーティに戻って貰おうと思ってるのだけど。」
ヨハンナさんを見てDは続けた。
「それはまだ、構わないぞ。予定としては10日後ぐらいに設定するつもりだからな」
それから、ちらりとダリとアンナさんを見る。
「あー、面倒だ。ダリア•マルチネス!アンナ!お前らここから聞いてないことにしろ!」
「そこにいるQTだがな、本名をキュート・テレジア・ハニーという。10年以上前に事故で行方不明になったバーライト•ギサラキ•ハニー侯爵家の孫だ。」
Dがぶっちゃけた!!
ダリとアンナさんがあたしを本当なのかという顔で見る。だからあたしも頷いて見せた。本人的にもまだ疑問なんだけどね。
「バーライトとの面談が出来そうなんだ。向こうは本物かどうかをかなり疑っているんだがな」
QTの衝撃の事実を飲み込んだのかアンナさんが普通に戻って言う。。
「仕方ないんじゃない?バーライト叔父さんのところにはかなりの偽物が現れたらしいから」
アンナさんも事情を知っているらしく、近親者のように話す。
ダリはまだ口を開けて呆けている。
「そうなのか?・・・って、待て!アンナ、お前何もんだ?」
今更ながらDがアンナさんの身元を聞く。ぷくくとヨハンナさんが笑う。
「アンナ・ハサイエル、ハサイエル侯爵家のご令嬢よ。Dも知っていると思うけど3年程前に王家を揺るがす大事件があったでしょ。あのご当人らしいわよ。」
ヨハンナさんの説明にDがアンナさんを見る。その目は詳しく教えろと言っていた。
「個人的な事だからあんまり言いたくないけど、まぁDならいいっか。」
アンナさんがヨハンナさんやダリやあたしを見て、嘆息する。
「ぶっちゃけ、ゴードウィン王太子から婚約破棄されたのよ、あたし。」
重大過ぎて誰も声を出せない。
むしろQTの正体よりも衝撃的な事実だった。
「・・・確か、あの時10人程度の貴族が降爵させられたり、廃嫡されたりしたのよね。国家転覆罪に処せられた男爵令嬢も居た筈よ。」
ヨハンナさんの説明にアンナさんが補足する。
「あぁ、アントワーヌ男爵令嬢のことね。メリー•アントワーヌ男爵令嬢は当時、あたしという婚約者が居たゴードウィン•サリ•マジェント王太子殿下を誘惑したのよ。」
そこからアンナさんが詳しく話してくれた。
3年ちょっと前、いえ、メリーがマジェント王立学院に飛入り入学したのは4年前ね。何でも辺境に自分の子供がいることに気付いたクグツ•アントワーヌ男爵が王都に娘を呼び寄せて教育したところ、とても優秀で美しかった為にマジェント王立学院に入学させたと噂されていたわ。
ピンクブロンドの巻毛に濃い碧色の瞳は美しいというより可愛らしい容姿だったわ。あたしも平民と変わらない辺境出身の娘がどんなものなのか興味はあったわ。私の取り巻きの女子達も色々な噂を聞きつけて報告してくれたもの。
編入されたクラスはあたしやゴードウィン王太子殿下のいるSクラスだったの。途中からだったのに成績は優秀だったわ。弱かったのは国の歴史や文学、それから身嗜みだったわ。特に貴族としての振る舞いや慣習にはとても弱かったのよ。言葉遣いも悪かったし、謙譲語とかできなかったのよ。
最初はクラスの女子からは浮き気味だったからあたしも教えて差上げたわ。どちらかと言えば仲間外れに近い状態だったから気に留めてあげていたのよ。
あたしの近くにはゴードウィン王太子殿下もいたので話をしてあげたりしていたのに、あの娘ときたら。図々しくもあたしの目の届かない所でゴードウィン王太子殿下とふたりきりで会うようになったのよ。
婚約者のいる男子に、しかも身分の低いものが話しかけるとか、ありえないわ。幾ら貴族になったばかりでマナーを知らないと言えど見過ごせなかったのよ。
きっと、その頃のあたしはメリーが気に食わなかったのね。教えて差し上げる気持ちからくどくど文句を言うようになってたわ。ゴードウィン王太子殿下もその時は理解出来ていなかったけど、あたしから疎遠になっていたのよ。そんな寂しさもあったのかも知れないわ。
5歳の時に婚約者として求められていて、ずっと皇太妃となるべく教育を厳しく受けて、正式に婚約者となった10歳の頃からずっとゴードウィン王太子殿下を見てきたのよ。そりゃあ気安く摂することなんて出来るわけ無かったわ。未婚の婚約者同士、助け合って、励まし合って、理想を語り合ってきたのよ。
なのに「そなたと居ると気疲れする」とか言って欲しく無いわ。そんな言葉を掛けられるようになってからクラスの中がガラリと変わったわ。あたしの恩恵を受けようと取り巻いて居た女子が離れて、メリーの周りに殿下を初め、次代の者たちが取り巻きになって行ったのは。とてもおかしな雰囲気だったわ。
危機感を覚えたあたしはお父様に相談したわ。お父様は宰相ですもの、学院のおかしな雰囲気について調べてくれたわ。
「様子を見るように」と言われて、敵ばかりになってしまったクラスに過ごして半年弱経ったわ。そして、卒業の記念式典のパーティに殿下があたしでなくてメリーを相手にして参加すると聞いてパニックになったわ。
有りえないじゃない、あたしはゴードウィン王太子殿下の婚約者なのよ。
お父様に言ったらお兄様がエスコートして下さる事になって渋々参加したわ。
何か考えがあるらしいお父様とお兄様に諭されて悔しい思いを胸にあたしは卒業の記念式典に出席したわ。
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