無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。

きゅうとす

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戦争と冒険者D

パンサークロウとDの出立

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ブーンという音と共に壁に影のような物が映る。あの方だ。
あの方は用心深い。ゾラにさえその本当の姿を見せない。ただ、妙な親近感はある。それと同時に嫌悪感もだ。自分と似た気配、同族嫌悪というものかも知れない。

覚悟を決めてゾラが経緯を説明する。あの方の影は相槌もしないで揺れるばかりでその感情は推し量れない。
説明が終わっても暫く反応が無かった。ゾラの顔に冷や汗が滲む。強烈な叱責や嘲笑なら対応の仕方があるが無反応はいけない。あんなことやこんなことのあったかつての同僚の末路を思い浮かべて仕舞うではないか。

「やはり、そうなったか」
あの方の言葉は意外過ぎた。まるで結果を予測していたかのような返答だったからだ。そのため思わずゾラは言って仕舞う。

「あ、あの。お咎めは無しで?」
「・・・くくく。仕置きが欲しいか?ゾラ。お前の力でさえ敵わない相手だ。の能力の一端でも知れて良しとしないとこちらにも被害が及ぶ。」

冷や汗を掻きながらゾラはホッとする。あの方がこんなに寛大な対応をするのは初めてだ。助かったという思いと共にあのDというA級冒険者の正体に疑念を感じる。
「DというA級冒険者をご存知なのですか?」
「・・・そうだな、これからもあの男と関わる事もあろう。少しだけ情報をやろう」

あの方はそう言って急に連絡を切った。ふぅと息を吐いて肩を落す。この秘密の拠点にはゾラ以外誰も居ない。ジルも別の場所で仕事を終えて待機している筈だ。
あの方は新しい拠点だろうが古い拠点だろうがゾラが居る拠点に必要なものを好きなときに送り付ける事が出来る。どんなスキルがあればそんな事が可能なのか全く分からないがそれが事実だ。何度驚かされた事か、身内であるクロウまで疑った事があったが背信の事実は全く無かった。
だから、必要な情報もあの方が必要な時に拠点に送り付けてくるだろう。ゾラがジルの居る拠点に戻ればきっと次の指示と共に送られてくるという確信があった。


◆◆D視点◆◆
どっかりとソファに座るとヨハンナがじろりと睨んで来た。俺にだけでなく隣に組み付いているアンナにも向いている。

何かを諦めたのかヨハンナがため息をついて口を開いた。
「王都のすべての冒険者ギルドに通達がありましたよ。最も内実を知っているのはサブマスタークラスまでですけど。暴れすぎじゃあないの、D」

俺は微かな笑みを浮かべて言った。
「ふふん、あんなもの大した事じゃない、問題はパンサークロウが王都でも根を張ってることさ」
「どういう事?」
「今までパンサークロウは地方の都市でしか活動の一端を見せる程度で殆ど表に出て来なかった。それがQTの件ではあれ程はっきり姿を見せた。これからは表立って冒険者ギルドに対立してくる可能性があるってことさ」
「え?何か依頼でも受けてたの?」
「まぁ、昔な」

言葉を濁す俺をヨハンナは眉を顰めて睨む。隣で俺を見上げるアンナが口を出す。
「もしかして、王家に何か頼まれてるの?」

なかなか感が良いな、アンナは。
「いんや、違うぜ」

俺は否定する。そう、なんぞには言われちゃあ居ねえ。
臭え話だが漢同士の頼まれごとだから貸しは無しにしたいだけだ。言っちゃあ、俺の自己満足ってやつだな。
まぁ、報告する相手は既に虫の息なんだが。

「何にせよ、QTに関しちゃあもう手ぇ出してこねえだろ。だから、俺も気になる事があるから王都を出るつもりだ。」

ヨハンナとアンナが同時に声を上げる。
「「え?」」
「まだ、暫くは王都に居るんじゃ無かったの?」
「何処かへ行くつもり?」

おいおい、アンナはともかくヨハンナは判ってる筈だかな。
「ああ、ちょっと気になる事があってな。アラドの奴らに会ってくる。」

「アラド?」
アンナが聞いてくる。ヨハンナは知ってるがアンナは知らないか。

「アラド兄弟。傭兵団『緋空旅団』のリーダーよ。」
ヨハンナが言うがアンナにはピンと来ないらしい。まぁ騎士団か傭兵団じゃなけりゃ知らんだろ。

「俺の昔の知り合いさ、聞くところによると北の方へ遠征してるってことだ。」
「じゃあ、その人達に会いに行くの?」
「ああ、アンナはついて来るなよ。」

いかにも不満そうにアンナが口を尖らせる。ヨハンナの眉も寄りっぱなしだ。ヨハンナもそうだがアンナだって仕事があるだろ。幾ら腰掛けだと言っても王都に来るにも無理したんだろ。それくらい分かる。
俺の言葉にアンナは考え事を始めた。

「いつ頃行くつもり?」
ヨハンナは俺を止められないのを知って聞いてくる。

「まぁ、ちょろちょろ話を通してから行くから5日ってところか」
「わかったわ。それまでは・・・」

ヨハンナが立ち上がり、アンナの反対側に座り身を寄せてくる。
「たっぷり可愛がって貰うわ」

ヨハンナの行動に気付いたアンナが反対側から胸を押し付けてくる。
「あたしも忘れちゃ嫌よ!」

まぁ、出掛けるまでは両手に花で楽しむことにしよう。疲れちゃあいるがスキルがあれば問題ない。たっぷり可愛がってやるさ。

◆ゾラ視点◆
思った通りジルが居る拠点に行くと奥の部屋のテーブルに知らぬ間に封筒が置いてあった。
何時もながら気配も感じさせないで誰が置いていくのか。
人払いをすることもなく椅子に座ってゾラは封筒の中身を読んで行く。
暫く夢中になっていたがやがて額に汗を流し始めた。

A級冒険者D・・・ゾラは太刀打ち出来るのだろうかと恐れを生まれて初めて抱いた。





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