63 / 159
戦争と冒険者D
パンサークロウとDの出立
しおりを挟む
ブーンという音と共に壁に影のような物が映る。あの方だ。
あの方は用心深い。ゾラにさえその本当の姿を見せない。ただ、妙な親近感はある。それと同時に嫌悪感もだ。自分と似た気配、同族嫌悪というものかも知れない。
覚悟を決めてゾラが経緯を説明する。あの方の影は相槌もしないで揺れるばかりでその感情は推し量れない。
説明が終わっても暫く反応が無かった。ゾラの顔に冷や汗が滲む。強烈な叱責や嘲笑なら対応の仕方があるが無反応はいけない。あんなことやこんなことのあったかつての同僚の末路を思い浮かべて仕舞うではないか。
「やはり、そうなったか」
あの方の言葉は意外過ぎた。まるで結果を予測していたかのような返答だったからだ。そのため思わずゾラは言って仕舞う。
「あ、あの。お咎めは無しで?」
「・・・くくく。仕置きが欲しいか?ゾラ。お前の力でさえ敵わない相手だ。あの男の能力の一端でも知れて良しとしないとこちらにも被害が及ぶ。」
冷や汗を掻きながらゾラはホッとする。あの方がこんなに寛大な対応をするのは初めてだ。助かったという思いと共にあのDというA級冒険者の正体に疑念を感じる。
「DというA級冒険者をご存知なのですか?」
「・・・そうだな、これからもあの男と関わる事もあろう。少しだけ情報をやろう」
あの方はそう言って急に連絡を切った。ふぅと息を吐いて肩を落す。この秘密の拠点にはゾラ以外誰も居ない。ジルも別の場所で仕事を終えて待機している筈だ。
あの方は新しい拠点だろうが古い拠点だろうがゾラが居る拠点に必要なものを好きなときに送り付ける事が出来る。どんなスキルがあればそんな事が可能なのか全く分からないがそれが事実だ。何度驚かされた事か、身内である娘まで疑った事があったが背信の事実は全く無かった。
だから、必要な情報もあの方が必要な時に拠点に送り付けてくるだろう。ゾラがジルの居る拠点に戻ればきっと次の指示と共に送られてくるという確信があった。
◆◆D視点◆◆
どっかりとソファに座るとヨハンナがじろりと睨んで来た。俺にだけでなく隣に組み付いているアンナにも向いている。
何かを諦めたのかヨハンナがため息をついて口を開いた。
「王都のすべての冒険者ギルドに通達がありましたよ。最も内実を知っているのはサブマスタークラスまでですけど。暴れすぎじゃあないの、D」
俺は微かな笑みを浮かべて言った。
「ふふん、あんなもの大した事じゃない、問題はパンサークロウが王都でも根を張ってることさ」
「どういう事?」
「今までパンサークロウは地方の都市でしか活動の一端を見せる程度で殆ど表に出て来なかった。それがQTの件ではあれ程はっきり姿を見せた。これからは表立って冒険者ギルドに対立してくる可能性があるってことさ」
「え?何か依頼でも受けてたの?」
「まぁ、昔な」
言葉を濁す俺をヨハンナは眉を顰めて睨む。隣で俺を見上げるアンナが口を出す。
「もしかして、王家に何か頼まれてるの?」
なかなか感が良いな、アンナは。
「いんや、違うぜ」
俺は否定する。そう、王家なんぞには言われちゃあ居ねえ。
臭え話だが漢同士の頼まれごとだから貸しは無しにしたいだけだ。言っちゃあ、俺の自己満足ってやつだな。
まぁ、報告する相手は既に虫の息なんだが。
「何にせよ、QTに関しちゃあもう手ぇ出してこねえだろ。だから、俺も気になる事があるから王都を出るつもりだ。」
ヨハンナとアンナが同時に声を上げる。
「「え?」」
「まだ、暫くは王都に居るんじゃ無かったの?」
「何処かへ行くつもり?」
おいおい、アンナはともかくヨハンナは判ってる筈だかな。
「ああ、ちょっと気になる事があってな。アラドの奴らに会ってくる。」
「アラド?」
アンナが聞いてくる。ヨハンナは知ってるがアンナは知らないか。
「アラド兄弟。傭兵団『緋空旅団』のリーダーよ。」
ヨハンナが言うがアンナにはピンと来ないらしい。まぁ騎士団か傭兵団じゃなけりゃ知らんだろ。
「俺の昔の知り合いさ、聞くところによると北の方へ遠征してるってことだ。」
「じゃあ、その人達に会いに行くの?」
「ああ、アンナはついて来るなよ。」
いかにも不満そうにアンナが口を尖らせる。ヨハンナの眉も寄りっぱなしだ。ヨハンナもそうだがアンナだって仕事があるだろ。幾ら腰掛けだと言っても王都に来るにも無理したんだろ。それくらい分かる。
俺の言葉にアンナは考え事を始めた。
「いつ頃行くつもり?」
ヨハンナは俺を止められないのを知って聞いてくる。
「まぁ、ちょろちょろ話を通してから行くから5日ってところか」
「わかったわ。それまでは・・・」
ヨハンナが立ち上がり、アンナの反対側に座り身を寄せてくる。
「たっぷり可愛がって貰うわ」
ヨハンナの行動に気付いたアンナが反対側から胸を押し付けてくる。
「あたしも忘れちゃ嫌よ!」
まぁ、出掛けるまでは両手に花で楽しむことにしよう。疲れちゃあいるがスキルがあれば問題ない。たっぷり可愛がってやるさ。
◆ゾラ視点◆
思った通りジルが居る拠点に行くと奥の部屋のテーブルに知らぬ間に封筒が置いてあった。
何時もながら気配も感じさせないで誰が置いていくのか。
人払いをすることもなく椅子に座ってゾラは封筒の中身を読んで行く。
暫く夢中になっていたがやがて額に汗を流し始めた。
A級冒険者D・・・ゾラは太刀打ち出来るのだろうかと恐れを生まれて初めて抱いた。
あの方は用心深い。ゾラにさえその本当の姿を見せない。ただ、妙な親近感はある。それと同時に嫌悪感もだ。自分と似た気配、同族嫌悪というものかも知れない。
覚悟を決めてゾラが経緯を説明する。あの方の影は相槌もしないで揺れるばかりでその感情は推し量れない。
説明が終わっても暫く反応が無かった。ゾラの顔に冷や汗が滲む。強烈な叱責や嘲笑なら対応の仕方があるが無反応はいけない。あんなことやこんなことのあったかつての同僚の末路を思い浮かべて仕舞うではないか。
「やはり、そうなったか」
あの方の言葉は意外過ぎた。まるで結果を予測していたかのような返答だったからだ。そのため思わずゾラは言って仕舞う。
「あ、あの。お咎めは無しで?」
「・・・くくく。仕置きが欲しいか?ゾラ。お前の力でさえ敵わない相手だ。あの男の能力の一端でも知れて良しとしないとこちらにも被害が及ぶ。」
冷や汗を掻きながらゾラはホッとする。あの方がこんなに寛大な対応をするのは初めてだ。助かったという思いと共にあのDというA級冒険者の正体に疑念を感じる。
「DというA級冒険者をご存知なのですか?」
「・・・そうだな、これからもあの男と関わる事もあろう。少しだけ情報をやろう」
あの方はそう言って急に連絡を切った。ふぅと息を吐いて肩を落す。この秘密の拠点にはゾラ以外誰も居ない。ジルも別の場所で仕事を終えて待機している筈だ。
あの方は新しい拠点だろうが古い拠点だろうがゾラが居る拠点に必要なものを好きなときに送り付ける事が出来る。どんなスキルがあればそんな事が可能なのか全く分からないがそれが事実だ。何度驚かされた事か、身内である娘まで疑った事があったが背信の事実は全く無かった。
だから、必要な情報もあの方が必要な時に拠点に送り付けてくるだろう。ゾラがジルの居る拠点に戻ればきっと次の指示と共に送られてくるという確信があった。
◆◆D視点◆◆
どっかりとソファに座るとヨハンナがじろりと睨んで来た。俺にだけでなく隣に組み付いているアンナにも向いている。
何かを諦めたのかヨハンナがため息をついて口を開いた。
「王都のすべての冒険者ギルドに通達がありましたよ。最も内実を知っているのはサブマスタークラスまでですけど。暴れすぎじゃあないの、D」
俺は微かな笑みを浮かべて言った。
「ふふん、あんなもの大した事じゃない、問題はパンサークロウが王都でも根を張ってることさ」
「どういう事?」
「今までパンサークロウは地方の都市でしか活動の一端を見せる程度で殆ど表に出て来なかった。それがQTの件ではあれ程はっきり姿を見せた。これからは表立って冒険者ギルドに対立してくる可能性があるってことさ」
「え?何か依頼でも受けてたの?」
「まぁ、昔な」
言葉を濁す俺をヨハンナは眉を顰めて睨む。隣で俺を見上げるアンナが口を出す。
「もしかして、王家に何か頼まれてるの?」
なかなか感が良いな、アンナは。
「いんや、違うぜ」
俺は否定する。そう、王家なんぞには言われちゃあ居ねえ。
臭え話だが漢同士の頼まれごとだから貸しは無しにしたいだけだ。言っちゃあ、俺の自己満足ってやつだな。
まぁ、報告する相手は既に虫の息なんだが。
「何にせよ、QTに関しちゃあもう手ぇ出してこねえだろ。だから、俺も気になる事があるから王都を出るつもりだ。」
ヨハンナとアンナが同時に声を上げる。
「「え?」」
「まだ、暫くは王都に居るんじゃ無かったの?」
「何処かへ行くつもり?」
おいおい、アンナはともかくヨハンナは判ってる筈だかな。
「ああ、ちょっと気になる事があってな。アラドの奴らに会ってくる。」
「アラド?」
アンナが聞いてくる。ヨハンナは知ってるがアンナは知らないか。
「アラド兄弟。傭兵団『緋空旅団』のリーダーよ。」
ヨハンナが言うがアンナにはピンと来ないらしい。まぁ騎士団か傭兵団じゃなけりゃ知らんだろ。
「俺の昔の知り合いさ、聞くところによると北の方へ遠征してるってことだ。」
「じゃあ、その人達に会いに行くの?」
「ああ、アンナはついて来るなよ。」
いかにも不満そうにアンナが口を尖らせる。ヨハンナの眉も寄りっぱなしだ。ヨハンナもそうだがアンナだって仕事があるだろ。幾ら腰掛けだと言っても王都に来るにも無理したんだろ。それくらい分かる。
俺の言葉にアンナは考え事を始めた。
「いつ頃行くつもり?」
ヨハンナは俺を止められないのを知って聞いてくる。
「まぁ、ちょろちょろ話を通してから行くから5日ってところか」
「わかったわ。それまでは・・・」
ヨハンナが立ち上がり、アンナの反対側に座り身を寄せてくる。
「たっぷり可愛がって貰うわ」
ヨハンナの行動に気付いたアンナが反対側から胸を押し付けてくる。
「あたしも忘れちゃ嫌よ!」
まぁ、出掛けるまでは両手に花で楽しむことにしよう。疲れちゃあいるがスキルがあれば問題ない。たっぷり可愛がってやるさ。
◆ゾラ視点◆
思った通りジルが居る拠点に行くと奥の部屋のテーブルに知らぬ間に封筒が置いてあった。
何時もながら気配も感じさせないで誰が置いていくのか。
人払いをすることもなく椅子に座ってゾラは封筒の中身を読んで行く。
暫く夢中になっていたがやがて額に汗を流し始めた。
A級冒険者D・・・ゾラは太刀打ち出来るのだろうかと恐れを生まれて初めて抱いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる