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王都のQT

Dの戦い

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Dがゆっくりと割れた窓ガラスを踏み、庭に出ていく。
ちらりとあたしの方を見ると軽く頷く。きっと残った者達を守れと言うことだろう。

あたしも気を抜かず小声でみんなに部屋の隅へ避難するように言った後に一歩前に出て一応ショートレイピアを構えた。

Dが庭に出きるとゾラを中心に転んで居た女達がよろよろと立ち上がり、Dを囲むように移動する。ゾラはその後ろに少し離れて立った。どうやらゾラは女達にDを任せるようだ。
「クククッ、さっきは少し驚いたけど何のスキルかしらね。でもこれだけの人数に無駄じゃなくて?」

ゾラの挑発にDは無表情だったが、ジロジロと女達を見回して
「ふん、どいつもこいつも食指が乗らねぇ女どもだ!どいつからでも良いから掛かってきな!」

中指を立ててDが逆に挑発する。女大好きなDが悪態を付く程に女達は魔物めいていた。獣人と言うにはおかしな半蜘蛛人間もいる。まるで魔物と人間のハーフのようだった。馬鹿にされた事が分かったのか女達が各々低く唸り声を上げた。
「あたしはグレイラットのクロウ、グレイクロウ!」

一人が名乗りを上げると次々と名乗りを上げた。どうにも自己顕示欲が高いようだ。それぞれ違った獲物を腰に下げているが誰も無手が基本なようだ。
「あたくしはブラックスパイダーのクロウ、スパイダークロウ!」
「俺はマッスルオークのクロウ、オーククロウ!」
「あたいはべヴァーのクロウ、べヴァークロウ!」

グレイクロウを名乗った女はグレイラットの魔物のようなパンサークロウだった。背の高さはキュウと変らないがデブで腰に短剣を持っている。尻からネズミの尻尾を出している。

スパイダークロウを名乗った女は蜘蛛の姿半分の女だった。ブラックスパイダーの魔物のようなパンサークロウで腰にレイピアを2本差している。細面で背中の服の内側に何かを隠しているように見える。

オーククロウを名乗った女は背も高くオークのように逞しい女だった。マッスルオークの魔物のようなパンサークロウで変った形の籠手を武器にしている。不思議なことに牙が口から覗いている。

べヴァークロウを名乗った女はスカンクの魔物べヴァーのようなパンサークロウだった。茶髪が腰まで長く、太くて模様のある尻尾があり、体中にぶら下げたナイフを投げるようだ。

「この娘達はあたしの大事なクロウさ。舐めて掛かって欲しく無いね。」
ゾラが上唇をぞわりと舐める。
グレイクロウは油断している隙きにあたしが逃げ出せる程度な奴だけど、他のクロウは油断がならないと思う。

なのにDは頭を掻きながら尚も挑発する。
「全く、口上が長えんだよ!面倒だから纏めて掛かってこいや!!」

Dの言い草に頭に来たのかニヤけていたゾラの顔が引き攣り大鬼オーガのようになり、叫んだ。
「お前たち!やっておしまい!!」


最初に動いたのはスパイダークロウだ、口を開き糸を吐いた!何も持たず構えもしないDに向かって白い糸が広がり全身に絡みつく。粘着性があるのかべっとりと付き、Dの身動きを制限する。だが、Dは何もしない。
「変った芸だな。でも、面白みがないぞ!」

「抜かせ!」
スパイダークロウが怒りの声を上げ、束ねた糸を引いてDを引き倒そうとするので足を踏ん張って抵抗しながらもDは煽ることを止めない。スパイダークロウがべヴァークロウをちらりと見るとべヴァークロウがロングスカートを捲りあげ後ろを振り向き、手を地面に置き尻を高く上げる。フサフサの尻尾も天高く上がると尻からとんでもない音を立てて黄色い煙を噴出させた。

ブバババァー!ブファ!
あれは!きっとスカンクなどが出す“最後っ屁“だ!だが出たのは煙だけでなくなんか中身も出ている気がする!!
毒屁とされる“最後っ屁“は吸い込むと麻痺を起こすだけでなく身体に障害を残すこともある危険なものだ。

Dの姿は黄色っぽい煙に包まれ見えなくなってしまった。あんな体言を言っていたのに何もせずに危険な状態になったDに思わずあたしも叫んだ!
「Dぃー!!!」

視界の隅でアンナさんが頬に手を当てて目を見開いている!声も出ない程に引き攣った表情だ。
「ぐわわわ~」

煙の中からくもぐった声が上がった!あんなこと言ってたけどやっぱりDは・・・
「あ~あ、ありゃもう駄目だな」

そういうDの声は意外な所から聞こえた。ちょうどべヴァークロウの対面に居たオーククロウの居た場所だった。黄色っぽい煙が消えてDの姿が見えると同時に、スパイダークロウが捉えていた者の姿が見えた。それはオーククロウだった。
どうやったのかは分からないがべヴァークロウの“最後っ屁“はオーククロウを直撃していたのだ。しかもスパイダークロウの糸が絡んで身動きが取れない状態だった。
スパイダークロウとべヴァークロウが驚いて声も出せない。

「よしよし、ならこちらからも行くぞ!」
Dが何も無い場所から身の丈を超える巨大な両手剣を取り出して言った。






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